真・恋姫無双 魏エンド後 〜春華秋刀〜 華琳伝
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三国との戦争は終わった。

 

それは長く、たくさんの人の犠牲を得て、三国同盟という形で幕を閉じた。

このような結末を迎えて、あの頃の私が見たらどう思うかしら?

きっと笑うでしょうね……

 

 ( 覇王と名乗っておきながら、なんて甘いのかしら )

 

そう言うでしょうね。

私だって今も不思議でしょうがないわ、それに貴方も彼に出逢えば同じことが言えるかしら?

 

頼りないけど優しい笑みを向け、居て欲しい時に必ずと言っていいほどどこからともなく現れ励ましてくれて、そして………

 

 

私のことを華琳≠ニして普通の少女のように接してくれる彼

 

 

彼、北郷一刀≠ヘ私の覇道を変えた

私は後悔はしてないわ。これも一つの覇道だと………

 

でも少し、少しだけ後悔したかも

 

 

 

「華琳しゃ〜〜ん ヒック 飲んれますかぁ〜?」

 

まさか劉備、桃香がこんなにも酒癖が悪いなんて

 

「ちょっと桃香、貴方飲み過ぎではなくて?」

「いいじゃないれすかぁ、こぉんなにもおめでたいんれすから!」

「そうだそうだ♪もっと飲めぇ〜♪」

 

桃香の後ろから煽るように楽しく酒を飲んでるもう一人の王

 

「雪蓮、貴方ね。桃香をこんなになるまでお酒を飲ましたのは」

 

頭を手で押さえながら溜息を吐きながら孫策、雪蓮の下へ歩いていき

 

「別にいいじゃない、もう三国で戦をしないんだから♪」

「それでも限度というものがあるでしょうに」

「華琳しゃ〜〜ん」

 

迫ってきた桃香を華麗に躱すと

 

「御使い君の姿が見えないわね」

「え?」

 

雪蓮が一刀の姿が見えないという言葉を口にして、胸の奥が少し痛み出し

そして私はある人物の言葉が頭に流れた。

 

「ふぇ〜?御使いのお兄さん?それならさっき城壁に向かう所を見ましたよ〜。

あんな綺麗で光っている服を着ているから見間違いじゃないと思いますよぉ」

「城壁に?………そう、悪いけど私は少し抜けるわね」

「あらあら♪後で御使い君のことを紹介してよね」

 

お酒の入った茶碗を置いて、私は一刀がいる城壁に向かった。

 

雪蓮に一言だけ「ごめんなさい」とだけ言い残して…………

 

 

 

 

 

城壁を登り終えるまで後2〜3段の所で片肘を石壁について、下で大騒ぎ中の宴を見ている一刀の姿を発見した

それを楽しそうに見て酒を呑むわけでもなく、本当にただ宴を見ているだけだった。

 

私はこの時に悟ってしまった

だって彼を、一刀を愛している人ならすぐに解ってしまう

 

今まで優しい笑みをしていた人が、悲しい笑みを浮かべているのだから

 

 

『 そう、貴方はもう……… 』

 

 

私はその場でしゃがみ、目元に溜まっていた涙を拭い、彼のもとへゆっくりと歩み寄っていった。

 

 

私が話しかけると一刀は私に気が付き、どうして私がここにいるのか?とか

これからの三国について私に聞いてきた。

彼と他愛のない話をしている、いつも通りの私と一刀の会話、そういつも通りの……

私はそう思い、心の中で安堵した。

 

 

『 大丈夫

 

    彼はまだ……… 』

 

 

だがその時、一刀の体が一瞬だけ薄くなった気がした。

私は彼の名を呼ぼうと声を出したが、途中で下から桃香と雪蓮の大きな声が聞こえてきて

私の声と被り一刀には私の声が届かずいつもの彼がそこに立っていた。

 

 

『 時間が来たのね……… 』

 

 

一刀は私に宴会にはもう参加しないのかと聞いてきたが

私は平静を装いつつ、それらしい答えで断って私は彼を森へ連れだした。

 

