少女の航跡 第3章「ルナシメント」 11節「エルフの森」 |
私達がエルフの森に到達したのは翌日の事だった。エルフの森と一口に言ったとしても、特定の森を指すわけではない。
この西域大陸だけでも、エルフの森と呼ばれている場所は無数にあった。そこは、エルフ達が住んでいる集落であり、村でもある。そのような場所が、『リキテインブルグ』の国内のみならず、実に様々な場所に点在しているのだ。
私達が辿り着いたエルフの森は、《シレーナ・フォート》に最も近い、エルフの村がある森だった。
森の入口には特に何の案内も無く、看板も見張りも無い。ただ、ある場所からはエルフの許可が無ければ入ってはいけない事になっている。
エルフ達は人間よりも遥かに強い魔法の力を持っていると言い、木々や自然の中に住まう精霊との交流も積極的にすることができる。
大半のエルフ達は、人間を粗野で野蛮な種族だと見なしている。《シレーナ・フォート》などの大都市にもエルフは多く住んでいるが、それでもごく一握りのエルフでしかない。
エルフ達は、人間を戦争ばかりしている種族とみなし、自分達の住まう領域には、許可なく決して入れない。そう決めているのだ。
だから、エルフの森と呼ばれる場所には、幾重にも貼られたエルフ達の防衛網が張ってあった。
それを破ろうと言うものならば、人間であろうと何者であろうと、見えない場所から弓矢で射ぬかれる。
エルフ達は人間達ではとても太刀打ちができない方法で森の防衛を張っており、共に生きている。それを破る事は人間にはできないのだ。
森と共にあり、森の自然と共に生きる種族。それがエルフの本来の姿だと言う。
同時にエルフ達は魔法や呪術にも通じていた。ピュリアーナ女王の判断は正しいだろう。カテリーナにかけられてしまった力の封印の呪いを解くのだったら、エルフに聞く方法が一番だ。
だが、カテリーナに賭けられてしまった封印は、魔法使いで、あらゆる魔法に通じているフレアーにさえ、理解不能な呪いだと言う。
《シレーナ・フォート》でもシレーナの魔術者達が、現在も文献からカテリーナの魔法について探し出そうとしているが、どうやら上手くいっていない模様だ。
果たしてエルフにも封印を解いてもらう事ができるのか?
私達はピュリアーナ女王の示した望みだけを頼りにし、エルフの森へとやってきていたのだ。
例によって、カテリーナ、私、ルージェラ、フレアー、そしてフレアーにいつも付き従っているシルアが向かう事になった。
エルフの森に入って小一時間ほども遊歩道を馬で進んでいく。すると、木によって柵が張られた場所があった。森の中心部分をぐるりと回り込むかのように囲っているそれこそ、エルフ達の居住地を示していた。
この森の中において、彼らの住まう範囲はそれほど広くは無いが、彼らの領域である事に変わりはない。
私達は不用意にその領域へと入り込んでしまってはいけないのだ。
エルフの森にやってくるのは、カテリーナ達にとっては初めてではないらしい。カテリーナが先頭にたち、見張りについている男のエルフに向かって言った。
「アリッサ・アルセイデスに会いに来た。ピュリアーナ女王から話が来ていると思うが…」
男のエルフは背中に弓矢を持っており、その長身と白い肌、頬や顔に浮き出ている赤い模様はエルフとしての姿だった。私の良く知るエルフと言えばクラリスなのだが、彼女よりもずっと人間離れして見えるのは気のせいだろうか。
そして、どことなくその姿は、クラリスと似ていた。私達人間から見れば、どんなエルフも同じように見えてしまうためだからだろうか?
