真・恋姫†無双 真公孫伝 〜雲と蓮と御遣いと〜 1−18 |
この作品は恋姫無双の二次創作です。
三国志の二次創作である恋姫無双に、さらに作者が創作を加えたものであるため
人物設定の違いや時系列の違い。時代背景的な変更もありますので
その辺りは、なにとぞご容赦をお願いいたします。
上記をご理解の上、興味をお持ちの方は 次へ をクリックし、先にお進みください。
「そんで、だ」
白蓮、星と連れ立って市中を歩く一刀がおもむろに口を開いた。
「なんだかんだで俺達メンマ捜索隊になったけど、宛てとかある?」
「……いや、まったく」
「だよなぁ……」
一刀の落胆ともつかぬ声色に気まずそうにした白蓮が目を逸らす。担当班を分けた手前、責任はあるのだろうが星の暴走を鎮静化させるために仕方なくという意味合いもあったであろう判断。なので白蓮一人に全てを振るのは酷だろう。一刀もその辺は察しているので元より白蓮だけに全てを負わせるつもりは毛頭なかった。
「片っぱしから聞きこんで賊共の根城を見つけて根絶やしに!!」
「悪い。星はちょっと黙っててくれ」
最早戦力にならない星に棒読みでキツイ一言を浴びせた一刀だったが、混乱している星の耳には入らない。
未だに暴走しかけており、時々犬歯を剥き出しにして獣の如く唸っている。
今にもどこかへ駆けだして行きそうなものだが、その辺りは抜かりない。
暴走状態の星を縄でグルグル巻きにし、さながら罪人連行のような状態だ。
その犬歯を剥き出しにして唸る姿も素材が良いから中々絵になるんだけど――と現状と全く関係ないことを考えながら、一刀はチラリと肩越しに星を見るのだったが剣呑な白蓮の視線に阻まれる。
なぜか若干、白蓮も機嫌が悪かった。
とはいえ、いつまでもそうしているわけにはいかず、チグハグな三人(一人は最早一匹とカウントすべきだろう)は聞き込みから始めることにしたのだが――
「まぁ、普通はいないよな……」
「考えてみりゃ事件は街中じゃなくて城内でだからな」
会議室じゃなくて現場、的なことを言いながら、一旦休憩を――と入ったオープンテラスになっている茶屋で一服をする三人。
余談ではあるがもちろん、この店のプロデューサーは一刀だ。
が、残念ながら星の醸し出す殺伐とした空気に客が入ってこず、店主は涙目である。
そんな中、一刀が思い出したように声を上げた。
「そういや俺、気になってることがあるんだけど」
「ん?なにが気になるんだ?」
「いや、あの宝物庫って白蓮も言ってたようにほとんど物置状態だったろ?なんでそんなとこに盗みに入ったんだろうなって」
「あぁ、それは私も思った。前はちゃんと宝物庫として機能してたんだけど、いつからか物置小屋同然にな」
少し遠い目をしながら過去に思いを馳せているであろう白蓮を見つつ、星のことを横目でチラリと窺がう一刀。どうやらメンマの消息が心配過ぎて気が気でないらしく、貧乏ゆすりが半端じゃない。もちろん、白蓮も一刀も手に茶を持つことでその被害を避けてはいるが。
「んー……あぁ、それとなんであそこにメンマがあったんだ?」
「それ、今日私も初めて知ったんだよ。朝、賊が入ったーって騒ぎになってから星が取り乱し始めて、事情を聞いて」
その結果がこの通り、と言ったふうに白蓮は肩を竦める。白蓮も知らなかったのか……と、納得しかけたが、一刀はそのことにふと疑問を感じた。
(いや……確かあの時誰か――)
誰かがあの宝物庫にあったメンマのことを最初から知っていたような――というところまで考えて、思い出す。今日の会議で、第一発見者と自ら公言していた左慈のことを。
「メンマ?はい、もちろん知っていましたけど」
城に戻り、慌ただしく宝物庫周辺を動き回る左慈を捕まえた二人と一匹は、その言葉に少なからず驚く。太守である白蓮でさえ今朝まで知らなかったことを一文官である左慈が知っていたというのだから。
「ちょっと待って下さいね。確かあれは……あぁ、あったあった」
ガサゴソと、持っている竹簡の中から目当ての物を探し当てた左慈はそれを白蓮に渡す。白蓮が首を傾げながらそれを開くと、中はびっしりと文字で埋め尽くされていた。
「これ……倉庫の管理表か?」
「はい。この宝物庫の管理表です。まだ提出はしていなかったんですけど」