彼の手を握って

 

その時の彼の手は夜風に当たっていたのか暖かくなかった。

 

いや、そうではない

彼の温もりを感じることが出来なかった。

 

 

 

 

私はこの時、覚悟を決めた

 

 

だから……素直になって彼と話そう

 

 

『 最後くらい

      彼の前で……… 』

 

 

 

 

 

 

 

虫の声や河の流れる音しか聞こえない、静かな森

彼はもう戦争が終わったというのに、間諜の心配をし出した。

 

『 違う……… 』

 

私の身を心配してくれるのは嬉しい

嬉しいけど、そうではないでしょ?

 

確かに貴方らしいけど、今は違うでしょ

私は何ら変りない一刀の態度にいつもの私の態度で答えてしまった。

 

嫌気がさすわね、本当は素直になりたいくせに

 

そのままいつもの私で一刀と話し始めた、一刀に背を向けたまま―――――

 

 

今日の月は今まで見た中で一番綺麗な月だと思った。

 

私が口に出すと一刀も賛同してくれた

でも本当は綺麗と同時に少し怖かった。

 

あの輝かしい月の光が貴方の体を徐々に溶かしていくようで

 

一刀は私のことを茶化すような話をしてきて、私はそれにいつものように答える。

私は少し思ってしまった、このやり取りはもう私の生活の一部になっている事に

 

 

一刀が馬鹿なことを言って、私が訂正する。

 

一刀がばかなことをいって、わたしが………

 

 

だから私は彼をここに縛りつけようと、私に恩を返しなさいと言い終えると

後ろに居るはずの一刀の気配が薄くなっていることが解った。

 

私は気丈に振る舞い、一刀に天界に帰るのかを聞くと

一刀は分からないと答えて、今の歴史は一刀の知る歴史とは全然違うと……

歴史が変わる時、一刀の体調が優れなかった。

そしてあの人物の言葉

 

【 対局に逆らうな、逆らえば身の破滅 】

 

この二つを結びつければ解ってしまう、この時ばかりは自分の頭の回転の良さに腹が立つ

 

そしてまた一刀の気配が薄くなるのを感じ、私は今も覇王の仮面を剥がせずにいて曹操として一刀に語りかけていた。

 

終焉が近づいてきたのか、だんだんと一刀の声が小さくなっていき

 

 

 

 

「私を誰だと思っているの?」

 

「曹孟徳。誇り高き、魏………いや、大陸の覇王」

 

「そうよ。それでいいわ」

 

 

私は強がりでそう答えた。

でも本当は……本当は………

 

 

「華琳、これからは俺の代わりに劉備さんや孫策さんがいる。

だから……だから俺が居なくなってもいつでもこの二人がいるんだ」

 

 

やめて

 

 

「この二人は俺なんかよりもきっと華琳の力になってくれる」

 

 

やめてよ

 

 

「だから華琳。俺が知ってる、いや……俺が想ってる∴ネ上の国を作ってくれ」

 

 

やめてったら

 

 

「華…………君なら、俺が想っている君なら出来るだろう?」

 

 

何で?何でそんな言い方で言うの?私のことを君≠ネんて呼ぶの?

いつも通り真名で呼んでよ、華琳≠チて

 

それにそんな言い方されたら、今の私は……

 

 

 

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「ええ………。貴方がその場に居なくて、悔しがるような国を作ってあげる」

 

「ははっ……そう聞くと、帰りたくないなぁ」

 

「そう……、そんなに言うなら………私の傍にずっといればいいじゃない」

 

「そうしたいけど……もう……無理かな?はははっ」

 

「……どうして?」

 

「もう、俺の役目はこれでお終いだからさ」

 

「……お終いにしなければいいじゃない」

 

「それはダメだよ。

君の夢が叶った事で、君の物語は終端を迎えたんだ……。

だったら、その物語を見てきた俺も終端を迎えなくちゃ」

 

「……ダメよ。そんなの認められるわけ無いでしょ」

 

「俺だって、こんな結末を認めたくないよ」

 

