IS<インフィニット・ストラトス> 〜あの鳥のように…〜第二十話
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第三アリーナの観客席に着いた俺達の目に飛び込んで来たのは信じられない光景…。

 

異様な速度でアリーナを疾走する鋭い爪を持った黒い化け物。

 

まるでペンキでも溢したかのように赤く染められた地面。

 

蒼い装甲を赤く染め上げ何かを護る様にボロボロになりながらもライフルを肩腕が負傷しても、もう片方の腕だけでトリガーを引き続けるセシリアの姿。

 

そして、俺は見てしまう…。

 

その後ろで横たわる全身を血に染めた…―――。

 

「あ……ああ…」

 

――――腹部を引き裂かれ虚ろな瞳で空を仰いでいる鈴の姿を…。

 

俺は千冬姉を箒を、鈴を、ミコトを―――。

 

「…ああああっ」

 

関わる人すべてを―――。

 

「…………あああああああああっ」

 

―――守る。

 

その誓いが…音を立てて崩れ落ち…。

 

プツンッ…

 

頭の中で何かが切れた…。

 

「――――――――――――――――っ!!!!!!」

 

誰かが人の物とは思えない叫び声を上げている。理性の欠片も無い怒りの咆哮。それが俺自身が発していた叫び声だと分かったのは、既に俺が白式を展開しアリーナと観客席を隔てるバリアを『零落白夜』で切り裂いた後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第21話『Berserker system ―A― 』

 

 

 

 

 

 

 

 

後の事など一切考えてなんていやしない。機体の負荷を考慮しないでの最大速度ので瞬間加速。当然、すぐに機体が悲鳴を上げだした。それでも俺は構う事無く目の前の敵に喰らいつこうとスラスターを全開に吹かす。

無茶な行動だった。最初のバリアを切り裂いた時に消費したシールドエネルギーは少なくは無い。シールドエネルギーの3割は最初の一撃で消費した。そして、今にも奴に目掛けてしようとしている二発目の『零落白夜』を発動させようとしている。それも瞬間加速をしている状態でだ。これは機体に更に負荷を掛ける事になる。

それでも、そんな無茶な事をしてでも俺は―――。

 

「てめええええええええええええっ!!!」

 

―――目の前のアイツを斬らずにはいられなかった。

 

「い、一夏さんっ!?」

 

いきなり乱入してきた俺にセシリアは驚きと何処か安堵するような声を上げる。だが、俺はそんな事一切気に止めない。俺が全意識を集中させているのは目前に迫っているアイツだけだ。

 

「があああああああああああああっ!!!」

『―――!』

 

プライドとかそう言った綺麗な物は一切有りはしない。この一振りに籠められているのは憎悪、そして殺意だけ。

しかし、そんな渾身の思いで振り下ろされた刃の先にあるのは残像のみで、刃は虚しくも空を斬るだけだった。かわされた。掠りもせずにこんなにもいとも容易く…。

 

「ちぃっ!」

「一夏さん!何をボケっとしてますのっ!?カウンターに備えなさいっ!」

「―――しまっ!?」

 

血の昇りきった頭で冷静な判断が出来る筈も無い。ましてやカウンターの警戒なんてまず無理だ。

だから、セシリアの警告にハッとした時には血塗られた爪が俺の目の前に迫っていて…―――。

 

ザンッ

 

ガツンと頭を鉄バットで殴られた様な衝撃に視界が火花を散らす。

 

「がっ―――っ!?」

 

身体を仰け反らせ空へと吹き飛ばされ無防備な姿を晒す俺と白式。そんな絶好のチャンス奴が見逃す筈が無い。気が付けばアイツはピッタリと俺の上に張り付き追撃の爪は容赦無く振り下ろした。

そして、再び衝撃が全身に奔る。

 

「ぐぁっ!?」

 

鋭い爪は容易くシールドを突破して絶対防御を発動させシールドエネルギーがガリガリと削り、そのまま衝撃によって地面に叩きつけられ地面に陥没する。

たった数秒。戦闘が始まってたった数秒で半数以下にまでシールドエネルギーが削られた…。

 

ば、化け物かよ…っ!?

 

信じられない現実に俺は驚愕し、そして目の前の化け物に恐怖した。

何なんだ?何なんだこの化け物は?本当にアイツなのか?こんな人を止めた様な動きをする化け物が…。

原形なんて残ってはいやしない。ラウラ・ボーデヴィッヒが使用していた機体の共通点なんて全身を覆う黒だけだ。それ以外はもう何も残っていやしない。理性も、人の姿さえも…。俺の目の前にあるのは。巨大な手から伸びる鋭い爪。全身覆う漆黒の装甲。今のアイツの姿は漫画何かで出てくる悪魔その物だった。

 

『コロス!コロシテヤル!』

「……っ!?」

 

機体から聞こえるのは確かにアイツの声だった。以前の冷徹な雰囲気とはまったく異なってはいたが…。

 

「何がどうなって…」

『一夏さん!大丈夫ですかっ!?』

「っ!セシリア!鈴!鈴はっ!?」

 

プライベート・チャンネルから聞こえる俺の身を心配してくれるセシリアの言葉を無視して鈴の安否を確認する。

 

『無事…とは言い難いですが絶対防御がギリギリまで堪えてくれたおかげでしょうか。奇蹟的に致命傷には到りませんでしたわ』

「そ、そうか!鈴は生きてるんだな!?」

 

良かった。生きててくれた。本当に良かった!

