そらのおとしもの OO(ダブルオッ○イ)男達の哀歌(前編) |
この世界は争いで満ち溢れている。
それはここ空見町でも例外ではない。
「怯むな進めぇ! 俺達の意地を見せてやるんだ!」
武力介入によるモテ男根絶を目指す私設武装組織フラレテルビーイング。
フラレテルビーイングのモテないマイスター、桜井智樹は仲間たちと共に戦いを続けていた。
「…マスターを中核とした主力部隊を確認。交戦に移ります」
「来たぞミスター桜井! イカロスさんだ!」
鳳凰院=キング=義経。
「美香子の部隊が残党狩りを始めているな… 俺が行こう」
守形英四郎。
「フ、さあ見せてみろサクライトモキ。貴様の実力とやらをな!」
本名不明の謎の男。ガタッさん。
彼らを始めとする空見町の若い男達は理想郷(アルカディア)を求め歩み続ける。
「行くぞ! 女湯は目の前だ!」
『おうっ!』
智樹の号令の元、彼らは前進を続ける。
空見町で最も大きい銭湯、その女湯を目指し彼らはいつ果てるともしれない戦いを続けていた。
〜そらのおとしもの OO(ダブルオッ○イ)男達の哀歌(前編)〜
「アルテミス、8番から32番まで装填。発射」
「うわぁぁぁあぁぁ!」
女湯を守る女子軍のエース、イカロスは容赦の無い弾幕でフラレテルビーイングの戦士達を仕留めていく。
遙か天空から地上を蹂躙する彼女は、フラレテルビーイングにとって天使の姿をした悪魔でしかなかった。
「下がれ! ここは俺が出る!」
智樹は仲間をかばいイカロスとの交戦に移った。
「行くぞイカロス! 脱衣(トランザム)!」
叫び声と共に智樹が服を脱ぎ捨てる。黄金のオーラを発しながら一糸もまとわぬ全裸と化した彼はイカロスへ突撃を敢行した。
智樹は無数に飛び交うアルテミスの弾幕を華麗なステップで回避しつつ距離を詰めて行く。それは常人にはできない荒業だった。
「超々高熱体圧縮対艦砲(ヘパイストス)、スタンバイ」
すかさず攻撃範囲を広げる事で回避の手段を断とうとするイカロス。
しかし智樹の反応はそれ以上だった。
「とうっ!」
イカロスのいる空へと飛翔する智樹。人間の可能性はどこまでも広大で理不尽だった。
「―ッ!」
「もらった!」
大砲撃の準備をしていた為、回避行動の遅れたイカロスは智樹の攻撃を避けきれなかった。
額に『肉』の字を書かれて力なく墜落してく。
「また、お風呂に入りなおさないといけません…」
「勝った! これで!」
イカロスを打ち破った智樹は仲間よりも一足先に脱衣所へと走る。
「理想郷への扉が、今!」
かちっ
「んげ!?」
脱衣所の扉を開こうとした智樹の足元で小さな音がした。
そして。
「ぎゃああああああぁぁぁ!!」
指向性の爆発が智樹を空高く吹き飛ばしていく。
ニンフ特性の地雷の威力は凄まじく、彼を成層圏へと送るには十分だった。
「智樹が召されたか。これ以上の交戦は被害が出るだけだ。撤退するぞ」
「くっ、ここまで来たというのに…! やはり君は愚かだ、ミスター桜井…!」
「………フン」
実質の指導者である智樹を失い、フラレテルビーイングは撤退を余儀なくされた。
此度の戦いもまた、彼らに勝利は訪れなかった。
空美町の南西部に位置する空美神社。
樹齢4百年の桜を有する広大な丘陵にフラレテルビーイングの本拠地は密かに存在していた。
でかでかと『求む救世の英雄! 君もフラレテルビーイングにならないか?』という看板があったりするが。
「くっそー。ニンフの奴、あれは反則じゃねぇか…」
「最後の最後で気が緩んだ様だな。それこそニンフの狙いだったんだろう」
会議室では智樹を始めとした幹部クラスのメンバーが反省会をしていた。
「フ、ベータごときの浅知恵に騙されるとは。まだまだ未熟だな」
「うるせぇよ空の自称王様。お前こそ何もしてねぇだろ」
「私は謎の男、ガタッさんだ。断じてシナプスのさる高貴な男ではない」
フラレテルビーイングの中でも入隊から最も日が浅いガタッさんだが、その技術力により一目置かれる存在になっていた。
「…ミスター桜井」
「ん? なんだ鳳凰院?」
「………いや、何でもない。次回の作戦はいつにするんだい?」
「そうだなー、決まったら連絡するわ」
「…実に投げやりだね」
先ほどまでの戦闘の時とは違い、まるで覇気の無い智樹に鳳凰院は苛立ちを感じる。
「無策で突撃なんてしても返り討ちだろ?」
「君の戦い方こそ、その見本だったじゃないか」
「いや、なんつーか。脱衣(トランザム)すると興奮しちまって作戦も何も無くなっちまうんだよな」
桜井智樹にとって脱衣(トランザム)とは諸刃の剣である。