「ああ、来ている。だからお前達は通っていい。だが、ドワーフは駄目だ。決してこの森の中に入れるなと言われている」
男のエルフはふてぶてしく言った。彼は人間離れした美男子というエルフの男ならではの特徴を持っていたが、ふてぶてしい態度を見せられると、それも、台無しであるかのように見えてしまう。ただ黙ってたたずんでいれば、その美男子ぶりには、人間の女だったら卒倒してしまうかもしれない。
「何ですって?どうして駄目なのよ!」
ルージェラがその男のエルフに向かって言い放った。彼女は目の前のエルフの美男子ぶりなどまるで気にもしていないかのように身を乗り出す。
「ドワーフは入れてはいけないって、当たり前だろう?馬もここまでだ。ここで預からせてもらおう。ドワーフも決まりがある。入れさせるわけにはいかない。だから、ここにいろ。もし中に入ろうとするなら、私がお前を始末するだけだ」
と、男のエルフはルージェラの方を見ずに言ってくる。その言葉に更にルージェラはいきり立つかと思ったが間にフレアーが入った。
「駄目だって。ルージェラ。あなたが森の中に入ったら大騒ぎになっちゃう。エルフは森を守るけれどもドワーフは、木を切り倒して火をつける。そういう慣習がまだこの森にはあるんだから」
彼女ははっきりとした口調でルージェラに説明する。だがルージェラはまだ納得できないと言った様子で、
「あたしは、ただ、クラリスに参りにきただけよ…」
と言うのだった。しかしながら男のエルフは言ってくる。
「残念だったな。姉上は、お前のようなドワーフに墓を参られるほど、エルフの誇りを捨てちゃあいない」
またしてもふてぶてしい様子で言って来た。その言葉にルージェラは血が上ったらしく、拳を振り上げようとしたが、それはカテリーナによって止められた。
今のカテリーナは並みの人間の女くらいしか力が無かったから、ルージェラを止められるかどうか心配だったが、
「止めておけ。ここで騒ぎを起こすな」
ルージェラはカテリーナの命令をきき大人しくなった。
「いいわ。クラリスに免じて、騒ぎは起こさないでおいてあげる。ここで待っててあげるんだから、飲み物でも出しなさいよエリオット」
とルージェラが言うと、エリオットと呼ばれた男のエルフは立ち上がり、エルフの森の門を閉ざしていた門を開いた。
どうやらこのエリオットと言うエルフと、カテリーナ達は知り合いのようだ。私はまだこのエルフの森に足を踏み入れた事はないから知らなかったけれども、エリオットはクラリスの事を姉上と呼んでいる。つまりクラリスの弟と言う事だ。
そう言えば、エリオットはクラリスと似ている。瓜二つとまではいかないが、エルフは男でも、人で言えば女のような顔をしているから、クラリスがそこにいると言われれば、そう思ってしまっても不思議ではない。
ただ、いつも物腰柔らかで丁寧な態度を取っていたクラリスに比べれば、ふてぶてしい態度を取り、口調にも棘のあるエリオットは、似ても似つかなかった。
「ほら、何ぼうっとしているんだよ、通れ」
私に対してもそのような口調で言ってくるエリオット。ぼうっと彼の姿を見るだけだった私は指摘され、すぐにカテリーナ達の後を追った。
私が通過してすぐ、エルフの森を隔てていたゲートが音を立てて閉じられた。そのゲートの向こう側にルージェラと私達の馬を残したまま。
私達がエルフの森に足を踏み入れると、今まで歩いてきた森の中と特に変わったような様子は無かったが、カテリーナ達はすぐに周囲の気配に気が付いていたようだ。
「不自然だな。いつもより、警備が厳しい」
とカテリーナが呟く。どうやら彼女の超人的な力は失われてしまっていても、戦いの勘や、周囲の気配を読む勘は失われていないらしい。
私には周囲で起こっている異変というものを感じる事ができなかったが、カテリーナはしっかりと感じつつ歩いていた。
「どのくらい、厳しくなっているの?」
私が共に歩くカテリーナに尋ねる。彼女は今では騎士の礼服を身にまとっている姿だったため、幾分かかつてのカテリーナの姿を取り戻しつつあった。
「前後左右から見張られている。どうやら、私達は招かれざる客になってしまったようだな」
カテリーナに言われ、私は前後左右を見回してみたが、そこには誰もいない。気配さえも一切感じられなかった。
「見まわしたって見えるわけがないよ。エルフ達はものすごく気配を隠すのが上手いんだもの。いるんだけれども、普通の人間にはまず気配を感じる事なんてできないね」
フレアーが私の顔を見上げて言って来た。彼女もカテリーナと同じように、気配を隠す事に長けていると言うエルフ達の気配を感じられるのだろうか?