 

『最後までお聞きなさいな一夏さん。今はまだというだけです。出血が激しいので今直ぐにでも治療しないと…』

「っ!ならセシリアは鈴を連れて今直ぐ離脱しろ!ここは俺が抑える!」

『…本来ならあんなものを一夏さん一人で相手にさせるのはあってはならない事なのですが…仕方ありませんわね』

『大丈夫。一人じゃないから』

『ん』

 

プライベート・チャンネルに二つの声が割り込んでくると、遅れてシャルロットとミコトがISを展開した状態でやってきてセシリアと鈴を護る様にして地面に着陸すると、負傷した二人に近づけまいと、シャルロットが重機関銃を乱射する。

 

『貴女達も来てくれましたの』

『うん。流石に篠ノ之さんと布仏さんは置いて来たけどね。今は先生を呼びに行って貰ってる』

『その判断は正解ですわね。不慣れなうえに練習機ではアレを相手するには厳し過ぎますわ』

『そう、だね。心苦しくはあったんだけど…』

 

実質、足手纏いだと言っている様なものだからな…。

 

『それより今は凰さん。怪我はどうなの?』

 

的確に射撃をしながら視線だけを横たわる鈴に向けるシャルロットに、セシリアは首をふるふると左右に振る。

 

『あまりよろしいとは言えませんわ。出血もそうですが地面に落ちる際に全身を強くうったみたいで…』

『…酷いね。女の子にこんな怪我をさせるだなんて』

 

爪で引き裂かれた傷口を見てシャルロットは悲しそうに表情を歪めた。

 

『傷跡…残っちゃうかな…?』

『………』

 

銃の発砲音が響くなか、俺達の間に重苦しい沈黙が流れる…。

男の俺が傷跡を残しても傷跡は男の勲章という感じで終わらせれるけど、女の場合はそんな簡単な物じゃない。それは男の俺でも分かる。これは、決して…決して許される事じゃない。

俺達が悲痛な表情を浮かべるそんななか、幼い少女の声が重い沈黙を破る。

…そう、ミコトだ。

 

「鈴…だいじょうぶ?痛くない?」

 

ミコトは鈴に近寄ると、心配そうにして鈴を覗きこむ。しかし返ってくるのは辛そうな呻き声だけ。その声を聞いてミコトの表情は更に不安の色を濃くする。

 

「うー…いたいのいたいのとんでけー。いたいのいたいのとんでけー」

「…」

「ミコトさん…」

 

痛々しいその光景に俺も、セシリアも、シャルロットも表情を歪める。

何も出来ない。そんなことはミコトだって分かっている。だから、気持ちだけでも楽になる様に鈴の頭を撫でて何度も、何度もおまじないを呟く。目を涙で滲ませながら、声を震わせて…。

 

…くそっ!

 

叫びたい気持ちをぐっと堪えるために拳を強く握り締める。

辛かった。ミコトの声を聞いているのが。自分の無力さを思い知らされてるようで…。

 

『セシリア。鈴を頼む』

『お任せ下さい。そちらもお気をつけて。あの機体、普通ではありませんわ』

『…ああ、分かってる』

 

それは先程自分の身を持って思い知らされたばかりだ。アレを甘く見ようなんて俺はそんなうぬ溺れでもなければ自殺志願者でも無い。

 

「セシリア。鈴。おねがい」

「はい。ミコトさんも無理をしないで下さいね?貴方が傷つけば鈴さんも、わたくしも、皆さんも悲しいですから」

「ん。私は墜ちない。だいじょうぶ」

「…はい。そうですわね」

 

それを聞いてセシリアも少しはホッとしたのか、緊張を少し和らげるともう一度「お気をつけて」と告げて鈴を抱えてピットゲートへと飛び去っていく。

 

『―――っ!』

 

そして、セシリアが背を向けた途端。奴がセシリアに襲いかかろうと2mはあろうその巨体を黒い風に変えて加速する。が、そんな事は俺達が許す筈が無い。

 

「いかせないよ!」

「てめぇの相手は俺達だっ!」

『グゥ―――ッ!』

 

セシリアを襲おうとしていたラウラを俺の雪片弐型とシャルロットのシールドで迎え撃つ。流石に二対一でのぶつかり合いでは勝てなかったのか盛大に吹き飛ばされたラウラ。しかし、ごろごろと物凄い勢いで地面に転がりながらもラウラはすぐさま身体を起こすと身体を低くして再び突入する体勢に入る。まるで獣そのものだ。

