恋姫三国伝〜二〜
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・SDガンダム三国伝のキャラやストーリーを恋姫風にしてみたダイジェストっぽい短編集です。

 

・キャラの性格や口調が変わっていたり、武力が超パワーアップしていたりますが、ご了承下さいませ。

 

・元ネタが蜀ルートとの相性バッチリな作品なので、一刀と桃香は「二人で一人の劉備」なポジションです。

 

・この外史では本編で「天の国の言葉」扱いであるカタカナ等が普通に使われております。

 

 

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・その名は((曹操|そうそう))! ((紅蓮|ぐれん))の覇将軍!

 

 

〜過去―((洛陽|らくよう))〜

 

「将軍! お待ち下さい! ((盧植|ろしょく))将軍!! 引退などと…将軍は((三璃紗|みりしゃ))を見捨てるおつもりですかっ!?」

「それは違うぞ、曹操((校尉|こうい))…ワシはむしろ、祖国の明日の為に身を退くのだ!」

「どういう意味です!?」

「明日の為に、己は何を為すべきか、己は何に成るべきか。

ワシにはワシの、貴様には貴様の往く道がある!! ((華琳|かりん))よ、明日は己で((掴|つか))むものなり!!」

「盧植将軍…!!」

 

 金色の髪を巻き毛にして((髑髏|どくろ))を模った髪飾りを身に着けた少女が、直属の上司である老将軍に詰め寄る。

 校尉(官軍の階級で部隊長クラス)を勤める彼女にとって、腐敗しきった役人達の中で数少ない尊敬出来る上司。

 そんな盧植の突然の引退発言に黙っていられず、引き止めに来たのだ。

 しかし老将軍の決意は固く、洛陽を去って行った…。

 

 

 

〜そして((現在|いま))〜

 

「将軍…ようやく、私にも見つかりました。自らの往く道、そして…掴むべき明日が!!」

「為すべきは正義! 成るべきは天!! 三璃紗の明日はこの曹操がっ!!!」

 

 三璃紗の民を苦しめる((董卓|とうたく))軍を討つ為、曹操の呼びかけに応じて遂に結成された反董卓連合軍!!

 ((冀州|きしゅう))の名門、((袁紹|えんしょう))を盟主に、((張沙|ちょうさ))の((孫堅|そんけん))、((西涼|せいりょう))の((馬騰|ばとう))等…その数、50万の軍勢!!

 董卓のいる光の((都|みやこ))・洛陽を守るのは難攻不落の要塞、((虎牢城|ころうじょう))!!

 伝説を秘めた虎の巨像が見守るこの地で一大決戦の((火蓋|ひぶた))が切られた!!

 

 

 

「でやあああああっ!」

「はぁあああああっ!」

「うりゃりゃりゃ〜っ!」

 

 そして、連合軍の中には『彼等』…((幽州義勇軍|ゆうしゅうぎゆうぐん))の姿もあった!

 ((一刀|かずと))、((愛紗|あいしゃ))、((鈴々|りんりん))は一騎当千の武力で董卓軍の兵士達を次々となぎ倒して行く!

 

「きゃっ!?」

 

 防御と回復・結界術に長けるが攻撃が下手で剣は斬れない守り((刀|がたな))である((桃香|とうか))は……時には避ける。

 

「ひゃっ!? 来ないでぇ〜!!」

 

 時には防いでから、敵の攻撃を((逸|そ))らす。

 

「あっち行ってぇ〜!!」

 

 時には氣の力で結界を張り、敵を食い止めたり吹き飛ばしたりする。

 

「見事に回避して、同士討ちを誘っている…やりますね、桃香様」

「桃香お姉ちゃん、何気に凄いのだ……鈴々達と一緒に前線に行くって言い出した時はどうしようかと思ったけど」

「あの刀、峰打ちなら出来るしなぁ…((鈍器|どんき))の代わりにはなるし」

「感心してないで助けてよぉ〜!!」

「ああ、今行くよ!」

 

 すかさず桃香のフォローに回る三人。

 何だかんだ言いつつも、幽州義勇軍の強さは桃香が回復・防御役も兼ねているからでもある。

 

 

 

「それにしても、何て数だ…」

「連合軍より多いよね、絶対…」

「流石は董卓軍と言った所ですね…」

「も〜、キリが無い〜!! 早く大将首を取りに行くのだ〜!! こんなザコじゃ物足りないのだ〜!!」

 

 しかし、気を抜いていた鈴々の背後から剣を持った兵士二人が襲い掛かる!

