ダブルバインド 彼女の苦悩 【798文字】 |
「貴方は馬鹿ですか」
思い切って伝えた人生初の告白は、冷たく斬って棄てられた。
彼女が浮べた喪失感漂う悲愁の表情に堪え切れず、思わず視界が霞んだその時。
「まぁ、いいです」
どう受け止めてよいのか判らない言葉と共に、彼女は去っていった。
翌日。
HRが終わって教室を出ると、そこに彼女が待ち構えていた。
「来て下さい」
昨日の今日で、どう受け止めるべきかと逡巡すると、腕を鷲掴みにされて昇降口まで引き摺
られる。
その後は買い物に連れ回され、荷物を持たされた。
彼女は常に詰まらなそうで、正直、罰か何かかと思っていた。
そんな日が幾日か続いた。
ある時。
仲の良い級友に告白後の彼女の行動について相談すると、それを耳聡い女子達が聞き付け、
間も無く人集りになった。
結論は、彼女は端的で冷たく感じるが、人の気持ちを蔑ろにする様な人では決してない。連
れ回してはくれるのだから、今度は自分から誘って真意を尋ねてみてはどうか、という事にな
った。
実に半数以上の級友が集まっていた。面白がってるとしか思えない。でも、お陰で初めてと
は思えないプランに仕上がった。
彼女をデートに誘うと、渋い顔をしつつも受諾してくれた。
運命の当日。
会心のプランは順調に進むが、彼女は始終釈然としない面持ちだった。
特に自信があったスポットでの、彼女の憤懣遣る方無いといった態度に、真意を聞き出す前
に心が折れた。
彼女に謝って、今後は近寄らないと告げた。
すると彼女は葛藤に苛む様に悲痛な表情を露にし、
「消えてしまえ」
その怒号と共に僕を抱きしめた。息が詰まる位に強く。
背中に減り込んだ爪が痛かった。
不意に熱いものが首筋に伝う。
彼女は打ち震えながら、それまでとは違う儚い声で、
「消えて下さい」
と涙する。
漸く気付けた。
ごめん。そうとしか言えなかった。
ありったけの想いを込めて彼女を抱きしめる。
彼女は静かに泣き続けた。
説明 | ||
某SNS某コミュニティの掌編小説コンテストに投稿した作品で佳作に選んで頂きました。 規定800文字に合わせて考えてたはずが、実際には倍以上に膨れ上がり、思いっきり削り落としてできあがったもの。 主人公の様に彼女の苦悩を汲み取っていただけたら幸いです。 そこは削りとったから説明不足とか、そういったことではなく、狙いですw |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
557 | 557 | 1 |
タグ | ||
掌編小説 | ||
The absolute zeroさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |