鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第四十六話
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〜ウリズン帝国〜

 

エド達は、バンエルティア号を後にして、

 

生気の無くなったこの街、ウリズン帝国に辿り着いた。

 

それは、アルとエミルの予想以上に酷い有様だった。

 

所々に、死体が転がっているのだ。

 

なのに、ほとんどがそのままに放置されている。

 

それを見たアルは、思わず声を上げた

 

『………酷い…』

 

生気の無いままその場で横たわる死体

 

それが至る所、視界の入る場所に放置されているのだ。

 

俯き、地面を見てその光景を拒否するほど、それはおぞましいものだった。

 

『……………』

 

エドがこの光景を見たのは二度目であり、やはり変わらぬこの現実に半ば絶望を感じていた。

 

同時に、あの時の自分の無力さを知った。

 

人造人間が居るなんて知らなかった

 

賢者の石をサレが知っているなんて知らなかった。そんな言い訳してもどうしようもない位、

 

エドは後悔の顔をした。

 

『まさか……ここまでの事………だったなんて……』

 

エミルが、拳を握りながら歯を食いしばり、強く呟いた。

 

『……でも、この街のどこかにマルシアさんの恋人が居るんだよね…。早く見つけてあげないと』

 

アルがそう言った瞬間、エミルと同時に、エドも一緒に黙り込んだ。

 

まるで、何か後ろめたい気持ちのかのように。

 

『? どうしたの二人とも』

 

だが、どちらにせよこの街の中で探す物があった。

 

『あ……いや、なんでもねぇよ』

 

エドはそう言って、先頭に歩くように早歩きでズカズカ歩いていった。

 

『そういえば、師匠はまだ来てねぇのかな。噴水の前で集合って言ったんだけどなぁー……』

 

エドがそう言った後、アルは不思議そうにエドに質問をした

 

『そういえば兄さん、どうして人探しの依頼に師匠を呼んだの?討伐とかなら分かるけど……どうして?』

 

『………後になれば分かるさ』

 

エドのその言葉に、アルは首を傾げた。

 

つまり、今は分からない事なのだ。一体兄は何を考えているのだろうか。

 

アルの思考は、その事ばかりで埋まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ウリズン帝国王都 噴水広場〜

 

噴水の周りにも、多くの死体が居た。

 

その死体の多い場所での待ち合わせば、恐らく長く居れば気が狂ってしまうだろう。

 

その間にも、アルは出来ることをした。

 

手紙に書かれていた依頼人であるマルシアさんの恋人が居ないか、目を凝らして見ていた。

 

キョロキョロしているアルの姿は、エドとエミルにとっては不振に見えた。

 

『………止めろ、アル』

 

エドがそう言っても、アルは探すのを止めなかった。

 

『何言ってんだよ兄さん。師匠が居ない間も、ちゃんと僕達の依頼は全うさせないと』

 

『今は探す必要なんて無い。』

 

エドがそう言った瞬間、アルは理不尽な怒りを表し、エドの元へと強く歩み寄った

 

『兄さん!!それはどういう事なの!僕達の依頼は、マルシアさんの恋人を探す事でしょ!?それなのに……どうして二人は動かないのさ!そっちの方がおかしいよ!!』

 

アルがそう言った瞬間、エドは溜息を吐いて懐から一枚の紙を取り出した。

 

そしてその紙をアルに付きだした。

 

『もう一度依頼書を読め』

 

エドにそう言われたアルは、渡された依頼書を読む

 

その依頼書をもう一度読んだ後、アルは答えた

 

『もう一度って……どう見ても。マルシアさんの恋人を探してきて欲しいって言う依頼じゃない。』

 

そう返されたエドは、再び溜息を吐く

 

『もう少しお前は人を疑え』

 

『疑えって言われてもね、こんな可愛そうな人……どう疑えって言うんだよ』

 

そのやり取りを見ても、エミルは何も動じず、ただ少しだけ暗い表情をしていた。

 

アルが渡された依頼書、それを見るたびにさらに暗い顔になってきている気がする。

 

エミルも、その依頼書の意味が分かったのだろうか。

 

だが、依頼書の意味が分かっていないアルに取っては、エミルが沈んでいる意味など分からなかった。

 

アルが視線を外した瞬間、アルの視界の先に黒い影があった。

 

『あ』

 

アルが一言呟くと、その黒い影は建物と建物の間を通り、建物の中に隠れるように消えて行った

 

『居た……』

 

『え?』

 

エドが、心底驚いた表情をしていた。

 

『居たよ兄さん!生存者だ!!マルシアさんの恋人かもしれない!!』

 

アルは、歓喜の声を上げながら黒い影のあった方向へと向かった。

 

『おい!!ちょっと待てアル!!!』

 

エドが走って追いかけて叫んでも、アルは聞く耳を持たなかった。

 

アルは、夢中になり周りが見えていないかのようにも見える。

 

建物の向こう側までたどり着き、黒い影が逃げた方向へ首を振った。

 

だが、その方向にはもう黒い影は存在していなかった。

 

『おい!!アル!!』

 

だが、アルはその方向にマルシアの恋人が居ることを信じて、そのまま走り続けた。

 

その様子を見たエドは、そのまま呆然と立ち尽くしてしまった。

 

そしてついにアルが見えなくなったとき、呆れ起こっている表情で頭を掻いてそのまま座り込んだ。

 

『エド、アルフォンスは……?』

 

エミルが後から続いてエドの元へと辿り着いた時、

 

エドはアルが去って行った方向に指を指した

 

『あ…………』

 

エミルが、この状況を考えるようにまた俯いた。

 

『……ったく、アルの野郎………』

 

頭を掻きながら、エドはブツブツと語った。

 

『マルシアなんざ、そんな奴存在しねぇってのに……ましてそんな奴に、恋人なんて居るわけねぇだろ……』

 

エドがそう言った瞬間、エミルは続くように呟いた

 

『やっぱり……その依頼書は嘘だったんですね……。』

 

そう呟くと、再びエドは溜息を吐いた。

 

『ほう……その嘘の依頼書の為に、私は忙しい中来たというわけか……』

 

『ああ。確かにこれは嘘の依頼書だ。だが、この依頼書には俺たちにとって重要な………』

 

エドが振り向いた瞬間、そこには見覚えのある恐怖の顔があった。

 

その顔が視界に入った瞬間、エドの身体は完全に硬直した

 

『嘘の依頼書……それにおちょくられる為に、私はここまで来たわけではあるまいな?』

 

エドは、更に恐怖が増した顔が視界に入った瞬間、ガタガタと震えだした。

 

更にエミルも、エドに続くようにガタガタと震えだした。

 

『せ………せせ……せ………せ』

 

エドは、その依頼書に関して言葉が出なかった。いや言えなかった。

 

師匠である、イズミのその表情が、世界で一番恐ろしかったからだ。

 

依頼書の意味を知っていたエミルも、その場でただガタガタ震えて、その震えのせいで口が上手く動かなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事情を全て話したエドの後、イズミは溜息を吐きながら頭を掻いた

 

『ふん………成るほど。そう言う事……か。』

 

『師匠も、この依頼書を見せられて薄々気がついたんじゃないか?』

 

脳天から血が水のように沸きあがり流れ落ちているエドは、真剣な目でイズミと話していた。

 

『さぁな。私も今のアルと同じように、ただ純粋に依頼書を眺めてたな。いや……それ以前に、私の元に多数の依頼が集められていて、切羽詰っていたのだろう。ほとんどこの依頼書の”意味”に気付かなかった』

 

イズミは、少し考えるのが面倒くさいかのように答えた。

 

イズミの元に多く依頼が届くのは、やはり頼りにされているからなのだろう。

 

前回出会った”カイル”や”ロニ”も、イズミには敬意を払っていた。”ノーマ”という者は余り良くは思ってなさそうだったが。

 

だが、そのせいでイズミに多少の疲労が見える。

 

血が抜かれたように顔が青白くなっているエドが顎に手を置きながら考えた。

 

『しかし…これは好機かもしれないぜ』

 

エドの言葉に、イズミは耳を傾ける

 

『何がだ?』

 

『この依頼書出した奴……そいつが俺たちの世界とこの世界と繋げた奴の可能性があるんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ウリズン帝国王都 東口〜

 

アルが走り回っていっても、まだ黒い影は見当たらなかった。

 

『あれ……?どこに行ったのかなぁ……』

 

アルは、困ったように頭に手を置いた。

 

折角見つけた頼みの綱だったのに、早速見失ってしまった。

 

だが、ここで諦められるほど、アルは諦めが悪かった。

 

『あの!!!マルシアさんから頼まれたんですけど――!!すみませーん!居たら返事をしてくださーい!!』

 

アルがそう叫んだ後も、ただ沈黙が流れた。

 

その時アルは、”聞こえていないのかな”と考えていた。

 

だがら、また再び走り出し、声を出しながら探していくことに決めた。

 

『あのー!!すみませーん!!マルシアさんの恋人の方ですかー!?』

 

そう叫んでも、どこも返事が返ってこない。

 

辺りを見渡しても、死体がそこで寝ているだけだった。

 

うっ とアルは口元を押さえる。

 

だが、アルは押さえて前へと走り出した。

 

『あの………』

 

前に向いた瞬間、向こう側にまた黒い影が横切った。

 

『見つけた!!』

 

そう言ってアルは、その黒い影の元へと走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ウリズン帝国王都 西口〜

 

アルとは別方向に、エド達は歩いて行った。

 

当然、マルシアの恋人を探す為ではない。

 

そんなもの、存在しない

 

つまりこの依頼書を出した奴は別人だ。

 

だが、そいつに話があるのも事実だった。

 

その為に、いざという時の為、師匠を呼んだのだ。

 

近くに居ると、背筋が凍るほど恐ろしいが我慢をしよう。

 

『エド、本当に………この先に居るの?』

 

『それは分からん。どこに居るかは記されてなかっただろ。だから俺たちは闇雲にこの都市の中歩き回らなきゃならない。』

 

エドがそう言うと、エミルが少しだけ安心した表情になった。

 

だが、また少しだけ暗い表情になる

 

『そうか……じゃぁ早くしないとね』

 

エミルはそう言って笑顔になると、イズミが疑問を感じた。

 

そして、イズミは殺気を思わせるようにエドを睨みつけた。

 

それを感じ取ったエドは、全身に鳥肌が立ちながらも、イズミの方を見た。

 

『……………』

 

だが、イズミは何も言わなかった。

 

そのまま、イズミはズカズカと歩き出す。

 

それが一体なんなのかエドは分からなかったが、イズミはただ歩き出した。

 

そして先頭に立ったとき、イズミは立ち止まった

 

『………エド、の隣に居るアンタ……エミル君だっけ?ちょっと良いか?』

 

イズミがそう言うと、エミルはキョトンとした様子になり、その場で立ち止まる。

 

『え……?なんでしょうか……』

 

内心ビクビクしながらも、イズミの顔をちゃんと見ていた。目を逸らすと殺されるような気がしているかのように。

 

そしてイズミは、刑罰を宣告するような態度で言葉を発した

 

『……アンタ、普通の人間じゃないね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ウリズン帝国王都 北東口〜

 

黒い影を追いかけ続けているアルは、また黒い影を見失った。

 

見失ったアルは、慌てるように首を振り、辺りを見渡し、黒い影を探していた。

 

『ど……どうしよう……』

 

アルは慌てるように、あたふたと動いた。

 

このままでは、話も出来ずに王都から出てしまうかもしれない。

 

マルシアさんの為にも、そうなるわけにはいかなかった。

 

一体どこへ行ったのだろうか。

 

そして何故、自分から逃げるのだろうか。

 

『あ………』

 

アルは、自分の身体を見た。

 

この大きな鎧の姿では、怪しまれて当然なのだろう。

 

初めて会う人がこの鎧を見れば、誰だって怯えるに決まっている。

 

…………何をしてるんだ僕は

 

そう自分に呆れながら、アルは溜息を吐いた。

 

そして向こう側を見ると、また影が動いていた。

 

先ほどから同じ影だった。

 

…もしかしたら、自分はおちょくられてるのだろうか。

 

だが、あれは生きている人には間違いが無い。

 

その訳で、アルは足を止めるのをやめた。

 

『ちょっと……ちょっと待ってください!』

 

アルはそう叫びながら、その黒い影を追った。

 

だが、その黒い影は未だにアルから逃げて行く。

 

やはり、この自分の身体が恐ろしいのだろうか。

 

少しだけ悲しい気持ちになりながらもアルは走り続けた。

 

『待って……待って……!』

 

一生懸命必死に走り続けていく。

 

すると、影がまた建物に隠れるように横へと移動した。

 

『また……!!』

 

そう思って、アルは溜息を吐きながら影が逃げたほうに走った。

 

『いい加減に………』

 

その建物を通った後、そこには大きな建物があった

 

『…………』

 

それは、とても大きな大きな銅像だった。

 

大きな女性が、壷を頭に乗せながら歩いている姿を捉えた銅像だった。

 

『うわぁ………』

 

アルはそれを眺めていると、後ろから声がした

 

『なんだ。まだ弟君か』

 

『!!』

 

聞き覚えのある声に、アルは振り向くとそこにはもう誰も居なかった。

 

『相変わらず鈍いねー。身体が大きいからかな?』

 

そして、今度は銅像の上に声が響いた。

 

その声の主は、アルも十分に分かっている相手だった

 

『…………!!!』

 

『まぁまぁ、そんなに興奮しないで。何も殺すわけじゃないんだから』

 

先ほどの黒い影が、アルの前に現れた。

 

見覚えのある姿が、アルの視界に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ウリズン帝国王都 北口〜

 

もうすぐで、王都の観光名所である”聖女の像”が見えてくるはずだ。

 

おそらく、奴らはそこで待ち合わせをしているに違いない。

 

『しかし……アンタが精霊だとわねぇ……』

 

イズミが、感心しきれない表情でエミルを見ていた。

 

言われたエミルは、未だに暗い表情をしている

 

『エド、一つ聞くけど』

 

イズミは、今度はエドに話を持ってきた。

 

おそらく、何を聞くかは分かっていた。

 

船で見た依頼書の暗号、それはかなり分かりやすい物だった。

 

おそらく、船の者のちらほらは分かっただろう。

 

ただ、暗号と意識しなければ分からないような物なのだが、

 

     《賢いはずだった。そのはずだった彼が、ウリズン帝国に居ました。

      邪魔だった私は置いてかれました。最初は悲しかった。でも彼は、いつかこの仕事が終わったら、

      野原が広がる草原へキャンプに行こうと約束していた。していたはずなのに。

      石の研究をしていた。彼はウリズン帝国で研究を。何の石か分からない。多分、あれは星晶だったと思う。

      おおきなあの国が、一瞬で滅んだとは思えません。どうか、彼が生きているかどうか見てきてください。

      渡してください。彼が生きていたら、私の所まで

      せっかく約束していたキャンプ……どうしても行きたかったのに……》

 

暗号だ、それはとても分かりやすいものだ。

 

頭文字、それを組み合わせれば良い。

 

そうなれば、一つの答えが見える。

 

《賢邪野石お渡せ》

 

《賢者の石を渡せ》

 

『エド、お前はエミルの賢者の石を………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『兄さん!!』

 

銅像の目の前に、アルが捕まっていた。

 

思っていた通りだ。そしてその近くには見たことのある存在が居た

 

『やぁ、また会ったね。おチビちゃん』

 

人造人間

 

そしてもう一人、ゲーデ

 

こいつらが、この王都の人間の命を全て奪っていった。

 

『もう好い加減、決意はついたかい?』

 

エンヴィーがからかう様にエドにそう言った。

 

エドは、怒りと嫌悪の表情でそいつを睨みつけた

 

『………何を考えてやがる』

 

エンヴィーが、何を言っているのか分からないかのように首を傾げた

 

『すっとぼけんな!この世界の住民を賢者の石に変えて……何の目的があって!一体なんの目的があって賢者の石を集めてんだ!!』

 

エドの言葉を聴いた後、しばらく沈黙が続いた。

 

『………へぇ、やっぱりそれ聞くんだ』

 

『当たり前だ!!挙句の果て……力の強い賢者の石を持つ、こいつの石を差し出せと言う。そんなに必要なのか!賢者の石が!!』

 

『当たり前じゃん』

 

エンヴィーが、間を空けずに答えた。

 

イズミも、敵意の目でエンヴィーを見るようになった。

 

その目が、エンヴィーには可笑しかったらしく、急に笑い出した

 

『大体さー……この世界、おチビちゃんと俺達の世界とは関係無いじゃん。何を怒ってるの?ここでいくらでも賢者の石を作れば、おチビちゃんの身体も元に戻るかもしれないんだろ?ん?』

 

エンヴィーがそう言った瞬間、エドは沈黙した。

 

どうしても納得が出来ない。この世界が俺達の世界と関係ないとしても、

 

やはり、この世界の住民の事も尊重してしまう。

 

多分、それは

 

『生きてるんだ!!この世界の人達も立派に生きてんだよ!!!!』

 

エドがそう言うと、今度は隣に居るゲーデが答えた。

 

『この世界は、もうすぐ終わるのにか?』

 

その言葉を聴いた瞬間、エド達は硬直した。

 

エドとエミル、そしてアルは聞いたであろう、

 

”もうじき起こる全ての問題が掻き消される事”

 

『世界が……終わるだと?』

 

イズミが、聞いていないかのように表情を強張らせた

 

『あれ?知らないの?』

 

『教えろ!!一体この世界に、何が起ころうとしているのだ!!』

 

イズミの迫力のある質問に、エンヴィーはピクリとも動かなかった。

 

そして、別に興味が無さそうな顔になり、その質問に答えた

 

『知らねぇなぁ。俺達も光の精霊様ってのに聞いただけだしなぁ。』

 

光の精霊

 

つまり、こいつらは一度その光の精霊に出会った事があるという事なのか。

 

前に、こいつらがヴェラトローパに来ていた事があったが。おそらくその時に出会ったのだろう。

 

そう考えていたエドの後、ゲーデが声を出した。

 

『……本当に、はた迷惑な話だ』

 

『………』

 

その声を聞いて、エドは疑問を感じた。

 

こいつは、世界に恨みがあったのではないのだろうか。

 

なのに、このような反応はなんなのだろう。

 

『一体、何を考えてやがる……』

 

エドの言葉に、エンヴィーが反応する

 

『あ?』

 

『俺達をこんな世界まで連れて来て……挙句の果て、この世界の人間を賢者の石に変えて……一体何を考えてやがる!!』

 

エドは再び叫び、エンヴィーに反論するように言葉を出した。

 

『そもそもどうして俺達がこの世界に飛ばしたんだ!お前らの目的はなんだ!!賢者の石の製造の他に……何か企んでいるはずだろ!!』

 

エドは考えていた。

 

賢者の石を作る為に、この世界へと来たのならば、エド達をここへ連れて来る理由が無い。

 

分かりやすくいえば、エド達が居れば邪魔になるはずなのだ。

 

なのに、エド達はこの世界に居る。

 

これが、一体どういう事なのかが分からなかった。

 

『何言ってんだよお前』

 

エンヴィーが、頭を掻きながら不穏そうな表情でエドを睨みつけた。

 

その理由にならない答えに、エドは益々憤怒した

 

『答えになってねぇ!!お前らは一体どういう……』

 

『なんで俺達がおチビちゃん達をここに連れてくるのさ。そんな事して、俺達になんの得がある?』

 

その意外な返事に、エドは硬直した。

 

同時に、激しい混乱がエドを襲った。

 

『……………え?』

 

更にエンヴィーは、話を続けた

 

『俺はまず最初に、転送術という錬金術の亜種術という陣を使ったんだ。まぁ、やるのに多くの人間の命が必要だったけどね』

 

『転送術…?そんな術、俺は聞いた事も無いぞ!』

 

『俺も無いよ』

 

まるで会話がかみ合っていないかのようだった。

 

エドはさらに混乱した。

 

『私も聞いた事無いね……。一体どのような術なんだ?』

 

『誰が教えるか馬鹿』

 

エンヴィーのその返事に、イズミは顔に血管が浮き上がる。

 

更にオーラが増してきており、ゲーデは一瞬だけビビッた。

 

『その術を、ピンクの髪をしたガキに教えられた。そこからだ』

 

エンヴィーの最後の言葉に、エドは目を見開いた。

 

ピンクの髪の少女。それは見覚えがある。

 

恐らく、そいつは………

 

『試したら、練成陣の中から数個の種が現れた。だが、その場ですぐ一つの樹へと変形したねぇ』

 

『その場ですぐ?』

 

今度は、アルが会話に参加した。

 

やはり、誰もが疑問を感じるであろう、この会話に気にせずには居られなかった。

 

『おかしいぞ。なんでその樹が列車の線路の上とかダブリスにあったんだ?』

 

『だから、知らねぇっつっただろ』

 

そこでまた、エンヴィーの話が続けられる

 

『俺達が最初に辿り着いた先は、何にも無え墓場だらけの世界だった。この生気溢れる世界とは大違いの、まさしく”地獄”だよ。』

 

エンヴィーは、笑いながら答えた。

 

だが、その説明でエドはハッとした。

 

その世界は、パスカが居た世界であり、終わりの近い世界のはずだった。

 

その世界に、こいつらは最初に辿り着いたというのだろうか。

 

じゃぁ、最初からこの世界に繋がっていたあの樹は………

 

『いやぁ、人間の成れの果てを見たようで結構愉快だったけどね。月日が経つごとに飽きてきて、この世界に繋がる扉を見つけたってわけ。』

 

愉快そうに笑うエンヴィーを見て、エミルは拳を握り締めていた

 

だが、何も声を出さずにそのまま耐えていた。

 

『………で?』

 

エンヴィーが、表情を変えてエドに問いかけた

 

『………ん?』

 

『………で?決まったのか?』

 

エンヴィーが、姿勢を変えてエドを睨みつけていた。

 

『……………』

 

『そいつが、賢者の石となって俺に引き渡すか、それともまた街を賢者の石に変えてやろうか。その二つ』

 

エンヴィーがそう言った後、エドはその場で立ち尽くした。

 

表情を変えずに、エンヴィーを睨みつけていた。

 

『………賢者の石を作りたがってるのは、お前ら人造人間の為なんだな』

 

エドがそう言った後、エンヴィーは考える仕草をする

 

『んー……少し違うな』

 

その言葉に、エドは反応を示した。

 

『おい、それってどういう事だ』

 

『そいつが賢者の石になったら、教えてやるよ』

 

冷酷な笑いを浮かべたエンヴィーの目を見た後、次にアルの縛られている姿を見たエドは、決意した。

 

エンヴィーに背を向けて、エミルの元へと歩き出した。

 

『………………』

 

その様子を見たエンヴィーは、楽しそうな目でエドを見ていた。

 

エミルは、覚悟を決めている目をしていた。

 

イズミは、エドの目を見るように、エドに視線を向けていた

 

エドの手は、震えていた。

 

決意を、覚悟を決めるかのように

 

そして、エドの両手が上へと向かって伸びはじめた。

 

まるで、ある目的地まで向かおうとしているかのように。

 

そして、胸の高さまで来た所から、アルの声が響いた

 

『兄さん!!!』

 

叫んだ後、アルはゲーデに更に踏まれる。

 

『兄さん止めて!!僕は……僕なら大丈夫だから!エミルの命を使ってまで……生き残りたくない!!』

 

アルがそう言った瞬間、エドの手がピタリと止んだ

 

『……アル、黙ってろ』

 

冷たく言われたアルは、その場で息を吸い込むようにショックを受けた。

 

『兄さん!!』

 

『アルゥ!!!』

 

エドの手が重なり、錬金術の光が発せられる。

 

その光を見たエンヴィーは、答えた

 

『あー。それを選ぶだろうと思ってたよ』

 

エドの手は地に向かって降ろされ、アルの下の地が動き出し

 

突起物がアルと共に突き出た。

 

『!』

 

バランスを崩したゲーデは、その場で宙に浮いた。

 

『おりゃぁぁああ!!』

 

その隙に、アルはゲーデの腹に向かって拳を振り下ろした。

 

ゲーデは手を叩き、腹に錬金術を発動し、鉄を練成した

 

『!!…錬金術……!!』

 

だが、アルの腕は止まらずにゲーデの腹へと向かって突き出された。

 

反動で飛ばされたゲーデは、受身を取ってすぐさま起き上がった

 

『兄さん!この人……錬金術を使えるの!?』

 