 

「鈴々、後ろだ!」

「にゃっ!?」

 

 愛紗に声を掛けられて振り向くが、刃は鈴々のすぐ間近に迫って来た!

 

「((岩打武反魔|いわだむはんま))!!」

「((伝磁葉々|でんじようよう))!!」

 

 兵士達の刃が鈴々に迫る瞬間…大鉄球と巨大ヨーヨーが、それぞれ敵兵を吹き飛ばした。

 その巨大な武器と威力は、年齢も体型も鈴々と同じ位の小柄な少女達からは想像も付かない怪力の持ち主であると証明していた。

 

 

 

「合戦中に気を抜くなよ、ちびっこ!!」

「にゃ、にゃに〜! お前だって、ちびっこの癖に〜!!」

「まぁまぁ鈴々、助けて貰ったんだから…ありがとう、助けてくれて」

「どういたしまして! カッコ良い剣と…変な服の兄ちゃん!」

「こら、((季衣|きい))! 何て事を! も、申し訳ありません!」

「(この世界じゃそんなに変かな、この服…) はは…いいよ、慣れてるから。と、ところで君達は?」

「ボクは((許緒|きょちょ))!」

「私は((典韋|てんい))と申します。私達は、曹操軍((衛兵隊|えいへいたい))の者です」

 

 許緒と典韋と名乗る少女達は、曹操軍衛兵隊に所属していると明かした。

 

「衛兵隊の…」

「という事は、二人はこれより最前線へ?」

「はい!」

「そうだよ、鬼の仮面の姉ちゃん! 最前線で曹操様をお守りするのが、ボク達衛兵隊の務めだからね!!」

「ご主人様」

「ああ!」

 

 二人が最前線に行く事を尋ねた愛紗の言葉に頷く一刀。

 

「二人共、俺達も一緒に連れていって貰えないかな?」

『えっ?』

「俺達はまだ新参者! 一度、将軍((閣下|かっか))にお目通りをお願いしたいんだ!」

「焦らなくても、皆様に才能があれば将軍様直々にお声がかかりますよ」

「将軍自ら兵隊に?」

「そうだよ! 曹操様はそういう御方なんだ! 平和を愛し、正義を愛し、正に空に輝く太陽の((如|ごと))くボク達に光を与えて下さる、((侠|おとこ))の中の侠!!」

「お〜い、春巻き頭〜! 帰って来〜い!」

 

 自分の世界に入ってしまっている特徴的な髪型の少女に変なアダ名を付けつつ、ツッコミを入れる鈴々。

 

「ちょっと季衣! 曹操様は女性なんだから、侠扱いしたら怒られるよ!」

「あ、そっか。だって曹操様、そこいらの侠よりカッコ良いから、つい…」

「侠の中の侠って言いたくなる程に、そこいらの侠よりカッコ良い女性か…(まぁ三国志の英雄が女の子なのは、もう慣れたけど…)」

「曹操将軍とは、それほどまでに立派な御方なのか?」

「まぁ、姉ちゃん達も会えば分かるよ!」

 

 幽州義勇軍は許緒の語りから男性を連想したが、典韋のツッコミにより曹操は女性だと判明する。

 

 

 

「!!」

「何だ!?」

「あっ、前線が押されている…かなりの敵が出て来たみたいね。季衣!」

「分かってるよ、((流琉|るる))! じゃあ、兄ちゃん達も頑張りなよ! またね!」

「それでは、私達はこれで!」

「あ、おい! 春巻き頭!」

 

 直後、戦場で爆音が鳴り響き、会話が中断される。

 許緒と典韋はすかさず最前線に向かって走り出した。

 

「ご主人様、((如何|いかが))致します?」

「決まってるだろ!」

『え?』

「俺達も行くぞ!! 最前線へ!!」

『おーっ!!』

 

 幽州義勇軍も、最前線へ向かう為に走り出す。

 

 

 

「はああっ! 董卓軍に刃向かう者は死あるのみと思い知れ!!」

 

 董卓軍の猛将にして良将と呼ばれる((華雄|かゆう))将軍が愛用の武器・((金剛爆斧|こんごうばくふ))を振るい、圧倒的な強さで次々と反董卓連合の兵士達を蹴散らして行く。

 

「ボク達が相手だ!!」

「ぬっ!?」

 

 突然飛んで来た許緒の大鉄球と典韋の巨大ヨーヨー攻撃を、金剛爆斧の柄で受け止める。

 

「好きにはさせません! 董卓軍!!」

「ほぉ、子供にしては少しは骨がありそうだな! だが力だけでは、この首斬り華雄様には勝てんわ!!」

「うわっ!」

「きゃあっ!」

 

 しかし、華雄は即座に接近して二人まとめて吹き飛ばす。

 一度飛ばしてしまった大鉄球と巨大ヨーヨーは、簡単には引き寄せられない…その((隙|すき))を利用されてしまったのだ。

 

「覚悟!!」

『!?』

 

 金剛爆斧を上段に振り上げ、二人めがけて勢い良く振り下ろす…!

