召喚媒体 〜遭遇編 1
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「なかなか良い子がいないな」

 東京・新宿。

 携帯を見ているか、友達と話しているか。

 それともなければ辺りを見回しているか。

 待ち合わせ場所として有名なここに、待ち合わせ以外の目的でいるのは今この二人だけかもしれない。

「恋人を探しに来たわけではない」

「そうだがな。どうせ連れて行くなら見目麗しく性格もよろしく、元気で明るい子がいいじゃないか」

「確かに。性格と元気は欲しいところだ」

 オフホワイトのスプリングコートに黒いグラス。カラーリングするのは珍しくないが、燃えるような赤い髪となれば目を引く。

 化粧している様子はないが、引き締まった口元から整った顔立ちの女性と推測出来た。

 一方傍らの男性は高校生が主のこの場所にあって頭二つ分大きいだけでも目立つが、スポーツを、それも格闘系を推測させる体躯とあれば興味はあっても近寄り難い。

「時間は?」

「あと三十分というところか」

 目の前のビルの壁面にある時計を見やって女性が答える。

「ちなみに。見つからなかったらオレたちの世界はどうなるんだ?」

「消滅」

「白黒はっきりしてるな」

「爽快だろう?」

 形の良い唇を笑みの形にして、女は視線を再び人波に向けた。

 談笑するグループ。

 座り込んでいる若者達もいる。

「あの子はどうか?」

「ダメダメ。元気で明るくて可愛いが女の子じゃないか」

「サムリ。言っておくが――」

「あ! あいつ。あいつは?」

 視線で示した先に金髪の青年がいた。

「好みじゃない」

「恋人探しではないと言ったのはお前の方だぞヴェーラ」

「だがこれからしばらく行動を共にする存在だ。好みの者の方がよかろう。向こうの、オレンジの上着の娘は?」

「その隣の隣の黒いシャツの少年の方がよかろう」

「どうやらお前は自分の好みでしか探していないな」

「お前もだろう?」

 二人の意見が一致したが、意味のない一致だ。

「残り二十分。消滅もやむなしか」

「ヴェーラ、それは無責任だ」

「中途半端に責任を取るより潔い」

「そういう言い方もあるな」

 言いながら頷いた時、目の前の交差点を走って渡ってくる青年の姿が目に入った。

「どうだ? あいつは」

「どれだ?」

 視線で知らせようとしたが、不意に人波に消える。

「あ?」

 殺気を感じ、魔法を使って姿をくらませたのかと思うほど鮮やかな消失だった。

「サムリ?」

「消えた……」

「何だそれは。もしやヤツの手先ではあるまいな」

 ヴェーラの右手がコートの内に潜り込み、剣の柄を握る。

「そうだともそうじゃないとも言えないが……、ああ、出てきた」

 服を払い、手を払い、青年は情けない表情で溜息をつく。

「転んだのか」

 サムリの呟きにヴェーラは忍ばせた右手をコートから出し、

「人騒がせな小僧だ。いや、人騒がせはお前の方だな」

「このようななだらかな地で転ぶとは思わなかった。好みなんだがなあ」

 そう言ってこの待ち合わせ場所の端に行き、携帯を取り出した青年を見つめる。

「対峙しただけで腰が抜けて転びそうだな」

「オレが支える。問題ない」

「ほう」

 初対面でそう言い切るサムリを見つめ、

「では彼は却下だ」

「どうしてだ?」

「お前の最優先事項は何だ?」

「……ヴェーラ、お前を守ることだ」

「そういうことだ」

「だがお前は誰かに守られる必要がないほど強い」

 サムリの言葉にヴェーラは鼻を鳴らし、

「当然だ」

 そして小さな笑みを浮かべる。

「十分を切った。そろそろ本気で探すか」

「今まで本気じゃなかったのか?」

「いや本気だったさ」

