恋姫三国伝〜三〜 |
・SDガンダム三国伝のキャラやストーリーを恋姫風にしてみたダイジェストっぽい短編集です。
・キャラの性格や口調が変わっていたり、武力が超パワーアップしていたりますが、ご了承下さいませ。
・元ネタが蜀ルートとの相性バッチリな作品なので、一刀と桃香は「二人で一人の劉備」なポジションです。
・この外史では本編で「天の国の言葉」扱いであるカタカナ等が普通に使われております。
・((?統|ほうとう))との出会い。
「ええっ!? あの白馬陣が…!?」
「この兵法書の、ごく一部に過ぎない…って言うの!?」
「何と!」
「すっごいのだ! それなら楽勝なのだ!!」
「ああ。もしも、この書の全てを使いこなせればな…だが」
「だが?」
「悔しいが、今の俺では半分も理解出来ん!」
「白蓮お姉ちゃんで半分って…わたしじゃ絶対無理だなぁ…」
「白蓮殿。それで、軍師募集なのですか?」
「ああ。我が軍には軍師がいなくてな…それに、この兵法書を完全に解読出来る奴がいないんだ」
「凄い兵法書なんだな…」
「これを書いたのは((伏竜|ふくりゅう))! 数年前、盧植先生が((荊州|けいしゅう))で出会ったそうだ。先生は良く((仰|おっしゃ))っていた…伏竜こそは正に天才!」
「伏竜…」
((烏丸|うがん))を倒して束の間の平和が戻った((幽州|ゆうしゅう))…。
白蓮は今まで以上に白馬陣を活かす為に、伏竜の兵法書を解読させる為に新しい軍師を募集する事にした。
「ここが、((易京楼|えききょうろう))…伏竜の兵法書を託された方が治める城…。
そして…その義弟は天の御遣い様で、龍帝剣に選ばれし勇者…」
三角形の帽子を被り、可愛らしい服装にミニスカート、腰には剣…まるで魔女っ子のような服装をした小柄な女の子が軍師募集の立て看板を見てやって来た。
「姓は?、名は統、((字|あざな))は((士元|しげん))と申します。または、((鳳雛|ほうすう))とお呼び下さいませ」
「鳳雛!? まさか、伏竜と並び称せられる名軍師か!」
「は、はひ! 伏竜も鳳雛も、((水鏡|すいきょう))先生が名付けて下さったんでしゅ!」
「落ち着け。舌噛むぞ」
「あわわ…す、すいません…」
外見と裏腹に、軍師としての実力は確かなようだが……焦ったり困ったりするとカミカミ口調になってしまうようだ。
そんな彼女の様子を危なっかしいと同時に、微笑ましいとも思う白蓮であった。
「あれが、?統…しかし、姉貴のところに来るとは予想外過ぎるな」
「ご主人様の世界では違うの?」
「ああ。もっと後に登場する人物の筈なんだけど…」
「最強先生の弟子なのに、全然強そうじゃないのだ」
「鈴々、水鏡先生だ。先生は武術家ではなく、兵法家だぞ」
「あ、そうだったのだ! 説教先生!」
「水鏡先生だ! 全く、先生が聞いたら呆れるぞ…」
「あのお爺ちゃんなら、『よきかな よきかな』で許してくれるのだ!」
「二人は水鏡先生を知っているのか?」
「ええ。旅の途中に知り合いました」
「でも、あの時は弟子なんていなかったのだ」
「ふむ…その頃はまだ弟子入りしていなかったか、既に師の下を巣立っていたかのどちらかであろうな」
新たな軍師の存在に興味津々の一同。
しかも、伏竜と並び称せられる鳳雛と呼ばれる天才軍師なら尚更だ。
「じゃあ次は、俺の義弟達と部下を紹介しよう」
「はい。あちらが((疾風|しっぷう))の((銀槍|ぎんそう))と呼ばれる((趙雲|ちょううん))将軍で、そちらの皆様が噂の((龍帝剣|りゅうていけん))一派ですね」
「そっちの名前の方が有名みたいだな、俺達…一応、幽州義勇軍って名乗ってるんだけど」
「やっぱり、龍帝剣の名前は大きいんだね〜」
「はい。龍帝剣は伝説の((三侯|さんこう))の一人、龍帝の魂を継ぐ者の証。正義の証ですから」
「正義の証…」
「おお〜、カッコ良いのだ!」
「正義の証、龍帝剣…心動かされる響きですな」
「水鏡先生と盧植先生が仰っていた通り、龍帝剣は真の正義の心の持ち主を((主|あるじ))と選ぶのですね…」
「盧植先生を知っているのか?」
「水鏡先生は本来の名前を((司馬徽|しばき))先生と仰るのですが、盧植先生の親友でもある方なのです」
『盧植先生の!?』
一刀、桃香、白蓮の声が重なる。
