【改訂版】真・恋姫無双 霞√ 俺の智=ウチの矛 一章:話の五 |
四季が半分廻って、秋が過ぎて、気付けば平野は緑から灰色に変わり、木枯らしが吹き始める季節になっとった。
気温もここ数日は骨まで凍てつかせる様な寒さで、毎朝井戸水を使うのが辛い。
半年も家を出とるのに、城の連中はなんも咎めんかった。
元々父上はウチが武官を目指し始めた辺りで興味無くしとるし、母上は顔も見た事無いから除外。
城の連中も、またお嬢が変なこと始めたな。くらいにしかおもっとらんらしく、心配しとるんはウチで飯くっとった連中くらい。
……一郡の長の娘なのに、ウチって軽いなぁ。
ま、その方がウチも気楽やさかい。気にせんけど。
流石に最初の頃だけは自力で出来んかったで、お金とご飯貰うとったけど、今は完全に自分で稼いで自分で喰えとる。
うすい塩味だけの粥にも慣れた。
身を切るように冷たい井戸水で身体を拭うことにも慣れた。
一日二食で労働に励み、自分の日銭で飯を食べる事も慣れた。
未だ慣れれんのは厠が全然厠ちゃうことくらいかなぁ。
信じられんて、厠に敷居が無いとか。なにが悲しくて全部公開せにゃならんねん。
閑話休題。
思ったよりず〜っと時間かかったけど、
やっとこれででアイツがあんとき言っとった気持ちが少し分かったと思う。
ウチは今まで見ようとせぇへんかったモンを山ほど見た。
ありとあらゆる方法で、ウチに使えるだけの手段を使い尽くして。
これでも全然少ないんやろけど、ウチのくしゃくしゃやった“常識”はもっと徹底的に粉々や。
人の死は悲しい事で、人の誕生は嬉しいこと。
ここは、違う。
人の死は嬉しい事。亡骸の持ち物も、骸も髪の毛すらもお金に変わるから。
人の誕生は喜べないこと。食いぶちは増えるのに、赤ん坊は何も生み出さないから。
売れるまでの数年がもったいないし、お腹減ったから食べてしまおう。
そんな思考を見る事すらあった。
ゴミ捨て場に残された、ちぃちゃい腕を見たときには、ウチは胃の中身を、胃液まで全部そこにぶちまけてもうた。
ここは、狂気に蝕まれとる。
奪われ、奪い、また奪われ、さらに上に根こそぎ奪われる。
それが当たり前で、それを誰も不思議に思わんくて、それが当然だと皆諦めとる。
そんな連鎖の末端、まだ十にもならんようなじゃりっ子は全部を盗ってかれる。
ずば抜けてずるがしこかったり、腕っ節が強くなかったりでもせぇへんと十を超えられんのや。
そこを飄々と生き抜いて、普通に家持ったアイツは、一体どんな人生を送って来たんか、さっぱり想像が付かん。
儒学、っちゅうのは、人としてのあり方を説くモンな筈や。
それが、他人から奪う口実に変貌しとる。
自分が偉いんや、って思いこんで、自分を保って、弱いヒトは奪われるのも自分の不足や、って諦める。
そんで、さらに下を探してまた奪う。
無茶苦茶矛盾しとって、意味不明なのに、それが常識や。
狂っとる。やでウチは初めそう思った。
今はそれがちゃう事に気付いた。
狂っとるんやないんや。狂わんといかんのや。
ウチは何時でも抜けられるから、正常で居れた。
此処から出られん連中は、狂って、自分に暗示を掛けんと耐えられへんのや。
やで……アイツがあんなして怒るのも、無理ない、って思った。
何もかも用意してもらって、ぬくぬくと日々を生きる人間に、
『気楽や』
なんて、流されたら激怒して当然や。
いま思い出せば、むしろあんとき、マジで殺されんかったのが不思議なくらい。
一年掛けて、やっとウチはそれを理解した。
これで、アイツに謝れる。アイツに訂正できる。
それに、 何度も恩を受けた。
なんもしらんウチは、何遍も厄介事に巻き込まれかけよったらしい。
らしい、っちゅうのはウチは実際には巻き込まれとらんから。
……アイツの、お陰で。
やで、今度こそ、頭下げて、謝って、恩返して、そんで……
友達に、なれたらええな。
**
/一刀
「……あ、毎度ご苦労さん。え、えっと……その……」
「……?」
いつも歯切れの良い張遼が、なんだか今日は変だ。
竹を真っ二つにしたみたいにサバサバした性格は、環境次第じゃお姉様とか慕われて。
勢い余ってついめくるめくゆるゆりな世界に行く感じ。つまり男勝りってことだ。
それが、何やらもじもじとして歯切れが悪い。
まるで女の子みたいだ、と、コイツは元から女な訳だが。
……半年隠してたけど、実はあたし付いてます。とか無いよな?