 相手が思わず疑ってしまうような口調で言い放つと、またもや視線を人波に向ける。

 が、頭上に感じた異変に天を仰ぎ見た。

「……マズイ」

「追っ手か」

 風を切る音が微かに響いてくる。

「サムリ!」

「おう!」

 気合いの入った応答に周囲の人々の動きが止まる。

 話し声も消え、二人に注目が集まった。

 嵐を予感させる強い風が吹き抜ける。

 髪が激しく波打ち、コートが舞う。

 そこから現れたのは一振りの剣だった。

 どよめきが広がり、ロケ? イベント?という言葉が二人の耳に届く。

「現実だ」

 吹きつけてくる風をヴェーラは斬る。

 と、鋭い悲鳴が両脇から上がった。

「何これ! 血?」

 剣を振るう度に血液に似た液体が飛び散る。

 一人が走り出すと全員が逃げ出し始めた。

「残り三分。猶予はない」

 四方に散って行く人々の中にヴェーラはあの青年の姿を見つけて真っ直ぐ駆け寄り、

「待て!」

 だが自分に声をかけられていると思わず、青年は立ち止まりも振り向きもしない。

 追ってきたサムリが青年の襟首を掴み、強引に足を止めさせ、

「名は?」

「……は?」

「お前の名前だ」

「正直にさっさと言うことだ。言わねば恐ろしいことになるぞ」

 襟首を掴むサムリがブルと震えながら囁くと、青年は「成見祥」と答えた。

 ヴェーラが微笑する。

「汝、ナルミショウ。我が召喚媒体となれ!」

「な……」

 驚きに口を開けたまま目の前の美女――ヴェーラを見る。

 と、その口に何かを放り込まれうっかり飲んでしまった。

「わ! 何だよ、今の!」

 叫ぶがもう手遅れだった。

 

 そして嵐は止んだ。

 残されたのは道に残る黒々とした液体だけだった。

 真っ赤な髪の女も、巨躯の男も、そして青年も消えていた。

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* * *

 

 

 

 ヴェーラが鞘先で祥の頬を突こうとすると、サムリがダメだとばかりに首を横に振る。

 それではとヴェーラは脇腹に蹴りを入れた。

 残念ながら止める間もなかった。

「ヴェーラ……」

 咎めるように呟くが、ヴェーラの耳は拒否したようだ。

「蹴っても目が覚めないというのはそこそこ図太いということだな。その点は頼もしい」

「この場合、衝撃が強すぎたという方が適当だと思うが」

「期待が持てそうな事実を誇張してみたのだが、気に入らないか?」

「希望を混ぜ込んだのか。お前にしては珍しい」

「仕方なかろう。こいつは魔族の王を封印することの出来る唯一の存在だ。あまりに頼りない様子だったからな、我々が気分を盛り上げてやらないと、全く使いものにならないかもしれない」

 その言葉に平地で転んだ祥の姿を思い出した。

「容易く祭り上げられてくれると助かるな」

「それにはまず見た目、服装からだ。サムリ」

同感だと口にしてからサムリは気を失ったままの祥を抱き上げようとした瞬間、もにゃもにゃと言葉にならない言葉を発しながら祥がゆっくり目を開けた。

「……あれ? ここは……俺……待ち合わせ場所に行く予定だったんだよな……」

 見慣れない風景に驚き、次に視界に入った二人の人間を見て悲鳴のような声をあげた。

「だ、だ、だ、誰っ!」

「自己紹介させてもらうか」

「そうだな」

「私はヴェーラ。こいつはサムリだ」

 染めたにしては綺麗すぎる深紅の髪に整った容貌。モデルだと言われても納得出来る美女っぷりだが、女性にしては低めの通る声と視線の鋭さ、動作の機敏さと語勢に美しいと見とれてしまえない何かがある。

 もう一人のサムリと呼ばれた男は大柄で、横は祥の一・五倍、縦は頭二つ分ほどありそうだ。ギリギリ結べるという長さの髪を背後で一つに纏めているが、あまりに短すぎて後ろ姿が気の毒なほどだ。

「その格好では暑かろう。着替えとそうだな、食事はどうだ? まだ少し早いが歓迎会もかねて」

「歓迎会?」

 状況が分からず祥は鸚鵡返しに尋ねる。

 目の前にいるのは恐らく、仮装中の男女二人。

 というのは二人ともマントに剣という、銃刀法違反ですぐに警察に連れて行かれそうな格好なのだ。許可を取っているかどうか分からないが、剣は鞘だけで中味がないか、中味が紙や段ボール製だろう。ではなぜ仮装しているのかを祥は考える。客引き、それもこういう仮装に興味のある年代をターゲットにしたものだと結論づけた。

「歓迎会はパス」

「何だ腹は減ってないのか?」

「そう言う訳じゃなくて、これ、勧誘だろ?」

「勧誘?」

 まあ似たようなものだとサムリは思うが、

「勧誘ではない。招待だ」

「パス。拒否。俺、これからライブにいく約束あるし。そもそもつるむの興味ないし」

「拒否は出来ない」

「それって法律違反だろ!」

「法律?」

 ニヤ、とヴェーラが微笑する。

 演出が素晴らしいことにマントが威圧的にたなびき、

「私が法律だが」

 震えが走るほど美しいという言葉が脳裏を掠るが、この場合の震えは恐ろしさの方が強い気がした。

「……あんた、頭おかしいよ?」

「そう言われたことはない」

「自分が法律なんて言うヤツが正常なハズない」

「それはお前の世界での話だ」

「なんだか良く分からないけど、他のヤツを勧誘してくれよ。俺、これからライブに……」

「残念だが色々諦めろ」

「諦められるわけないだろ! 今夜は久しぶりのライブなんだぞ! それに……一緒に楽しむことに……」

「だが誓いは既に立てられた」

「誓い? 勧誘なのに大仰だな」

「お前に役割を与えねばこちらの世界に連れてこられないからな」

「こちらの世界?」

 祥の脳内に浮かんだのは裏世界。

 もしかしてこの二人と兄弟の杯を交わして裏世界に足を踏み入れた……ということになってはいなかと祥はドキドキする。

「俺さ、どんな内容か知らないけど大概のことに役立たずだし。悪いけどさ、ほんとに他をあたってくれよ」

 言いながら立ち上がり足を踏み出そうとしたが、辺り一面荒れた地が広がっていることに改めて気づいた。

「……ここ……新宿……じゃないよね?」

「違う」

「どこ?」

「エルシニア」

「エルシ……ニア? そんな国あったかな。っていうか日本じゃないのか?」

「違う」

「俺は横断歩道を渡って待ち合わせ場所に……」

「お前が必要だ」

「俺? 何で?」

 ヴェーラと祥の会話が堂々巡りになりかけていることに気づいたサムリは、ひとつ大きく息を吐き出してから、

「ここはお前の暮らしていた世界ではない。故に待ち合わせ場所には行けない。何故なのか食事をしながら説明してやろうと思うがどうだ?」

「ここ、ほんとに日本じゃないのか?」

「ああ」

「じゃあ帰してくれ」

「ここでやるべきことをやった後ならば、頼まれなくても帰してやる」

「何をすればいいんだ?」

「それをこれから説明しよう、食事をしながらな」

「なんでそんなに食事にこだわるんだ?」

「腹が減ってるんだ」

 答えたのはヴェーラで、空腹でイライラしていると明らかに分かる声音に祥は思わず一歩退く。

「空腹は精神衛生上よくない。どこの世界でもな」

 ニヤリと笑いながらサムリが囁いてくると、祥は無言で頷いた。

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 歓迎会となればどこかの店で美味しい食事をとるのだろうと思っていたが、そんな雰囲気は何処にもない。