「どうしても……逝くの?」

 

「あぁ……悪いんだけど、もう君の姿が良く見えないんだ」

 

「そう……なら………仕方無い……わね」

 

「ごめんな、綺麗な姿がボヤケちゃって……」

 

「……恨んでやるから、最後に私の姿が霞んでるなんて」

 

「ははっ、それは怖いな……俺だって最後に見てるのがこれじゃあ嫌さ。

でも、それとは別に嬉しいと思ってるんだ。

最後に……俺の目に映ってる人が君で………」

 

「……逝かないで」

 

「ご・んよ………」

 

「一刀……」

 

「・よ・ら、誇り・・王」

 

「かずと………」

 

「・・な・、寂・・・屋・女・・」

 

「かずっ………!」

 

 

少し強めの風がその場に流れ、華琳の金髪が宙を舞い

 

 

 

「さよなら……愛していたよ、華琳―――――」

 

「……一刀?」

 

 

―――――――――――

 

 

「一刀……? 一刀……!」

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

「……ばか。……ばかぁ…………っ!

 

本当に消えるなんて…なんで……

 

なんで、私の傍にいてくれないの……っ!

 

約束≠オたじゃない、あの時に私と約束≠オてくれたじゃない!

 

ずっといるって……彦星と織姫みたいに離れ離れにならずに

 

ずっと私の傍に……いるって……

 

どこにも逝かないって言ったじゃない……!

 

ばか……ぁ…………!」

 

 

泣いた。

 

森の中でずっと泣き続け

一刀の前で素直になれたのは彼が消える直前のほんの一瞬だけだった。

 

 

 

 

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「一刀っ!!………あの時の夢を見るなんて」

 

ゆっくりと体を起こして目元に手をやると、そこには涙が零れていた。

 

「もう大分経つというのに、まだあの夢を見るなんて」

 

一刀がこの世界から消えて一年が経過しようとしていた

私は寝所から起き上がり、箪笥(たんす)から今日着る服を取り出してまだ頭が完全に覚醒してない状態で着替え始めた。

 

「一年か……まだあれから一年しか経ってないのね」

 

時が過ぎれば過ぎるほど私の心は虚しさだけが広がっていく

私はふと箪笥の上に置いてある天の知識で作った日付表を見て、ある事に気がついた。

 

「今日は七月七日、七夕なのね……」

 

皮肉にも今日は七夕だった。

だから今日あんな夢を見たのかしら

 

去年の七夕の日に私と一刀が交わした大切な約束

 

 

゚・:,。゚・:,。 ゚・:,。†゚・:,。゚・:,。゚・:,。 †゚・:,。゚・:,。゚・:,。

 

 

「暑いなぁ」

「夏なんだから暑いのは当たり前でしょ」

「あぁ〜、机が冷たい〜」

 

執務室で一刀と二人で仕事をしていると、隣の机で報告書を作成している一刀が急に机に伏せると

いきなり机に頬ずりし馬鹿な事をやり始めた。

 

「気持ち悪いから止めなさい、そんなに暑いなら小屋に帰れば?」

「ひどっ!?えっ、何?俺が種馬と呼ばれてるから馬小屋に帰れって事?それは無いだろ華琳」

「別に私は一言も馬小屋とは言ってないわよ。私はただ真剣に黙々と仕事をして欲しいだけよ?」

「サー!真面目にヤリます、サー!!」

 

私が笑顔を向けると一刀は背筋をピンと伸ばし、沙和の部隊でおなじみの敬礼の仕草をとって再び筆を走らせた。

だがすぐに彼の筆は止まり

 

「でもやっぱ暑いもんは暑いなぁ……。

こういう日は何か騒ぎたいよな、祭りとかいいなぁ〜

この時期の有名な祭りだと七夕かな?」

 

聞き覚えがある言葉を彼の口から聞こえたので、私は筆を止めて

 

「七夕?天にも七夕はあるの?」

「え、何で七夕を知ってるの華琳?……あっそうか、もともとの風習は中国なんだっけ」

 

一刀は一人で何やら納得したような顔をして

 

「天の七夕は何か特別なことでもするの?」

「特別って事ではないけど、彦星様と織姫様という二人の男女が七月七日に会えるから、ソレを祝うよう―――――」

 

天の七夕は変わった習慣なのね、節句の日に二人の人間のために祭りを開くなんて。

男女を祝うのだから、こ、ここ、恋にまつわるお祭りか何かかしら?