基本的に毎朝の顔合わせ(お豆腐配達)では無視余裕だけどもさ。
半年も定住してお得意さんになられたら否が応でもその人の大体の人となりは把握できるもんだ。
それが今更男だった、なんぞカミングアウトされても困る訳で。
まぁ、表面上の態度は全然変わってない訳だが。
相変わらず俺は訳も無くイライラしながらコイツに接してるんだし。
そんな状況でフラグ立つとかそれなんてパワポケ。
なんでフラグ立たせる為に映画館連続で往かなきゃならないんだと。
普通同じとこ行くと好感度下がるから行かないのにそれはないだろ、と。
……まさか、気付かれてた訳じゃないよな?
いいや、尾行は蛇さんも真っ青なレベルで完璧だった筈。手回しも最低間に四人挟んで実行してたから気付き様がない筈。
まさか、張遼って名前だけで無双ぱぅわぁ(苦笑)とかが発揮されたんじゃないよね?
一三年生きてきたがそんなご都合主義は一切なかった訳で。
というか張遼って男だろ。うん。張さんなんて名字は超メジャーだし、日本の田中さんとかと一緒なレベルだし。
張さんちの遼ちゃんが居てもなんも不思議じゃないし、うん。
ただまぁ、俺の存在がモブじゃないのでイベントが、っちゅう可能性もあるあ……ねーよ。
今までの経歴見てもとても主人公じゃないね。
うん。精々彼女をイケメンナデポ主人公に寝取られる可哀そうなサブキャラA。不動先輩ェ……。
未来で転生者とかでたら良くて精神病院を進められるだろうし。それに俺は現にタダの一般人Aだし。今も、昔(?)も。
よくある神様に出会ってチートを、とか。最初から可愛い幼馴染や最強の妹が、とか無くて転生?記憶の保持?した訳だし。
人生最初からヘルモードで歩いたら死に掛けましたとか余裕だったし。
むしろあのレベルの不幸で脆弱な現代人の俺が生き残れたんだから類稀な幸運かもしれんが。
章仁みたいに妹先輩幼馴染高飛車後輩と死角なしハーレム野郎ならまだあったかもだけどさぁ。
この世界でも俺はモブ男A的な扱いな可能性の方が高いし。
つまり何が言いたいかって言えばフラグとかねーよって事だ。
エロゲ脳乙? 煩い、親友がリアルコレなんてエロゲ野郎だったんだから許してよ。
……そーいや、章仁とか及川とか、元気にしてるのかねぇ。
※章仁とは、前作『春恋乙女』の主人公です。
**
脳内話題は変わるが、最近知ったんだが今の国の名前は漢で霊帝とかいう奴が治めとるらしい。
未来と違って王って存在は民衆から見れば神様みたいなもん。
だから、皇帝、っちゅうのは国を治めている偉い現人神的な感じらしい。つまり良く分からんってことだ。
そりゃそうだろうけどねぇ。都の近くならいざ知らずだけどさ。
こんな北の果てに住んでれば皇帝なんて一生見ない訳だし。ただこの人が支配してますよー、ってだけで、殆ど影響ないし。
だから国号も名前も皆興味ない。貧民街とか特に。しってて敬ったところで腹が膨れる訳でも無し。
それ故に知るのが大分遅れた訳だけどさ。漢、って言ったら
先ずは項羽と劉邦、四〇〇年後に曹操、孫権、劉備。
世界史サボってた俺にゃこんくらいの知識しかない。
俺の生きるこの時代は、このどっちが近いんだろう?