ズラッと並ぶ文字の中には明らかにどうでもいいガラクタばかりが含まれていたが、読んでいた白蓮とそれを覗き込んでいた一刀は同時に同じ箇所で眼を止める。
メンマ 二瓶(大)
明らかに他のガラクタとは別の意味でシュールかつ不釣り合いな文字がそこに書いてあった。一瞬その文字のあまりのどうでもよさに肩を落としかけたが、星の見ている手前そんなアクションを起こすわけにもいかない。
「この間、趙雲殿が宝物庫にコソコソと何かを運んでいるのを目撃したんですよ。気になって一部始終見てたんですけど、その時ついでに宝物庫の管理表を作成しておいた方がいいかな、なんて」
「なっ!?あ、あの時周囲には誰の気配も無かったはず!」
左慈の爆弾発言に星がびっくりして一瞬正気に戻る。
「そうなんですか?普通に気付かれていると思ったんですけど。ほら、この間だって確か酒を――」
「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」
先ほどまでとは違う、通常の暴走をした星は奇声を上げて脱兎の如く逃げ出した。そんな星を呆然と見送りながら、一刀と白蓮は改めて左慈に向き直る。
「な、なんか色々知ってんだな、左慈」
「はい。僕、あまり知らないことないんですよ」
左慈は黒い星を背後にキラキラさせながら、極上の笑顔でそう言った。
(……悪意が無いってのが余計に質悪いな……)
偶然か、はたまた必然か。一刀と白蓮の心の声が重なった。
「おーい星!どこだー!」
左慈と別れた二人は逃走した星を探して城内を回っていたのだが、一向に見つかる気配が無い。というか、見つかる気配どころか居る気配が無い。
「ったく……どこ行ったんだよ星のやつ」
「あ、いた」
白蓮が流石に心配そうな声色で一人ごちたのと同時に、一刀が庭の隅で体育座りをしている星を発見した。普段は見ない星の様子に少し興味はあったものの、自分も白蓮も、そしてなにより星自身、こんな状況が長引くのを望んでいないであろうことを考え、子供のような好奇心を封印する。
「なぜ私ばかりがこんな目に……」
なんかもう鬱病患者のようにあらぬ方向に視線を投げ、時たま末期のような小さな笑い声を上げる。左慈との一件で暴走が180°回転でもしたのだろうか。口から魂的な物が出ている気がしなくもない。
そんな中、頭を掻きながら言い難そうに白蓮が話しかける。
「あー……私聞きたかったんだけどさ。今回のメンマ泥棒って星じゃない……よな?」
「あ!」
その言葉に一刀がなにか納得したように手を打ち合わせる。
確かにその可能性もあった!的なリアクションだ。しかし
「私は盗みなど卑怯な真似はしませぬよ……。盗るなら正々堂々正面から盗る」
ぼそぼそと消え入りそうな声で、星は無実を訴える。
そして多分、字面は気にしちゃ駄目なんだと思う。
「……なんかいっそ清々しいよな」
「あぁ、ここまで堂々と言われると反論できないというかなんというか」
二人は顔を見合わせ、今日何度目になるか分からない溜息を吐いた。
ちょうどその頃――街某所
『へっへっへっ……案外ちょろかったっすね』
『鍵が掛かっていると踏んでいたがな』
『いや、俺らが行った時にゃもう壊れてて』
『……まぁいいか。さて、さっそくお宝を拝もうじゃあねえか』
『ここまで運んでくるのにえらい時間喰っちまいましたからね』
『あぁ、そういうこった。……ところでこれ、本当にお宝なんだろうな』
『疑ってるんすかぁ?間違いねぇっすよ。あの宝物庫の中の一番奥になんかもう奉られてるような勢いで置いてあったんすから』
『そうか……ならいい。さて、ご対面と行こうじゃあねえか』
ガサゴソ……バッ!
『こ、これは――!!』
『ど、どうした!そんなにすげぇ――あ?』
『……』
『……おい』
『……』
『なんだこりゃあ』
『なんだこりゃあって――メンマっす』
『んなもん見りゃ分かんだよ!なんでメンマなのか聞いてんだ!』
『俺が知るわけないじゃあないっすか!?今度こそお宝にありつけたと思ったのによぉ、くそっ!』
ガシャン!
薄暗い部屋に瓶の割れる音が響き渡る。
床に、メンマが、ぶちまけられた。
盛大に――ぶちまけられた。
ピキーン――!