 巨躯のサムリの倍はあろうかという大岩の影に荷物を置くと、ヴェーラが大雑把にその辺りの地をならす。

 しばらくしてサムリが枯れ枝などを一抱えして戻ってくると、それを中央に置いて火を付けた。

「ショウ」

「あ……」

 投げて渡されたのは見たこともない手の平大の黒っぽい塊で、ヴェーラを見れば枝にその塊を刺して焚き火の近くに刺している。

「これ、何?」

「干し肉だ。見たことないのか?」

「ない」

「初か。まあまあイケる」

「歓迎会ってこれ?」

「そうだ」

「店を借り切ってとは言わないけどさ、天井は欲しいな」

「星の瞬く天井だ。ロマンチックだろう?」

「そりや、夜ならね」

 今はまだ煌々と太陽が輝いていて、ロマンチックのかけらもない。

 はぁと溜息をついてヴェーラを見る。

 肩より短く切りそろえられた真っ赤な髪が揺れていて、その様は炎が揺らめいているようだ。

 化粧をするにしてもこんなに鋭くはしないだろうという目元は意思の強さよりも性格のきつさを表しているようで、たぶんそれはハズレてないと祥は思った。

 確かに女性なのにそれも祥よりも大人であるのに、色気どころか女性らしさも感じられない。

 しかしそれ以上に惹きつけられる何かがあった。

(だから何だってんだ!)

 祥は自分に言い聞かせるように声を出さずに叫ぶ。

(どんなに魅力があっても、いきなりこんなところに連れてくるのは尋常じゃない!)

 グッと拳を握り締めてこの気持ちをどうやってぶつけようかと考えていると、枯れ枝の第二弾を抱えてサムリが戻り「干し肉か。歓迎会らしい」と上機嫌で口にする。

 が、憮然とした表情の祥を見て、

「どうした?」

「どうしたって……これが歓迎会なんだろ? これなら小学校のお別れ会の方がまだマシだ」

「小学校? お別れ会?」

「ああいいよ。この国にはなさそうだもんな」

「小学校ではなく学校はあるが、お別れ会はない。村に生まれて村で死ぬのが普通だからな。ああ、女は別の村に嫁に行くことが決められているが、それはお別れ会ではなく……なんだったか、そちらの世界では……ああ結婚式だ」

