仮面ライダーW 驚きのU/俺は仮面ライダー |
―――――仮面ライダーW、今回の依頼は!
「行方不明の息子さん捜し・・・・・・ですか?」
突斑 槍は、ある日突然、書き置きも何も無しにいなくなっていた。
「世間に、不満・・・・・・そうですね、槍は『何で犯罪者がこんなに蔓延っていられるのか、不思議でならない』。よくそう言っていました」
「そうすると、やはりそこに付け入られて・・・・・・ということかな」
「だろうな・・・・・・わかりました、弥生さん。槍君は俺達が絶対に探し出して保護します」
「槍君が受け取ったというガイアメモリのような物が本当にガイアメモリなのだとして、なおかつ弥生さんの言っていたことが本当だとしたら・・・・・・彼が受け取ったのは、僕達の持っているT1ガイアメモリか、NEVERの使ったT2ガイアメモリのようなタイプなんじゃないか」
「そう」「僕達は、2人で1人の」「「仮面ライダーだ!」」
「仮面・・・ライダー・・・・・・?」
そこに立っていたのは、青緑の体をし、一本の角を持った、まさに"ユニコーン"とでも言うべき姿をした、仮面ライダーだった。
「・・・・・・・・・」
ドーパントと対峙するように立った謎の"仮面ライダー"が、ふいにその右腕を掲げる。
と、それと同時に額の角が光り、一瞬の後にその手には剣が握られていた。
「とぅっ!」
ドーパントが先手必勝とばかりに襲いかかる。が、"仮面ライダー"は僅か一歩、体をずらしただけで避け、お返しとばかりに左手で鳩尾にパンチを繰り出した。ドーパントが一気に吹っ飛ばされる。
「なんてパワーだよ・・・・・・」
翔太郎が呟いた。
性懲りもなく何度も襲いかかるドーパント。しかしその攻撃は、"仮面ライダー"に掠ることすらなく徒労に終わる。
一方"仮面ライダー"は僅かな挙動でその攻撃を避け、あるいは逸らし、逆に剣や拳、蹴りで着実にダメージを与えてゆく。
「・・・・・・・・・」
「くっ・・・・・・」
そこでドーパントが急加速をした。どうやらそのまま"仮面ライダー"に猛スピードでの強襲をするつもりらしく、攪乱するように駐車場内を走り回る。
「なんつー早さだ!」
「補足できない!」
"仮面ライダー"が微動だにしない一方、Wはトリガーマグナムでドーパントにダメージを与えようと必死で打ちまくる。と、
「うわっ!」
後ろからWにドーパントの攻撃がヒットし、さらに繰り返し攻撃を与えられる。
「しょっ、翔太郎! エクストリームだ!」
「おう!」
Wは隙を見つけると、ライブモードのエクストリームメモリを召喚、ベルトにインサートして展開する。
《エクストリーム!》
電子音声が鳴り、Wの姿がサイクロントリガーからサイクロンジョーカーへと変化。そしてそのままセントラルパーテーションが開いてゆき、Wの体が緑・クリスタル・黒の三色になる。
これは、仮面ライダーW サイクロンジョーカーエクストリーム。
ノーマルのWでは翔太郎の体にフィリップの精神が上乗せされるままだったのに対し、こちらは"エクストリームメモリ"の中にフィリップの肉体をダウンロードし、真の"一心同体"を体現した形態だ。
体の中央部分・"クリスタルサーバー"が地球の持つ全ての記憶・"地球(ほし)の記憶"と直結することにより、戦闘中に敵の情報を解析して常に一手先の戦術を組み立てることが出来る、W最強の形態である。
「翔太郎、ヤツのメモリが分かった。"ターザン"だ」
「"ターザン"? なるほどね」
良いながらWが右手を手前にかざした。
「「プリズムビッカー!」」
すると、"クリスタルサーバー"から盾に剣が刺さったような形の、"プリズムビッカー"が現れる。
"プリズムビッカー"はサイクロンジョーカーエクストリーム専用の武装で、"プリズムメモリ"をインサートして両刃の長剣"プリズムソード"と堅牢な円盾"ビッカーシールド"に分離する。この二つは攻防それぞれに特化した、別名"光の矛と盾"だ。
また、"クリスタルサーバー"と連動させることによって、敵の弱点を即座に反映させ、より的確な攻撃をすることも出来る。
《プリズム!》
Wが"プリズムメモリ"を"プリズムソード"の柄に装填し、"ビッカーシールド"から抜き放つ。
「ターザンは素早い。が、この動き」
「パターンが丸わかりだぜ!」
