.ある研究員には、愛しの妻と愛する息子がいた。研究費用は決して安くはなく、貧しいながらも幸せに暮らしていた。研究員である父親は、ついに記憶を移植する技術の開発に成功した。しかし、それを実現するには人体実験のサンプルがなければ完成とはいえなかった。もちろん、世間的に人体実験は批判されその研究は打ち切りにせざるを得なかった。そんなある日、研究を支援してくれるという電話があり是非直接我が社のビルで話が聞きたいという電話が来た。父親は喜んで待ち合わせ場所までいったのであった。だが、待ち合わせであるはずの場所には、取引先の会社はなく別の会社のビルが建っていた。しょうがないので付近でまってもみたが、くる気配はなく、イタズラされたんだなと思いやむなく帰る事にした。しかし、彼の愛する帰る場所は無くなっていた。家は荒らされ、長年の研究資料は盗まれ、愛する妻と息子はズタズタに切り刻まれていた。唯一残ったのは、研究成果の記憶を移植する装置の試作品であった。それを見たとき彼は、泣き、叫び、絶望し、小さな希望を見出した喜びを感じそして・・・狂った。妻は時遅く脳が死んでいて記憶の移植はできなかったが、息子は移植可能だった。そして生み出されたのが、息子の少しの記憶と使える肉体を人工的に作った器に移植した者「Enzo(エンゾー)」。記憶は安定せず意識もほとんど人口知能が働いている。移植は成功したが彼の求める息子の姿ではなくエンゾーを乱暴に扱うのであった。父親は理想のエンゾーの姿を完成させるため何体も器を作っては移植するの繰り返しであった。意識は数をこなしていくうちに息子のものとなっていったが、それでも父親は納得がいかず乱暴を振るうのであった。体は機械なので彼の言うことには絶対服従であったが、エンゾーが父親のそばにいるのは、途切れ途切れに甦る息子の意思から来る愛なのか。狂った父親には確かめることなど出来はしなかった・・・。 |