そしたら一刀と、その、天の七夕を……。  (キャ

べ、別に興味なんてないわよ!?勘違いしないで頂戴!

 

「華琳〜?俺の話を聞いてる?顔が赤いようだけど、そんなに顔が赤くて大丈夫か?」

「大丈夫よ、問題ないわ」

 

「…………え?な、なら良いんだけど。

それで話を戻すけど何で彦星様と織姫様が一年に一度七月七日に会うかなんだけど…………それぞれ軍を率いて戦うためなんだよ!」

「え゛!?」

 

両手で顔を塞いで悲痛な声で叫んだ一刀、私はその内容に驚いて普段出ないような声を出してしまった。

 

「両軍は決戦の日のために切磋琢磨に訓練して、どちらがこの七夕の覇者に相応しいか戦をするんだ。

そして彦星と織姫は『七夕王に俺(私)はなる!』という決意を胸に秘め戦場に赴くんだ」

 

そ、そんな…………

私と一刀が戦うというの?

でもそんな泣き言は言ってられない、私は覇王

例え一刀と戦うことになっても、私は全力で一刀と対峙する。

我が覇道の前に立つと言うなら、叩き潰すまで

愛する人と対峙するのは悲しくて心苦しいけど…………

 

「なぁ〜〜んてウッソーー!!信じた?華琳、今の俺の話を信じた?」

 

…………何ですって?

嘘?一刀は今、嘘と言ったのかしら

 

「……………………今の話は嘘なの?」

「嘘に決まってるじゃ――――― あれ?華琳さん?何故絶≠フ刃先をこちらに向けているのでしょうか?」

「フフフ、そう…嘘なのね………」

「華琳さん?何故自分の首に絶≠ェ添えられてるのでしょうか?」

「解らない?」

「………謝りま 『 今更謝っても遅いわよ 』 ですよね〜」

「安心して一刀、私は 王 で貴方は 臣下 。

王は臣下を労うものだわ、だから優しく、そして一瞬の苦痛を与えてあげる」

 

 

 

私は絶を彼の本体である中山性王 (ちゅうざんせいおう)の末裔に狙いめがけて

 

 

 

 

「えっ、ちょ!?華琳そこは、そこはらめぇぇぇぇぇぇ!!

18年間共にした良き相棒≠ネんだ!

嬉しい時や楽しい時、そして気持ちいい時を一緒に過ごした俺の人生の友達なんだよぉ!

だから、許し―――――

 

 

おいおいおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

私の絶は綺麗に中山性王の末裔に命中して、彼の中山性王の末裔は ? から ? になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、本当の話はどういうのなの?」

「はい、きちんと正確に話させてもらいます」

 

それぞれの椅子に座りなおしたが

いまだに痛いのか、一刀は自分の本体を押さえながら話していた。

そんなに強くやりすぎたかしら?

 

「俺もあまり詳しくは知らないけど………。

織姫様は天帝の娘で織物が上手な働き者、彦星様は良く働く庶人の若者でね。

そんな二人は出会って瞬間に恋をして、やがて二人は結婚したいと思ったんだ。

二人はいつも真面目に仕事をしていたから天帝は二人の結婚を認めて

めでたく夫婦となった二人なんだけど夫婦生活が楽しく、織姫様は織物を織らなくなって、彦星様は働くなったんだ。

この事を知った天帝は怒り、二人を隔てて引き離して一年に一度だけ七月七日の日に天帝は会うことを許した」

 

私は一刀の口から聞かされる物語を聞き魅入っていた。

 

