GROW4 第二十一章 折れない心 |
1
「一撃を受けきったことは流石と言いたいけれど、キミでは僕は“絶対に”倒せない。ここのフィールドはだだっ広いまっさらな新地だ。キミを覆い隠すものがない・・・」
「あれを使うにはまだ早いけど・・・あの人相手ぇならしゃぁなさそうやな・・・」
新地のフィールド。文字通り200mにも及ぶ大きな空間には地面しかなく草木や建造物すらない。砂漠とはまた違う空疎感が漂っている。
お互いの距離は20m程。相手が相手なので十分な距離とは言い難い。
シュッ
「扇子を刀に変える久々津扇子(くぐつぜんす)の一種みたいだね。刀で僕を倒せるかい?」
「愚問やでシグマーさん。早く“本気”出さんと一瞬で終わるで・・・
覇妖蛇刀(はじゃとう)歎祀懺幽(なげきまつりざんゆう)」
ユラユラッ
「覇妖蛇刀?鞘から刀を抜いてすらいないのに空間が歪んでる?」
舞華ちゃんは変化させた刀を鞘から抜かず、そのまま発走の構えを取る。構えた刹那、柄から上の刀身が禍々しく歪み出し空間を捻じ曲げる。
今まで使ってきた刀とは明らかに部類が違う。例えるなら妖刀に近い。
「なるほど、僕が本気を出すのを待っているわけだ。甘いね・・・」
キュゥゥゥゥゥゥン
ザンッ
「さて、甘いのはどっちやろうか?」
「・・・・・」
何かが斬れて地面に落ちた。目視できなかったのがおかしかったと思わせるほどの巨大な爪のようなものだ。真っ二つになったそれは、しばらくすると灰になってばらばらになった。
「猛毒性の爪やね。しかも普通の爪やないみたいやし・・・」
「キミは僕に本気を出させると言ったね。いいよ片手だけ“真”の姿で闘ってあげるよ。正直言ってそれ以上出すほどキミは“強くない”からね」
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「なっ、なんやその左腕!?あんた人間やないのか?」
「灰人原獣(はいじんげんじゅう)、左腕別姓(シニストラー・ワルデベ・ツェーニセスト)」
シグマーさんの左腕が変化していく。左肩から服を破り変化した灰色の腕には、肩と肘に黒いとげが生えている。膝下まである巨大な腕はだらりと垂れ、まるで左腕だけ人外のものになってしまったみたいだ。さっき飛ばした巨大な爪は、指の爪だったみたいだ。腕自体はそこまで大きくはないが、手だけは一メートル以上ありそうだ。
「刀を抜くことを薦めめよう。そうすれば一瞬で終わらずにすむ」
「片腕で良くゆうで。すぐに斬り落としたるわ」
シュラァァァァッッ
「恩縁因黒(おんえんいんこく)。その腕、すぐに持って行かれへんとええな」
「正者(せいじゃ)、灰へと還らん・・・」
2
ついに刀を抜いた舞華ちゃん。紫色の刀身がぎらついている。
構えを取ると、シグマーさんへと真っすぐ突っ込んだ。
「一刀流奇術(いっとうりゅうきじゅつ)、宴武二刀身(えんぶにとうしん)!!」
「刀が二本に?いや、違う。どちらかは偽物だな。子音慈音(しおんじおん)」
ギュゥゥゥゥン
左腕が大きな壁を創り出し刀を抑えつける。しかし、刀は二本とも壁を通り抜けてしまった。
「いやいや、甘すぎるで」
「なにっ!?」
ズババッ
「ググッ」
ドサッ
キン
「はよう本気を出さんからやで」
ダンッ
「あらら、お早いお目覚めで」
「その刀?なんなんだ?」
立ち上がったシグマーさんには、斬り傷が二か所あった。舞華ちゃんが狙った二か所だ。
舞華ちゃんの刀は一本だけのはず。攻撃の際一瞬だけ二本になり再び一本に戻った。全く分からない。
「斬り口から傷が広がっている。それもその刀の“特性”か?」
「そうやな。しかしたいしたことないんやなシグマーさんも。それとも、この刀が強すぎるんやろうか?」
「いいだろう。刀の能力はいいとして本気で掛らないとな。こっちも勝たないといけないんでな」
ゴゴゴゴゴッ
「会長と戦う気やな。させへんで」
スッ
「もう遅い」
ドギュゥゥゥゥゥン
「そん、な」
「舞華ちゃぁぁぁぁん」
ドサッ
「人間の最も隙ができるのは息を吸い込んだ瞬間だ。そこを突けばどんな達人でも避けるのは困難だよ・・・」
全身が白い怪物と化したシグマーさんの攻撃が舞華ちゃんを貫いたのは、ほんの一瞬の出来事だった・・・
