真・恋姫†無双異伝 天魔の章 第二章 黒の猟兵団 第五話
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 聖痕

 

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一刀と三将軍との模擬戦から一夜明けた日。

 

董卓軍首脳部に緊急招集が発せられた。

 

なんでも、黒の猟兵団から『大事な話がある』とのこと。

 

玉座の間に集合した、月達5人に、一刀を始め宗平と信三の三人も交え、会議は始まった。

 

 

詠:「で?慌てた様子でみんなを集めてくれなんて言われたからこうして召集かけたけど、一体なにがあったの?」

 

常に冷静を崩さない一刀達が、珍しく揃って思い詰めたように顔を顰めているのを見て、詠が不思議そうに尋ねる。

 

 

一刀:「・・・あぁ」

 

一刀は、どこか重苦しい空気を孕んだ声でそう答えた。

 

 

月:「・・・あの。どこかお具合でも悪いんですか?でしたら、お話は後日改めてと言うことにした方が・・・」

 

 

信三:「いえ、その点はお気になさいませぬよう。むしろ今話しておかねば、余計に悪化しかねませんゆえ」

 

 

月:「はぁ・・・」

 

何事か急いているように見える信三の反応に、不審を感じながらも月は口をつぐんだ。

 

 

一刀:「・・・では、さっそくですが、みなさんに突然お集まりいただいた理由を、お話しさせていただきます」

 

そう言って一刀達は話し始めた。

 

 

一刀:「昨日の、私と恋殿の一騎打ち、覚えていらっしゃいますよね?」

 

 

霞:「当たり前やないか。まだうちらそこまでボケとらへんで?」

 

ニャハハと笑いながら霞は答えた。

 

 

一刀:「・・・では、その最中、違和感を感じたことは、ありませんでしたか?」

 

 

華雄:「違和感だと?・・・そう言えば、北郷と恋が睨み合っていたとき、なんか周囲の風景が紅く染まっていたような・・・」

 

 

詠:「・・・真ん中あたりがグネグネ歪んで見えた気もするわ」

 

 

一刀:「・・・やっぱり」

 

ついで一刀の問いに、華雄と詠が顎に手を添えて、昨日の試合内容を思い返しながらゆっくりそう答えると、溜息を吐きながら一刀はそう呟いた。彼の後ろに控えている二人も、同様に額に手を当てたり、肩を竦めたりしている。

 

 

霞:「・・・それがどうしたんや?」

 

その様子を不審に思った霞が、眉を顰めながら聞いた。

 

 

信三:「おかしいとは思いませんでしたか?何故、人間の闘気のぶつかり合いだけであそこまでの光景が生まれるのか、と」

 

それに、信三がすかさず切り返す。

 

 

霞:「・・・確かに、あげな異様な情景は見たことなかったしなぁ。なんや異世界にでも放り込まれたような気分になったわ」

 

 

月:「へぅ・・・なんだか、目がグルグルしました・・・」

 

 

詠:「私も・・・なんか頭痛と吐き気を催したわ」

 

思い当たる節があるのか、霞と月と詠の三人が、顔を若干青ざめさせながら答えた。

 

 

宗平:「あれは、異能の力がぶつかり合った際に起こる特有の現象です」

 

 

宗平が説明を始める。

 

 

華雄:「異能だと?」

 

 

宗平:「はい。みなさんは気づいておられないようですが、実はあの時、団長の魔眼に、恋殿の刺青が反応して青紫色に発光していました」

 

 

霞:「??なんやその・・・魔眼、て?」

 

説明の最中、聞きなれぬ単語に霞が疑問を述べる。

 

 

一刀:「俺が持つ、異能のことだよ」

それに一刀が答え、実際に能力を実演して見せた。

 

 

ギンッ!!

 

 

華雄:「がッ!?」

 

突如一刀が華雄を睨み付けると、華雄は一瞬呻き声を上げた後、そのまま硬直して椅子から倒れ落ちた。

 

一刀の目は、通常ではありえないほど紅く染まり、華雄を見下ろしている。

 

 

詠:「なッ!?」

 

 

月:「え?」

 

 

霞:「華雄ッ!?」

 

その様子を見た詠・月・霞の三人は、慌てて華雄に駆け寄ったが。

 

 

一刀:「・・・ふぅ」

 

しかし、一刀が目を瞑って力を抜くと、途端に華雄は身を捩じらせ咳き込みながら、一刀を般若のごとき形相で睨み付けた。

 

 

華雄:「北郷・・・貴様。今、何をした・・・ッ!?」

 

 

一刀:「これが魔眼だよ。対象者の動きの一切を縛り付ける。いわゆる『金縛り』と言うやつを発動させるわけだな」

 

まるで地獄の底から這い出るような重く低い声で問う華雄に、一刀はそう答えた。

 

 

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宗平:「・・・とまぁ。団長の魔眼を受けると、常人ならばすべからく華雄殿のようになってしまわれるわけです」

 

重くなり始めた空気は、宗平が解説を再開したことによって和らいだ。

 