「はい。洛陽にいた頃は清流派として私腹を肥やす役人を取りしまる公安隊を指揮しており、曹操将軍の上司だったとか」
『曹操(将軍)の!?』
更に曹操の元上司と知り、愛紗・鈴々・星も一緒に驚く。
「盧植先生は((霊帝陛下|れいていへいか))から、龍帝剣に相応しい勇者を見つけ出し、((三璃紗|みりしゃ))の明日を救って欲しいと頼まれたそうです…」
「だから先生は龍帝剣を隠し持っていたのか…一刀が選ばれて、本当に良かったよ」
「そんな事情があったのに、別の世界から来た俺が選ばれるなんて…」
「ご主人様は天の((御遣|みつか))いだもん! 龍帝剣に選ばれたのも納得出来るよ!」
世間では((暗愚|あんぐ))の((誹|そし))りを受け、無能皇帝扱いされている霊帝の正体が、三璃紗の明日を救う為に盧植先生に龍帝剣を託していた…。
二人の意外な関係に驚きを隠せない一同だった…。
「驚いたよ、?統…いや、鳳雛の方が良いかな? 龍帝剣の事もだけど、君の先生と俺達の先生が親友同士で、しかも盧植先生が曹操将軍の元上司だったなんて…」
「((雛里|ひなり))と呼んで下さい。皆様には、真名で呼んで欲しいです」
?統は自分の真名である、雛里と名乗り…お互いの真名を預け合った。
「それにしても雛里、よく一人で荊州からここまで来られたね」
「そうだよ。雛里ちゃんみたいな可愛い子、悪い人に誘拐されそうなのに」
「はい、元々剣は少々扱えるのですが…((元直|げんちょく))ちゃんから((撃剣|げきけん))の扱いを習いましたから」
「おお、手品みたいなのだ!」
「器用だな。軍師とは思えん…」
「私も色々な国を旅したが、三璃紗の軍師は武を扱える者の方が多いのだな。優秀な軍師殿が来て下さって良かったですな、白蓮殿」
「ホント、俺には勿体無い軍師が来てくれたもんだよ…」
雛里は撃剣をあっという間に片手に三本ずつ取り出して見せる。
どうやら、いつでも取り出せるように隠し持っているようだ……全部で何本持っているかは秘密らしい。
「ところで、元直ちゃんって?」
「あ、私の親友の((徐庶|じょしょ))ちゃんの事です。自分の身をきちんと守れるようにって、教えてくれたんです」
「良い友達を持ったね」
「はい。私は氣を使わないと当てるのが難しいですけど…元直ちゃんは、氣を使わなくても百発百中の腕前ですよ」
「ほぇ〜、すっごいんだね〜」
「そして、私がここに来たのは…もう一人の親友の為でもあります」
「もう一人? もしかして、伏竜の事?」
「はい…本来なら、彼女も一緒にここに来る筈だったんです」
「だった? ねぇ、詳しく聞かせて貰えないかな?」
「はい…」
雛里は自分と徐庶、そして伏竜の事を話し始めた…。
・伏竜と鳳雛
「伏竜と鳳雛?」
「うん。((朱里|しゅり))ちゃんと私に水鏡先生が付けてくれた名前なの」
「凄いじゃない!」
「でも、伏竜は“地に伏す竜”、鳳雛は“((鳳凰|ほうおう))の雛”と言う意味…私達が天を((翔|か))けるのはまだまだ先と言われたんだよ」
「けど、先生に認められたんでしょ? いいなぁ…よし! なら私は虎になるわ!」
「竜に鳳凰に虎…ふふ、それじゃまるで三侯だね」
「いいじゃない、私達は未来の三侯よ」
「うふふ」
三侯とは((龍帝|りゅうてい))、((雀瞬|じゃくしゅん))、((虎暁|こぎょう))と言う神話上の英雄達。
龍帝は海となって世界を育み、雀瞬は太陽となって世界を照らし、虎暁は月となって世界を癒したと言われている。
「うっ!」
『元直ちゃん!』
「振り返っちゃ駄目! このままでは全滅よ! 貴女達だけでも先に行って!」
「何を言うの! 董卓軍なんて…」
「これ以上民を犠牲にしないで!」
三人は義勇軍を率いて、董卓軍と戦っていた…吊り橋を渡る途中、負傷している徐庶が膝をついて倒れる。
徐庶の言葉に、孔明と?統は同じ光景を見る…一緒に避難して来た民達の姿を。
「私達の兵法は殺す為じゃない! その先にある民達を生かす兵法なのよ! 今は…今は…民の事だけを考えて!」
「元直ちゃん…」
「……」
徐庶の言葉に、二人はこれ以上何も言えなかった…。
「いたぞぉ!」
「行きなさい孔明、?統! いつか…必ず貴女達の兵法が必要となる時が来るわ!! それまで生きて!! 生きて、三璃紗を守って!!」
吊り橋の向こう側から、董卓軍の兵士達が追って来た…!