「確かこんな話だったかな?微妙に違うかもしれないけどね

ってどうした華琳、顔なんか伏せて?面白くなかった?」

「…………ない?」

「え?華琳、今なんて?」

「一刀は私の前から消えたりなんか………しないわよね?」

「華琳」

 

私は先ほどの七夕の話を聞いて何故か自分と一刀を重ねてしまった。

定軍山、赤壁の二つの戦いで一刀の知識を使ってから、一刀は体を崩すようになった。

まるで天≠ェ怒り、彼をこの世界から消すように…………。

そう思ってしまったら私の心は不安でいっぱいになってしまい、先ほどの質問を一刀にした。

 

「消えないよ………」

「え?」

 

一刀が喋ったと思ったら、不意に後ろから彼の匂いがしたと同時に優しい温もりが私を包んだ。

 

「消えないよ、例え華琳が俺に『ここから消えて』って命令しても消えたりするもんか」

「何よ…………王の命令は絶対よ、それを無視するなんて」

「あれ?華琳は俺に消えて欲しいの?」

「貴方に消えて欲しいわけないじゃない……………………………バカ」

「愛してるよ、華琳」

「この種馬」

 

そう言って私は後ろを向き、彼と口付けをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口付けをした瞬間に桂花が来て、その夜にお仕置きしたのはいつもの事

もちろん一刀と一緒にね♪

 

 

 

 

゚・:,。゚・:,。 ゚・:,。†゚・:,。゚・:,。゚・:,。 †゚・:,。゚・:,。゚・:,。

 

 

 

「何よ、消えないって約束したのに………嘘つき」

 

この約束をした翌日に一刀は、一刀は天に還った。

私は軽く息を吐き、目の前の日付表を倒して政務室へ向かった。

 

 

 

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三国同盟が成ってから一年経っていても、私の政務の量は変わらずにいた。

道路などの補修作業、呉、蜀との貿易事業、地方などの警備体制……

他にもまだやらなければいけない事はたくさんある。戦時中の時より政務量は減るどころか増えていた。

でも返ってそれが少しは救いであった、仕事をしていれば一刀の事を思い出せずにいられる。

でも、それでも時々自分の意志とは関係なく涙が零れる時がある、今もまた……

 

「あっ」

 

筆を走らせている竹簡の上に涙が落ち、墨で書かれた文字が零れた涙で滲んでしまった。

 

ダメね……

今日は一刀の夢を見てしまったから。

一刀が消えて最初の頃は私も魏の皆も気丈に振舞っていたけど、月日が経つにつれて悲しみが皆を襲っていた。

悲しみは時が解決すると言うものだと思っていたけど、むしろ逆………

時が経てば経つほど一刀が居ない≠ニいう現実が私たちの心に刻み込まれていった。

 

「本当にダメね……」

 

急ぎの案件は無かったので、気分を変えるために私は街へ出かけた。

 

 

今私は一人で街を歩いていた。

人の触れ合いや店の活気、露天商品を見たりして私が統轄するこの許昌の街を肌で感じていた。

護衛も無しに街を歩くなんて、あの戦国時代に思いもしなかった。

いつもなら春蘭か秋蘭に護衛を頼んでいたけど、最近のあの娘たちの姿を見て頼めないでいた。

 

ここ最近の春蘭は休日や兵の調練の休憩時間等の時間があったら書物などを見て必死に勉強をしている。

良い事に思えるかもしれないけど、その勉強している書物の全部が妖術♀ヨ係の書物

春蘭の必死で勉強している姿を見て、私は辞めるよう言うことなんて出来ずにいる。

夜遅くまで勉強しているのか、春蘭は会議に遅れてくるようになった。

 

秋蘭は表面上は変わってない様に見えるけど、付き合いの長い私と姉妹である春蘭は気付いていた。

ただ強がっている≠セけだと。

前の秋蘭なら絶対に無かった報告書の記入漏れや大事な会議の途中、上の空であったり

そして秋蘭もまた会議の時間によく遅れて来るようになった。

 

二人とも会議に遅れて来る日は必ず目が赤くなっているから、その事を二人に聞くと

 

『ちょっと、夜遅くまで起きていたのもので』

 

声を揃えたように同じ答えを言ってきた。

 

「夜遅くまで起きていたぐらいで、あんなに目が赤くなるかしら?

