僕と姉さんと乙女心
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「はい、アキくん。あーん」

「ね、姉さん……?」

「ほらアキくん。口を開けてくれないとご飯を食べることが出来ませんよ」

「あ、うん。それは分かるんだけど何で僕は今両手を縛られてるの!? これじゃあご飯

を食べることなんて出来ないよ!」

 大体、両手を縛る意味が分からないんだけど!

「ですから姉さんがアキくんに食べさせてあげますよ?」

「僕としては自分で食べたいんだけど……」

 わざわざ姉さんに食べさせてもらう必要はないんだよね。だから早くこの両手を縛って

いるロープを解いてよ。

「……何故ですか?」

「いやいやいや、自分で食べたいって思うのっておかしいことかな? 普通のことだと思うけど!」

 なに、自分で食べるのがおかしいみたいな感じにしてるの!? おかしいのは姉さん

の方だからね!

「……はぁ。まったく、アキくんは何も分かってないのですね」

「え……?」

「姉さんだってご飯は自分で食べるものだというのは理解しています。それくらい常識

ですからね」

「姉さんが常識を語るなんて……」

「殴りますよ?」

「ごめんなさいっ!」

 両手が縛られているという状態で器用に土下座をする。

「姉さんはですね、アキくんに料理をたべさせてあげたいのですよ」

「……僕が作った料理だけどね」

「何か言いましたか?」

「い、いえ! 何も言ってません!」

 ここは黙っておこう。もしここで余計なことを言えば、姉さんが張り切って料理を

作ってしまいかねないからね。それだけは絶対に回避しなければならない。

「はぁ。アキくんはすぐに話の腰を折りますね」

「……ごめんなさい」

 これって僕のせいなのかな? 姉さんが相変わらず変なことをしたり、言ったりする

のが原因のような気がするんだけど……

「つまり姉さんが何を言いたいのかと言いますと――」

 ぐいっ、と料理を箸で掴んで口元まで持ってくる姉さん。

「ね、姉さん……?」

「ほらアキくん口を開けてください」

 ぐいぐいと、料理を口元に押しつけてくる。それを大人しく口を開けて口の中に入れる。

「はい、あーん」

「あーん」

「はい、よく出来ましたね♪」

 嬉しそうな笑みを浮かべる姉さん。これの一体何が嬉しいのだろうか?

「アキくん美味しいですか?」

「ま、まぁ……」

 自分で言うのも変だけど料理には自信あるし、ある程度美味しいとも思っている。

 ――と、いうより、そもそも何で姉さんはこんなことをしたがっていたのだろう?

 

 そんな僕の表情を読み取ったのか、姉さんは――

「鈍感なアキくんに言っても分からないかもしれませんが、好きな人に『はい、あーん』

でご飯を食べさせるのは女の子の憧れなんですよ」

「聞こえない! 聞こえないよ! 今姉さんが、ぼそっと『好きな人に』って言ったのは

全然聞こえていないからね!」

「ふふ、アキくん大好きですよ」

「も、勿論……家族愛的な感じだよね?」

 お願いだから、そうであって欲しい。

「勿論。異性としてですよ♪」

 素晴らしいほどの極上の笑みを浮かべる姉さん。

 だ、ダメだ! この姉、変態だ!

「じょ、冗談……だよね?」

「冗談ではありませんよ。本気です」

「またまた〜姉さんは冗談が上手いんだから……」

 僕は諦めないぞ。今の件を全部、冗談ってことにするんだ!

「仕方ないですね。おバカなアキくんに分かるように証明をしましょう」

「しょ、証明……?」

「はい。いきますよ」

 ずずず、と姉さんの顔が僕に近づいてくる。

「ね、姉さん……?」

「アキくん」

 

 ――チュッ。

 

「      」

「これがその証明ですよ。これで理解していただけましたか?」

 姉さんが何かを言っているような気がするけど、声が耳に入ってこない。

 

 姉さんにキスをされた……その現実が僕を包み込んでいて、それどころじゃなかったから。

 

説明
玲さんがお姉ちゃんに欲しい。そんな気分……
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コメント
まあ、普段から理不尽(自業自得も多々あるけど)な暴力(肉体的・精神的を問わず)を受けているからな、これぐらいの幸せがあっていいんじゃない?(ドッペルゲンガー)
吉井家の人間ってどっちかの方面にネジが飛んでるとしか思えませんよね… そして明久爆発して死滅しろ(tk)
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