 

 

 

「何っ!?」

「大丈夫か、二人共!?」

「さっきの借りは返したのだ! 春巻き頭!」

「兄ちゃん達!」

「あ、ありがとうございます…兄様…」

 

 しかし、一刀達三人がそれぞれの武器を重ね合わせて、華雄の攻撃を防いだ!

 

「二人共、しっかり! 今、手当てするからね!」

「あ、ありがとうございます。((衛生兵|えいせいへい))以外で氣を治療に使う方、初めて見ました…」

「姉ちゃんって、凄いのはおっぱいだけじゃなかったんだな〜」

「うう、どうせわたしなんて…いいもんいいもん、ご主人様は喜んでくれるもん…」

「季衣!」

「ああ、ゴメンゴメン! ボクが悪かったから! 泣かないでよ〜!」

 

 怪我をした二人を治療する桃香。

 他の三人に比べられて、回復術を出さないと((容姿|ようし))(主に胸)以外褒められないのは珍しい事じゃないが……子供の無邪気な一言には((流石|さすが))に((凹|へこ))む。

 

 

 

『はああっ!!』

「ぐっ!」

 

 三人は力を合わせ、華雄を強引に押し戻す。

 華雄は後方に下がり、体勢を立て直す。

 

「三人がかりとは言え、我が一撃を防いだ事は褒めてやろう! しかし、見ない顔だな…名を名乗れ!!」

「天の御遣い、龍帝を継ぐ者・((龍帝剣|りゅうていけん))の((北郷一刀|ほんごうかずと))!!」

「((鬼髪|おにがみ))の((大武勇|だいぶゆう))・((関羽|かんう))!!」

「((双|なら))ぶ者無き((戦|いくさ))の刃!! ((無双|むそう))の((戦刃|せんじん))・((張飛|ちょうひ))なのだ!!」

『これより先は我等、幽州義勇軍が相手だ!!』

「はぁっはっはっはっ! 幽州義勇軍だと!? 首と胴が泣き別れする覚悟はあるのだろうな!! 我が金剛爆斧の必ーっ殺の一撃、とくとその身で……!?」

 

 しかし、華雄の言葉は…突如、轟音を轟かせて襲い掛かって来た炎の塊によって遮られた!

 

「うわぁああっ!? ふ、ふん! この程度の炎で……って熱っ! 服が燃える〜!?」

 

 炎は華雄の服……しかも、尻の辺りに引火する。

 華雄は尻を押さえながら慌てて虎牢城に逃げ帰る……服が燃えて行くのだから、必死だ。

 

 

 

「うるさいよ、オマエ!」

 

 一刀達が炎が飛んで来た方向を振り向くと…覇王の風格と威厳を持ち、炎を纏った大剣を構えた、金髪の少女がそこにいた。

 真紅のマントを羽織り、((絶影|ぜつえい))と名付けられた巨大な黒馬に跨り、

 背面に研ぎ澄まされた六本の牙を兼ね備えた太く鋭い大剣…((炎骨刃|えんこつじん))を携えている。

 

「この迫力! この凄み!!」

「ま、間違いないよ…」

「このクルクルお姉ちゃんが…」

「紅蓮の覇将軍…」

『曹操!!!』

 

 後に生涯の宿敵となる曹操との、これが初めての出会いであった―。

 

 

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・((趙雲|ちょううん))との出会い。

 

 

―((幽州|ゆうしゅう))・((右北平|うほくへい))―

 

 

「おいコラ! ぶつかっといて、あいさつもナシかァ?」

「ふん! わざとぶつかって来たクセに! 謝るのはお前等の方だろ!」

「何だと? このガキ…俺達にそういう態度を取ればどうなるか、分かってるよな?」

 

 ガラの悪いチンピラの男共が一人の少年にイチャモンをつけている。

 その上、剣を向けて今にも斬り殺そうとしていた…。

 

「待てっ!!」

「あん!?」

「その手を放せ! 悪党共!」

「なんじゃ? おのれらぁ」

「幽州義勇軍、北郷一刀!!」

「その義妹、劉備!」

「同じく、関羽!」

「同じく、張飛!」

「上等じゃゴルァ! いてまえ!」

 

 チンピラ共は標的を変え、一刀達に襲い掛かる!

 

「ええいっ!」

「うおっ!?」

「なんじゃ、このアマ!?」

「結界だと!?」

 

 しかし、桃香が張った「氣の結界」がチンピラ共の攻撃を完全に防ぐ。

 

「今なのだ!! 食らえっ! ((爆裂大雷蛇|ばくれつだいらいじゃ))!!」

「((鬼牙百烈撃|おーがひゃくれつげき))!!」

「((星龍斬|せいりゅうざん))!!」

 

 チンピラ共が体勢を崩した瞬間、鈴々・愛紗・一刀の必殺技が炸裂して((一掃|いっそう))する。

 

「す…すげぇ!」

 

 少年は、その光景に魅了される。

 

「ぐ…ぐへへ。やりやがった」

「こいつ等…俺達((烏丸|うがん))に手を出しやがったぜぇ」

「覚えてろ!!」

「ふ〜んだ! いつでも来やがれなのだ〜!」

「坊主、怪我は無いか」

「うん、大丈夫。ありがとう! 兄ちゃん達、メチャクチャ強いんだね…でも、こんな事したら…」

 

 チンピラ共はお決まりの捨て台詞を吐いて逃げて行った。

 

「あれは…?」

「この辺りを守る警備隊では…?」

「やべ! もう来た。兄ちゃん達も早く逃げないと、じゃあね!」

「何で逃げるのだ…って、ありゃ? もういないのだ」

 

 どこからか、馬の足音が響いて来る。

 それと同時に…いつの間にか、少年もいなくなっていた。

 

「はぁ…それにしても、故郷の幽州に戻ったものの、この辺りもすっかり((寂|さび))れてしまったのだ…」

「ああ、どこも同じだ…」

「あの最終決戦から二ヶ月…暴君は倒れたが、世は益々乱れ、今や((群雄|ぐんゆう))が((割拠|かっきょ))する戦国乱世…」

「人々の苦しみは変わっていない…この荒れ果てた三璃紗を救う為にはどうすれば良いのかな…」

 

 幽州義勇軍は悪人退治をしながら旅を続けていた。

 もっともっと多くの人と出会い、多くの事を知り、自分の中に本当の正義を見つける為に。

 しかし、戦国乱世の時代真っ只中の三璃紗を救う方法が見つからないままでいた…。

 

 

 

 

 

「うっ! これは…何という事だ!? 

そこの者! 私は国境警備隊隊長の趙雲だ! 

正直に答えよ! この者達を手にかけたのはお前達か!?」

 

 蝶の((刺繍|ししゅう))が((施|ほどこ))された白い服を着た槍使いの少女が、馬上から問い詰めて来る。

 

「うん! 鈴々達は幽州義勇軍。悪い奴をやっつけながら旅をしているのだ! ま、鈴々達の手にかかれば、ざっとこんなモンなのだ!」

 

 鈴々は烏丸達を退治した事を自慢げに話す。

 

「何と言う愚かな事を…この者共を逮捕せよ!」

「ちょ…何で鈴々達が捕まるのだ!?」

 

 しかし…兵士達は趙雲の命令で、一刀達に槍を向ける。

 

「我等があの烏丸共と結んだ和平条約! それを危うくするような真似は絶対に許されない!」

「だからって、子供を見殺しになんて出来ません!」

「どんな理由でもだ!」

「そんなの間違ってる!」

「悪法もまた法なり!」

「う…」

 

 趙雲の言い分に反論する桃香と一刀。

 しかし、『悪法もまた法なり』…一刀は師匠である盧植の言葉を思い出す。

 

『悪法もまた法なり! 人々が法を守ってこそ国家が成り立つのだ。どんな理由があろうと絶対に法を犯してはならぬ! 