とりあえず霊帝さんがいつごろのお方かは知らんが、項羽と劉邦にお会いすることは無いだろう。
太守さんの大きな変動とか無かったし。体制が変わってないなら去年まで四面楚歌してますた、なんて事は無い筈。
ならあり得るのは後者の、所謂三国時代という奴だ。
あり得て欲しくないけど。マジであり得ないで欲しいんだけど。
授業でやった内容は西暦二〇〇年くらいにガシガシやってて、二八〇年くらいに晋が平定しきるまで。
はーい、先生! 西暦使われてもボク今がいつか分かりません。
コレは大問題こまったねぇ。どうしようかねぇ。いや至ってマジで。
だってさ、三国時代って百万単位で人がぽこぽこ死ぬ時代だぜ?
もしもあと五,六年で黄色の布の連中が出てきたりしてみろよ、俺徴兵√で死亡エンドだよどう考えても。
一三年幸薄い生活してきた俺はいくら転生とかしててもどう考えてもモブだろうし。
曹操とタメ張ったり、孫権と手を組んだり、男として夢見ない訳じゃないけど、どう考えてもモブ男Aの俺にゃ無理。
うん、死にたくないもん。
霊帝さんがいつの方か知らんが、アレだ。うん。頑張って生きてね。俺の為に。
**
閑話休題。
半年前。住み始めて一週間目、あの張遼が危なっかしいことし始めたのは。
貧民街に定住するだけなら良かったんだよ。表は貧しくても良い人居るし、街の体は保ってるから。
あのバカは何を思ったか裏に足を入れ出したんだ。
お嬢様が火遊びしたさに覗き見てるんなら別に構わないんだよ。
死ねばいいんだ、そんなバカは。
でも違った。来て二,三日の間してたみたいに、そこらじゅう片っ端から見て尋ねて聞いて調べ上げだしたんだ。
裏は、人が人として住む場所じゃあない。
一言で言えば……なんだろうね、地獄、はちょっと違う。狂気の坩堝とかかね。
横行する殺人強姦、気持ち良くなれる白い粉。
まぁ、白い粉売り買いしとる辺りはまだマシ。最悪なのは気の狂った連中共の溜り場。
快楽殺人犯と死姦趣味者がお隣同士でおすそ分けが人間だったり、赤ん坊を切り売りする為に人間を飼う女が居たり。
しかもそれらでも需要あると来たもんだ。
その所為である種の治外法権が適用されてまでいる。ここじゃ何が起きてももみ消されるどころか煙すら立たない。
たいていは文字通り、骨の一片も残さず消えるからだ。
その先は宮中でもあり、闇市でもあり、懐や隠し金庫で、住人の胃袋の中でもある。
元未来人としては信じたくないが、最悪の場所では人の足が本/八十銭とかの値段で、ヘビや猫やら鼠やらバッタやらと並んで売られてる。
その横じゃ麻薬中毒者が妄言を喚き散らし、週に一度は突然暗殺されたらしい人間が頚を無くし倒れたりする様な場所。
まさに、狂ってるとしか言いようがない。
だが、それ故金が流れる。
最高純度の麻薬なら薬包紙一つ分で朱銭束の二本が飛ぶ。
そこには金の匂いを敏感にかぎつけたハイエナが群れでやってくる。
街の犯罪者共を支配し統率する犯罪シンジゲート、分かりやすく言えばチャイニーズマフィア、という奴だ。
まぁ、俺もそれで飯を食ってる一人な訳ですが。
ともかくその組織が今は街に三つ程あり、日夜覇権をめぐりドンドンパチパチとやらかしてる訳だ。
そしてまた翌朝には最悪の場所の闇市におっさんの人肉と薄汚れた血糊べったりの青龍刀が並んだりする。
どの町にもあるのか、此処が特別に最高で最悪なのかは分からんが、とりあえず此処は狂ってる。
そんな狂気の渦中に、あのバカは単身乗り込んだ。
腕に自信があるのは本当らしくて、目に見えて近づくバカは文字通り鎧袖一触されてた。
問題は裏で手ぐすねしているマフィア、中国風に言えばK社會(ヘイシャーホェイ、犯罪組織の事)とかだ。
もしアイツが何かとんでもないことを知ったりすれば、狡猾に罠を仕込み確実に絡め取られるだろう。
一生日の目など見れないだろうし、良くて組織の女に、悪けりゃ薬漬けで花売さん。
最悪その場で甚振られて使い捨てられてみじめにむごたらしく殺されるだろう。
因みに、因果応報がおっかな過ぎるので、よく見る様な小悪党全開のナンパ男とかイチャモン野郎は居ない。
主人さんにそれの内容を濁しながら話すと、