 

「…人とは思えない動き。いや、戦い方だね。実はあの子狼に育てられてたりするのかな?」

「狼少女って…何時の時代の話だよ。気持ちは分かるけどさ」

 

あれは人の戦い方とは違う。獣同士が噛みつき合うそれに似ていた。

 

「信じられないパワーとスピードだけど動きは単純。冷静に対処すれば…」

「ああ、やれる」

 

あのスピードとパワーは確かに脅威だがあの単調的な動きなら避ける事はそう難しくない。成程、俺って傍から見ればあんな風なのか。こうして体験してみると確かに動きが読みやすいな。

 

「私は…どうすればいい?」

 

一向に自分に指示が来ないので待てなくなったのかミコトがそう訊ねてくる。

ああそうか。ミコトは武装が無いから戦闘に参加出来ないんだよな。

 

「私も手伝う。手伝いたい」

「ミコト。お前…」

 

いつも通りの無表情、しかし、ミコトの瞳に宿るのは明らかな怒り。俺は初めて見るミコトに唖然とする。

友達を傷つけられて怒る気持ちは分かる。俺だってそうだ。でも、俺はミコトに戦ってほしく無い。ミコトにと言ってイカロス・フテロは兵器では無く翼でありずっとそうであってほしいと俺は思っている。俺だけじゃない。皆だって…。

 

「…うん。ミコトの役割もちゃんとあるよ」

「シャルロット!?」

「一夏。気持ちは分かるよ?…でも、ほらあれ」

「あれ?」

 

シャルロットの視線を追うと、そこにはミコトにじっと見ているラウラが居た。

 

『ミ…ト・オ…ヴィ…ミコト…ミコト・オリヴィア………グゥッ!?ウゥゥ…ア゛アアアアアアアアアアァ゛ッ!!』

 

ミコトを視界にとらえた途端、何かのスイッチが入ったかのように雄叫びを上げるラウラ。今のアイツにはもうミコトしか見えていない様だった。その鋭い矛先をミコトへと向けて今にも飛びかからんと姿勢を低くして準備態勢に入っている。

…だけど、一瞬アイツが苦しむ様な呻き声を上げた様な気がしたが俺の気のせいか?

 

「…ね?もうあの子ミコトに夢中みたい。ならこれを利用しない手は無いでしょ?」

「だからって…」

 

ミコトを戦わせるのはやはり気が引けてしまう。

それに、唯でさえイカロス・フテロは装甲が薄いと言うのに、もしもアレの攻撃を一回でも直撃でもしたらミコトは…。

先程の鈴の血塗れの光景が脳裏に過ぎる…。

そうだ。戦わせれる訳が無い。ミコトを。あの鈴をあんな酷い目に遭わせる危険な奴を相手にさせるだなんて…。

 

「そんなの認められる訳―――」

「そうしないといけないのは僕達が弱いからだよ?」

「っ!?」

 

『俺達が弱いから』その言葉が胸に突き刺さり、がりっと歯軋りで奥歯が鳴る。

俺達が…いや、俺がもっと強ければミコトがこの場に残る必要はなかったんだ。アイツくらいどうとでもなる位に強ければ…。クラス対抗戦の時だってそうだ。それに今この瞬間も。俺がしっかりしてればミコトを、友達を傷つける事なんてなかったんだ…。

 

「凰さんとオルコットさん二人掛かりで相手して負けるんだよ?僕達二人だけで如何にかなるとは思えない」

 

それは遠まわしに俺達が劣っているという事。いや、正確には『俺が』だ。シャルロットのISの技術は二人に勝っているだろう。それをマイナスしているのは…俺だ。それを正直に言わないのはシャルロットの気遣いなのだろう。

 

…くそっ。

 

「それに、ミコトの気持ちも分かってあげなよ。一夏だけじゃないんだ。怒ってるのは…」

「ん。私も一夏とシャルロットの役に立ちたい」

 

自身の胸に手を当て、目を逸らさず俺の目を見るとミコトはそう語る。

 

―――そうしないといけないのは僕達が弱いからだよ?

 

また、逃れようのない事実が脳裏に響く…。

ああ、その通りだよ。そんなの嫌になるくらいに分かってる。俺をぶん殴ってやりたいくらいにな。

 

―――ミコトの気持ちも分かってあげなよ。一夏だけじゃないんだ。怒ってるのは…。

 

それも分かってる。俺だけじゃなくてミコトにとっても鈴は大切な友達なんだ。鈴が大怪我を負わされて何とも思わない訳が無い。クラス対抗の時だって俺の事で怒ってくれたんだから…。

 

「一夏…」

 

ミコトの瞳は今も俺を映し、その根気に負けた俺はついに―――。

 

「………………っ。分かった」

 

長く苦悩した後、漸くミコトが戦闘に参加する事に賛成するのだった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side 織斑 千冬

 

 

 

 