その瞬間、城内の庭で体育座りをしていた星が弾かれたように顔を上げ、急にスッと立ち上がる。その時、一刀は星の頭を光の線のような物が貫いて行くのが見えたそうな。
その様子はニュー○イプもしくは閃いたコ○ンくんのようだったとか。
その突然の行動に一瞬、呆気にとられた二人だったが、星の表情を見た瞬間、素晴らしい速さで後ずさりを開始した。
そして二人は直感する。あれはヤバい――と。
次の瞬間
「メンマを粗末にしたのはどこの[ピーーーー]だコラぁぁぁぁぁ!!!!血祭りじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ついに規制音が入ってしまった今日最大の罵詈雑言を喉も嗄れよと言わんばかりに叫びながら、今世紀最大のキャラ崩壊を起こしたメンマ大魔王様はこれまた素晴らしいスピードと跳躍力で城壁を駆け上がり、飛び越え、街の方向へと消えていった。
そして残された一刀と白蓮。
「なぁ白蓮?」
「なんだ?一刀」
「こんなに晴れてんだけど、今日の天気って雨なんじゃないかなぁって今思った」
「奇遇だなー……私もだ」
その日の出来事は、語り継がれ伝説となり、幽州にはメンマを残すと魔王が命を取りに来るという妙に具体性のある妙な教訓が残ったそうな。
そして後日。
「で、結局のところ犯人は昔この城で警備兵やってた奴だったと」
「そうなんだよ。随分前に城を出てたから宝物庫が物置化してたの知らなかったみたいなんだ。それに、鍵は舞流が鍛錬してた時に壊したんだと。本人には自覚無かったみたいだけどな」
「事件ってのは明らかになっちまえばこんなもんだよなぁ……。まぁでも、その結果があれか。血祭りか」
「うん。血祭りだ」
昼下がりのお茶休憩にしては不釣り合いで物騒な単語を出しつつ、一刀と白蓮はお茶を飲んで一息吐く。
その視線の先には舞流に何かをお願いしている左慈が。
しばらく見物していると、左慈が何かを口にしたその瞬間、舞流の様子が遠目から見てもおかしくなり、珍しく表情を硬直させながら駆けていった。左慈はそんな出来事に首を捻りながらも別の廊下に消えていく。
「今回、暴走した星もあれだったけどさ」
「うん」
「左慈もかなりヤバいよな」
「あぁ。ヤバい」
幽州のトップである白蓮と、名実ともにトップ2である一刀。
二人は、また同じタイミングで茶をすすり、空を見上げながら再び現実逃避に没頭し始めるのであった。
その手元には、街の修繕報告書がどっさりと。
【あとがき】
真・恋姫†無双 真公孫伝 〜雲と蓮と御遣いと〜 1−18
【 メンマ強盗!? 星の暴走! 後編 】
更新させていただきました。
どうにも最近、白蓮の喋り方が若干男前といいますか、口調が男性よりなので一刀との掛け合いが難しく感じます。気のせいなんでしょうか?
……まぁ、気のせいだと思っておくことにします。
今回のこのお話、当初は前篇後編になるとは思わなかったです。
書いてるうちに少し楽しくなってきてしまいまして、星の壊れっぷりを見るに少しハイになりすぎたかななんて思ったり思わなかったり、ラジパンダリ―…………。
……なんかすいません。まだ若干ハイみたいです。
いま、ネタが古いと思った人。文句は私の知人まで。
この間久々にメールが来たと思ったらこれでした。
一瞬、「死ね」と一言だけ送信してやろうかとリアルでは口の悪い私が思ったのですが、流石に可愛そうなので、「もっと面白いこと書け。30秒以内。できなかったら今度の同窓会で全員笑うまで一発芸の刑に処す」と送って上げました。
いやぁー優しいですね、私。
というか
さきほどから、つらつらと私事ですいません。
次は早くもあの人が出てくるような出てこないような。
予定通り行けば出します。……多分。
前回のアンケートにお答えいただきましてありがとうございました!
特に多数決みたいなアンケートでは無いので、集計結果なんて物も無いです。
やはり想像に難くなく2が圧倒的に多かったです。次に3。最後に1といったところでしょうか。今後の参考にさせていただきます。もう一度感謝を。
ありがとうございました。
説明 | ||
真・恋姫†無双 真公孫伝 〜雲と蓮と御遣いと〜 1−18 更新させていただきます。 皆様、アンケートにお答えいただきましてありがとうございました。 今後の糧とさせていただきます。 |
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