「エルフの中でも、特に偵察や警備に長けている連中たちですな。ヘタな行動をすれば弓矢を引かれますぞ」
と、フレアーと一緒にいる使い魔のシルアも言って来た。彼やフレアーは、エルフの森の入口でとがめられなかったが、エルフ達は魔法使いという種族は信頼しきっているのだろうか?
「それは、注意を促してくれてありがとう…」
ただの人間である私にはそう答えるしかなかった。ただ、カテリーナ達の注意のせいもあって、私は背後から誰かに見られている気分になった。
そうすると、私は自分の背中があまりに隙だらけだと言う事を感じざるを得なかった。カテリーナ達が何も言わなかったら、今でも私は背中を狙われていることなど気がつかないだろう。
1時間ほども私達は、前後左右を見はられたままエルフ達の森の中を歩き、やがて家々が見える場所にまでやってきた。
そここそエルフ達の集落だった。彼らエルフは木を切ったりする事はせず、木を自在に操ることで、自然の木を変形させて家を作っている。木はエルフと言う種族と共にあり、彼らが木に望めば自在にその形を変えることができた。
私達を見た、エルフの森に住むエルフ達の眼は、何とも冷やかなものだった。
皆が、私の良く知っていたエルフ、クラリスと似たような白い肌と赤い模様、そして新緑の髪の色をしていて、耳がとがっていると言う姿。だが、彼らはクラリスのように優しい目をしていなかったし、礼儀正しく接してくれる事も無かった。
私がその視線に緊張せずをいられずにいると、横からカテリーナが言ってくる。
「エルフっていうのはこういうものさ。クラリスは変わり者、これが本来の姿。私はもう慣れているから気にしない方がいい」
とカテリーナに言われても、私は気にせざるを得なかった。
私の見るエルフは、皆が同じ姿をしているわけではなかった。大体、クラリスと同じくらいの成人のエルフだと、男女も見分けがつかないほど良く似ていたが、中には子供のエルフもいたし、老人のエルフもいた。
子供のエルフ以外は、皆、私やカテリーナよりも背が高い。これもエルフ達の特徴だ。皆、家の前で何かをしている。森の中に人が住んでいると言う世界ではあったが、彼らは木を切って何かをしようとしているのではないようだった。
中には、何かを集中し、自分達の手の中に光を生み出しているエルフもいた。それはクラリスが良くやっていた事だ。そうやってエルフ達は森の中に共に住んでいる精霊と会話をしているのだと言う。
ただ、私達人間の理解を大きく超えた事だったので、私には彼らがそうやって精霊と交信して何をしているのかは分からなかった。
そんなエルフ達が暮らしている世界を私達はどんどん奥地へと進んでいく。日の光こそ、木々の上から差し込んできてはいたが、どんどん周囲の木は大きくなってきていて、見上げてもその頂上が見えないほどの高さと、巨大な幹を持つ木ばかりになってきた。
周囲を行きかうエルフの姿もどんどんその数を減らしていて、そこにいるのは、弓矢を背負い、腰には剣を吊るしていると言う武装したエルフばかりになってくる。
私達はどんどんエルフの森の中心へとやってきていたのだ。
エルフの森の中心には、このエルフ達の村を総括し、見守っている長がいる。カテリーナ達の話によれば、そのエルフの長は女で、アリッサと言う名前らしい。
歳はおおよそ270歳だと言う話だが、人間ならばそんなに長き時を生きる事は出来ない。私も、アリッサとはどんな姿をした人物なのかと想像してしまっていた。
「アリッサ・アルセイデスに会いに来た。ここを通してもらおう」
ある巨大な木の前までやってくると、カテリーナがそう言った。彼女の前には二人のエルフの警備兵が立ち塞がっており、巨大な木を守っている。
彼らが守っている巨大な木はあまりにも大きい。天に昇るほどの高さを持っており、その周囲も非常に太い。木の円周を測ることができないほど大きく、その規模は大きな屋敷一軒ほどはありそうだった。
これはこの森で最も大きな木だろう。この森にある他の木は、この巨大な木につき従うように立っている。
「話はシレーナ達から聞いている。我々は非常に不本意だが」
警備に当たっている長身のエルフの内一人が言った。