だが一刀よ、あえて問う! それでも、悪法に泣く民を救わんとすれば何とする!?』

 

(それは…)

「こいつ、逆らう気か!?」

『ご主人様!!』

「お兄ちゃん!!」

「悪法も法だと? それがお前の正義か!?」

「む?」

 

 一刀は兵士達の槍を((掴|つか))んで強引に押し((退|の))ける。

 普段温厚な彼が、激しい怒りを((露|あらわ))にする。

 

「民を救ってこその法、悪を裁いてこその正義。それが、国を守る者の務めじゃないか?」

「黙れ!!」

 

 一刀の言葉に反応した趙雲は怒り、馬から飛び降りる。

 

「我等がどんな思いで耐えて来たかも知らずに思い上がるな!! 真の正義の何たるかを教えてやる!!」

「ならば俺は正義をもって! 法の悪そのものを断つ!! 我が魂は正義と共にありィッ!!」

 

 趙雲は槍を、一刀は((爪龍刀|そうりゅうとう))と((牙龍刀|がりゅうとう))を構える。

 

 

 

「やめええいっ!! そこまでだ! 二人共よせっ!!」

「しょ…将軍!?」

「将軍だと!? では貴様がこいつ等の…!? あ…姉貴!? ((公孫賛|こうそんさん))の姉貴じゃないか!?」

「((白蓮|ぱいれん))お姉ちゃん!?」

「久し振りだな、一刀! 桃香!」

 

 今にも一触即発だった二人を止めた将軍は、一刀と桃香の姉弟子である公孫賛こと白蓮であった…。

 

 

 

 

 

―公孫賛の本拠地・((易京楼|えききょうろう))―

 

 

「凄いじゃないか、姉貴!」

「いつの間に将軍に?」

「父の跡を継いだだけさ。それより…さっきは部下がすまなかったな。報告を聞いてもしやと思ったが…間に合って良かった」

「…ったく、ホントだよ」

「ご主人様、すっごく怒ってたんだよ…あのまま戦ってたら、龍帝剣出しそうな位に」

 

「ねえ、愛紗。あの三人の関係って?」

「我等と出会う前、同じ師匠の下で学んだ仲らしい。あの方は、お二人の姉弟子に当たるそうだ」

 

 久々の再会に喜ぶ三人、その少し離れた所から愛紗と鈴々が付いて来る。

 

「でも、姉貴がいながら何故あんな奴等をのさばらせてるんだ?」

「そうだよ、お姉ちゃん!」

「そう言うな。以前の国境はいつも戦火に焼かれていた。条約のおかげで平和になったんだ、『あれでも』…な」

『でも…!?』

「勿論! 我々だって、ただ黙って耐えていた訳じゃない。((来|きた))るべき時の為に準備はして来たのだ。今日、お前達が現れたのは天の意思かも知れんな」

『え?』

 

 白蓮の「天の意思」と言う言葉に、首を((傾|かし))げる二人。

 

「しょ、将軍!! 異民族が…烏丸の軍が、やはり国境を突破して来ました!!」

「ちいっ! もう来たか!! 状況は!?」

「予定通り国境警備隊が出動しました…ですが、今までと敵の数が桁違いで…条約を破って総攻撃をかけて来たとしか思えません!」

 

 その時、公孫賛軍の部隊兵が慌てた様子で報告に現れた…烏丸が攻めて来た、と。

 

 

 

 

 

―国境―

 

 

「ぐへへ…さすがの趙雲も多勢に無勢じゃこれまでじゃのォ。お前等がマジメに和平条約を守ってくれとる間、わし等はタップリ軍備を蓄える時間が稼げたわ!」

 

 国境警備隊も烏丸の大軍勢の前では圧倒的に不利だった…残ったのは、隊長の趙雲((只|ただ))一人になってしまっていた。

 槍の刃は欠け、柄にもヒビが入り、いつ折れてもおかしくない程に消耗していた…。

 

「幽州はわし等がきっちり貰ったるでな! 往生せいや! 趙雲!!」

「我が軍も遊んでいた訳では無いぞ。私がここで倒れようとも、お前達の侵略を許しはしない!!」

 

 烏丸兵が((斬馬曲刀|ざんばきょくとう))を両手に持ち、趙雲めがけて上段から勢い良く振り下ろそうとする…!

