真・恋姫無双〜妄想してみた・改訂版〜第五十話 |
一刀たちは、黄河に揺られる船に乗りながら、今後の方針についての確認をしていた。
孫呉の旗が取り付けられているその船は、王族専用の船だけあって、周りの船と比べるとその大きさや豪華さは比べものにならない。
その船、[孫呉丸]の周りには、孫呉屈指の水軍が乗り込んでいる小型船が十隻以上ある。
辺りを警戒してくれている水軍を見やった後、一刀は華琳たちの方に向き直した。
「洛陽にはあと何日くらいで着くかな?」
「このままの速度で何事も無く順調にいけば、二十日程度で到着するでしょうね」
「そっか……。華琳は、洛陽に玉璽があると思う?」
問われた華琳は、『うーん』と考え込む仕草をしてみせてから言った。
「玉璽とは、元来“帝”が所持するものよ。そして洛陽は、帝のおわす所。そこに無ければ、賊の手に渡ったと考えるのが妥当だけれどそれはないわね」
そもそも警備が厳重な洛陽に潜り込むことすら不可能だろう。
漢王朝の権力が集中している首都なのだから尚更だ。もっとも、今ではその権威も落ちるところまで落ちてきてはいるが。
「こんなやつが玉璽を持ったところで宝の持ち腐れだと思いますが……精液吐き出すしか能のないこいつよりも、華琳様が持ってらしたほうがいいです!」
「おいおい……そりゃ確かに、俺が持つよりも華琳が――」
「そんなことはありません」
「……朱里?」
いつものように毒舌を吐く桂花に呆れながらも突っ込む一刀。
しかし、桂花の一刀への侮辱とも取れる言動に朱里が反論した。
「ご主人様でなければいけないのです。華琳さんの代わりがいないように、ご主人様の代わりなんていません。
桂花さんが華琳さんのことを大好きなのは知ってますが、それと同じくらい……ご主人様のことが死ぬほど大好きな私のことも考えてくれませんか?」
「な、なによ……」
朱里の声音から発せられる威圧感に思わず後ずさる桂花。
普段大人しい娘が怒ると本当に怖いと身に染みた一刀であった。
「ま、私も朱里には同感ね。一刀には並々ならぬ魅力がある。それも桃香を上回るほどにね。
桂花も普段一刀にキツく当たってるけど、閨の中では一刀に従順なのよ」
「か、華琳様っ!?」
「ほぅ」
「お、星。いつの間に?」
いつの間にか一刀のすぐ後ろに星が立っていた。
袖を口元に持っていくと、いたずらを思いついた子供のような顔をしながら一刀に尋ねた。
「今の話、本当ですかな、主?」
「本当のような、嘘のような……」
「はっきりしないですな。てっきり閨でも桂花殿ならば強気でいると思っていたのですが」
「あら、それはないわよ。一刀の凶器の前では桂花も大人しくなるわ」
「ほうほう、それはそれは」
「か、華琳様ぁ…………ッこんの! アンタのせいで恥をかいちゃったじゃない! 死んでよ!」
「いたっ! なにするんだよ桂花……」
「うっさい黙れ! このっ! このっ!」
「痛いって!」
訂正するのに諦めたのか、ただただうな垂れる桂花であった。
華琳の話にふむふむと相槌を打つ星を見かねて、しかし華琳の話を止めることなど自分にはできないと諦め、
致し方なしにと一刀を罵倒し、脛に向けて蹴りを連打することで鬱憤を晴らそうとした。しかし―――。
「 桂花さん? 」
「ひぃっ!?」
桂花の目の前に、それはもう形容しがたい表情の朱里がいて、桂花に向けてメンチを切っていた。
「桂花さんの大好きな華琳さんが目の前で他人に蹴られていたり暴言を吐かれたら怒りますよね?
なら今の私の気持ち、分かりますよね……?」
「わ、悪かったわよ!」
「本当にわかっていますか? 毎度毎度思うんですけど、桂花さんってばちょっと……かなりご主人様に対して遠慮がないというか」
「悪かったってば!」
そんな二人のやり取りを見て一刀は思った。『絶対朱里を怒らせないようにしよう』と。
「桂花ったら一刀に前の穴を、私に後ろの穴を責められるのが好きでね――」
「ほ、ほう……それはまたなんとも……」
「おいそこ、閨事情を詳しく話すな聞くな!」
一刀は頭が痛くなった。
そうして暫く談笑していると、船室からふらふらと人影のようなものが出てきた。
慣れない船に乗って、出発してわずか5分で船酔いしてしまった春蘭と霞だ。
「あら、快復した?」
「こ、この程度、屁でもありません!」
「よく言うでほんま。さっきまでうんうん魘されとったくせにぃ」
「な、なんだとぉ!?」
華琳の御前ということでふらふらしていたのが嘘のようにビシっと立った春蘭。
強がりを言う暴走娘に容赦ないツッコミを入れる霞。
二人のコントが魏に居た時の記憶と照らし合わせても、遜色がなかったことに一刀はどこかホッとする。
(世界が変わっても本質は変わらないんだな……)
「あ、そや。かずとぉ……あんなぁ?」
「ん?」
霞が急にしおらしく、両手の人差し指をツンツンと合わせながら上目遣いに一刀を見る。
思わず一刀も甘い雰囲気に呑まれて――。
「ウチも後ろの穴、ものっそい興味あんねん」
「いや何言ってんの!?」
「あらいいじゃない。それなら一刀と一緒に私も霞と閨を共に――」
「いや、華琳はええわ。ウチそない趣味ないし」
体の前で両手を×に形作って即拒絶。
華琳も、『仕方ないわね』とそっけなく言いながらも結構本気だったのだろう。表情は悔しがっていた。
「むう、華琳様のことを断るとは……嬉しいが、いやしかし……」
「ふん。そんな精液しか出すことに能がない男のどこがいいのかしら。華琳様との閨を断るなんて人生を損してるわ」
「いやいや、ウチの一刀は堪らんで? 優しいしイイ男やし」
「わたしも霞さんに同感です。『ウチの一刀』というところはこれから議論の余地があると考えていますが、ご主人様が最高であることには間違いはないです」
「あらあら」「おいおい……」
今ここに、華琳派VS一刀派の壮絶な戦いが始まる―――。(ウソ)
……ちなみに星はというと、先程聞かされた華琳の話を反芻して顔から湯気を出していた。
「あ、主……華琳殿の話、私には少々……」
「ああ、星はなんだかんだいっても純情だからね。華琳みたいに汚れちゃダメだよ」
「失礼ね。私をいつも汚しているのはあなた――」
変なこと(あながち間違ってもいないが)を言い出す前に、華琳の口を片手で塞ぐ一刀。
「むぐっ!? むぐぐぅぅ!! っぷは! いきなり何するのよ!」
「むしろ何言おうとしてるんだよ……勘弁してくれ」
華琳の口を塞いでいた手は、思いっきり抓られることでその口元から離れていった。
そうして華琳と夫婦漫才をしていると―――。
「あら。曹操ったら、相変わらず一刀にベッタリね?」
妬けちゃうわ、と言いながら現れたのは孫呉の王、雪蓮。その隣には冥琳もいた。
「“つんでれ”とかいうやつだろう。ちなみにつんでれとは、普段つんつんしている者が、ある場面ででれでれすることを指すのだそうだ。
孫呉でいえば蓮華様がこれに当てはまるな」
「……あの子、常日頃からでれでれしてるから」
つんつんしていたのは最初の方だけじゃない、と雪蓮は言った。
……思い返してみれば、蓮華は最初の方こそ態度が硬かったが、あっという間にデレたような、と一刀は思う。
「失礼ね〜。あの子は惚れっぽくないわよ。一刀が魅力的だったから蓮華は惹かれただけ。もちろん、私もダケド♪」
「光栄だけど人の心を読まないでくれ」
「あはは、ごめんなさい♪ で、そこで顔赤くして黙っちゃってる曹操はどうしたの?」
「っ……」
雪蓮にからかわれたせいか、はたまた気恥ずかしいのか、顔を赤くして雪蓮を睨みつける華琳。
先ほどまで距離がゼロに等しかった華琳と一刀の間には空白が出来ていた。
雪蓮の声を聞いた瞬間、華琳が一刀から離れたのが原因だ。
「そうからかわないでくれ、雪蓮。いろいろあったんだよ」
「ふ。あの孤高な覇王をも骨抜きにするとはな……流石と言うかなんというか」
「ふん。勘違いしないで頂戴。私が、わ・た・し・が、親切心で一刀の傍に居てあげてるの。
……というかあなた、私の首を獲ろうとしたくせによくも私の前に現れたわね?」
「さて、なんのことかな」
「ぐっ……」
そんな感じで、久しぶりにゆっくりと雪蓮と冥琳、そして華琳と共に語り合っていると、
本船の周りを見張っていたはずの水兵が、慌ただしくこちらに向かってきた。
「ん? 騒がしいな。なにかあったのか?」
冥琳が水兵から話を聞く。
「報告! 右方より謎の船有り! こちらに向かってきております!」
「ふむ。警告した後、追い払え」
それでも向かってくるようなら迎撃すればよいだろう、と冥琳は頭の中で考えていた。
水上ならこちらの方が上。相手がただの賊なら他愛もない。
しかし、命を承った水兵が「御意」と返事するよりも早く、別の水兵が冥琳の元に走り寄ってきた。
「御――」
「報告! 謎の船と接敵! 指示を!」