「もし、アリッサ様に何かあったら、非常に残酷な事をお前達にしなければならない。それは分かっているな?」
もう一人のエルフが言ってくる。彼らの口調は非常に冷徹な響きを持っており、すでに私達が何かをしでかしてしまったかのようだ。
「そんな事は承知の上だ」
カテリーナが堂々とエルフに言い放った。相手のエルフはカテリーナが見上げるほど長身だったが、彼女はまるで動じる様子は無い。
「中で案内される。アリッサ様はいつもならば、人間どもと会話はしない。それだけは忘れるな」
と、警備兵のエルフが言うと、私達の目の前にある巨大な木が、口でも開けるかのようにゆっくりと開き始めた。
巨大な木に切れ目があったわけではない。ただ、木が生きているかのように動いて行き、どんどんその口を開いて行ったのだ。外にいるエルフの意思か、中にいるエルフの意思が伝わったかのように、木は、人が二人並んで歩く事ができるほどの規模で口をあけるのだった。
そこは、大きな木の中にある屋敷の入り口だったのだ。
「何、見とれているんだい。行くよ」
カテリーナが私に向かって言って来た。彼女は目の前で起こった出来事が当たり前であるかのような表情をしており、私に比べてここに来る事は慣れているようである。
だが、私にとって目の前で起こった事は、あまりに現実離れしており、圧倒的ともいえる事だった。
数分の後、私達はこのエルフの森の長である、アリッサ・アルセイデスと会う事になった。中央の広間でアリッサに出会えるということで、私達は巨大な木の中に設けられた館の中央広間に通された。
このエルフの長の館は、私にとっては圧巻とも言える姿をしていた。壁、天井、全てが生きている木でできている。そして、どこも切断されたような跡は無い。
エルフ達は生きた木をそのまま使い、自分達の使いやすいようにしているのだ。それこそ、森の中で共存することができるエルフ達の生き方であり文化だった。
「アリッサ様が御成りになられる。くれぐれも失礼の無いようにな」
私達を中央広間に通したエルフが言ってきた。
どうやら彼らもアリッサという長に対しては、多大なる敬意と、外界からの警戒を払っているらしく、すでに私達の周りにも何人もの警備が敷かれている。
カテリーナはアリッサに出会うのは初めてではないと言うが、それでもカテリーナを、そして人間達を信用する事は出来ないと言うのだろうか?
やがて、私達の目の前の扉が開かれ、2人の付き人の女のエルフに伴い、一人のエルフがやってくる。
そのエルフこそ、アリッサだった。
彼女は床にまで垂れるほどの長い新緑の髪を持ち、純白の肌に複雑に入り組んだ模様を持っていた。初め、アリッサの年齢は270歳だと聞いていたから、どんな老婆が姿を現すのかと思っていたが、驚いた。
アリッサは背こそ付き人にしているエルフよりも低かったが、外見は従えているエルフ達と変わらずに若い。
外で私が見たエルフの中には、人間から見ても老齢のエルフ達はいたが、彼らはアリッサよりももっと年が上だったというのだろうか。どうやら270歳というのは人間からするとびっくりするほどの年でも、エルフからすると、あまり老齢ではないらしい。
アリッサは見た目こそ若いエルフと変わらなかったが、その存在感は圧倒的だった。鋭い眼光を持っており、どことなく人間の男を惑わしてしまいそうな妖しささえも持っている。
体に纏った衣服も、絹の中でも特別艶やかなものを選んでいるのだろうか、まるで水が流れているかのようだった。
「カテリーナ・フォルトゥーナ、フレアー・コパフィールドと、その他の者よ」
アリッサは声を出して言って来た。その声は、鋭く広間に響き渡る。まるで音がただの音ではなく、何回も反復して私達の心の中に響き渡ってきているかのようである。
私はシレーナのピュリアーナ女王からも似たような感覚を味わっていたが、アリッサの方が圧倒的にその印象は強かった。
「その他の者とは初めてお目にかかる。私がこのエルフの森の長、アリッサ・アルセイデスだ」
再び私達の前に声が響き渡る。その声の中には何か強烈な魔力が込められているのではないかと思ってしまうほどだ。