Wが"プリズムソード"を振るうと、その場を通ろうとしたターザン・ドーパントが直撃を受ける。完全な先読み攻撃だった。
「パターンが分かればこちらの物だ」
「いくぜ」
《プリズム! マキシマムドライブ!》
Wが"プリズムソード"の"マキシマムスターター"を押すと、"プリズムソード"から電子音声が流れた。ちなみに"マキシマムドライブ"とは、"マキシマムスロット"にガイアメモリをインサートする事で、ガイアメモリ内のデータ高速演算し、約2倍に増幅したエネルギーを武器や体に送り込み、一気に敵に放つことだ。なお"マキシマムスロット"はWの右腰、"メタルシャフト"、"トリガーマグナム"、"プリズムビッカー"など各所に設置されている。
「プリズムブレイ、」
《ユニコーン! マキシマムドライブ!》
「・・・・・・・・・」
Wが"プリズムソード"を振るおうとしたその時、"仮面ライダー"がその横をすり抜け、手に持った剣をターザン・ドーパントに向けて、真っ直ぐに突き出した。
「!!」
"仮面ライダー"は一拍おいて、振り返りながら剣を引き抜く。そしてターザン・ドーパントが倒れ爆発し、爆炎が止むと中から人間とガイアメモリが出てきた。
人間はそのまま倒れ、ガイアメモリは"仮面ライダー"に踏みつぶされる。
Wは一部始終を見届けると、呆れたような仕草をとって変身を解除した。翔太郎とフィリップが現れる。
「おいこら、てめえがなんなのかはしらねーけど、危なかっただろうが! あのままだとお前も一緒に倒しちまうところだったんだぞ!」
翔太郎がまくし立てる。が、"仮面ライダー"は答えず、代わりに左手を腰のベルトにあてた。そのベルトを見てフィリップが驚きの声を上げる。
「それは・・・・・・ロストドライバー!」
"ロストドライバー"。Wの"ダブルドライバー"のプロトタイプで、メモリスロットが右側にしかないのが特徴だ。
"仮面ライダー"はそのまま"ロストドライバー"のメモリスロットを収納し、変身を解除する。
「別に、あんたらの攻撃なんて避けられたけどな」
そして中から出てきた人物に、翔太郎とフィリップは再び驚きの声を上げる。
「お前・・・・・・突斑槍、か?」
「そうだけど? あぁ、アイツが捜索の依頼でも出したのか」
突斑槍は、迷惑そうに顔をしかめた。
「・・・・・・・・・」
翔太郎は、フィリップが槍の言いように苛立ちを覚えたのを感じた。
「とにかく、一度事務所へ行くぞ」
数十分後、鳴海探偵事務所。
「で、結局お前のロストドライバーとそのボロボロの"T2ユニコーンメモリ"。それは一体誰から渡されたんだ」
今、ここでは鳴海探偵事務所の自称"所長"である鳴海亜樹子の立ち会いの下、槍への質問が行われていた。
「だから、知らないヤツにもらったって言ってんだろーが」
「特徴とか、覚えてないの?」
亜樹子が槍に、優しく訊いてみる。
「ふん。なんせそいつは、なんかへんな光るオーロラの向こう側から渡してきたしな」
「光るオーロラ?」
フィリップが訊き返す。
「あぁ」
そこから槍が語ったところによると、こういうことらしい。
その日槍は、学校が終わって遊びに行こうと、私服に着替えて家を出た。
だがその直後、突然光るオーロラが足元から出現し、その向こうに男の人影が現れて、槍にこう言った。
「正義を体現するんだ。この力でな」
そしてオーロラの向こうから突き破るようにして"ロストドライバー"と"T2ユニコーンメモリ"を差し出してきた。
「で、そん時はワケ分かんなかったから『こんなんでどうすれば良いんだよ』って言ったんだ。そしたらそいつ、『じゃぁ試してみればいい』って言って」
男はそう言うと槍に採石場へ行くように言ったという。彼がそのまま採石場に行くと、再び光るオーロラが現れ、そこから数体の怪人が現れた。
「そいつらは前にネットで見た"マスカレイド"ってドーパントだったな」
槍は最初マスカレイド・ドーパントから逃げるばかりだったが、そこで不意に男の声が響いた。
「まずは赤い方を腰に当てろ。それからメモリのスタートアップスイッチを押せ」
「!」
槍は言われるままに"ロストドライバー"を腰に当てるとベルトが自動装着された。槍は驚きながらもとにかくメモリのスイッチを押す。
《ユニコーン!》
「そしたらメモリをベルトにセットしてスロットを倒せ。あとは・・・・・・戦ってみれば分かる」