どうやらあいつは俺のお説教(呆笑)が原因であんなことを始めたらしい、という衝撃の事実が発覚してしまった。
俺があのガキを例に挙げて話した所為で、この貧民街全部に興味を持っちまった。
そしてあろうことか、自分の目で見て自分の肌で感じるために単身乗り込む始末。
よっぽどやらかさなきゃ、犯罪組織の連中は興味持たないだろうけど、それでもだ。
無駄に覚醒した正義感とかで、売人さんや賭博場に突って全員ノしたりしてみろ。
あいつだけじゃなくて関係のあった人間全部まとめて肉包にされちまう。
そんなことで俺も立場を失いたくないし、やっぱ俺が原因っぽいことでアイツにしなれると目覚めが悪いっちゅうか……。
アイツを素直に嫌えなくなっちまうし。うん。
つー訳で俺はアイツが裏に行く日、後を着けていった訳だ。
その前の日に表で大立ち回り演じてるのを見てたから、
アイツが本物の実力者、っちゅうのは分かってたんで、十分に距離をとってだけど。
裏は、表の主道から2本東へ入ったところから始まる。
正確にはそこから城壁までの一里(一里/345.6m)四方の第九区画の通称だ。
日当たり最悪、主水道からは外れ、最寄の警備兵駐留所は第五区画にしかない。
日は正午以降しか射さず陰湿で、周囲は東南からの風が吹くためよどんだ空気もたまりやすい。なので全体的にかび臭い。
挙句主水道からも外れた所為で、庶民商人文武官問わず人気なし。
地価は暴落し、気づけばよそから流れ込んだ浪民や、仕事を失った町の人間、犯罪を犯した人間がわらわらと群れだし悪化は加速。
そして今に至る、ってわけだ。
しかし、そんときの張遼は目に見えて元気無くしてた。
最初は緊張した感じだったのに、たった十歩入り込んだだけで目を伏せ肩を震わせている。
流石に手当たり次第声を掛けまくったり、偽善振りまく様なバカじゃないみたいだ。
未来にはよくいた、自称人権保護団体(笑)とか、ああいうのは最悪だと思ってる。
そこは好感が……って、なに考えてんだ俺。
そっから先はしょぼくれたままで、そのまま張遼も特に何も行動を起こさず区画を一週すると家に帰って行った。
大分凹んでたみたいだった。
この調子なら、ちゃっちゃと帰るだろうと俺も思い、その日はそのまま帰って寝た。
アイツが此処から帰る、って考えたときにちょっとだけ感じた喪失感には気付かないふりをした。
**
二か月後。
何を思ったか、あいつはまた街をうろつき始めた。
長い間動かなかったし、前回で懲りたと思ったんだが、どうやら違ったようだ。
裏でみた張遼は、以前にもまして緊張した面持ちと、何か決意したっぽい稟とした瞳だった。
今日も裏に入った。
その知らせを、雇ってたガキから受けた俺は、急いで小銭を手渡して裏に向かった。
ガキがニヤニヤ笑ってたからとりあえず軽くジャブ入れといた。
裏で、アイツは最初に酒家に向かった。
誰から聞いたのか、裏ではメジャーで、表じゃ絶対知られない様な場所。
つまりイケナイお仕事とかアブナイお薬とかを横流ししてる場所。
何故かにやにやと笑い手をひらひらさせてる主人さんの顔が浮かんだ。……まさかねぇ?
と、俺は張遼がそこに入るのを見届けると、裏口からこそこそと中に入った。
幸い俺はそこの馴染みだったんで、特に聞かれることも注目される事も無かった。もちろん先立つモノはお渡ししてあるけど。
で、俺は何気なくアイツの斜め後ろの席に座る。
アイツは何かそわそわ落ち着きなく辺りを見回している。
一刻くらい待ったころ、アイツの席の隣に、ひょろっとした痩身の男が座った。
……みた事の無い井出達、何処となく落ち着かない様な雰囲気から、男も此処に来るのが初めてらしいことが見て取れた。
が、張遼は気付いてない様子。聞き耳澄ませば、何やらきな臭いお話をしている様で。
時々『死体が』とか『気持ち良くなれて』とか聞こえてきてた。
……うむむ、どうするべきか。って、いやいや、俺は唯見とるだけで何もする気はないしだな。
大体今付いてってるのも心配とかそういう訳じゃ無く何となくほっとけなかっただけだし、うん。
……あれ? 自分で言ってること矛盾してね?