『何もおかしくねぇだろ!賢者の石を飲み込んでいる上に、この世界でも錬金術は使えるんだからよぉ!!』

 

そしてエドは、エンヴィーの前に立って宣言した

 

『エンヴィー!!てめぇが何を考えているか分かんねぇけどなぁ!絶対にお前らに賢者の石は渡さねえし、作らせない!そして絶対に石にされた人達を元に戻してやる!!!』

 

そのエドの言葉に、エンヴィーはつまらなそうな顔をした。

 

『………ふぅん。勝手にすれば?』

 

エンヴィーはそう言ってその場から立ち上がった。

 

『ま、どっちにしろこの世界の賢者の石なんざ、俺は興味無いんだけどねー』

 

そう言ったエンヴィーの言葉を、エドは聞き逃さなかった。

 

だが、聞き返す暇は無かった。

 

『ま、おチビさんがそう言うんじゃしょうがないなぁ。………俺はそろそろ帰ろうかな』

 

『帰る!?どういう事なの!?』

 

アルの質問に、エンヴィーは普通に返した

 

『なんだ?普通に簡単にこの世界から帰れるだろ?』

 

その言葉に、エド達は聞き捨て無かった。

 

だが、次の言葉で絶望に変わった。

 

『まぁ……人間の一人は代価に必要だけどね』

 

その言葉で、分かった。

 

俺達人間が、生きた人間を人体練成し直すのだ。

 

元の世界に続く扉があるように。

 

真理の扉を利用して通行する

 

『ま、よく考えな。一度通ればもう二度とこの世界に戻ってこれないんだからさ』

 

そう言って、エンヴィーは姿を変えてこの場から去ろうとした。

 

それに続いて、ゲーデがエンヴィーの元へ付いて来るように移動した。

 

だが、すぐに立ち止まった。

 

『……俺は、この世界を滅ぼす事が目的だ』

 

そしてエド達の方へと振り向き、手を叩いた。

 

その瞬間、女神の銅像に手を置いた、

 

『!?』

 

練成反応による発光と共に、銅像も発光した。

 

瞬間、銅像にヒビが入り、左足が動くように分離しようとした。

 

さらに右足が動くように分離し始めた。

 

さらに目が、瞳孔が現れギョロリとエド達の方へと睨みつけていた

 

『俺は、俺の世界に捨てられた。ディセンダーによってな』

 

ゲーデが去ろうと背を向けた。

 

その瞬間、またゲーデの口が開いた

 

『俺を捨てた張本人が分かった時、お前らも後悔するだろうな』

 

そう言って、ゲーデは大きく飛び上がり、ものすごい速さで去って行った。

 

『あんの……野郎ども!!』

 

エドはそう言って、手を叩き錬金術を使った。

 

地から突起物を練成して銅像へと向かって発射した。

 

だが、その突起物が銅像よりも脆かったのか、ぶつかった瞬間粉々に砕けた。

 

おそらく、賢者の石で硬化されたのだろう。並の攻撃では効かなそうだ。

 

『どいてな!』

 

イズミはそう言って、エドよりも大きな錬金術で銅像へと攻撃した。

 

それは、イズミの10倍の高さ……銅像の腹の辺りまでの大きさの突起物だった。

 

だが、腹に当たった瞬間、いとも簡単に崩れ去った。

 

『くっ…!』

 

イズミは歯を食いしばると、目の前に居る巨大な銅像に向かって走った。

 

『師匠!?』

 

アルが叫んでも、その声をイズミは聞き取らなかった。

 

そして、右足間近に来た瞬間、イズミは手を合わせた。

 

『喰らえ石っころ!!』

 

イズミはそう言って、右足に手をかざして錬金術を使った。

 

ただしくは、錬金術を分解の所で止めて、右足を失わせるという攻撃方法だった。

 

右足は発光し、徐々に削れて行った。

 

『っよし!!』

 

エドが拳を握ると、イズミの目が見開いた。

 

『………!』

 

足が、ほとんど削れていないのだ。

 

分解したとしても、表面程度しか分解が終了していない。更に

 

『回復……している……!!』

 

瞬間、イズミは銅像に蹴飛ばされ、建物の壁へとぶつかった。

 

『師匠!!』

 

イズミは口から血を吐いて咳き込んだ。

 

それを心配したアルは、イズミの元へと走って行った。

 

『師匠!!大丈夫ですか!!』

 

アルがイズミを心配している所に顔を向けて、エドは叫んだ

 

『アル!師匠を見ていてくれ!』

 

『!?』

 

エドの言葉に、イズミは反論しようとした。

 

だが、すぐにエドの言葉に掻き消された

 

『こんな奴……二人で十分だ!!』

 

そう言って、エドは女神の銅像の方へと向かって走り出した。

 

『くたばれ石っころぉ!!!』

 

そう言って、エドは銅像が足を上げた瞬間にすぐさまに近づく。

 

その瞬間、エドは手を合わせ、銅像の足の裏に突起物を練成した。

 

『っしゃぁ!!』

 

エドは叫びながら、銅像の足から逃げて行った。

 