 

信三:「・・・ところが、恋殿は常人ならば間違いなく防御は不可能であるはずの指揮官の魔眼を、真っ向から撥ね退けたのです。しかも、恐らくほぼ無意識のうちに」

 

そう信三の説明を受けた一同は、先程からじっと黙ったままでいる恋の方を向いた。

 

 

恋:「・・・」

 

雰囲気で何事か察したのだろう。今まで御茶菓子を黙々と食べ続けていた恋が、食べる手を止めて一刀の方に顔を向けた。

 

 

詠:「・・・信じられないわ」

 

 

華雄:「馬鹿な・・・あれを跳ね返しただと?」

 

呆然と詠と華雄はそう言った。霞と月も、さっきの華雄を見ているだけに、信じられないと言った思いを隠しきれない。

 

 

霞:「・・・ん?ちょい待ち!」

 

そこで、何かに気付いた霞が突然声を上げた。

 

 

霞:「ちゅうことはなにか?まさか恋にも一刀と同じ“異能”とかいう力があるっちゅうことかッ!?」

 

 

一刀

「全く同じというわけではないが・・・その通りだ」

 

 

一同

『ッッ!?』

 

そして、一刀は霞の問いを肯定し、恋を含む諸将は驚愕した。

 

 

どういうことかと尋ねる一同に、一刀達は代わる代わる説明を行った。出来うる限り丁寧に。

 

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恋の身体に刻まれた紋様。それは刺青ではなく、何らかの理由で突然現れると言われる異能の証『聖痕』の一種である。

 

聖痕とは、異能の証。それを刻む者は、常人離れした身体能力や人間離れした超回復能力、さらには強力な魔法の使役能力などを得るとされ、後天的な異能の代表例として知られている。

 

『魔眼』や『狂経脈』など、神経組織で異能を操る一刀達魔人衆と異なり、聖痕は“生命力の異能変換”つまり、『本来人間には存在しえないはずの“超能力”を、生命力を対価として獲得し発動させる』もの。当然、生命が存在するうえで不可欠な生命力――人間でいうなら気力や精神力などがそれに含まれる――を消耗し、無理矢理自分の身体に異能を行使させるわけであるから、術者の肉体・精神にかかる負荷は計り知れないものとなる。

 

 

 

ちなみに、一刀が属する軍事結社“影の国”にも、この聖痕を使った異能を操る集団がいるが、彼らは富士の霊水と呼ばれる神精の力が宿った霊水を飲んでいるため、無限の生命力を持っており、この制約を無視出来る。

 

閑話休題。

 

 

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聖痕について聞かされた董卓軍首脳陣は、しばらくの間誰も口を開かなかった。

 

 

詠:「・・・なによそれ。そんな恐ろしい力が恋の中に眠っていると言うの?」

 

しばらくして、ようやく口がきけるようになった詠が、開口一番、震える声でそう言った。

 

 

一刀:「その通りだ」

 

それを、一刀は静かに、しかしはっきりと肯定した。

 

 

霞:「・・・その、体にかかる負担っちゅうのは、一体どういうもんなん?」

 

続けて質問を発したのは霞だ。

 

 

一刀:「それは人によって様々だが、代表的な例としては『廃人化』『狂人化』『消滅』の三系統がある」

 

 

霞:「なんやそれ?」

 

 

一刀:「『廃人化』は、聖痕の過剰使役によって文字通り廃人と化すこと。『狂人化』はその変異形態で、自我を失って死ぬまで暴れ続ける状態のこと。『消滅』も同様で、これは精神が負荷に耐え切れず自壊し、肉体や魂諸共、跡形もなく消え去ることを言う。いずれも、聖痕の能力を過剰に使役した結果生じた事例だ」

 

 

霞:「うげ・・・なんやそれ。エグすぎるわ・・・」

 

一刀の答えを聞いた霞は、さらに顔を蒼白にさせて口を手で押さえた。

 

 

宗平:「しかもさらに恐ろしいことに、恋殿はこの聖痕の力を完全に制御出来ていないようなのです」

 

 

信三:「と言いますのも、実は恋殿は、今もそうですが、聖痕の力を常に発動し続けており、そのせいで超人的な身体能力や感性を発揮している状態にあるのです」

 

 

華雄:「なにッ!?」

 

しかし、そのあとに続いた宗平と信三の告白に、華雄は即座に反応した。その話がほんとうなら、今も恋の身体は自分達の想像を絶する負荷に苛まれているはずである。一刀の話を聞いた後なればこそ、彼女の不安と恐怖は巨大な物となった。

 

 

華雄:「だが、呂布は今も平気そうな顔をしているぞ!もしも本当にその聖痕とやらが心身に強い負荷をかけるものであるのなら、呂布が今こうして安穏と茶を啜っていることなど出来ぬのではないか!?」

 

 

恋:「・・・(ズズッ)」

 

怒鳴るように捲し立てる華雄に構わず、恋はまた一口お茶を啜った。

 

