東方幻常譚第八話
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 いつもと変わらない無縁塚。今日も無数の曼珠沙華が咲いている。そして大きな木の下には、いつもと変わらない死神の姿があった。そしていつもどおり、死神は閻魔に叱られる。

 

 東方幻常譚第八話 「川辺の二輪」

 

 そよ風が無数の彼岸花を揺らす傍ら、死神は今日も、こっぴどく叱られていた。もはや彼女にとって、これは日課なのではないのかというくらい頻繁に叱られている。

 

「いいですか小町。昨日も言いましたがね、あなたは少し仕事に対して無責任すぎる。すこしは真面目に働きなさい」

 

「い、いやですね四季様、たまたま客が切れたので、ちょっとだけ休憩を・・・」

 

 小町はたじろぐ様にそう言い訳した。しかし、当然ながらそれで済むわけはない。何せ相手は閻魔である。

 

「休憩時間は決めてあるでしょう。それを守りなさい」

 

「しかしですねぇ」

 

「大体、休むにしても桟橋のところで休めばいいでしょう。こんなところで寝ていたら、霊が来ても判らないじゃないですか」

 

 小町はこれ以上何も言えなかった。映姫に言われるまま桟橋へと戻る。

 

「まったく・・・他の死神はもう少し真面目だというのに・・・あ、小町、ちょっと待ちなさい」

 

「なんですか?」

小町は怪訝そうに呟いた。明らかに面倒くさそうな顔をしている。

 

「すっかり忘れていました。私を対岸まで送っていってくれませんか?」

 

「あぁ、そうですね。分かりました。じゃぁ乗っていただけますか?」

 

 映姫が渡し舟に片足をかけると、ギシッと船体が傾いた。その拍子に映姫はバランスを崩し、慌てて小町にしがみついた。

 

「おっ・・・と、大丈夫ですか映姫様?気を付けて下さいよ」

 

「あ、ありがとう、助かりました」

 

「まぁそれは良いんですけど、そんな事よりもですね」

 

 小町は、もったいぶる様に間を置いた。映姫も言葉を切り出すタイミングを逃した形になって、一緒に黙り込んだ。

 

「何時までしがみついてるんですか?」

 

「え?あ、ごめんなさい!」

 

 小町に指摘されて、映姫は跳ねる様に体を離し、そのまま渡し舟に乗り込んだ。

 

 小町はよく分からないといった風だったが、自らも渡し舟に乗り込むと、櫂を持って漕ぎ始めた。渡し舟は、三途の川の水面を滑る様にして進み始めた。

 

「小町、私だって別に、怒りたくて怒っている訳ではないんですよ。あなたはそう思っていないかもしれませんけど」

 

 映姫は、まるで子供に教え諭すような口調で小町に話しかけた。

 

 小町は舟を漕ぐ手を止めて、映姫のほうに向き直った。

 

「分かってますよ、勿論。感謝はしてます」

 

「そうですか。いつもきつく当たってしまって、あなたには心底面倒臭がられているかと思いました」

 

 映姫がそういうと、小町はくすくすと笑い始めた。映姫はポカンとして小町を見た。

 

「いやだって、閻魔を煙たがるなんて、そんな恐れ多いこと出来ませんよ」

 

「そう、ですか。ちょっと安心しました」

 

 しかし、映姫は同時にがっかりもした。結局のところ、上司と部下の関係でしかない。それ以上でも、それ以下でもないからである。

 

 でも、と小町は続けた。

 

「そういう上司とか部下とか、そう言った括りを抜きにしても、あたいは感謝してますよ」

 

 まるで映姫の心の中を見透かしたかのように、小町はそういった。

 

「そ、そう、ありがとう」

 

 映姫は自分の顔が赤面していくのを感じて、それだけ言うと、波一つ立たない三途の川の水面を見つめた。そこにはうっすらと、赤面した彼女の顔が映っている。

 

「じゃ、そろそろ到着させますか」

 

 小町はそう言うなり立ち上がった。もともと小町の能力を使えば、三途の川など有って無いようなものなのだ。映姫も、それに気が付いた。

 

「そうです小町!あなた、何で能力を使わなかったんですか」

 

 映姫が小町に向き直って抗議する。もっともである。

 

「いやだって、映姫様、何か話したそうに見えたんで、少しだけ距離を伸ばしておきました。まずかったですか?」

 

「いえ、寧ろありがとう。いい休憩にもなったわ」

 

 映姫は正直驚いた。自分は小町にも分かるくらい疲れていたのか、と。そして、小町に感謝した。

 

「いえいえ、少しは疲れ、取れましたか?」

 

「えぇ、大分取れたわ。そろそろ戻していただけますか、船頭さん?」

 

 映姫は少し微笑みながら小町にそういった。彼女にしてみれば、何ら大したことの無い微笑だったが、小町は何故か頬が厚くなるのを感じて、顔を背つつ「はい」とだけ言うと、三途の川の岸を近づけた。

 

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 数日後、死神の船頭は相変わらず、彼岸花の咲き乱れる無縁塚の木の下で、静かに寝息を立てていた。

 

「まったくこの子は仕方が無いですね・・・よいしょっと」

 

 映姫は、木の下で眠る小町の横に腰掛けた。前のときのように、小町を叱ることなく。

 

「あぁ、意外と気持ちいいものですね。小町が居眠りするのも分かりま・・・す・・・」

 

 映姫もまた、小町と同じように寝息を立て始める。

 やがて、彼女たちを起こしたいのかより深く寝かしつけたいのか分からない、心地よいそよ風が吹いた。

 その風のせいで―或いはおかげで―映姫が寝息を立てる傍ら、小町は目を覚ました。

 

「んあ・・・やば・・・また怒られ・・・る?」

 

 そして、自らのそばで眠る、自らの上司の姿を見つけた。

 少しの間、状況が飲み込めなかった。普段ならば、自分をしばき倒して叱り飛ばすはずのこの上司が、今は自分の横に腰掛けて、小さく寝息を立てているのだ。

 

「よく分かんないけど、たまには良いかねぇ」

 

 ふぁ、と小さく欠伸をすると、映姫の肩に手を回し、軽く自分のほうに引き寄せると、小町は再び目を閉じた。

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〜あらすじという名の言い訳〜

 

 絡みとかわかんない。どんなものが求められているのかも分からない。そして何より、どんな絡みが自分に書けるのか分からない。

 

 気が付いたらこんな感じになりました。でも後悔はすまい。反省はしても。

 

 そういえば、メッセージで「オリジナル書いて」って言うのがあったんで、違うサイトさんに上げていたものを移転させます。

 

 需要があるかどうかは完全に分かりませんが。

 

 ジャンルは多分SFです。きっと見る人によって違うはずです。お楽しみに。

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えい×こま 正直すまんかった。801です。勿論ガチムチではないです
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