徐庶は撃剣を構え、一人立ち向かおうと身構える。
「何を言うの! 貴女一人置いていけないよ!」
雛里は剣を持って徐庶を助けに向かおうとする。
「な、何をするの朱里ちゃん!!」
「ゆくよ、雛里ちゃん…」
「朱里ちゃん!?」
「……」
「朱里ちゃん! 止めて、まだ元直ちゃんが…」
朱里は雛里を捕まえ、強引に吊り橋を渡らせた。
「逃がすな、追えー!!」
「おー!!」
「さようなら伏竜、鳳雛!!」
「やめてぇえええ!!」
「……!」
「((勇里|ゆうり))ちゃああああんっ!!」
徐庶は撃剣を投げ付け、吊り橋を落とし……自分ごと、董卓軍を崖の下に落とした。
「……その直後、元直ちゃんは撃剣に取り付けておいた縄のおかげで、何とか助かりました」
「そ、そうか…」
「よ、良かったぁ…」
「その後、元直ちゃんは更に力を付ける為に修行の旅に出て行きました」
話の流れから徐庶が死んだと思っていた一刀達は、ホッと胸を撫で下ろす。
「元直ちゃん、敵を騙すにはまず味方からって言ってました。私もすっかり騙されました…あの時、孔明ちゃんは既にその事に気付いていたんです」
「孔明…それが、伏竜の名前か(諸葛亮孔明か…こんなに早く三国志の超大物の名前が出て来るなんて)」
「はい。でも…それ以来、孔明ちゃんは兵法を使う事を怖れて、世捨て人になってしまったんです」
『ええっ!?』
伏竜が世捨て人になってしまった事に驚く一同。
「あの時はそれが最善の策だと分かっていても、一歩間違えれば元直ちゃんは死んでいた…孔明ちゃんは、親友の危機でも冷静だった自分が許せなくなってしまったんです」
「で、でも! その場合は仕方なかったんだろ!?」
「軍師としては正しくても、人間としては間違っていたと思ったんでしょうね…。
私だって、もし元直ちゃんが死んでいたら…孔明ちゃんに逆恨みして、敵対する立場になって…この場にはいなかったと思います。
頭では理解出来ても、心では理解出来なくなってしまう…それも、人間ですから」
「雛里ちゃん…」
自らの心の闇を((暴露|ばくろ))する雛里に、一刀達はそれ以上何も言えなかった…。
「伏竜の兵法書は三璃紗の平和の為に必ず役立てて見せます…! そうすれば、きっと孔明ちゃんも力を貸してくれると信じています…!」
「雛里…俺達も、協力するよ!」
「お願いします。では、一刀様…天の国について、もっと詳しく教えて下さいますか?」
「ああ、喜んで!」
親友の為に、兵法書の解読を始める雛里。
彼女は恐ろしいまでのスピードで兵法書を解読していき、白馬陣を初めとする兵法を公孫賛軍に伝えた。
本人曰く「戦略の方が得意」だそうだが…その才能は((政務|せいむ))でも発揮され、一刀の「天の国の知識」を積極的に吸収して再現した。
幽州は((瞬|またた))く間に発展して行った…。
―ところかわって、荊州―
「あ、かかった!」
「あ!」
「ちぇー、また餌だけ持って行かれちゃったよ」
「うふふ…それでは魚は釣れませんよ」
「あ! 先生」
「どれ、貸してごらんなさい」
子供達が釣りをしていると、そこに帽子を被った小柄な少女が現れる。
「でも、もう餌が無いよ」
「大丈夫です…えいっ!」
少女は餌を付けていない釣竿で、あっさりと魚を吊り上げてしまった。
「凄いや! でも何で…?」
「大切なのは魚の気持ちになる事です。
力でねじ伏せるのではなく、魚の心を読み、その動きに合わせる…そして、一瞬先手を取って勝負に出る。
そうすれば、例え何万の魚だろうとあっという間に釣れますよ」
「嘘だぁ! いくら何でもそんな事…」
「あ〜あ、また始まったよ。先生のホラが」
「いや…私は別にホラなど…」
「またねーホラ吹き先生!」
「今度はホントの釣り方教えてよ」
「ははは…」
少女を「ホラ吹き先生」と呼んで、子供達はそのまま去って行ってしまった。
「やれやれ、ホントに読めるんですけどねぇ…『色々と』 さて…今度はどう動きますかな」
少女はそのまま何匹も魚を釣り上げ、一人呟いた…乱世の英雄達がどう動くのかに興味を持ちながら。
この少女こそ伏竜…雛里の親友、孔明こと朱里である。
・幽州を救え! それぞれの使命
「国境警備隊からの連絡です。((冀州|きしゅう))軍は国境を突破! その数、およそ百万!」
「百万…だと?」
「姉貴、幽州軍の数は?」
「約一万」
「そんな! 全然勝負にならないのだ…」
「何を弱気な! 我等には無敵の白馬陣がございます! 将軍の号令さえあれば決して引けは取りません!」
「白馬陣か、確かにあれは凄かったのだ!」
「圧倒的に数では勝っていた烏丸の軍を打ち破った兵法の極意…か」
「…そうだったな。頼んだぞ、趙雲」
「はっ!」
公孫賛の幽州軍一万に対し、袁紹の冀州軍百万が攻めて来る…弱気になる一同に、星が喝を入れる。
「伏竜の力を得られれば、百万の軍勢にも((太刀打|たちう))ちできよう」
「今回ばかりは私一人では…お願いします! 荊州に行って、孔明ちゃんを説得して来て下さい…!」
白蓮と雛里は一刀に((荊州|けいしゅう))に行って、伏竜こと孔明を捜し出して欲しいと頼む。
「姉貴! 俺もずっと考えてたんだが…((許昌|きょしょう))の曹操将軍に援軍を頼んではどうだろう?」
「曹操!?」
一刀の提案に驚く白蓮。
「確かに、今の三璃紗で((玉璽|ぎょくじ))を持つ袁紹に対抗出来るのは曹操将軍ぐらいでしょうか…」
「俺が許昌へ行って将軍に話をつける。その間に愛紗と鈴々は荊州へ…」
「いや! 許昌へは私が参ります」
「愛紗!?」
「愛紗ちゃん!?」
「曹操将軍は正義心は強いが、決して甘い方ではありませぬ。ご主人様が自ら出向かれては危険過ぎます」
「しかし…」
「愛紗ちゃん…」
「お任せ下さい! この愛紗、一命を賭して果たしましょう!!」
「分かった…頼む!」
愛紗の提案通り、曹操将軍に援軍を求めるのは彼女に決まった。
「じゃあ、鈴々はお兄ちゃんと行くのだ!」
「駄目だ! 鈴々は幽州に残って留守を守ってくれ」
「案ずるな! いかに百万の敵と言えど、二・三ヶ月なら持ちこたえてみせる!」
「我等の白馬陣は更に強くなった! ご心配めさるな!」
「幽州の民を守る為の策も罠も((沢山|たくさん))用意してありますから…! 一刀様…孔明ちゃんの事、お願いしますね」
「わたし達の事は心配しないで、ご主人様!」
「分かった! 一刻も早く使命を果たして戻る!」
「頼んだぞ」
こうして…一刀と鈴々は伏竜こと孔明を捜しに、愛紗は曹操将軍に援軍を求める為に別行動する事になった。
―数日後…((黄河|こうが))の港―
「すまんな、一刀。お前達は俺の部下でも何でもないのに…」
「何だよ、水くさいな。幽州は俺達の故郷! 故郷の人々を守るのは当たり前じゃないか!