 

 

 

「命を粗末にするな!」

「!? お主は…」

「あんたは国境警備の要だろう! 一刻も早く将軍の元に戻るんだ!! こいつは俺に任せろ!」

 

 しかし、駆け付けた一刀が二刀流で烏丸兵の攻撃を受け止めていた。

 

「こんな卑怯な奴等に、俺達の故郷を奪わせはしない!!」

「ぐわあっ!」

「北郷殿!?」

 

 そのまま攻撃に転じて、烏丸兵を斬る。

 

「くっ!! こいつタダ者じゃねェ!! かかれっ!! 一斉にかかれ!!」

「うおおおおっ!!」

『口先だけの正義ではない! こやつは((真|しん))の((侠|おとこ))だ…』

 

 小隊長らしき男の命令で、烏丸兵達が一刀に襲い掛かる。

 しかし、一刀は二刀流で烏丸兵の大軍勢を迎え撃つ。

 そんな一刀の姿を見て、趙雲の心に変化が訪れる…。

 

 

「はあっ!」

「趙雲!?」

「我等と同じ((志|こころざし))を持つ同志を死なせはせん!!」

 

 趙雲は一刀の背後から襲い掛かって来た烏丸兵を返り討ちにした。

 そのまま一刀と背中合わせで、烏丸兵達を迎え撃つ。

 

「だめだ! ここは任せろと言ったろ!」

「馬鹿な! この私にお主一人残して逃げろというのか!」

「お前の命はお前一人のものでは無いだろう! お前の命は幽州の民の為に使うべきもの! 

こんな所で無駄に散らしてはいけないんだ! この場は俺達、幽州義勇軍が引き受けた!! いけ!!」

 

 一刀と同じく、駆け付けていた桃香・愛紗・鈴々の姿が見える。

 

「北郷殿…必ず戻る!!」

 

 趙雲は愛馬・((飛影閃|ひえいせん))に((跨|またが))り、援軍を引き連れる為に走り出した。

 

「さぁ来い、異民族共! ここから先は一歩も通さん!! 龍帝ィィィ剣ッ!」

 

 一刀の呼びかけに応え、彼の左手に龍帝剣が現れる。

 

 

 

(死ぬな! 北郷殿…私が戻るまで、持ちこたえていてくれ!)

 

 趙雲が全速力で飛影閃を走らせて向かう先に…公孫賛軍の姿が見えた。

 

「公孫賛将軍! この大軍は…」

「趙雲、時が来たのだ。耐え忍ぶ日々は終わった! 今こそ真の力、存分に振るうのだ!」

「承知致しました! 白馬陣、出撃!!」

 

 趙雲は白蓮から愛用の直刀槍・((龍牙|りゅうが))を手渡される。

 そして再び、援軍を率いて戦場に向かう…!

 

 

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・白馬陣

 

 

「ええい! たった四人にいつまでかかっとるんじゃ!!」

「無理です! ((単于|ぜんう))様、あいつ等化け物ですぜ!」

「ボケが! 奴等もうヘロヘロじゃ! 全軍で突っ込んで数で押し((潰|つぶ))したれ!!」

 

 ガラの悪い関西弁の男は烏丸単于(遊牧民族の王に与えられる称号)・((?頓|とうとん))。

 たった四人で烏丸兵達に抵抗する幽州義勇軍に((苛立|いらだ))ち、全軍で総攻撃を仕掛けて来た…!

 

「総攻撃ですな」

「流石にこれは…」

「もう、限界かな…」

「最後のひと暴れといくのだ!」

 

 幽州義勇軍は既に気力・体力共に消耗しきっており、既に戦死する覚悟を決めていた…。

 

「何だ?」

「あ!」

「あれは…」

「趙雲!」

 

 突然響き渡る((銅鑼|どら))の音に耳を傾ける幽州義勇軍。

 

「そ、側面より敵襲!!」

「げえっ!」

「全軍突撃ィッ!」

 

 騎馬隊を率いた趙雲が現れ、次々と烏丸兵達を撃破して行く。

 

「趙雲…」

「か、かっこ良い〜♪」

「す、凄いのだ〜!」

「何と言う豪勇…」

 

 幽州義勇軍は援軍が来た事の嬉しさに喜び…趙雲のその強さ、((勇|いさ))ましさに((見蕩|みと))れる。

 

「敵の体勢が崩れました!」

「今だ! ((鋒矢|ほうし))の型! 白馬陣・鋒矢ッ!!」

 

 白蓮の号令に、部隊兵が合図の銅鑼を鳴らす。

 ((采配|さいはい))・((麝香尾|じゃこうび))を手に、白馬陣を指揮する。

 白馬陣は一本の巨大な槍のように、烏丸兵に突撃して行く。

 

「ふ、防ぎきれま…ぎゃあっ!」

「う、うわあっ!」

 

 白馬陣の威力に混乱し、次々と倒されて行く烏丸兵達。

 