今日の業務を終え、私は自分に宛がわれた整理されていないデスクで久々の安息の時間を寛いでいた。

…しかし、我ながら散らかった机だ。一夏がこれを見ればすぐさま片付けを始めるだろうなと一人苦笑する。本当に私はこう言った物は弟に頼りっきりだと改めて思う。

と、そんな時だ。同僚の先生がコーヒーカップを二つ手に持って話し掛けて来たのは。

 

「織斑先生。コーヒーを淹れたのでどうぞ」

「ん?ああ、ありがとう………ふぅ、此処の所のんびりとコーヒーを楽しんだ記憶が無いな」

「ふふ、織斑先生のクラスには特殊な生徒集まってますから。あの天才と呼ばれている篠ノ之博士の妹に世界唯一の男性でISを使える生徒。授業だけでは無く外部の対応にも気を回さないといけませんもんね」

 

しかも問題ばかり起こすと来る。その問題の中心人物は私の愚弟なのだがな。

その問題の原因は別の馬鹿の可能性もあるのだが…これはまだ確証が取れて無いので置いておくとする。

 

「まぁ、面倒な書類云々の片づけは全て山田先生に押し付けているので問題無いが」

 

嗚呼…山田君の苦労でコーヒが美味い。他人の不幸と言うのは最高のスパイスである。これを彼女の前で口にすればさぞ良い反応をしてくれるだろう。…今度してみるか?

と、そんな事を考えながら意地悪な笑みを浮かべていたら同僚の先生も何を考えているのか察したらしく渇いた笑い声を漏らす。

 

「あ、あははは…(山田先生超頑張れ)。で、でも最近は静かなものですよね?ドイツの代表候補生が来てから色々と慌ただしい日々が続いてましたけど」

「いや、そうでもないさ。ついこの間も放課後で私闘を始めようとしていたしな。たまたま私が通りかかって止めたから良かったものの」

「それはまた…ご苦労様です」

 

心中ご察ししますと言いた気に深々と頭を下げられてしまった。この先生もこの学園を務めて長い。代表候補生が起こす問題は色々と面倒だと理解しているのだろう。何て言ったってバックには国家が控えているのだ。IS学園は完全に中立でどのような組織・機関も干渉は不可能だがやはり面倒事は避けたい。だからこそ代表候補生の扱いには神経を使うのだ。正直、胃に与えるダメージはかなりの物。山田君なんて常にポケットには胃薬がある程だ。…誰だ?私が仕事を押し付けてる所為だと言った奴は?ちょっとツラ貸せ。

 

「この程度ならまだ良い。問題は今月末の学年別トーナメントさ」

「山田先生に押し付けてる癖に…」

「何か言ったか?」

「い、いえ別に!?そ、それで学年別トーナメントがどうかしたんですか?」

「いや何、前回の事もあるからな」

「考え過ぎですよ。そう何度もあんな事起きやしませんって。あの事件以降IS学園のセキュリティーは更に強化されたんですよ?」

 

セキュリティー…か。『あの馬鹿』が関わっているというのならこの学園のセキュリティーなんて無いも同然なのだが。それに、私にとっては寧ろ…。

 

「…問題が起きてくれた方が都合が良いんだがな」

「何物騒な事を言い出すんですか貴女は…」

 

私の発言に同僚の先生はどん引きだったがこれにはちゃんとした理由がある。というか私だって好きでトラブルを望んでいる訳じゃない。出来る事ならトラブルなんて起こって欲しくは無い。しかし今回は別だ。

 

「前回のクラス対抗は各国の訪問者は少なかった。入学して間もないからな。態々見に来る物でも無い。だが、今回は違う。入学して数カ月が経ち生徒達も少なからず成長し始めている。今月末の学年別トーナメントで有能な人材をチェックしておきたいだろう。今回はかなりの人数の訪問者が来ると考えられる」

「それに何の問題が?毎年そうじゃないですか」

「ミコト・オリヴィアの件があるからな」

「…彼女ですか」

「ああ、例の件でオリヴィアは悪い意味で世界から注目を集めている。あまり人目に晒したくは無い。出来る事なら参加させたくは無いのだが…」

「無理、でしょうね。委員会のISを提供されているという名目でイカロス・フテロを所有する立場である彼女がこの行事を参加しないというのは…」

 

そう、無理がある。機体が戦闘が出来ない程破損したというのなら別だが、生憎と束の修理から返って来てからイカロス・フテロはピカピカの無傷だ。嘘を提示して参加を辞退してもそんな嘘は直ぐにばれる。なら、残された方法は学年別トーナメント自体を中止させる事なのだが、各国のお偉い方が集まるこのイベントをそう簡単に中止に出来る筈が無い。またそれにもそれ相応の理由が必要になってくる。

 

「だから問題が起きて欲しいと?」

「そう言う事だな」

 

そう都合良く事が進む訳が無いが…。何て言ったって最近は都合の悪い事ばかりが立て続けに起こっている。此方が望んで起こってくれるほど親切じゃないだろう。

 