なんて自分と葛藤してると、気になる単語が飛んできた。
『癸の通りに行けば分かる』
張遼があの時何を尋ねていたか、今でも知らないが、これは断言できる。
癸の通りで見られる様なモノで、アイツの探すモノは絶対ないって事だ。
(癸、ってのは十干(じっかん)の、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸 の事で、
此処じゃ北からの道と東からの道が交差することで出来る四角い街の区画の個別の名称を指す。
三×三本の道路と九マスある各区画で左端の上から乙、丙と順に名付けられている
都市計画の都合上に分けられたらしく、街全体で住人を均一に分けようとしたのが始まりだけど、今はただの呼び名になっている)
癸は街の一番端、貧民街の中でも最悪な場所で、人気どころか正気な生き物の気配さえマトモにない様な場所。
たった一里四方しかないちっちゃい区画が貧民街だが、そこをさらに九等分した内に一つ。
めちゃくちゃ狭い場所に、街全部の負が集まってる場所。
あんな場所にわざわざ住むのは、裏でさらに問題を起こしたバカか、物凄く後ろ暗いことをしている様な連中が、
人を食ったり、人を飼ったり、人を買ったりする様な特殊な連中、が好き好んで溜り場にする様な場所だ。
……あんな、未だ住人としては危機感に欠ける張遼なら、ホイホイ付いて行きそうだと俺は思った。
何を言われたか知らんが、目じりに涙さえ浮かべとったし。
……間違いなく、喰われちゃうだろうねぇ。
性的にか、精神的にか、肉体的にか、それとも食糧的にかは知らんが。
あの男を俺が見た事がないのも、癸の連中を相手にした事が殆どないからだろう。
癸の地区自体が人の入れ替わりがものっそい激しいのもあるだろうけどさ。
又聞きした話では、癸の区画で商売をしたK社會の男は、長くても三ヶ月後には発狂してしまうらしい。
商売相手が異常だったり、商品が異常だったりするから、この街のK社會では懲罰代りに癸の区画に送り込んだりするらしい。
で、おそらくこのところ辺りを嗅ぎ回っとるバカの事が、癸の連中の耳に入ったんだろう。
どんな用途にするかは知らんが、ホイホイ付いてくるバカを一本釣りして食べちゃおうって算段だろう。
……なんちゅーか、流石にそれは俺としても困った訳で。
目の前で罠に掛りそうな顔なじみをほっとく事も出来ないし。うん。
などと、今思い返せば必死の良い訳にしか聞こえないのを自分に繰り返しつつ。
俺は店主にお金を渡しこっそり暗躍を始めるのだった。
**
その時とった手法は至って単純。
あの怪しい男が張遼を連れだす事でなにか怪しい事を企んでいるのならば、店から出れなくなればいいんじゃね?
という単純な発想の元、あの男の懐にちょっと高そうな装飾品を忍び込ませ、お店の中に居る中年女性に一芝居打ってもらうと言うもの。
どちらも此処のことをよく知らない様なのは確認済みだし、他の、店に居た客には既に手をまわしてあるし。
ちょっと騒ぐだけでタダ酒が飲めるってことで概ね好意的だ。
〜〜
んで、結果としては、男は盗んだと言いがかりをつけられた事で頭に来たらしく、
店長に襲いかかったが返り打ち、囲まれボコボコにされた上に、
持ち歩いていたらしい媚薬的なお薬のお陰で張遼にもゴミ見る様な目で見られてた。
どうやら張遼を性的に食べようと思ってたらしい。ロリコンは犯罪ですよー。
で、頼んどいたお説教(主に裏の危なさとか、何時でも誰かに狙われているかもしれない事とか)をしてもらい、
俺はそれを見届けたうえで、張遼が帰宅したのを確認してから家に帰った。
流石に懲りただろうと思いながら。
**
結論から言おう。
アイツ懲りて無かった。
二,三週間は大人しくしてた。
が、一月が経った頃、突然何を思ったか家を飛び出し、向かう先は癸の地区。
進む程に空気は饐えた臭いに、雰囲気は重く陰鬱になってゆく様に、張遼も顔をしかめてた。
道端には死んでるのか生きてるのか分からないナニカが散らばり、世界を呪う呪詛の様に低く唸り声を上げている。