「こ、こんなアホな! ありえん!! 圧倒的な数の差を一瞬で…こんな事はありえん!!」

「我こそは((疾風|しっぷう))の((銀槍|ぎんそう))・趙雲! ?頓! 覚悟ォォッ!」

「く…来るなあっ!」

「((真空迅|しんくうじん))!!」

「ぎゃああっ!」

 

 趙雲は?頓の放つ矢を物ともせずに龍牙で次々と打ち落とし、飛影閃に跨って突っ込んで行く。

 龍牙を横に薙ぎ払って真空の刃を作り出し、相手を切り裂く…趙雲の必殺技、真空迅が?頓を見事討ち取った。

 

 

 

『……!』

 

 一刀と趙雲は無言で固い握手を交わす。

 

「ありがとう、一刀。お前達のおかげだ」

「いや、俺達は少し手伝っただけで…それより姉貴!? さっきの戦い方、あれは一体…」

「((兵法|へいほう))! あれこそは兵法なり! 盧植先生が俺に託してくれた兵法書…あの中に((記|しる))されていたのが白馬陣!」

「兵法…あれが…」

「そうだ。たった一瞬の動きが何万…いや、何十万と言う敵を打ち崩すんだ。兵法を極めし者、万の軍勢に匹敵す…だ」

「兵法を極めし者、万の軍勢に匹敵す…」

 

 白蓮から、兵法の凄さを聞かされる一刀達であった…。

 

 

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・趙雲の本性!?

 

 

「これから((宜|よろ))しくな愛紗! 鈴々!」

「こちらこそ宜しくお願い致します、白蓮様」

「ああ!」

「こちらこそ、なのだ! お兄ちゃんのお姉ちゃんで、お姉ちゃんのお姉ちゃん!」

「いや、白蓮で良いって」

「じゃあ、白蓮お姉ちゃん!」

「よし、それでいい」

 

 一同は易京楼に帰り、烏丸を倒した((祝勝会|しゅくしょうかい))が始まった。

 幽州義勇軍は改めて公孫賛、趙雲とお互いの((真名|まな))を預け合った。

 

「さて! 烏丸共も退治した事ですし、ぱ〜っと一杯やりますかな! 最高の酒とメンマもありますぞ!」

「あ、あの……((星|せい))? 何だか雰囲気変わったような…」

「ほんと、戦ってた時とは別人みたいだね〜…愛紗ちゃんみたいな感じだったのに」

「うんうん、愛紗が二人いるみたいだったのだ」

「桃香様、鈴々、それは一体どういう意味で…?」

 

 趙雲こと((星|せい))の様子が変わった事に驚く一刀達。

 満面の笑顔でメンマを食べながら、酒を呑んでいる。

 

「あ〜……コイツって普段はこうだぞ? 戦場や仕事だと別人のように真面目になるだけだ」

「ええっ! 何だよそれ!?」

「ああ、私は仕事とプライベートは分けるタイプですから」

「公私の切り替え激し過ぎだろ!? 殆ど別人!! もしかして二重人格!?」

「一刀殿、一粒で二度美味しいと考えた方が楽しいですぞ? ギャップ萌え、と言う奴ですかな」

「いや、確かにギャップはあるけどさ…」

 

 初対面で正義と法について激しく口論し、白蓮が止めに入らなかったら一戦交える所だった身としては何とも複雑な心境だった…。

 

「それはそうと一刀殿」

「な、何?」

「白蓮殿から聞いておりますぞ。白蓮殿と桃香殿とは盧植先生の下で学んだ仲で、付き合いも長いとか」

「あ、ああ」

「……で、どちらが本命で? 英雄色を好むと言いますし、やはり両方ですかな?」

「だぁあっ!?」

「ああ、それと((義妹|ぎまい))である愛紗と鈴々との仲も気になりますな〜。しかし、愛紗は分かりますが……鈴々の年齢だと犯罪ですぞ?」

「おいいいッ!? 何が言いたいんだ、お前は!?」

 

 星の爆弾発言の連発に振り回される一刀。

 

「これだけ魅力的な女性に囲まれているのですから、色恋話の一つや二つはあるかと……無いのでしたら、私が一刀殿の第一夫人に立候補致しましょうか?」

「お前、さっきからおかしいぞ!? 普段真面目な奴程、酔っ払うと性格変わるタイプか!?」

「いえいえ、私はこの程度で酔いはしませんぞ。さぁさぁ、酒と共に私にも酔って頂きたいですな」

「……性別は違っても、俺の世界の趙雲と同じタイプかと思った俺がバカだった」

「おお、それは興味深い話ですな。じっくり聞かせて下さいませぬか……((閨|ねや))で二人っきりでも構いませぬぞ?」

「……おい、星。その辺にしとけよ? ((白麟剣|はくりんけん))の((錆|さび))になりたいのか?」

「おお、怖い」

 