「それだとまた始末書やなんやらが大変そうですね」

「そうだな。山田先生がな」

「山田先生…(今度何か奢ってあげよう)」

 

何やら目を潤ませているがとりあえず言っておくぞ?これは職務放棄では無い。正当な役割分担だ。本人もそれを了承してるし、その時の言葉もボイスレコーダーに録音してある。

そんな馬鹿な事を考えながら久々ののんびりとした時間は流れていく。そう、彼女が来るまでは…。

 

「織斑先生っ!」

 

―――のんびりと休憩時間を過ごしていたその時、外の廊下からどたばたとした足音が聞こえて来たと思いきやバンッ!と大きな音をたてて顔を真っ青にさせて息を切らせた山田君が職員室に飛び込んで来たのだ。何事かと職員室に居た全ての教員達の目が出入口の山田君に集中する。

 

「…どうしたんだ山田先生?」

 

山田君の表情を見て唯事では無いと判断した私は表情を強張らせてそう訊ねると、山田君は息を切らせた状態で声を絶え絶えにしながらも言葉を紡いでいく。

 

「はぁ…はぁっ!凰さんとオルコットさんと…ボーデヴィッヒさんが…第三アリーナで戦闘を始めて…凰さんが…大怪我をっ!」

 

山田君の言葉に職員室の温度が急激に下がるのを感じた…。

 

「医療班の手配を…急げっ!」

「は、はいっ!」

 

私の急かすような言葉に先程まで一緒に話していた先生が慌てて電話を取り出してIS学園の医療担当に連絡を繋げる。他の職員達も第三アリーナ周辺の封鎖。放送などで生徒達を第三アリーナに近づけない様に呼び掛けをしたりなどして騒ぎを最小限に収拾するためにそれぞれ動き始めた。

 

「…それで、肝心の加害者であるボーデヴィッヒはどうした?」

「だ、第三アリーナで…今も織斑くん、オリヴィアさん、デュノアさんの三名と…戦闘中です!」

 

それを聞いて更に職員室はざわめきが増した。それはそうだ。ボーデヴィッヒの噂はIS学園の教員全てに知れ渡っている。ボーデヴィッヒがオリヴィアを快く思っていない事も、暗殺しかけた事も…。

 

あの馬鹿者が!

 

心の中で軽率な行動を起こした愚弟に対してそう罵倒する。友人が傷つけられて怒るのは分かるが実力では自分より上の凰が負ける程の相手に敵う筈が無いと分かっているだろうに。幸いな事にデュノアが一緒にいる。しかしオリヴィアが関わるとボーデヴィッヒが何を仕出かすか分からん。ハルフォーフから聞いた例の件もある…。

…しかし、心の中では都合が良いと考えている自分がいた。これは使える。死人が出れば問題だが凰は死んでいない。なら問題無い。好都合だ。これを理由に学年別トーナメントを中止にしてしまえば、と…。

そして同時に、そんな自分に対して嫌になってしまう。生徒が、しかも弟の友人が重傷だと言うのにそれすら好都合だと思ってしまった自分に…。

 

…罪悪感に浸る時ではないな。

 

そう言い聞かせて気持ちを切り替える。とにかく今は状況を把握しなければ。

 

「何故こんな事態になったか確認は取れているのか?」

「けほっ…は、はい!オルコットさんから事情を聞いたところ。ボーデヴィッヒさんが突然予告も無しにオルコットさんと凰さんに向けて発砲。二人はそれに応戦して戦闘が始まったそうです。最初はボーデヴィッヒさんが優勢だった様ですが、二人が機体の特性に気付きだんだんと劣勢になり、そしたら突然…」

「…どうした?」

「あ、はい…突然、機体の形が変わって暴走を始めたそうなんです。それで、凰さんは不意を突かれて…」

「暴走…」

 

『暴走』。その言葉を聞いて私はこの間のハルフォーフとの会話が脳裏を過ぎった…。

 

 

 

 

「公式整備記録には存在しないプログラムがシュヴァルツェア・レーゲンのログに残っていた?」

『はい。整備担当者に確認したところ、そんなプログラムはインストールした記憶は無いと…』

「ボーデヴィッヒには確認したのか?」

『いえ、それが…。それを気付いたのは隊長が発たれた後でしたので…本国を発たれた時を最後に隊長とは一切の連絡を取れていません』

 

あのボーデヴィッヒが定時連絡を怠る。老害共が嘘をほざいているとも考えてはいたのだが…やはり。

ボーデヴィッヒの独断とは考え辛い。第三者の介入があったと考えるべきだろうな。目的はやはりオリヴィアか…?