それに…ようやく訪れたこの平和と、皆の笑顔。それを守る為なら俺は…」
「では、私はこのまま((豫州|よしゅう))行きの船に乗ります。ご主人様も、道中お気を付けて」
「ああ、愛紗もな」
「頼んだぞ、一刀。お前達が戻るまで、幽州は我等が命を懸けて守ってみせる!」
こうして彼等は旅立った…それぞれの使命を果たす為。
やがて、季節は冬…。
―荊州―
「いやー、懐かしいのだ〜。この辺りは昔とちっとも変わってないのだ!」
「それは良いが、水鏡先生の所は近いのか? 雛里からの手紙もちゃんと届けないと…」
「大変だ―!! 水鏡先生の家が燃えてるぞ〜!!」
『え?』
民達の声から、捜していた水鏡先生の居場所が分かった……火事が原因で。
「す…水鏡のお爺ちゃん!?」
「お? おお、そなたは確か鈴々。久し振りじゃのぅ」
「そんな事言ってる場合じゃないのだ! 今助けるのだ!」
「ま、待て鈴々!」
自分の家が炎で燃え盛っていると言うのに、老人は至ってのん気だった。
鈴々は水を被って、家の中に走って行く。
「うわっ! 鈴々――っ!!」
炎は更に勢いを増し、崩れ始める…!
「くっ…こうなったら、炎を消しとばしてやる! 星龍ざ…」
「待って下さい!!」
一刀が剣に手をかけ、必殺技を放とうとした時…帽子を被り、右手に羽扇を持った少女の声が止めに入った。
「ご老人と妹さんを殺す気ですか? その技は強過ぎます。炎どころか二人の命まで消してしまうでしょう」
「じゃあどうしろと言うんだ! このままでは…」
「斬るのは((庵|いおり))ではありません。そこの大木の根元を切って下さい」
「何を言っているんだ、君は!?」
「急がないと、手遅れになりますよ」
「うわぁ、林にも燃え移ったぞ!」
「山火事になっちまうだぁ!」
少女の突然の提案に驚く一刀。
こうしている間にも、炎の勢いは増して行くばかり…。
「私を信じて下さい! ((義妹|いもうと))さん達を助けたいのでしょう?」
「くっ……星龍斬!!」
「うわぁ!」
「な…何だっ?」
「こっ!? これは!?」
一刀は少女に言われた通り、大木を切り倒した…!
大木は大きな音を立てて倒れ、炎を消していった…。
「鈴々! 水鏡先生! 無事か!?」
「うん…さっすがお兄ちゃん! 助かったのだ」
「いや…俺にも何がどうなったんだか」
「ほほほっ、良きかな良きかな。
切られた大木が周りで燃えていた木々を巻き込んで倒れ、我が((草庵|そうあん))の炎ごと押し潰したか。何とも見事な手並みじゃ、ほほほ」
(あの子は、あの混乱した状況の中、そこまで読んで、俺にあの木を切れと言ったのか!? 一体何者なんだ…まさか、あの子が伏竜…孔明!?)
張飛と水鏡先生の無事を確認したかのように、いつの間にか少女は姿を消していた…。
・幽州燃ゆ!?