あれはまるで、ずっと―――――」

 

私は自分の言葉を話してる途中に、ふとある食堂が目に入り思わず足を止めてしまった。

凪が、あの凪が笑顔で

 

 

涙を流しながら食事をしていたから

 

 

やっぱり春蘭と秋蘭はずっと泣いていたから、目を赤くしていたのね。

私は凪に見つからないよう、静かにその場を後にした。

 

 

 

どれくらい時が経過しただろうか?

気分転換に街へ降りたのに、何も変わらないでいた。

 

「もうそろそろ城に戻って仕事を再開しましょう」

 

大通りから一つ抜けた路地裏を歩いていた私は城に帰ろうと踵を返すと

 

「おや?曹操様じゃないですか」

 

一人の商人が私に声を掛けてきた。

 

「私に何か用かしら?残念だけど今から帰ろうと思っていたのだけど」

 

私は少し不機嫌そうに答えて、足早に帰ろうとした時

 

「待ってください曹操様、貴方様にお渡ししたい物が………」

「私に?……そう、ならば後日に持ってきて衛兵にでも預けて―――――」

「失礼ですが、勝手な私の意見として今、今この時にお渡したほうがいいと思われます」

「へぇ………それはどういう事かしら?」

 

私は少し覇気を出して目の前にいる商人に問いかけたが、商人は怖気つくことも無く

 

「はい、今から渡すものは天の御使い@lである北郷一刀様から貴方様に渡すよう言われた物でございます」

 

え?…………今何て?

北郷一刀?え?一刀が私に?

商人は「少々お待ちを」と言い残し、店の中へ入っていった。

私は待っている間、ただ呆然と待っていることしか出来なかった。

 

少しして先ほどの商人が戻ってきて、机の上に持ってきた物を置いた。

私はそれを凝視して綺麗な布で包まれている小さな箱であることが解った。

 

「こちらが御使い様より預っていた品物、いや御使い様より頼まれて作ったものでございます」

 

商人はゆっくりと丁寧に布の結び目を解いていき、中からは上質であろう木の小箱が姿を表した。

 

「本当なら早くに渡したかったのですが、飾りの作成に時間が掛かってしまいまして

中々私が納得出来る物が出来ずに遅れてしまいました、申し訳ございません。

それでは、私は商品の整理がありますもので」

 

商人はまた店の奥に消えていった。

私は手を震わせながら目の前の小箱へ手を伸ばし、蓋を開けると

そこには銀色の腕輪があった。

 

 

銀色に輝くその腕輪には一際目立つものがはめ込まれてあった

 

 

十字の形をした透明で光輝く宝石。

 

 

 

綺麗…………。

私はその腕輪を見てそれ以上の感想が言えずにいた。

 

「女性に贈り物をする時は直接あなた自身の手で渡しなさいよ。

まったく貴方と来たら―――――あら?何か文字が彫ってあるわね…………何て書いてあるのかしら?」

 

私は腕輪をはめようとしたら、腕輪の裏に何か文字のようなものが見えたので

腕輪の裏を覗くとそこには

 

歪(いびつ)でお世辞にも綺麗とは言えない文字が書かれていた。

 

「何よ…………何よ…………ばか」

 

私は外にいたが気にせず涙を流した。

腕輪にはこう書かれていた

 

 

永遠愛? 這個感情永恆

 

 

王である私が街でこのような姿を見せるわけにはいかないが、そんな事はどうでもいいと思えてしまった。

腕輪を胸にそっと抱き寄せて両手で優しく包みこみ、一刀が消えた時と同じように声を荒げて泣いた。

 

 

 

 

涙をたくさん流し、少し落ち着いた私は腕輪の先にいるであろう彼に

 

「私もよ…………」

 

今は居ない愛しい彼に返事をした。

 