途中、何を見つけたのか、一瞬目を見開いた後激しくおう吐してた。
それでも止まることなくよろよろと進んでゆく張遼。吐いた場所の近くには、明らかに幼児と分かる腕がごろりと落ちていた。
二の腕辺りは骨が見えてるから、恐らく食人趣味の連中の食べ残しだったんだろう。
飢えの極限までいって死肉を食べる連中は文字通り骨までしゃぶり尽くすしね。
慣れた人ならともかく、突然こんなのみたらそりゃ吐くわな、と一人ごちながら俺は張遼を追った。
んで、最終的に行きついたのが、俺が最悪の場所と勝手に呼んでる癸の地区の闇市。
切り売りされた人間の足やら、鳥かごの中で泣く赤ん坊やら、死んだまま放置されてる死体やら。
それを見て、張遼は茫然と突っ立ってた。
隙だらけで、俺でも後ろを獲れそうな程だったので何やら邪な事を考えてる連中がそこそこ居たが、
それは俺と雇った連中でお帰りしていただいた。
そんな感じで処理しつつ観察してると、突然アイツは泣きだした。
よく分からんが何か思う所があったんだろう。
そのまま、隙だらけのまま市場を一週した後、張遼は本格的に落ち込んでとぼとぼと家路についていた。
**
それからは、二週に一度くらいの割合で裏や表の色々なところを見て回っていた。
流石に癸の地区には懲りたのか行ってないようだが、それでも表で見つけた女給の仕事の合間に色々なところを訪れていた。
一度白い粉の売り買いに遭遇した時は流石にヤバかったが、なんとか穏便に済ませる事も出来た。
そんな感じで俺はお仕事の合間のアイツの観察とお守り、
アイツは市民の暮らしと実情を窺う、といった感じで毎日を過ごし、
表面上はお豆腐届けの時だけ会う同年代の苦手な相手という関係を築く、そんな日々にも慣れた初冬の今日。
「……あ、毎度ご苦労さん。え、えっと……その……」
と、なった訳だ。
どうしてこうなった。
あとがき
こんばんわ。甘露です。
名前的に熱すると砂糖残しそうな甘露です。
何を想ってこんな挨拶をしたのか覚えてません。
ふぅ、やっとヒロインと主人公の関係が
気になるけど嫌いなあいつ、と、どうにかして仲直りしたい気になるあの人
から友人同士にクラスチェンジできそうです。
そこまで行っちゃえば、甘露お得意の微妙な欝展開を経た後に
やっと三国志っぽくなると思われます。
今回は何事も無く黄巾おわれるといいんだけどなぁ・・・(遠い目
閑話休題
かずぴーが完全にストーカーな件について。
あれですね、ストーカー種馬って新しいですね。
むむ、陵辱の香り!(氏ね
説明 | ||
今北産業 ・説明 ・フラグ ・ち○こ太守は格が違う ・四を昼頃にうpってあります。見ないとわけがわからないよになります ・かずぴーひたすら説明口調 ・でもそこに痺れ以下略 ・中国先輩ディスってる訳じゃないっすよwwwwっうぇwwwwっうぇwwww ・実際のカニバリズムってもっとすごいらしいっすね ・つまり外史補正ってことだ言わせんな恥ずかしい ・そんなことより久しぶりに萌将伝やって思春で爆死しました ・( ゚∀゚)o彡゜メイドニーソPADちょアッー! |
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トテモヤバイモノバカリヲミマシタ。(mokiti1976-2010) どうしてこうなった?なるべくしてこうなってんだろww しかし、ここまで生々しい表現は初めてですね。俺も『そういう職業』(と言っても今は慈善活動団体)の知り合いがいるんですが、そこのおやっさんの話もまた物凄くてもう…………やべ、ちょっと吐き気が。(峠崎丈二) 一刀はどこで気付かれたのやら(アルヤ) ↓NTRとか一瞬でも想像した私なんかは修正じゃ足りないだろーなー・・・。(時の灯篭) 貧民街の裏が半端ない・・・(量産型第一次強化式骸骨) 霞が性的に食べられるシーンを想像して少し興奮した俺は修正されるべきかもしれない・・・・・・orz(朱槍) |
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