「ほぅ…雛里は幽州で元気にやっておるようですな」
「はい。ところで、伏竜…孔明の事なんですが」
水鏡先生は、一刀から渡された雛里からの手紙を読む。
「最近はわしの前にも中々姿を見せなくてのう…」
「そうですか…」
「お兄ちゃん、村中捜すのだ!」
二人はそのまま孔明を捜しに向かう。
「聞いたか? あの連中は伏竜を捜しておるそうじゃ」
「…らしいですね。私には関係ありませんが」
「相変わらずじゃのう。が…それもまた良きかな。ほっほっほっ」
「…あの方が、天の御遣い…」
木の陰に隠れていた孔明が、水鏡先生の背後に現れる。
彼女はまだ、心を閉ざしたままだった…。
―その頃、幽州―
「あと少し頑張れば援軍が来てくれる! それまで、何としても幽州を守り抜くんだぁ!」
「敵がこちらより上なのは数だけだ! 我等白馬陣の団結力、見せてやれ!」
「公孫賛将軍! 敵が真正面から攻めて来ました!」
「何!? またか!?」
「はい、またです!」
「……何を考えておるのだ、袁紹軍は」
「((麗羽|れいは))の事だ、何も考えてないんだろうな…」
「おかしいですね…袁紹軍には百万の軍勢を手足のように操る名軍師・((田豊|でんぽう))さんがいる筈なんですが…?」
「もしかして、病気になっちゃったとか?」
「だとしたら、罠の天才と呼ばれるもう一人の名軍師・((沮授|そじゅ))さんを((官渡|かんと))から呼び戻す筈です」
「もう一人いるの!? 罠の天才って…もしかして、雛里ちゃんよりも?」
「はい。沮授さんがいれば、私の罠なんて簡単に破られる筈なんですが……破られませんね」
「白蓮殿、これは我々を油断させる為の袁紹軍の罠……では無いんでしょうなぁ」
「もしかして、田豊と((喧嘩|けんか))でもしてたりしてな……麗羽の馬鹿なら十分有り得る」
公孫賛軍一万対袁紹軍百万の圧倒的に不利な筈の戦い……予想外にも、公孫賛軍が連戦連勝だった。
何故なら……袁紹軍は圧倒的な数の有利にも関わらず、馬鹿正直に正面からしか攻めて来ないのだ。
これでは烏丸と大差が無い…公孫賛軍は白馬陣を始めとした兵法の数々や、雛里が仕掛けた罠で戦を有利に進めていた。
―冀州軍・本陣―
「これは一体どういう事ですの、田豊さん!? 百万の軍勢がいながら、何故たった一万にいつまでも手こずっていますの!?」
「いくら相手が幽州の田舎兵法とは言え、奴等には鳳雛がおります!
あの小娘、一万の軍勢を手足のように扱いよる! その上、沮授程では無いにしろ、罠の扱いも心得ておる!」
「そんなの関係ありませんわ! 華麗に! 優雅に! 雄雄しく! 勇ましく! 真正面から突撃して勝利してしまいなさい!!」
「だから! それでは駄目だと何度言えばお分かりになるのですか! 馬鹿正直に突っ込むだけでは勝てませんぞ!!」
「それを何とかするのが、軍師である貴方の仕事でしょうが!」
「だったら、この田豊に兵を指揮する権限を下され!」
「お断りしますわ! ((私|わたくし))が! わ・た・く・しが! 自ら指揮を取ってこそ、この戦いに意味があるのですわ!」
袁紹こと麗羽は名家出身であるが、大層の自信家でかなり浮世離れした……ようするに、世間知らずのお嬢様だ。
家柄を鼻にかけ、何かと高飛車な言動を繰り返すが…意外と簡単に真名を許す事が多い。
誰もが認めるほどの無能、三国一の馬鹿、何故か勉強は出来る馬鹿、愛すべきお馬鹿……つまり、超が付く程の馬鹿で無能。
褒められるのは美しい外見と、袁家の人間特有の強烈かつ極端なまでに強い悪運、賭け事に強い事のみ…。
「ええい! これだから栄養が全て胸に行っている人は!」
「何ですってぇ! このわたくしの完璧な((美貌|びぼう))に! 特に、この夢と希望が詰まった爆乳にケチを付けるおつもりですの!?」
「醜い欲望と野望の間違いでしょうが、この馬鹿姫は〜! そもそも、男嫌いな貴女は子供を産んで育てる予定も無いでしょうが!」
「産む予定は無くても、いつまでも若く美しくありたいのが女と言う生き物ですわ!」
「そういう台詞は真っ当な恋愛でもしてから言いなされ! 貴女みたいな方がいるから、百合の花が忌み嫌われると冀州の花屋が嘆くのですぞ!!」
「ううう、ああ言えばこう言う…これだから、頭の固い年寄りは嫌ですわ!」
「これだから、脳((味噌|みそ))花畑どころか空っぽの小娘は嫌じゃ!」
「きぃいいいいい〜っ!! ぬぅぅあんですってぇえええ〜!!」
袁紹軍筆頭軍師、田豊…例え上司であろうと一歩も退かず、歯に((衣|きぬ))着せぬ態度で((叱|しか))る頑固親父。
その性格故、袁紹軍の将軍や兵士達一同から「自分達の言葉を代弁してくれる凄い方」として絶大な人気を誇っている。
袁紹軍一同は、あの手この手で麗羽を言いくるめて彼を庇っている…彼が処刑されずに済んでいるのも、その為だ。
袁紹軍の真の大将は彼であり、馬鹿な袁紹(麗羽)はお飾りに過ぎない……と言うのが、曹操を始めとする各国の王達の意見である。
「あ〜、沮授と((顔良|がんりょう))と((文醜|ぶんしゅう))に伝言を頼む。適当に戦ったら、さっさと帰って来いって伝えておいてくれ」
「はっ!」
「こんな馬鹿な戦では、死んでも死にきれんわい……あいつ等がおらんかったら、ワシ一人で馬鹿姫の面倒を見るはめになるしの」
怒りが爆発した馬鹿姫を無視して、兵士に伝言を頼む田豊。
とにかく…自軍に大きな被害が出ないように調整して、さっさと負けて冀州に帰るように仕向けたいのであった。
その後も、同じように戦は続き……もう援軍無くても勝てるんじゃないかって程に公孫賛軍の圧勝だった。
公孫賛軍の援軍として駆け付けた曹操軍の面々は……その光景を見て、頭が痛くなったそうだ。
愛紗は、百合百合しい輩の多い曹操軍で身の危険を感じながらも戦って来た自分の苦労は何だったんだと泣きたくなった…。
そんな馬鹿馬鹿しい事になっているとは思ってもいない一刀と鈴々は、孔明を捜して説得する事を続けていた…。
・((三顧|さんこ))の礼! 天才軍師の決意!