銅像が足を振り下ろした瞬間、銅像の足にヒビが入った。

 

足に出来た突起物が、踏まれると同時に銅像の足の中に入って行ったのだろう。ヒビが広がっていた。

 

『っしゃぁ!!今だ!!』

 

そう言って、エドは再び錬金術を使って右足に集中的に突起物を練成して攻撃した。

 

『くたばりやがれぇえ!!出来損ないの銅像がぁ!!』

 

その後にエミルが、銅像の右足に集中的に剣で攻撃をした。

 

ヒビの中に剣を突っ込み、暴れるように振り回した。

 

『エミル!!離れてろ!!』

 

エドがそう言うと、エミルは銅像の右足から離れた。

 

そしてエドは、エミルが刺した剣の方向へと突起物を練成した。

 

その突起物は剣に直撃して、剣は右足の中へと埋るように入って行った。

 

それと同時に、足のヒビは更に広がって行った。

 

『剣が折れたら、武器代を請求してやる』

 

『俺が直すから心配すんな』

 

そして右足のヒビが広がり、ついに欠片が地に落ちた。

 

その欠片が始めに、さらに大きい欠片が崩れ落ちた。

 

バラバラになった右足は、徐々に徐々に地に落ちていき、

 

ついに女神の銅像は、右足を失ってしまった。

 

『よっしゃ!!ざまぁみやがれ!!』

 

エドがそう言ってガッツポーズをした瞬間、銅像の左足が折れ曲がった。

 

そして、左足は元に戻るかのように元の姿へと戻ろうとし、

 

そしていつの間にか銅像は宙へと浮いていた

 

『ん?』

 

上を見上げると、一本足の銅像はエドの元へと落ちようとしていた

 

『ああああああああああああああああああああ!!!!』

 

必死に走り逃げ出したエドは、なんとか銅像のプレスからは逃げられた。

 

だが、銅像が着地した瞬間、また女神は左足を折り曲げた

 

そして元に戻ったと思ったら、また銅像は宙に浮いた。

 

『兄さーん!!逃げて―!!』

 

アルの声と共に、銅像はまたエドの元へと落ちてきた。

 

『うぉお!!』

 

今度は結構近くに落ちてきて、エド達は吹っ飛ばされてしまった。

 

その際、瓦礫が飛び、エドの足へと落ちてきた。

 

『ぐぅっ!!』

 

その瓦礫のせいで、エドの身動きは取れなくなってしまっていた。

 

それを好機と感じているかのように、また銅像は足を折り曲げていた

 

『エド!!』

 

『来るな!!巻き込まれるぞ!!』

 

エドは覚悟を決め、手を合わせた。

 

出来るだけ、分解して避けるようにする

 

それが、唯一できる抵抗だった。

 

そして、銅像の足がついに限界まで折り曲げられた。

 

次に銅像は飛び上がるだろう。

 

来るなら来い。

 

エドはそう感じて、手を合わせ続けていた。

 

パァン

 

急に、乾いた音が鳴った。

 

その音は、どこかで聞いた事のある音だった。

 

そうだ。あれだ

 

『銃……?』

 

銅像の目からは、黒い液体が流れ落ちていた。

 

どうやら目は柔らかい物で出来ていたようだった。

 

瞳孔がある時点で、気づくべきだったのか。銅像の目から黒い液体がドロドロと流れ落ちている。

 

銅像が、苦しそうにガタガタと振るえ、地に落ちた。

 

また、もう一つ乾いた音が鳴った。

 

今度は、もう一つの目に当たった。

 

また、黒い液体が目から流れ落ちていった。

 

これで両目ともなくなった。

 

それと同時に、銅像は完全に動かなくなった。

 

『……………』

 

この完全なる的の当て方。

 

そして、銃の使い

 

これからして、エドとアルは察した。

 

『……………まさか』

 

この銃の使い手は、どこかで見たことがある。

 

きっと、この世界に居るとしればマスタングは慌ててしまうだろう。

 

『エドワード君。お久しぶりね』

 

どこからか、彼女の声がする。

 

『誰!?』

 

エミルが、元に戻ったのか臆病に辺りを見渡していた。

 

だが、エドは気にせずに辺りを見渡した。

 

最初に見つけたのはアルだった。

 

『ホークアイ中尉!』

 

アルがそう叫んだ後、指を指した。

 

指を指した方向には、建物の窓際にホークアイ中尉が銃を構えていた。

 

『………誰?』

 

エミルがそう言うと、アルが説明をした。

 

『ああ。僕達の世界での中尉って階位の人で、大佐の部下なんだ。』

 

『大佐?……ああ、マスタングさん?』

 

ホークアイは、初めて会うエミルに一礼をした。

 

『初めまして。私の名前はリザ・ホークアイと申します。』

 

そう自己紹介されたエミルは、その律儀な挨拶に少しだけ戸惑った。

 

『え……あ………。え……エミル……といいます……。』

 

緊張をしているのか、上手く説明が出来ていなかった。

 

その様子に、エドは少し溜息を吐いた

 