 なんだかすごく昔っぽい風習だな、と祥は思う。

 きっとこの国にはライブなんてなくて、バイクもなくて。

 それならとっととやることやって帰してもらおうと思った瞬間、

「良い心がけだ」

 キツイ声音さえ聞かなければ身体の芯がジンジンしてきそうな微笑をヴェーラは浮かべる。

「……えっ?」

「やる気になったんだろう?」

「なんでそれを!」

「それはな――」

「ヴェーラ」

 鋭い語調でサムリが止める。

「何? 何か良くないことなのか?」

「いや。やる気になったのは表情で分かるってことだよ。なあヴェーラ」

「アヤシイ。嘘ついてるな」

「真実だ」

「嘘だ」

「真実だ」

「嘘だ!」

 祥とサムリが言い合う中に、ヴェーラが割って入り、

「せっかくだ。やるべき内容を話してしまおう」

「そうだな」

「話題を変えるってことは嘘だってことだろ?」

「その追求をするより、さっさと事を終わらせてしまった方がよかろう。私もその方が都合がいい」

「……何をすればいい?」

「剣の奉納だ」

「剣の? ますますゲームだ」

「ああ、そんなゲームがあったかもしれん」

「ゲーム、ものすごく昔っぽいこの国にあるのか?」

「ないが知っている」

「は?」

 じっとヴェーラを見つめる。

 口から出任せを言っている風ではないが、騙されていないとは言い切れない。

「ゲームの件はおいといて、どの剣なんだ?」

「これだ」

 言いながらヴェーラは腰にある二振りの剣の一本を示す。

 特別な剣のはずだが、それっぽい装飾はなく、刃も細くて魔王を封印する剣という雰囲気は微塵もない。

 本当にこれで?と言いたくなるようなものだ。

「で、その剣をどこに奉納するんだ?」

「あの山の向こうだ」

 ヴェーラが指し示した山はそう遠くない。

 確かにさっさと終わらせられそうだ。

「それで俺は何をすればいいわけ?」

「……剣の奉納と言ったはずだが」

「あ〜。もしかして違う世界の人間がやらないとダメってルール?」

「私が選んだ召喚士が奉納するというルールだ」

「しょうかんし?」

「そうだ。この世界でお前の仕事は召喚だ」

「剣の奉納を召喚士がするのか? 普通は賢者とか勇者とか……巫女とかだろ」

 確認の問いにヴェーラが頷く。

「特別な剣なのか? それ」

「ああ」

「どんな?」

「魔族の王を封印する剣だ」

 祥は頭の中でその文章を三回反芻してから驚きの声をあげた。

「魔族の王って! 魔王ってこと?」

「何を当たり前のことを言っている」

「ますますゲーム世界じゃないか」

「楽しいだろう?」

 サムリの問いに祥は思わず頷いてしまった。

「いや……いやいや。俺は普通の高校生だし。魔王と戦うなんてことは……」

「戦うのは私とサムリ。そしてお前が召喚する召喚獣だ」

「そうか! それなら何とかなる」

「やってくれるか?」

「終われば帰してくれるんだよな?」

「約束する」

「じゃ、やる」

 短くも気合いの入った祥の言葉に、サムリは満足そうな笑みを浮かべて祥の肩を軽く叩いた。

「歓迎会だ。剣を奉納して街に戻ったら、ちゃんと天井のある店を借り切って祝賀会をしてもいい」

「いいな、それ。絶対だぞ。俺、食べてから帰るから!」

「ああ」

 サムリとヴェーラは視線を合わせて「よし」と確認しあった。

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 この世の物とは思えない堅さの干し肉を食べ終わる頃には、祥の顎は悲鳴をあげ、喋る気力を無くしていた。

 三十回噛んで食べましょうという標語を目にしたことがあったが、この干し肉は飲み込むまで三百回は噛んだのではないかと思う。

 最初は味が染み出してきて美味いと思ったが、最後は何の味もしなくて、飲み込まずに吐き出してしまおうと何度思ったことか。

 だがその干し肉を難なく平らげる二人の姿を見て、何だが無性に腹が立ってムキになって噛み続けたのだが、あっさり降伏してしまえばよかったと祥は思っていた。

 まだ夕暮れには早かったが、今日はここに野宿で明日から活動開始と勝手に祥は思っていたが、この辺りは夜は危険だということから先に見える森の入り口まで移動することになった。

 ――歩いて半日ほど。

 そう聞いて祥は目を丸くした。

「今から半日歩いたら夜中どころか明け方じゃないか!」

「ここに留まるより、歩き続けた方が安全だ」

 この世界のことを何も知らない祥は、そう言われると黙って従うしかない。

 文句を地面に向かって吐き出してと、着替えろと服を手渡された。

「召喚士の服だ」

 サムリの説明に祥の心が華やぐ。

 尋常でない状況なのは分かっていたが、馴染み深いゲーム世界のような現状に「面白い経験だ」と思っていたのだ。

 しかし着替えてみるとサムリとさほど変わらない服だった。

 生成に似た生地のシャツとズボン。

 サムリはピッタリサイズで形の良い太腿が分かるが、祥には大きすぎて逆に動き難くすらある。

 唯一サムリと違うのはマントがある事だが、見栄えより実用を優先したような革製で、祥が期待した華やかな召喚士の服とはかなりかけ離れていた。

「これが召喚士の服?」

「旅装だ」

「普通の服はないのか?」

「剣を奉納したら着るといい」

「どんな服なんだ?」

「ヒラヒラ、ピラピラの動きにくい服だ。お前の好みには合ってそうだがな」

「よっし!」

 さっさとクエストを終わらせてやる!と祥は気合いを入れた。

 

 

 

説明
 流されやすく単純な高校二年生の成見祥。ある日ある場所で時間切れのどさくさまぎれに召喚士として見初められ異世界へと連れ去られてしまう。
 連れ出したのは赤い髪の女戦士ヴェーラとその守護者のサムリ。
 召喚士としての責務を終えれば元の世界に戻すという約束で祥は仕方なくそれを受け入れるが……。

●遭遇編2→http://www.tinami.com/view/313560
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タグ
異世界ファンタジー 男子高校生 戦士 

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