3
「ゲホゲホッ。シグマーさん、あんた紳士気どってる割にはやり方がえげつなんやね」
「あの攻撃まともにを受けて立ち上がるなんてね」
舞華ちゃんの身体には大きな穴が開いてしまった。腹部が貫通して吹き飛んだのだ。普通は立てる状態じゃない筈。
「悪いけど勝たせへんで。死神になってでもあんたを引きずり降ろしたるわ」
「ふふふ、やってみてもらおうか」
「余裕の笑みやな。イライラするわ。魔玄毀棄(まげんきき)」
ヒュッ
グラッ
「んんっ、いい斬れ味だね」
「ばかな!?頭身真っ二つなんやで」
シグマーさんの身体は腹部からちょうど上下に真っ二つに分かれたというのにピンピンしている。
斬られたところからは血の一滴も流れでない。それどころかすぐにくっついてしまった。
「灰は灰に、塵は塵に・・・」
ファサァッァァァァ
パラパラパラッ
「ウチの刀が灰になって消えてもうた・・・」
「僕の身体に触れたものは、すべてが灰へと変わる。物事の通りだよ。生まれてきたものはすべてが灰へと変わる・・・」
「灰に変わるやて?ありえへんでそんなこと」
「僕は灰そのものさ。灰は刀では絶対に斬れない。例えどんなに優れた刀でさえも・・・」
「ぐっ、灰なら水分に弱い筈やで。ウチの血でしおれる筈や」
「無駄だよ。概念そのものが違う」
シュァァァァッ
「血が、蒸発した?まさか、あんたの能力は・・・」
「九傑懐炉の終結地点(ヘルスス・ステーヴィジョナル・ハデステリオス・ヴァニチェスト・ジ・エンド)」
フワッ
「終わりだ・・・」
「そ、そんな・・・」
舞華ちゃんが、灰に・・・
「しょ、勝者、シグマー=フェルティマ」
「僕と戦うには人間の寿命は短すぎる」
4
灰になった舞華ちゃんはしばらくして元に戻った。
シグマーさんの能力は明らかになったものの、まだいくつか腑に落ちない。あのとき、戦っていた舞華ちゃんは何か気付いていたみたいだけど・・・
いずれにせよとんでもない能力だ・・・
本選も三回戦中盤へと来たものの、未だに能力の分からないものが二人いる。
一人は緒貴田驚殿下。そしてもう一人が今回の対戦相手・・・
「さてと、アキくんがどこまでやるのか楽しみね」
「・・・・・」
俺の姉の不知火記憶。
余裕の表情の裏にはとてつもない能力があるに違いないだろう。
「第三回戦第五試合目、始め」
今回のフィールドは鉄の城?
どうやら今いるのは鉄でできた巨大な城の内部らしい。そして、姉さんの姿が見えないところを察するに、お互い城の別の場所にいるみたいだ。
「探し出して戦えということか?このフィールドのシステムが良く分からないな・・・」
『見つけた、ミツケタ、みつけた、MITUKETA!!!!キャキャキャキャキャッッッッ』
ドドドドドドドッ
鉄の槍?
「な、なんだ!?」
『へへへへへ、次は外さない』
ヒュンヒュンヒュンヒュン
ガチャガチャガチャガチャッ
俺の目前にいたのは無数の鉄兵軍団。対戦相手と戦う前にひと悶着ありそうだ。
「めんどくさいシステムだな。俺の能力は鉄相手には使えないってのに・・・」
戦局は、試合早々無数の鉄兵に囲まれるという事態だ。
「全く、ついてないぜ」
−記憶サイド
ガシャァァァン
「ガラクタ人形で足止めのつもりかしら?まさかアキくんはこれでやられたりしてないわよね・・・」
機能停止し山積みになった鉄兵の上に座っていた・・・
5
いやいや長い間逃避してました。
ついに出ましたシグマーさんの能力。
ファイズのなんチャラとかグダグダ気にしないでください。
そして次回は姉弟対決です。
渡邊さんピンチですwww
もう三回戦まで頑張ったもんねwww
主人公だし勝たせてあげたいけどね。難しいよね。
あーあ。あとがき最悪だ。
次回、GROW4第二十二章 シスター
かっこいいタイトル思いつかなかったです。
姉だけに、聖職者だけにwww
ではでは・・・
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シグマーさんも大概チートだったよww | ||
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