リザは、建物の窓から離れて、扉の方へと向かった。

 

そして、扉から出た後に建物から出て行って、エド達の方へと向かって歩いた。

 

『エド、アンタの知り合いか?』

 

イズミが、疑問の顔でエドに質問をした。

 

『んー……知り合いってか、軍関係の……』

 

エドが”軍”の言葉を出した瞬間、少しだけ顔を悪くしたが、すぐに持ち直した。

 

エドは、ホークアイの方を見て答えた。

 

『そう言えば中尉は、この世界でずっと何をしてたんだ?』

 

エドがそう言うと、リザは銃の手入れをしながら答えた。

 

『エドワード君は、この世界に流れ着いたとき何をしたの?まずはそこから説明して欲しいものだけど』

 

リザのその感情が無いかのような言葉に、エドは頭を掻きながら答えた

 

『………俺は、アルと……大佐と少佐、と一緒にアドリビドムっていうギルドで働かされている。』

 

その事実を聞いて、リザは反応を見せた。

 

『大佐がギルドに所属しているのですか?』

 

『ああ。もう結構馴染めてるぜ』

 

エドのその言葉に、リザは少しだけ溜息を吐いた

 

『………まぁ、大佐らしいと言えば、大佐らしいのかしら』

 

そう言って銃を片付けると、次にリザが質問に答えた

 

『私は、今までずっと大佐を探しながらサバイバル生活を行っていたわ。』

 

サバイバル生活と聞いて、一番驚いていたのはエミルだった。

 

他の者は、全員一度はサバイバル生活を行った事があるので、さほど驚かなかった。

 

『ええ!?ええと……女の人一人で……サバイバル生活をしていたんですか!?』

 

その驚きように、エド達は逆に違和感を感じた。

 

『…………』

 

だが、あえて言葉は発しなかった。

 

『何を驚いている。ここに居る、私も私の元弟子達も、サバイバル位は行っているだろう。』

 

イズミがそう言うと、エミルは更に考えた。

 

これ程、過酷な体験をしたであろうこの人達の周りに囲まれている、自分がなんだかちっぽけに見えたからだ。

 

またエミルは俯きながら、暗い表情になった。

 

『中尉、とりあえずアドリビドムに来ませんか?そこに大佐も居ますし……一度話をしてみては如何でしょう。』

 

アルがそう言うと、中尉は目を瞑り、考える仕草をしていた。

 

『……………』

 

何か考えているように、中尉は目を瞑っている。

 

迷っているのだろうか。なかなか決まらなかった。

 

『……そうね。大佐の怠け癖がついているかもしれないから。叩き落さないといけないのかもしれないわね』

 

そう言って、リザは南の方へと歩んだ。

 

『それじゃぁ、しばらくそのギルドにお世話にならせて頂くわ』

 

リザがそう言うと、アルは安心した息を吐いた。

 

まさか、錬金術師でないリザがこの世界に居るのは驚いたが、

 

居たら居たで、見つかって良かったと感じたからだ。

 

『それじゃぁ行きましょう。アドリビドムへ』

 

そう言って、アルが先頭になって家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イズミと分かれる時、イズミはエドに言葉を発した

 

『……いつか、帰らねばならなくなった時、その時は私たちはどうすれば良いのだろうな』

 

その言葉を聴いたとき、アルは あっ と声を出した。

 

いつか帰るときになった時、その時は人体練成をする必要があるのだろう。

 

エンヴィーの言った言葉が本当なのならば。

 

その為に、この世界の人間一人を犠牲にしなければならない。

 

そう言った後、イズミはエド達に背を向けた。

 

そしてその場から去ろうとした瞬間、後ろからエドが声を出した。

 

『……人体練成は、錬金術の禁忌として、材料となる人間を使うことも許されていません。』

 

その言葉を聴きながら、イズミは歩み続けていた。

 

『さらに、人一人が扉の向こうに行き、元の世界に戻るためには、一人の人間が必要です。』

 

聞きながら、返事をせずにイズミは歩み続けた。

 

エドは拳を握り締めながら、声のトーンを大きくして発言した

 

『だから、俺達は別の方法を使って帰ろうと考えています!』

 

その言葉を聴いた瞬間、イズミの足が少しだけ止まった

 

『この世界には、錬金術だけじゃない。魔術だってあるんだ!!錬金術だけじゃ駄目でも、魔術が組合されば誰も犠牲を出さず、悲しい事に合わせる事が無くなるかもしれない……いや出来るはずです!』

 

エドが言い終えた後、イズミはこちらの方に少しだけ振り向いた。

 

半分の顔しか見えなかったが、イズミは笑顔になっていた。

 

そして前に向きなおすと、再び歩き出した。

 

そのまま歩き出し、ついにイズミは見えなくなった時、

 

エド達も歩き出そうとした。

 

だが、エドは歩き出す前に、言葉を呟いた

 

『……錬金術と魔術も、人の為にあるから………』

 

呟いた後、エドは再び歩き出した。

 

これから進む、エドワード達の目的の為に

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