―荊州―
「すげーや、魚がいっぱいだ!」
「これなら手でも取れそうだな」
「持って帰ったら、皆ビックリするよ」
川と滝が凍り付いた場所で、魚を捕ろうとしている子供達。
しかし、滝にはヒビが入っていた…。
「また、貴方達ですか…これでもう三度目ですよ? 何度お断りすれば諦めていただけるんですか?」
「何度だって来るさ! 君が俺達と一緒に来てくれるまで」
「全く、困りましたねぇ。私には、貴方達の力になれる事など何も…」
「いいや! 君には凄い力がある! あの時、君が的確な指示を出してくれたから皆を助ける事が出来たんだ」
「もう、その話はよしましょう」
「あ〜、もう我慢出来ないのだ! お兄ちゃん、今すぐ幽州に帰るのだ〜!」
「待て! 鈴々」
「何で止めるの!? お兄ちゃんは幽州が心配じゃないのか!? もう鈴々達が荊州にいる理由は無いのだ!」
「俺達二人が戻ったら、幽州が救えるのか! 俺だって今すぐ帰りたいさ。でも俺達じゃ兵法を極めた伏竜の代わりにはなれない。
百万の軍勢と戦う((術|すべ))も、苦しんでいる人々を守る力も、今の俺達は持っていないんだ。
この荒れ果てた三璃紗を救う為に今必要なのは、勇気を力に変える優れた智力を持つ者…それが君だ! 頼む! 俺達に力を貸してくれ!」
「…貴方は兵法を魔法か何かと勘違いしていませんか。
かつて貴方と同じ事を考え、暴君董卓に立ち向かった者がいました。世の中を変え、人々を救おうと……。
しかし…その人を待っていたのは数え切れない程の犠牲者と、例えようもない絶望……。
大いなる力はまた、大いなる悲劇をももたらす。そんなものに世の中を変える事など出来る筈も無い。兵法を使った者は皆、地獄の業火でその身を焼かれる運命なのです」
一刀の説得にも耳を傾けない孔明。
彼女が語る話は、雛里から聞いた話と一致する…彼女自身の過去。
「先生―」
「これは皆さん」
「すいません、子供達がお邪魔していませんか?」
「いえ、今日は一人も来てませんよ?」
「う〜ん、ここにも来てないとすると…やっぱり山かな」
そんな時、孔明の事を「ホラ吹き先生」と呼ぶ子供達の親達が訪ねて来た。
「!」
「先生!?」
「お、おい? どこに行くのだ!? 何なのだアイツ、いきなり…?」
つららが溶けて、自分の右肩に当たったのを見た孔明は突然走り出した…!
「…!」
「どうしたの、お兄ちゃん? 何見て…わ! グチョグチョ!」
「分からない…でも、何か様子が変だ。後を追うぞ!」
「わ! ま、待ってよお兄ちゃん!」
地面の雪がすっかり溶けて、((泥|どろ))だらけになっていた。
孔明を追って、一刀と鈴々も走り出す。
「ふう、ふう…アイツ、どこに行ったのだ…」
「おい! 見ろ、鈴々」
「ありゃ? この川…来た時は確か、カチンカチンに凍ってたような……」
「温かい」
「温泉でもわいた…とか?」
「まさか! 行くぞ!」
「にゃっ! 何だ? この熱気は!?」
「一体何が…!?」
「溶けたつらら、川の水温の上昇、そして煮えたぎる滝つぼ…異常事態の中心はここに違いありません。だとしたら、原因は…」
(この子は、あの一瞬でそこまで…)
孔明を追って辿り着いた場所は、熱気で煮えたぎる滝つぼだった…。
「せ、先生ー!!」
「あついよー! 助けてー!」
「皆…」
「行くぞ、鈴々!」
「うん!」
そこには、魚を捕りに行っていた子供達が川の真ん中の小島に取り残されていた。
一刀と鈴々は急いで助けに向かおうとする。
「いけないっ!!」
「うわっ!」
「何ぃ!? 竜だと!?」
(この力は…まさか!?)
危険を察知した孔明が二人を止めたと同時に、巨大な竜が姿を現した。
この世界には竜が虎や熊と同じように存在する…中には悪竜と言う人間に危害を加える凶暴な種類もいる。
しかし、孔明はこの竜からそれ以上に強大な力を感じ取っていた…。
「クッ!!」
『うおおおおおっ!!』
「北郷さん!」
「うぐっ!」
「な、何て化け物なのだ…」
二人は竜に向かって行くが…二人まとめて吹き飛ばされてしまう。
「無茶です! あれは戦って勝てる相手ではありません!」
「だからと言って、このまま黙って見ていろと…」
「うわあああ〜!」
「子供達が!!」
「駄目です! この竜の力は…」
「だったら何だ!?」
「!?」
子供達の悲鳴を聞き、助けに向かう一刀。
「例え相手がどんな力だろうと俺は負けない! 目の前の命一つも救えずに、世の中なんて変えられるものか!!」
一刀と鈴々は負けずに竜の攻撃を避け、何度も斬りかかる。
「北郷さん…」
「教えてくれ! 君なら子供達を救う方法が分かる筈だ!」
「しかし…」
「俺は絶対に救ってみせる! ((兵法|チカラ))を使う事を恐れるな! 運命なんかに屈するな! 俺がお前の全てを背負ってやるっ!!」
「!」
一刀の必死の説得に、遂に孔明の心が動いた…!
「((爆凰扇|ばくおうせん))!! 変形! ((爆凰機|ばくおうき))!」
羽扇を空高く投げ、鳥型の偵察機に変形させる。
(必ず近くにある筈…竜の力を強めている力の源が。あの大きな光は北郷さん達、こっちの小さな光が子供達…)
「うわああっ!」
「お兄ちゃん!」
「くっ! (どこ!? どこにあるの!?)」
竜は更に力を増し、一刀と鈴々に襲い掛かる!
「…! そこです!! ((爆凰烈羽|ばくおうれっぱ))!!」
爆凰機が変形し、孔明の背中に合体して翼となる。
そして、その翼から無数の羽を滝にめがけて撃ち出した!
「北郷さん! あそこに追撃を!」
「鈴々! 稲妻を呼べえっ!」
「お〜っ! 爆裂大雷蛇あっ!」
「うおおおっ! 雷撃星龍斬っ!!」
鈴々の爆裂大雷蛇の稲妻を、一刀の((双剣|そうけん))・((爪龍刀|そうりゅうとう))と((牙龍刀|がりゅうとう))に帯電させた状態で、五芒星を描くようにして斬撃を繰り出す。
孔明が攻撃を仕掛けた滝に、更なる追撃を加える。
「あれは…((玉璽|ぎょくじ))!?」
玉璽とは権力者達が捜し求める((聖印|せいいん))、皇帝の証。
自らの意思を持ち、三侯の魂が宿るとされているが、善悪問わずに力を与える危険な代物でもある。
その玉璽が、竜に力を与えていたのだ…一刀達の必殺技を受けた玉璽は、どこかに飛び去ってしまった…。
力を失った竜は突然大人しくなって、一刀達を怖れて逃げ去って行った。
玉璽の力のせいで暴走していただけで、元々は大人しい竜だったようだ…。
「しまっ…!」
「わぁあああ!」
「うわあっ!」
「そ…そんな…」
「お兄ちゃん!」
「私は…また…」
しかし、一刀と子供達が滝に飲まれてしまう…。
孔明はその場にがっくりと膝を突く。
「ゲホ! ゲホ!」
「ふぇ〜ん!」
「こわかったよ〜」
「お兄ちゃん!」
「い…言っただろ! 絶対に救ってみせるって」
「貴方と言う人は…」
一刀は子供達を抱えて、川から飛び上がって来た!
そんな彼の姿を見て、孔明は心を動かされた…!
「心は決まったようじゃの」
「ええ」
(賭けてみよう、あの((侠|おとこ))の方に…この私の全てを!)
子供達を親達の元へ無事送り届けた一刀と鈴々の姿を見て、孔明は決心する…。
「見せて頂きましたよ。北郷さん」
「え?」
「『人は運命に屈せず』貴方は私に道を示してくれた。今度は私が答える番です。どうぞ私を、貴方の正義の為にお使い下さい」
孔明は一刀に敬意を((表|ひょう))して((跪|ひざまず))く。
「孔明…」
「私は…姓は((諸葛|しょかつ))、名は((亮|りょう))、字は孔明、真名は((朱里|しゅり))。かつて伏竜と呼ばれていた者です」
「おお〜! やったね、お兄ちゃん!」
「地に伏す竜、遂に天を駆けるか。良きかな、良きかな」
二人は握手を交わす。
そんな二人を見て、水鏡先生はにこやかに微笑んだ。
「これからは北郷さんは私の主…ですから、ご主人様って呼びますね!」
「ご、ご主人様!?」
「お兄ちゃん…お姉ちゃん達にもそう呼ばれてるんだからいい加減に慣れるのだ」
「そんな事言われてもなぁ…」
「それにしても…思い出す度に嬉しいです…」
「ん? 何が?」
「はわわ…わ、私の全てを背負う…ですよ。こ、これって愛の告白と受け取っても…?」
「えっ!?」
「こういう所がお兄ちゃんの凄い所なのだ…」
朱里の大胆発言に驚く一刀、呆れる鈴々。
あくまで彼女を仲間に引き入れようと説得する為の言葉であり、愛の告白なんて考えてすらいなかったのだから。
しかし…男性が女性に『俺がお前の全てを背負ってやる』なんて爆弾発言は、そういう意味に捉えられても当然の流れだった…。
「……私とご主人様の出会い、こんな事があったんですよぉ〜♪」
「いいな〜、わたしもご主人様に言って欲しいな〜」
「一刀、お前という奴は…またかよ…」
「ほほぉ、流石は一刀殿…無自覚と言うのは恐ろしいですな」
「朱里〜! あの時は鈴々もいたのだ〜!」
後にこの話を朱里から聞いた桃香は羨ましがり、白蓮は呆れ、星は面白半分にからかい、鈴々は自分の話が殆ど無い事に不満を言う。
「あわわ…朱里ちゃんズルイ、朱里ちゃんズルイ、朱里ちゃんズルイ…一刀様をご主人様って呼んでる…((恋敵|こいがたき))がまた一人…」
「はわわっ!? 雛里ちゃん、撃剣はしまってぇ〜!!」
「ほぉ〜…私が身の危険を感じながら曹操軍で戦っていた頃に、そんな事があったのですか…」
「あ、愛紗落ち着け! 偃月刀はしまって!」
「ご主人様、逃げましょう! 二人で空を飛んで愛の逃避行です!!」
「そりゃ、俺も氣で飛べるけど…って朱里、火に油を((注|そそ))ぐな〜!! 何とかしろ、伏竜〜!!」
「こういう場合の必勝の兵法は、((三十六計|さんじゅうろっけい))逃げるが勝ちですよぉ〜!!」
雛里は撃剣を出して朱里を、愛紗は嫉妬に駆られて((青龍偃月刀|せいりゅうえんげつとう))を構えて一刀を追い掛け回したとか…。
・伏竜と鳳雛、天の御遣いに恋をする!?