 色気出しまくりの言葉は……白蓮が腰の剣を抜いて、星に向けた事で止まった。

 ちなみに白麟剣とは、白蓮が将軍になった時に父から受け継いだ剣である。

 

「そ、そうだよ星ちゃん! ご主人様が困ってるよ!」

「星! 貴様さっきからおかしいぞ!」

「あの時のカッコ良い星は一体どこに行ってしまったのだ…」

 

 星のギャップに戸惑って、固まっていた桃香達も反応しだした。

 

「ああ、皆も星のギャップが強烈過ぎたんだな…」

「まぁ、こういう奴だが根は悪い奴じゃないんだ……お前達も慣れてくれ」

「白蓮お姉ちゃんも苦労したんだ…」

「努力します…」

「慣れるの、大変なのだ…」

「む。失礼な話ですな…それより白蓮殿」

「何だ?」

「…うかうかしていると、一刀殿を取られてしまいますぞ? 例えば、私とかに」

「な、な、な…!」

 

 星は白蓮の耳元で、とんでもない事をそっと((囁|ささ))やいた。

 その時、白蓮の中の「何か」が切れた…。

 

「……おい、一刀」

「…な、何だい姉貴?」

「あの時は止めたが、もう止めん! 今すぐこの馬鹿を龍帝剣で成敗してくれ!!」

「いきなり何とんでもない事を言い出すんだよ姉貴!?」

「ええい、うるさぁ〜い! こんな性悪の((捻|ひね))くれ者を部下に持った俺の苦労がお前等に分かるか〜!!」

「お、お姉ちゃん落ち着いて〜!」

「白蓮様、抑えて下さい! 星! 貴様のせいだぞ…ん!? いない!?」

「あれ、星がいないのだ!!」

 

 

「くくく…一刀殿達のおかげで、退屈しないで済みそうですな」

 

 怒りが爆発した白蓮を取り押さえる一刀達。

 その騒動を高みの見物しつつ酒とメンマを堪能する星。

 実に騒がしい祝勝会は、こんな調子で翌朝まで続いたと言う…。

 

 

後に…星は一刀が王となった国で『美と正義の使者・((華蝶|かちょう))仮面』と名乗り、独自に行動して街の治安維持に力添えするようになる。

仮面以外はそのままの服装なのに、何故か殆どの者に正体がバレないのでやりたい放題という始末……一刀を始めとする正体が分かってしまう一部の面々は頭を悩ませる事になる。

 

 

-6ページ-

 

 

〜あとがき〜

元ネタだと典韋は大斧が武器の大男で、季衣と流琉くらいの子供や孫がいそうな感じの豪快なオッサンです……流琉とはキャラが正反対なので、季衣も一緒に登場させました。

 

反董卓連合編は暴君な((月|ゆえ))、強い者との戦いに魂を滾らせる暴将な((恋|れん))、自分の身の安全の為なら平気で味方を裏切る((詠|えい))…等々書けそうにないので省きました。

月と詠を幽閉して((左慈|さじ))が((董卓|とうたく))、((于吉|うきつ))が((李儒|りじゅ))を名乗って董卓軍を妖術で人格変えて操る…とかしないと無理なレベルです。

それでも、三国伝にはいるけど恋姫にはいないキャラ沢山いますので……二作品をクロスオーバーしないと、例えば恋に付き従う強く美しい『女性の』((貂蝉|ちょうせん))を初めとしてオリキャラだらけになってしまいますし。

説明
冒頭は華琳、次以降は星メイン回です。
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コメント
>>劉邦柾棟さん、月をあんな性格にしたらギャグでも不快なだけですしね…三国伝は善悪ハッキリ分かれている分、悪役を恋姫風にするのは難しいんですよね。(ノワール)
ノワールさん<いや、むしろ只のヤラレ役キャラじゃないですかね? デカイ態度でいても呆気なく終わりましたし、キャラを立たせたかったら性格を変える必要がありますね。(劉邦柾棟)
>>劉邦柾棟さん、蒼天航路のラスボスの貫禄漂う魔王と違って、SDガンダム三国伝の董卓はただの小悪党ですから…。(ノワール)
暴君な月、暴将な恋、裏切り上等な詠は確かにあまり想像出来ませんよね〜〜〜〜。(劉邦柾棟)
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