全裸によって得られる開放感と爽快感、そして露出という性的興奮は心のドライブ(=GNドライブ:ジャイアンナルシストドライブ)に青く輝く炎の光を灯す。GNドライブのオーバークロック作用により全裸の快感を得た彼は一時的に普段の数十倍の能力を引き出す事に成功する。
しかし、本能の増大による冷静な判断力の喪失という代償も払ってしまう。脱衣(トランザム)した智樹に緻密な作戦行動など出来るはずが無かった。
「…そうかい。では今日はもう解散でいいかな」
表情が曇ったままの鳳凰院は席を立つ。
「まあ待てホウオウインよ。少し私に付き合え」
「なんですかミスターガタッさん。僕はあなたに用なんでありません」
「私が用があるのだ。面白い物を見せてやる」
鳳凰院とガタッさんが二人で会議室を出て行くのを智樹はぼんやりと見送った。
「このままでいいのか?」
「どういう意味っすか?」
守形の質問の意味を測りかねて聞き返す智樹。
「鳳凰院はお前に不満を持っている。力がありながらも一向に作戦を達成できないお前にな」
「…んな事言われてもなぁ。俺だって全力でやってるんですけど戦力が違いすぎるというか」
智樹は常に最前線で戦ってきた。しかし女子軍の戦力が強大過ぎて対処しきれてないのだ。
エースのイカロスを始めとして後方支援に特化したニンフ、接近戦で負け知らずのアストレアとそはら。部隊運用で右に出るものがいない美香子。そして最近加わった風音ひよりとカオス。特にカオスの戦闘能力はイカロス並みに強大だ。対するこちらには彼女達と互角の勝負ができるのは脱衣(トランザム)した智樹だけ。フラレテルビーイングの戦力は圧倒的に不足していた。
「そういう意味じゃない。鳳凰院はお前に勝つ気があるのかを疑っている」
「んな馬鹿な。それこそ勝つ気に決まってるじゃないですか」
智樹達フラレテルビーイングが求める女湯の覗きという行為は彼らの理念の一つである。
まだ見ぬ神秘(女体)の探求。それはカップル共の撲滅と同等に価値がある戦いだった。
「…そうか、ならいい。鳳凰院とは一度しっかりと話をつけておけ」
「あいつとか… 気が進まないっすね…」
智樹と鳳凰院の相性は悪い。
直情型熱血スケベの智樹と冷静沈着ムッツリスケベな鳳凰院。二人は水と油の様な関係だった。
「とりあえず今日はもう帰りますか。メシメシ〜っと」
「………やれやれ」
守形は目の前の問題にも気楽な考えで挑む智樹のポジティブさに感心する反面、僅かな不安も抱えていた。
それから数日後、再び戦端は開かれていた。
「鳳凰院の部隊はまだか!?」
「いまだ連絡がありません!」
「くそっ!」
フラレテルビーイングは劣勢に立たされていた。
ただでさえ戦力比が苦しいというのに鳳凰院とガタッさんの部隊が姿を現さないという異常事態が発生していた。
「今回は惨敗みたいねトモキ!」
「ちぃっ! 舐めやがって!」
後方支援が本来の任務であるニンフですら前線に出てくるという相手を見下した戦略に歯噛みする智樹。
それほどまでに戦況は一方的だった。
「こうなったら一矢報いるまでだ! 脱―」
「待ちたまえ!」
「鳳凰院!? ったく、遅ぇんだよ!」
到着した援軍に悪態をつきながらも喜びを隠せない智樹。
しかし、
「敵は眼前にあり! 撃てっ!」
援軍の砲火は智樹達に襲いかかった。
「うわぁぁぁ!」
「ぎゃああああ!」
鳳凰院の部隊が手にする小型の拳銃からは2週間洗っていない男の靴下が発射されていた。
その臭気に智樹の部隊は次々と倒れて行く。
「なっ!? 何しやがる馬鹿野郎!」
「ふ。愚か者に従う平民どもに、ガタッさんが開発した新兵器の実験台になってもらっただけさ」
「なんて惨いことを…! てめぇそれでも人間か!?」
「…確かにあれは嫌過ぎるわね」
「こっちにまで匂ってきます! 逃げましょうニンフ先輩!」
「駄目よ。敵の内部分裂という顛末は確認しておく必要はあるわ。はいマスク」
「ううー… 早く終わんないかな…」
当然ながら女子軍はどん引きだった。遠巻きに様子を見る事に徹している。
「君の不甲斐なさに嫌気がさしただけさ! 本当に覗く勇気もない愚か者に戦う資格なんて無い!」
「馬鹿言うな! 俺は真剣に戦い続けてきたんだ! それを愚弄するってんなら!」
「やる気かい?」
「当然だ! 脱衣(トランザム)!」
怒りに燃える智樹が全裸となって鳳凰院の部隊へ走る。
「その挑戦、受けて立とう! 脱衣(トランザム)!」
「なっ!」
それを迎え撃つ鳳凰院もまた全裸となる。
黄金のオーラを発しながら一糸まとわぬ全裸と化した二人は正面から激突した。
「馬鹿な! なぜお前がそれを!?」