「ところで二人共、一つ聞きたい事があるんだけど」
「どうしました、ご主人様?」
「何ですか、一刀様?」
「徐庶ちゃんって、どんな子?」
「元直ちゃんですか? 明るくて優しくて、私達と一緒で料理が得意ですね」
「特にお菓子作りにおいては私達よりも腕が上なんです。私達も、お菓子作りは元直ちゃんに教わりました…」
「へぇ…それは凄いな」
『そして、巨乳なんですよね…』
「ちょっ、怖いんですけど!? しかも同時!? 何か恨み((籠|こ))もってる!?」
「だって、ご主人様…元直ちゃん、ちょっと前までは私達と同じ貧乳だったのに…」
「ちょっと年上だからって、あんなに突然大きくなるなんて納得行かないです…」
「そ、そうなんだ…」
『私達、絶対に大きくなりますから!』
「はい!?」
『だから、楽しみにしていて下さいね!』
「は、ははは…が、頑張ってね…」
『はい!!』
徐庶の事を聞きたかっただけなのに、何故か得体の知れない迫力を持つ二人に圧倒される((羽目|はめ))になった一刀であった…。
「朱里ちゃん、やっぱり恋敵は多いよね…」
「そうだね、雛里ちゃん。まず厄介なのは…やっぱり同じ師の下で学んでいた桃香さまと白蓮さんだね」
「姉弟子だからって、お姉さん属性で振舞ってるよね……桃香様、数少ないお姉さん要素は胸だけだけど」
「あの胸が厄介なんだよ、雛里ちゃん…天然な桃香さまのほんわかした癒し系の雰囲気とあの反則な巨乳、ご主人様じゃなくても甘えたくなるよ…」
「卑怯だよね…。それに、一刀様と二人で一人みたいな感じが反則だよね。お互いの足りない部分を補い合っているあの雰囲気が……羨ましいよね、((妬|ねた))ましいよね」
「白蓮さんも、鎧の下は中々の大きさで…何と言っても、ご主人様に『姉貴』と呼ばれているのが大きいよね」
「次は愛紗さんと星さん。愛紗さんは一刀様の義妹なのに、あの胸は反則だよね…」
「それを全く活かせないのが駄目だね。もっと有効活用すれば良いものを……ハッキリ言って宝の持ち腐れだよね、雛里ちゃん」
「そうだね、朱里ちゃん。あと、星さんは強敵だよね…普段は積極的にお色気で迫って来るけど、戦いと仕事では愛紗さんのように真面目っていうギャップがあるし」
『鈴々ちゃんは保留で。貧乳仲間だから』
「今の所、ご主人様の第一夫人候補は桃香さまだね…次が白蓮さん、星さん、愛紗さんの順で」
「朱里ちゃん、敵は多いね…あと、今後も増える事も考えて行動しないと」
「分かってるよ、雛里ちゃん…じゃあ、いつものお祈りをしよう!」
「うん…!」
『巨乳モゲロ、巨乳モゲロ、巨乳モゲロ…』
一刀に恋をしてしまった二人は、力を合わせて他の恋敵達に対抗する事にした。
会議の後は、不気味な祈り……と言うか、((巨乳人|きょにゅうびと))へ呪いをかけるのが日課の二人であった。
〜あとがき〜
恋姫キャラでSDガンダム三国伝パロディ、元々は某掲示板で三顧の礼ネタを書いたのがきっかけです。
一刀が朱里に「俺がお前の全てを背負ってやるっ!!」ってのを、やってみたかったんです…劉備の台詞は桃香より一刀の方がしっくり来ますし。
本来、三国伝の?統は徐庶が死んだ事で孔明を逆恨みし、敵対する立場だったりします。
しかし雛里とはキャラが違い過ぎるので…徐庶を生存させて、朱里を立ち直らせてくれるように一刀達に頼む立場にしました。
三国志ものの孔明って、朱里が可哀想になるレベルの化け物連中揃いですが……三国伝も例外じゃないんですよね。
説明 | ||
あんまり、はわわあわわ言わない朱里と雛里回です。 | ||
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コメント | ||
>>佐木瑞希さん、紫苑達だとすぐ閨的な話に持って行かれそうですね……あのお姉さん達は、全く。(ノワール) う〜ん乳大きくするには、三熟・・おねいさまに聞くのがいちばんじゃ・・・(殺気が!)(佐木瑞希) >>劉邦柾棟さん、貂蝉「あらあら、大丈夫?」 卑弥呼「ええい!! しっかりせんか!!」 于吉「おや、落ち込んでしまいましたね…」 左慈「フン…」 特に朱里は落ち込んで良いと思います…三国志ものを知ってると、彼女は「孔明なのに!」とか散々言われたでしょうしね。(ノワール) この、別の外史の自分達の事を知った「朱里、雛里、白蓮」がもの凄く落ち込んだことは言うまでもない。 朱里&雛里&白蓮「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・orz(ズーーーーーーン)」」」(劉邦柾棟) |
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