「こ、こうか!?」
《ユニコーン!》
再び電子音声が鳴り、槍の身体を緑のスーツが包み込む。同時に、衝撃波によって群がっていたマスカレイド・ドーパントが吹っ飛ぶ。
驚く槍に、男が言い放った。
「お前は、今から"仮面ライダー"だ。・・・・・・その力で、お前の望みを叶えるんだな」
「"仮面ライダー"・・・・・・?」
それっきり男の気配は消え、代わりに再びマスカレイド・ドーパントが群がってくる。
「!」
槍は、いや、仮面ライダーは、マスカレイド・ドーパントの攻撃の全てを交わし、一体に全力の拳を叩き込んだ。
マスカレイド・ドーパントはそのまま後ろの数体を巻き込んで吹っ飛び、消滅した。
「よし!」
槍がそのまま数体に拳と蹴りをあびせる。が、あまりの数に苦戦を強いられる。
「なにか、何か武器は無いのか?!」
と、その時。額の角が光ったかと思うと、いつの間にか右手に長剣が握られていた。
「コイツか!」
槍は手に持った剣を振るい、次々とマスカレイド・ドーパントを消滅させていく。そして、ついに最後の一体となった。
槍はそのままメモリを剣の"マキシマムスロット"に装填し、マキシマムドライブを発動する。
「でりゃぁぁぁぁ!」
長剣による突きがヒットし、最後のマスカレイド・ドーパントが倒された。
「あとはふつうに家に帰って、そのあと家出。今日までドーパントを倒しまくってたってワケさ」
何でもない風に言う槍に、翔太郎は呆れたような声で言った。
「お前・・・・・・とにかく、もう危ないことは止めろ。俺達や照井がいるんだ、お前はさっさと家に戻るんだ」
だが槍は、嘲笑うかのような表情で言い放った。
「けっ。でもお前ら、俺が倒したドーパントは討ち漏らしてるじゃねぇか。あんたらにはこの街は守りきれないんだよ」
「何だと!!」
槍の言葉に、翔太郎は立ち上がって怒りを露わにする。
「そうだ槍君。今はまだ僕達には守りきれていないかもしれないが、だからって君が命を懸けて戦う必要は無いじゃないか」
フィリップも、内心では怒りつつもなるべく冷静に諭そうとする。しかし槍はその言葉にも耳を貸さない。
「はは、仮面ライダーなんてこんなもんか。・・・・・・なら、俺一人でやった方が良いな」
「・・・・・・は?」
槍が俯いて言った言葉に、翔太郎が耳を疑い、槍に近寄ろうとしたその時。
「変身」
槍がいつの間にかドライバーを装着し、メモリを装填していた。
「バカ! こんなところで・・・・・・!」
衝撃波が翔太郎たちを襲う。
「今から俺が、この街の本当の"仮面ライダー"になる。邪魔をするヤツは叩き突くぜ」
槍はそう言い放つと、事務所の窓を突き破ってどこかへ行ってしまった。
翔太郎はすぐに窓へ駆け寄るが、すでにその姿はどこにもない。
「くそっ、逃げられた」
その日、あとに残ったのは、事務所内の修理代と、そして弥生への、あまり見せたくない報告書の作成だった。
風都某所にある高層建築物内にある、とある部屋。一人の男を取り巻くようにして、他に数人の人影が控えていた。
「ガイアメモリ解放装置の修理状況は」
中央にいる男が、その"ガイアメモリ解放装置"を見ながら言った。そして、調和の取れたようなタイミングで、取り巻きの一人がそれに答える。
「現在7割ほどが修復完了。"エンジニア"のメモリと"リペア"のメモリの力を使えば、一月もかからず使用可能になるかと」
「そうか」
その答えに、男は心なしか満足そうな声で答えた。
そして男は、何度か頷いてから取り巻きを振り返り、荘厳な声音でこう言った。
「ではそろそろ、我らの悲願の達成のために邪魔な仮面ライダーどもを一掃する。各自、最善と取れる行動を取れ」
男の言葉に、取り巻きがいっせいに、しかし静かに答えた。
「イエス、ロード」
取り巻きはそう言ったあと、闇に融け込むようにして、消えていった。
そしてその場には、静かに笑う男だけが残された。
to be continue......
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第2話。読んで頂いて有り難うございます。 | ||
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