 

「…プログラムの中身は確認出来たのか?一体何が組み込まれていた?」

『申し訳ありません。内容までは…肝心の機体も操縦者である隊長もこちらには居ませんので確認のしようが無いのです』

 

本人との連絡が繋がらなければ確認のしようも無いか。IS学園に居るのなら尚更…。学園の方で確認しても良いがそれだと色々と問題が起きそうでもあるが…ふむ。

しかし、あのボーデヴィッヒが素直にそれに応じるかどうか。私が直接言えば従うだろうが無闇にボーデヴィッヒを刺激するのも危険か。プログラムがどのような代物か分からない現段階では慎重に行動するべきだろう

 

「…分かった。私からも気には止めておく。どのみち無視できる状況でもないのでな」

 

市街地での発砲。委員会の保護下にあるオリヴィアの暗殺未遂。こんな問題を日本に来てまとめてしでかした問題児を無視するほど私も学園も無責任では無い。

 

『ありがとうございます』

「しかし本当に何も分からないのか?出来るだけ情報が欲しいだが…」

『申し訳ありません。分かるのはそのプログラムの名称と思われる文字だけで…』

「それだけでも良い。教えろ」

『はっ、【Berserker system】。それがプログラムの名称です』

 

 

 

 

バーサーカー≪狂戦士≫。暴走。…成程、まさに名前の通りと言う訳だ。胸糞悪い。

 

「ちっ…」

「あ、あの!織斑先生!ど、どどどどうしましょう!?」

 

重傷者が出た事に冷静さを失い掛けている状態で私に指示を乞う山田先生。

 

どうするべき、か…。

 

教師としては今直ぐにでも現場に急行し事態を収拾するべきなのだろうが…。

規模はデカイが仮にも生徒間での問題。生徒によって解決させた方が後の憂いも少しは解消出来るかもしれん。アイツ等の亀裂はそんな浅い物でも簡単な物でもないが…まぁ、それはオリヴィア次第か。アレなら何ら問題無いだろう。

 

「織斑先生?」

「ボーデヴィッヒの対処は織斑達に任せる」

「………ぇ?」

 

突放す様な私の言葉に山田君の表情を歪める。その表情から読み取れるのは絶望…いや、失望か。

 

「な…どうして!?」

「生徒間で発生した問題だ。なら生徒に解決させるのが無難だろう?」

「重傷者が出ているんですよっ!?」

「ISは餓鬼の玩具じゃない。怪我をするのは当たり前だろう?」

「矛盾しています!なら何故大人である教師が止めに入らないんですか!?」

 

彼女の言う事も尤もだ。私も自分が無茶苦茶な事を言っているのは分かっている。だが、発言を撤回するつもりは無い。誰が何と言おうとボーデヴィッヒの相手は一夏達にさせる。例え、生徒を見捨てた無責任で非道な教師と呼ばれようとも…。

 

「………」

「彼女はミコトちゃんを狙ってるんですよ!?凰さんを重症を負わせて…正気とは思えませんっ!今直ぐ止めるべきです!織斑くんだって危険―――」

「山田先生。黙れ」

「っ!?」

 

私の感情を一切感じさせない声に、山田先生はびくりと身体を震わせて今にも私に掴みかかりそうだった勢いだったのが一気に大人しくなってしまう。

 

「さっきから聞いていれば何だその個人的な感情は?IS学園の教師でありながら私情に流され自らの役目を務めきれていないその体たらく。ふざけるのもいい加減にしろ」

「で、でもミコトちゃんは!」

「IS学園は中立でなければならない。それはこの学園に務める教師とて同じ事。一人を贔屓する事など出来ん」

 

無論、一夏の様な特異ケースとなれば話も変わっては来るが…。

 

「……っ」

 

正論なだけに何も言えなくなり下唇を噛み力一杯に握りしめられた拳はぷるぷると震えている。瞳には涙を滲ませて…。

そんな彼女を見て心底面倒だと溜息を溢す。

 

…山田君にオリヴィアを任せたのは失敗だったのかもしれんな。彼女は情に流されやすい。

 

これはオリヴィアの為でもあると言うのにまったく…。しかしオリヴィアも信用が無いな。ボーデヴィッヒ程度でアイツをどうにか出来る訳が無いだろうに。アイツは機動だけなら『代表クラス』だぞ?

 

「言いたい事はそれだけか?」

「………」

 

返ってくるのは沈黙。それを私は肯定と見なしてこれでこの何の得にもならない無駄な口論を終える事にする。

 

「なら話はこれで終わりだ。山田先生は凰の容態を見に行ってくれ。本国への報告は…そうだな。『演習中の事故』と言う事にしろ。あの国は口だけは達者だ。下手に連中に付け込まれたくないからな」

「…織斑先生はどうするんです?」

「第三アリーナへ向かう」

「…え?」

 

俯いていた顔が物凄い勢いで此方へと向く。何だ?その信じられないって言う表情は?