「なんだと? 総員戦闘準備に移れ! ……早すぎる。ただの賊ではないな。北郷達は室内に入っていろ」
「主よ、こちらへ」
「分かった! 冥琳、頼んだよ!」
いつの間にか復活していた星が一刀や華琳を船室へ先導する。
一方、雪蓮は冥琳を、目に輝きを持たせながら見つめた。
「冥琳」
「ああ。お前にも働いてもらうぞ、雪蓮」
「了解♪ 呂布を倒した猛者……腕が鳴るわ」
「船内は恋も星もおるし、うちらは必要ないやろ。加勢すんで」
「賊だかなんだか知らぬが、華琳様を襲うとはいい度胸だ! ぶちのめす!!」
「うむ。任せたぞ。私は水兵の指揮を執ってくる。くれぐれも敵の船内への侵入を許すな」
「りょーかいや!」「任せろ!」「任せて♪」
冥琳は水兵に指示を出すため、その場を霞、春蘭、雪蓮に任せて去っていった。
「ふむ……まるで嵐に遭ったかのような状況だな」
冥琳が水上の惨状を見て呟く。
水面にはボロボロになった小型船がいくつも散らばっており、呉の水兵がその残骸に捕まり、なんとか生き延びていた。
「おい。敵は何人だ」
他の兵に引き上げられた者に問う。
「そ、それが……白い装束を見に纏った4人のみです!」
「何? 4人だけか?」
被害の大きさからして、たった4人で行われたとは考えにくかった。
それこそ、呂布のような力が無ければ……。と、ここで「はっ」と冥琳は思い至る。
「兵を纏めて本船の守りを固めろ! 北郷が危ない!」
敵は平原を襲った一派だ。ならば敵の狙いはただ一つ、北郷のみ。
そういえば雪蓮は、“呂布を倒した猛者……腕が鳴るわ”と言っていたな、と冥琳は場違いなことを考えていた。
勘で来る相手が分かるって、実は凄く恐ろしいことではないのだろうか、とも考えていた。
その頃、本船の室内では。
「この“おせろ”という遊戯。中々単純でいて、実は結構頭を使うのね。……はい、私の勝ち」
「うそだろ……7連敗かよ」
一刀が教えたオセロで暇を潰していた。オセロをしているのは一刀と華琳。
星と朱里は一刀を、桂花と秋蘭は華琳をそれぞれ応援していた。
「はわわ! 惜しかったです、ご主人様!」
「うむうむ、主の悔しそうな顔は堪らん」
「さすがは華琳様! 勝ち方もお美しい! 秋蘭もそう思うわよね!?」
「うむ」
ルールをきちんと教えたとはいえ、相手はド素人。手を抜いて遊んでやろうと思ったらこのザマだ。
一刀は華琳の恐ろしさを、超人さを改めて思い知った。
「むむ……もう一回!」
「ふふ。何度でも受けて立つわよ……そうね。次からは負けたら相手の言う事を一回聞くというのはどうかしら」
実は負けず嫌いの一刀。一刀はこうやって華琳に負けるたび、もう一度、もう一度と頼み込む。
しかしそろそろ何か賭けなければ詰まらないので、華琳は提案する。イヤラシい笑みを浮かべて。
「おう! 次こそは俺が勝つよ! 冥琳に鍛え上げられたこの頭脳を使うときが来たようだな……」
「……ご主人様……死亡フラグ……?」
肉饅をもぐもぐと口に含みながら、つまらなさそうに一刀と華琳がオセロをしているところを見ている恋。その片手には彼女の武器である方天画戟が握られている。
いつ船内に敵が入ってきてもいいように、一刀と華琳は船室の中央の卓に座り、桂花以外の恋、星、秋蘭は入り口と窓の付近を警戒していた。
「ふふ、早速私の優勢ね。ところで外は今どんな状況なのかしら」
「まだだ。まだ終わらんよ……剣戟が聞こえてこないから、本船には来ていないだろう。それに霞と春蘭に、雪蓮もいればどんな賊だろうとひとたまりもない」
二人は話しながら形が不揃いな石を置いていく。
ちなみにこのオセロに使っている石だが、一刀が川で形のいいものを探し出し、色分けの為に裏側を火で焦げ目をつけただけの簡素なものだ。
石を削ってなんとか丸といえるような形にはできたが、それでも不恰好だ。だが即興の遊びにしてはハマれているとも思う。
「はい、私の勝ち。今日は私と共に寝なさい」
「また負け……もう好きにしてくれ……」
ガク、とうなだれる一刀であった。
<つづく>
説明 | ||
遅ればせながら投稿させて頂きます。 本作品は北郷一刀ハーレム√です。 誤字脱字はないとは思いますが、もしも表現が誤っていた場合は教えて下さると助かります。あ、お久しぶりです(*´ω`*) 更新サボっていたのに、応援メッセージに「更新頑張ってください」と言われちゃぁ、書かなオンナが廃るってモンよ。 ―洛陽へ、船に乗って向かっていた一刀一行。そんな一刀達に謎の白装束が迫る― |
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コメント | ||
朱里は流石やな!それに比べて猫耳ホンマ馬鹿でキチガイやなw朱里にどつき回されろw(ポンチキ) 敵来てんのに何やってんだw(きの) 待ってました。・・・・・朱里が、朱里が怖い(汗)(アカツキ) 星は自分からせめていく分にはいいけど、せめられると純情(?)乙女になっていきますからねい・・・はて・・・なにやら後ろから気配が・・・(氷屋) お久しぶりです 新作待ってました・・・って何かえらいピンクというかエE酢な会話がポンポン出ていて 敵襲時にオチの一言がw う、羨ましくなんてないんだからねっ!(村主7) |
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