「ど、どうも始めまして…。ブラダマンテ・オーランドです」
と、私は答えることしかできなかった。
「カテリーナ・フォルトゥーナよ。本来ならば、人間はこの館はおろか、エルフの森の中に立ち入ることさえできない。それは分かっているな…」
カテリーナへとその眼を向け、アリッサは言ってきた。
「はい。分かっております」
カテリーナはいつものような口調を変えることなく答えた。
「こうして、お前と会話をしているのも、ピュリアーナ女王の嘆願があっての事だ。先日、シレーナの者達の遣いが来て、お前にかけられた呪いの事は知っている」
アリッサは、カテリーナの腕にはまっている腕輪を指し示して言って来た。カテリーナの腕にはまだ銀色の腕輪がはまったままだ。それは変わらず、カテリーナの腕の中に大きな存在としてはまっている。
「この呪いを、解く方法をあなた方は知っているのですか?私はあなた方エルフに、この呪いを解いてもらうためにここまで来ました」
カテリーナはアリッサの前では敬語を使い、相手を敬う。口調も和らいでいる。アリッサはカテリーナの方へと近付いて行く。
そしてとても繊細そうな白く細い腕を伸ばし、カテリーナの、銀色の腕輪がはまっている方の腕を手に取った。
アリッサの手はとても脆いものを手に取るかのように、ゆっくりと動き、カテリーナの腕輪に優しく触れる。
私は彼女の持つ美貌も相まって、その姿に見とれてしまった。カテリーナの腕輪にはまっている腕輪を見るのだって、厳かな儀式であるかのように見える。
「ふむ…。古代に存在していた秘術のようだな。現代でこの呪いをかけることのできる人物は、恐らくエルフの中にもいない…」
「そんな…、じゃあ、呪いを解く事は…?」
と声を上げたのはフレアーだった。
「…、呪いをかける事ができる人物がいないというだけで、解く事ができないとは言っていない」
アリッサはきっぱりとした口調で、フレアーに言った。
カテリーナの腕輪から手を離すと、アリッサは静かに言ってくる。静かな声ではあったものの響き方はやはり、私達の心の中に響き渡るほどだった。
「森の賢者。彼に会ってみろ」
アリッサは一言そのように言った。
「この森に、太古の昔から住んでいるという、あの賢者様の事ですか?」
カテリーナが少し驚いたかのようにアリッサに言う。
「ああ…。私が、森の更に奥に足を踏み入れることを許可する。それとな。彼も前々からお前には会いたがっていらっしゃるようなのだ」
アリッサの口から意外な言葉が発せられた。
私は“森の賢者”という存在については聞いたことがなかったが、エルフの長であるアリッサが、彼に対して敬語を使っている。そして森の中に太古の昔から住んでいる存在なのだと言う。
一体どのような存在なのか。アリッサが敬語を使うほど、尊敬すべき相手なのだろうか?
「カテリーナ・フォルトゥーナと他の者達よ。お前達を、本来なら人間が足を踏み入れる事のできぬここに入れたのは、“森の賢者”がお前達を呼んでいたからでもあるのだ。そうでなければこの地へは入る事は出来ん」
アリッサは自分が立っていた元の場所に戻りつつ言った。
「私達は、森の賢者と会うことができるのですか?」
カテリーナが意外そうな声を発して言った。
「彼がそう望んでいる」
アリッサは振り向きざま、カテリーナに向かって鋭い眼光を放ってそう言った。彼女の眼からは言葉以上の何かが発せられているかのようである。
「森の賢者がおられる場所は、この館の裏口から先だ。お前達を通すように言っておこう」
アリッサの申し出は意外ではあったが、すぐの時間で過ぎてしまった。私はエルフ達は人間相手ではそう簡単に、呪いを解くなどと言う事はしないものだろうと思っていたのだ。
だが、アリッサの頭越しに森の賢者に話が行っていたらしく、話はとんとん拍子に進んでいった。
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カテリーナの封印された力の解除のため、森の賢者に会いに、カテリーナ達はエルフの森へと向かいます。 | ||
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