 

「え、だって…織斑先生はさっき…」

「私は対処は織斑達に任せると言ったが放置するとは言っていない。これ以上問題を起こされても敵わないしな。危険そうならば私がどうにかするさ。危険そうならば、な」

 

それを聞いた途端山田君はパァっと表情を明るくし良い大人が子供と変わらない反応を見せる。やれやれ、そんなんだから生徒達に甘くみられるんだ。それが彼女の良い所でもあるのだろうが…。

 

「もう良いだろう?早く行け。馬鹿者」

「は、はい!ありがとうございます!」

「礼を言われる事ではないのだが…」

 

だから言っているだろう。オリヴィアを贔屓するなと、まったく…。

…さて、どう転ぶことやら。願わくばボーデヴィッヒの件はこれでお終いにしたいのだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――Side 織斑 一夏

 

 

 

「っ!―――ええいっ!またかっ!」

「一夏!深追いはせずに一撃離脱に徹して!近づかない限り彼女はミコト以外標的にしないから!」

 

猛進するラウラを囮であるミコトがひらりひらりと回避し、その時に出来た隙を突いて背後から雪片二型を振う。しかしそれを紙一重でかわされると俺は続けて攻撃したい気持ちを抑えてすぐさまラウラから距離を取る。

…先程からずっとこれの繰り返しだ。効果は出てる。少しずつだがラウラを消耗させている。ソレは確かなんだ。でも、俺のイライラは治まらない。何故なら―――。

 

「大丈夫!避けた場所を僕が…そこ!」

『―――っ!?』

 

俺の攻撃を避ける先を予測しシャルロットがそこを狙い撃ちラウラに着弾させる。

 

―――…何故なら、ラウラに当てて消耗させているのはシャルロットだけで、俺は一撃もアイツに当てられていないのだから。

俺が当てられれば、『零落白夜』が使えれば、一撃で終わらせられるのに。そんな焦る気持ちが如何しても抑えられない。鈴をあんな目に遭わせたアイツを目の前にすれば尚更だ。

 

「くそっ!」

「一夏!焦らないで落ち着いていこう!一夏の攻撃は無駄じゃないんだから!ね!?」

「…っ!わかってる!」

 

分かってる。分かっちゃいるが…っ!

 

アイツに捕まれば一貫の終わり。慎重に行動すべきだ。そう頭では分かっているのに脳裏で鈴の血塗れの姿が過ぎって判断を鈍らせる。あの光景を思い出す度に、アイツが許せない、アイツをぶっ潰したい、そんな黒い感情が俺の中で蠢いて、今にもさっきみたいな感情に任せて襲い掛かってしまいそうなんだ。

 

「………ちぃっ!」

「(まずいかな。一夏が焦り始めてる。このままじゃいつミスをするか…しょうがない)…一夏!ミコト!ちょっと聞いて!」

『ん?』

「何だよ突然。何かあったのか?」

 

ミコトは逃げ回りながら、俺はラウラを警戒しながらシャルロットの言葉に耳を傾ける。

 

「そのままの状態を維持したまま聞いてね。…えっと、少し攻め方を変えようと思うんだ」

『?』

「攻め方を?」

「うん。少し大胆に攻めようと思うんだ。一夏も苛々し始めて見てて危なっかしいし」

「う゛…」

 

シャルロットの少し刺のある言葉に俺は小さく呻く。

 

「今までは一夏が先行してたけど今度は逆に僕がラウラに先行して攻撃を仕掛けてみようと思うの」

「シャルロットが?ていうかそれだと唯さっきまでの戦法の役割を入れ替えただけじゃないか」

『ん、ん』

 

ミコトもラウラの猛撃を難なく避けながら、俺に同感だとコクコクと頷く。

今のままでも確実にダメージは与えられている。悔しいが俺がサポート側に回っても美味くやれる自信は無い。だったら現状を維持した方が良いんじゃないか?

 

「全然違うよ。言ったでしょ?大胆に攻めるって。これからするのは一夏にピッタリな面倒な事は一切取っ払って後先考えずの一か八かの戦法だから」

 

シャルロットの俺に対する印象ってそうなのか…。いや、間違っては無いけどさ。てか慎重に行こうって言ったのは何処の誰だっけ…?

 

「一か八かの戦法って…博打じゃないか!?危ないだろっ!?」

「うん、危ないね。でもこのまま順調に行くとも限らない。相手が相手だし。でね?一夏の残りのシールドエネルギーはあとどれくらい?」

「シールドエネルギー?まさか『零落白夜』を使う気なのか?」

「いいから、ほら早く」

 

バリアを切り裂くのに3分の一は使用し、ラウラの攻撃をもろに受けた状態の白式の現在のシールドエネルギーの残量は20%って所か…。全て使い切って落せれるかどうかってってレベルだな…。

 

「だいたい20%位だな。『零落白夜』がなんとか使えるレベルだ」

「そう。それであの機体を落とせる?」

「微妙だな。落とせるかもしれないし落とせないかもしれない」

「本当に博打だね…」

 

賭け金は自分の命ってか?まったく笑えないな。

 

「何をするつもりかは知らないけどやっぱりこのまま続けようぜ?その方が良いって」

 

たとえ俺達がアレをどうこう出来なくても箒が先生達を呼んで来てくれてる訳だし…アイツを思いっ切りぶん殴れないのは癪だけどな。

大事な友達があんな目に遭わされたんだ。当然この手でアイツをブッ飛ばしたい。でも、それで無茶をしてミコトやシャルロット…また大事な友達が傷つくのはもっと嫌なんだ。

 