フラレテルビーイングのモテないマイスターのみが使えると言われてきた脱衣(トランザム)。
それを鳳凰院は完全に再現していた。もはや両者の力は互角に等しい。
「ふ、ミスターガタッさんが教えてくれたのさ。脱衣(トランザム)はそもそもフラレテルマイスターの力とは関連性がない!」
「う、嘘だ!」
凄絶な空中戦を繰り広げる両者だったが、動きに精彩を欠く智樹が次第に鳳凰院に押され始める。
ちなみに二人が当然の様に大空を飛翔している事を突っ込む者はいなかった。
変態に常識なし。これにつきるとその場の全員が理解していた。
「君の力の源はレディーたちに裸身を見られることへの快感だろう? 実に稚拙で刹那的だ」
「じゃあお前は何だっていうんだ!」
「僕は君とは違う。僕は世界で最も美しく、その裸身は世界で最も美しい。だから僕は曝け出す! この興奮! 躍動する美しい肉体! ああ、実にすばらしい!」
鳳凰院の脱衣(トランザム)から得られる興奮の源は自意識の発露。
時を経るごとに力を増していく彼に、智樹は防戦一方になっていた。
「この変態ナルシストがっ!」
「はははっ! 所詮君はその程度の凡俗なのさ!」
当然ながらどちらも露出狂の変態である。
「何故だ! そこまでしてフラレテルビーイングを自分のものにして何を望む!」
「もちろん女性の裸体だよ。当然だろう? 僕の場合は特にイカロスさんだけどね」
「手を取り合う気は無いのかよ!」
「無いね! 本当に覗く勇気もない君とでは!」
「っ!」
一瞬動きの止まった智樹に鳳凰院の股間の≪ベル≫が突き刺さる。
「ぐあああああああぁぁぁぁ!」
肩を貫かれた智樹が苦悶に身をゆだねる。
「本当に覗く気があるというのなら、先日の戦いで君は目的を達成している!」
「そんな、ことは…っ!」
「あの程度の地雷、君ならば容易に避けられた! それができなかった時点で君の本心など知れている!」
「鳳凰、院…!」
「所詮、君は彼女達との関係が崩れる事を恐れる臆病者! そんな腑抜け、フラレテルビーイングには不要さ!」
智樹から≪ベル≫を引き抜き、その先を向ける鳳凰院。彼の顔には激情が宿っていた。
「だから君にはここで退場してもらう! 死ねっ!」
「うわああああああああぁぁぁっ!」
鳳凰院の≪ベル≫から放たれる光に智樹は吹き飛ばされ、そのまま近くの山林へと落ちて行く。
「トモキーーーーー!」
「………心配なんですか?」
「…ううん、言ってみただけ。とにかく報告に戻りましょうか」
「はーい」
ニンフとアストレアの反応は冷めたものだった。
女子軍からしてみれば勝手に自滅してくれただけなのだから、当然の対応である。
「今を持って、フラレテルビーイングはこの鳳凰院=キング=義経が受け継ぐ! 異論のある者はいるか!」
返答は静寂だった。だれもが彼の圧倒的な力にひれ伏すしかないと感じていた。
「よろしい。今日は引き揚げて明日の侵攻に備える、撤収!」
鳳凰院に率いられ、きびすを返すフラレテルビーイング。
「…さて、どうするのだサクライトモキ?」
「………」
愉快そうに唇を歪めるガタッさんと、思案顔の守形もそれに続いた。
こうして賽は投げられた。
フラレテルビーイング、そして世界は再び変革の時を迎えようとしていた。
〜後編に続く〜
説明 | ||
『そらのおとしもの』の二次創作になります。 今回のテーマ (建前):男達の対話。野郎分を主成分に話を書く 今回の裏テーマ(本音):真面目に馬鹿な話を書きたい |
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ドッペルゲンガー様へ その案も捨てがたいのですが、そらおとにはババア役のできる方が… 理想郷はたどり着けないからこそ理想郷かもしれません。(tk) BLACK様へ 変革の内容は後編で明らかに! 実際はしょーもない事ですけど。(tk) 升久野恭様へ 一期の後半は友情とトランザムが主成分でしたよね。後編も熱い(馬鹿な)展開を予定しています。 (tk) 後編は、最終的に女子風呂を覗いたが、中にいるのがババアだったという展開しか想像できない(笑)(ドッペルゲンガー) お前ら、どういう変革を求めてるんだと言いたくなるちょっとした超展開ですね。(笑)(BLACK) くそぉっ! こんな熱い物語を展開するなんて。そういえばOOも1期の頃は友情パワーがテーマでしたな。2期はミスター武士道が生き恥について熱く語っていたのがテーマだったかと。(枡久野恭(ますくのきょー)) |
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