 

一刀:「それは、恋が身近なもので消耗する生命力を補填しているからだ」

 

華雄の剣幕に、一刀は平静を保って答えた。

 

 

華雄:「生命力を補填だと?」

 

そんなことが出来るものかと思いながら華雄はそう問う。

 

 

一刀:「そう。食事だよ」

 

 

一同:『ッッッッッ!!!!???』

 

一刀の答えに、四人はハッとした。

 

 

宗平:「おそらく聖痕のせいだったのでしょうな。恋殿が異常な食欲を発揮していたのは」

 

 

一刀:「おそらく、自身の内から失われていく生命力を、『食事』と言う行為を介して他の生物から摂取し補填していたのだろう。だから、今まで聖痕を常時発動していたとしても大して問題が露見しなかったのだ。それほど膨大な食事をとれる立場もあったことだしな。と言っても、食事によって回復出来るのは主に肉体的な消耗だけだが」

 

 

信三:「それに恋殿はよくお眠りになられます。『睡眠』と言う行為は、消耗した精神力の回復に非常に効果的な手段です。ただ眠るだけでも、感情の昂りを抑え、興奮を鎮める効果があります。さらに、恋殿は自然界の氣――いわゆる外氣の流れ、龍脈を無意識に探し当てる能力をお持ちのようです。そこで眠りにつくことによって、効率よく外氣を体内に取り込み、精神を鎮めるだけでなく、回復させることも出来るようです。普通の人では、眠るだけで膨大な精神力を短期間のうちに回復するなど到底不可能です」

 

 

詠:「なッ成程・・・そう言うことなら納得出来るわ」

 

宗平と一刀の捕捉に、詠はそう答えるのが精一杯だった。

 

確かに、思い返してみれば該当することがいくつもある。

 

恋は普段から食事量は凄まじかったが、警邏の帰りや戦闘後は特に食事の摂取量が多かった。さらに、食後に短時間であるがお昼寝することもざらであった。

 

今までは特に疑問も抱かなかったこれらの行動も、一刀達の見解に基づいて判断すれば、食事は外氣の吸収と行使によって疲弊した心身の疲労を回復する栄養分を取り込み、直後に睡眠をとることによって回復力を大幅に強化していたのだ。

 

 

一刀:「しかし。だからと言ってこのままでいいと言うわけでは断じてない」

 

一刀は言った。

 

 

一刀:「これまでは他の異能者に出くわさなかったから生き残って来られたが、これからも出会わないと言う保証はない。その時、両者の命運を分けるのは、いかに敵より異能をうまく使いこなすかと言う、異能の制御能力の優劣だ。最初から全力でかかっていくことも一つの戦術かもしれないが、それも自分が敵より優れた技術を持っていればこそ成立するものであって、敵が自分より優れていた場合、それは致命的な弱点ともなる」

 

そう言って、一刀は恋の前に移動し、告げた。

 

 

一刀:「だから、君は学ばなくてはならない。その異能の制御法を。より多くの敵を屠り、大切なものを護るための力を、己が物とするために」

 

 

恋:「・・・」

 

そう言った一刀を見上げながら、恋はしばらくジッと黙っていたが、やがてゆっくり一度頷き、応えた。

 

 

恋:「よろしく、おねがいします・・・」

 

 

一刀:「引き受け申した」

 

そう言って、一刀は恋の頭を撫でる。

 

 

一刀:「ただし、俺の修業は厳しいぞ?しっかりついてこいよ、恋!」

 

 

恋:「・・・ん!」

 

一刀の宣言に、恋も力強く頷いた。

 

 

その後、詠達から正式に許可をもらい、恋は一時的に将軍職を返上。聖痕の力を制御する術を学ぶため、一刀に付きっ切りで指導を受けることとなった。

 

 

尤も、詠達が恋の修業を許可した理由に『話がほんとうなら食費が減る』などと言う身も蓋もない思惑が混ざっていたことは、本人達を除いて知る者はいなかった。

 

 

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 というわけで、今回は前話で言った、恋の入れ墨についての話でした。

 ちょっと強引過ぎたかな?という気がしないでもないですが、そこは大目に見ていただきたいと思います。

 もっといい小説が書けるようになりたいです。 

 それでは、今日はこの辺で失礼します。

 

 

 

説明
 こんばんわ。海平?と申す者です。
 今回は、恋の異常な食欲と身体能力について、自分なりに妄想した内容を書いてみました。
 強引な部分や拙い部分も多々あると思いますが、それでも良いと言ってくださる方はお進みください。
 それでは、どうぞ。
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コメント
続き期待しています。設定でフォースや、ジェダイを出してください(honda)
この設定は凄いですね・・・ 一刀の部下はどんな能力かな?(たこきむち@ちぇりおの伝道師)
なるほど、恋の刺青については原作でもほとんどふれられてませんからね。すごくおもしろいです。(幼き天使の親衛隊joker)
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真・恋姫†無双 北郷一刀 董卓軍 異能 金縛り 

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