「確かにそうなんだけどね。でも、それで一夏の気は済むの?オルコットさんは?篠ノ之さんや布仏さん、ミコト、それに凰さんだって」

「そんなの…気が済まないに決まってるだろ!」

「ん…」

「そうだね。僕も気が済まない。だから、僕はアレを自分達の手で落としたい。凰さんは僕の友達だから、友達の僕の手で。どんなに危険な賭けでもそれを成し遂げたい。他人を巻き込んでまでする自己満足だけどね…」

「シャルロット…」

 

―――…何が友達が傷つくのはもっと嫌なんだ、だ。

 

俺は馬鹿か?こんなの分かりきってた事じゃないか。鈴を傷つけられて許せないのは皆同じだって事は…。それなのに俺は一方的に皆を心配しているつもりになって皆の気持ちを無視して…。

 

「…分かった。作戦を聞かせてくれないか?」

「ありがとう、一夏…。作戦って大層な物じゃないけどね。一夏は止まっている的に対して確実に攻撃を当てられる?」

 

シャルロットから見ての俺の評価って一体…。

 

「馬鹿にすんな!?いくら未熟な俺でもそれくらい当てられるぞ!?」

「うん。じゃあ問題無いね」

 

俺の抗議を笑顔で軽く受け流すシャルロットに何故か敗北感を感じてがっくりと肩を落とすのだった。

 

「…で?何をする気だよ?」

「僕がラウラに張り付いて動きを止めるからその隙に一夏が今できる最大の出力で叩き切って。どう?シンプルで分かりやすいでしょ?」

「―――なっ!?」

 

何を言い出すんだコイツは!?

取り付かれれば一瞬でシールドが削られるって言うのに自らアレに取り付きいくだなんて自殺行為としか言いようが無いじゃないか!

 

「却下だ却下!危険すぎる!」

「危険なのは分かりきった事だよ。でもこれが一番確実。一夏の機体と違って僕はダメージを一切受けて無いし、ミコトの機体と違って防御力にも自信がある。あの子の機動性能も凄まじいけどミコトがうまく誘導してくれれば如何にかなる。ね?確実でしょ?」

「だからって…捨身過ぎるだろう!」

「言ったでしょ。どんなに危険な賭けでもそれを成し遂げたいって。あはは、きっと今のあの子でも凄く驚くだろうね」

 

そう悪戯な笑みを浮かべて笑うシャルロットだったがこっちは全然笑えない。寧ろ背中の辺りに寒気を感じた。エガオガコワイデス…。

 

「ミ、ミコトも何か言ってやれ!」

 

頼みの綱であるミコトに振ると、ラウラから逃げ回っているミコトは俺の声に反応して首を傾げて暫し考え込むと…。

 

『んー………ん。私は手伝うって決めた。だから、シャルロットがそうしたいなら。私はそれを手伝う』

 

駄目だ。ミコトは基本人任せだった…。

2対1で多数決の結果この作戦で決定ってことか?どのみち俺に良い案は無いし二人も意見を曲げるつもりは無いだろうし…。

 

「はぁ………ま、俺が無茶だ何や言う資格は無いか」

 

今までの戦闘で無茶以外した記憶は無いしなぁ。

 

セシリアの時も、鈴の時も、一か八かの賭け尽くしだ。箒達が此処に居れば「お前が言うな!」って怒鳴られた事だろう。

 

「あ、自覚あったんだ?」

「うっせ」

 

自分で分かっていても他人に言われたら傷つくぞ。

 

『でも、一夏らしい。ん。やっといつもの一夏に戻った』

「………だな!」

 

ミコトの言葉にニカリと笑う。

鈴の事での怒りはまだ治まってはいない。でも、あの黒い感情は既に無く。気付けばいつもの調子に俺は戻っていた。

 

「じゃあ……いっちょやるか!」

『ん』

「うん!」

 

俺の掛け声にミコトとシャルロットの元気の良い返事が返ってくる。俺はそれを聞いて更に笑みを深めると一斉に動き出した。

 

 

―――さぁ、此処からが本番だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

鈴は死なん!何度でも蘇るさ!

 

身体の弱い私にはこの季節の変わり目は一番きついですね。直ぐ風邪をこじらせてしまいます。

皆さまお待たせしました。なんとか更新できました。やはり戦闘シーンは難しい。本編でもかなり略してます。それでも何度書き直した事か…。消して書いての繰り返し。精神的にきますね…。

後何話で終わるのかな?次回で終わらせられたら…って感じです。

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コメント
鈴生存確認!!!よかったぁ・・・・・・某ウサギさんの策略で二次移行させるための生贄にされたかと・・・・・・しかしバーサーカーシステム・・・アレンビー?まさかミコトがイリヤの格好で『やっちゃえラウラ!!』とかいったりして・・・(D,)
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