白き航路
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 足を止めて空を見上げる。

 空は薄い青から色を変えながら、地平線は赤く染まっていた。

 遠くの山肌も赤い。

 美しい草原の夕暮れは見る者の心に暖かさを思い出させる。

 家に帰ろう。

 そんな気持ちが沸いてくる。

 

 

 落ちてゆく夕日をじっと見つめていると風が吹き抜け、伸びた髪を乱していく。

 それは夜の気配を含んでいて肌に涼気を感じさせていった。

 家に帰ろう。

 そんな気持ちが強くなる。

 

 

 空の色は濃くなり、地平線は朱の線に変わった。

 風が強くなり、ふると身体を震わせる。

 少し身を縮めてくたびれたマントをかき合わせると、朱の線はもう消えていた。

 白い月が輝きを増し、そうあれは子供の頃に見たと同じ月だと思う。

 家に帰ろう。

 心は動くが足は動かない。

 

 

 そして空は闇に落ち、月は星を従えて闇を支配する。

 星空に見つけるいくつもの星座。

 幼い頃、父に教えてもらった星の名が口をついて出る。

 

「ペガサス、カシオペア、子ぐま……北極星」

 

 見つめる先で星が流れた。

 視界に残る白い光の軌跡。

 その先にあるのは懐かしい故郷。

 帰ろう。

 白い星の道を辿って。

説明
旅人は静かに夕暮れの空を眺めていた――。

個人的にお題を使っての掌編、2作目です。

・1作目「蒼い星」   http://www.tinami.com/view/311723
・3作目「星降る夜に」 http://www.tinami.com/view/325936
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掌編 お題 オリジナル 旅人 

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