 

 

 

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店の奥の作業場で物を整理していた商人は外から聞こえる歳相応の女の子の泣き声が聞こえてくると

物を整理していた手を止めて微笑み、すぐにまた手を動かした。

 

「おっ?…………あった、あったコレだ」

 

目当てのものが見つかったのか商人はゴソゴソと物を掻き分け引っ張り上げた。

それはグニャリと曲がっている銀の腕輪だった。

 

「御使い様、貴方はやっぱりすごいお人です」

 

 

 

゚・:,。゚・:,。 ゚・:,。†゚・:,。゚・:,。゚・:,。 †゚・:,。゚・:,。゚・:,。

 

 

『御使い様、注文した宝石が明日には来るそうですよ、明日にでも加工を始めますね。

やはり私が作りましょうか?』

 

『貴重な宝石の加工は貴方に任すけど、コレばっかりは俺にやらせてよ、本業の人がやれば俺なんかよりも綺麗なものが出来るけどさ』

 

『御使い様…………』

 

『そりゃあやっぱり綺麗な形をしたやつを贈りたいけど

やっぱり大好きな人には自分の想いを込めて作ったものを贈りたいじゃん。

それに…………もし俺が遠くの地に行ったときに俺の代わりってわけじゃないけど、ないよりはマシでしょ?

って何言ってんですかね』

 

『御使い様!?前!前!!』

 

『え?…………あぁああああああああああ!!

また失敗した。

コレに文字を彫らなきゃいけないし、道は長いなぁ』

 

 

゚・:,。゚・:,。 ゚・:,。†゚・:,。゚・:,。゚・:,。 †゚・:,。゚・:,。゚・:,。

 

 

「貴方の想い、届きましたよ」

 

 

 

 

 

〜end〜

 

 

 

 

 

-6ページ-

 

 

 

あとがき

 

 

皆さん、お久しぶりです。

 

約半年ぶりですね〜、本当にゴメンナサイ;;

 

別に執筆をサボっていたわけじゃないんです

 

文(妄想)が降りてこなかったんです!!

 

本当はこの話は七夕に投稿しようと思ったのですが、悩みに悩んでいたら9月

 

はぁー(ノ◇;)〜3

 

それで今回の話は前に葉月さんが華琳さんが見たいとコメしてくれたので、華琳さんを書きましたが

 

ぶっちゃけどうでしょうか?華琳さんの拠点は他の作者さんがたくさん書いているので自分のは上手く書けてるか

 

内心不安MAX状態です。

 

腕輪と書かれていますが、要はシルバーブレスレットですねwww

 

十字の形をしたダイヤモンドが埋め込まれています、この時代にダイヤはあるのか?まぁご都合主(ry

 

そして最後の一刀が彫った文字はあえて訳せず乗せました。

 

まぁなんとなく意味はわかっちゃうっぽいなぁwww

 

それと最近ふと自分の作品を読み返して、何この文章wwwおかしくねwwww

 

と思い改訂しようと思います。

 

今のところ1、2話は修正完了しました。

 

もしかしたら少しだけ設定を変えちゃうかもしれません、申し訳ないっす _oノZ

 

 

説明
|д゚)チラッ ひっそりと投稿

優しい心で見てください。
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コメント
更新待ってます!!!!!!(迷い猫@翔)
おおっ!まさか、私の戯言を聞いて書いてくれるとは思いませんでした!それにしても七夕でくるとは、華琳の切なさが伝わってくる作品でとてもよかったです!無理なさらず、本編も楽しみに待っています!(葉月)
面白かったです!本編の続きも気になるしこの続きも気になりますw頑張ってください^^(TK)
ダイヤモンドはあったと思いますよ。十字に加工は流石に無理でしょうが。ちなみに現在では中国はダイヤモンド産出国第9位ですよ、確か。(南華老仙「再生(リボーン)」)
今はまだ7月7日です。この物語が完結するまで7月8日にならないので安心して続きWO!(種)
面白かったです!これからも頑張ってください!(タケダム)
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