真・恋姫無双呉ルート(無印関羽エンド後)第四十九話 |
劉?side
会稽郡、反孫呉連合拠点、作戦会議室にて・・・
「・・・ただいま帰還いたしました」
「お、ご苦労さん」「・・・おつかれ」
帰還した太史慈を劉?と王朗が労っていた。
「どうだった、孫策の腕前は?結構楽しめたか?」
「はっ、実力で言えば私とほぼ同等のようです。武器は長剣、かなりの修羅場を潜っているようですね」
「なるほどな〜・・・、んで兵士の実力はどうだ?正直そっちが知りたいんだが」
「兵士もかなり鍛えられています。奇襲したにもかかわらずこちらの兵にも結構な損害が・・・」
「・・・分かった、ありがと」
王朗は表情を変えることなく太史慈に礼の言葉を言った。太史慈は黙って頭を下げたが、ふとあることに気がついて部屋中を見回した。
「そういえば厳白虎殿は?先程城に戻ってから見かけませんのでこちらに居ると思ったのですが・・・」
太史慈の質問に、劉?と厳白虎はいかにも困った表情で大きな溜息をついた。
「あいつなら今孫呉の連中のところに遊びに行ってるよ。『イイ男の臭いがするわ〜♪』とかなんとかほざきながらな」
「・・・独断行動、迷惑・・・」
劉?、王朗の返事に太史慈はしばらく言葉が出なかったが、やがてこちらもどこか疲れた表情で溜息を吐いた。
「左様ですか・・・。あの方の独断行動にも困ったものだ・・・」
「・・・そういや確か孫呉に天の御使いとかいう奴が居たな、そいつも確認したのか?」
劉?は太史慈に再び質問する。質問された太史慈は少し考えるそぶりをすると、すぐに返事を返した。
「・・・ああ、遠目で見ただけですが、確かに劉?様の似顔絵そっくりの妙な白い服を着た男がいましたね。確かに容姿は整っていたのでいい男とは言えますが・・・」
ふーん、と劉?は興味無さそうに聞いていた。王朗も大して興味も無さそうであった。
「そいつだろうな、厳白虎の言ってたいい男ってのは・・・。可哀相にな、あいつに気に入られるなんてよ」
「はい、少しばかり同情しますね」
「・・・・天の御使いに、惚れた、の・・・?」
「は!?そ、そんな訳・・・・・」
「なんだよ睦月、そうなのか?あ〜!!俺傷つくぜー、お前のこと気に入ってたのによー」
「ち、違います劉?様!!私は別に天の御使いの事など興味ありません!!本当です!!」
「・・・必死に否定するとこ、怪しい・・・・」
「王朗殿〜!!いい加減にしてくださ〜い!!」
会稽の空に、太史慈の絶叫と、劉?、王朗の笑い声が響いていた。
一刀side
太史慈に襲撃されてから6時間後、ようやく移動が可能な状態になった為、俺達は移動を開始した。
兵士達の指揮は、あまりいいとは言いがたい。突然奇襲を受けたのだから止むを得ないとは思うけど・・・。
進軍の途中、幾つか村を通りすがった、いや、正確にはかつて村だったもの、というべきか・・・。
その村には人どころか動物一匹存在しておらず、さらに食料も何一つ残っていなかった。
田んぼや畑の作物は全て刈り取られ、中には草木ごと焼きつくされているものもあった。
それに何より、井戸という井戸に毒が入れられていた。いや、正確には村の井戸の一つに毒が入れられており、それを飲んだ兵士の一人が倒れたんだが、これのせいで他の井戸にも毒が入っている可能性が出てきた為、まともに井戸水を飲むことが出来なくなってしまった。
そして俺達は、村で食料、水の補給も出来ずに出て行く事になったのである。
「あ〜あ、報告には聞いていたけど、まさかあそこまで徹底しているなんてね〜・・・」
「全くだな、これで完全に現地での補給は不可能だと確認できたな」
雪蓮と冥琳が、村を見回しながらそんなことを話し合っている。どの表情もかなり深刻そうだ。
「ねえ冥琳、今軍の食糧どれだけ持ちそう?」
「節約に節約を加えて・・・・、一週間といったところだ。祭殿と六花様の運んでこられる兵糧がくればかなり持つのだが・・・」
まだ祭さん、六花さん達の部隊は俺達よりもはるか後ろにいる。合流するまで約三日はかかるそうだ。一応俺達の持っている兵糧は合流するまで持たせることは出来るが・・・。
「・・・敵のことだ、確実に兵糧を狙ってくる。そこで兵糧を絶たれたら、かなり厳しい戦いになるぞ・・・」
「腹が減ったら戦は出来ない、からね・・・。まったく面倒くさい戦術を取ってくるわね・・・、劉?は」
雪蓮は忌々しげに呟いて地面を蹴飛ばした。冥琳も黙ってみていたが表情を見る限り雪蓮と同じ心境なのだろう。だが今更そんなことを嘆いても仕方がない。今は前に進むしかないだろう。
「雪蓮、冥琳、食料が無いのなら何時までもこんなところにいる必要は無いよ。すぐに出発しよう」
俺の言葉に雪蓮と冥琳は顔を見合わせてコクリと頷いた。
「そうね、冥琳、すぐに出発するよう指令を出して」
「ああ、北郷殿の言うとおりだ。またいつ敵が奇襲してくるか分からないからな」
そして冥琳は部隊に指令を出しに行こうとする、と・・・・
「き、緊急事態です!!孫策様!周瑜様!!」
突然伝令の兵士が俺達の前に息を切らして現れた。まさか、とは思うけど・・・。
「・・・また誰か奇襲してきたの?」
俺は恐る恐る尋ねた。どうか違うと言って欲しいと願いながら・・・。しかし案の定、その希望は打ち砕かれた。
「はっ!突如後方に現れた敵の襲撃を受け、現在応戦しております!!」
「ちっ!よりによってこんな時に・・・・!敵の数は!?大体で分かるでしょ!?」
突然の敵の襲撃に雪蓮は驚愕していたが、すぐに険しい表情になって兵士に掴みかかろうとするような勢いで問い詰めた。
「は、はっ!敵軍およそ4000!旗印は厳!恐らくは厳白虎の軍と思われます!!」
「厳白虎・・・。敵の大将の一人がおでましって訳ね。・・・すぐに行くわ!!そう伝えて!!」
「御意!!」
そして兵士が伝令に向かうと、雪蓮は俺達に顔を向けた。
「そういう訳で私は行ってくるから!孫呉の軍に奇襲を仕掛けたことを後悔させてやるわ!!」
「ああ、私もすぐに軍を率いて応援に向かう!気をつけてな!」
「もちろんよ!」
雪蓮はにこりと笑みを見せると南海覇王を掴んで前線に向かった。雪蓮の実力なら大抵の兵士や武将なら大丈夫だろう。だが、相手の厳白虎がどれほどの実力かは俺も愛紗もしらない。ここは警戒するべきだろう。
「冥琳、俺達は・・・」
「北郷殿と関平はここで待機を、万が一にもここに敵が出現する場合もありますので」
「・・・分かった、関平にそう伝える」
俺は躊躇いながらも頷いた。
個人的には雪蓮の加勢に向かいたいが、冥琳の言うとおりこの場所にも敵の伏兵が潜んでいるかもしれない。ここは大人しく待っていたほうがいいだろう。
俺の答えを聞いた冥琳は部隊に指示を出す為に伝令を呼んでいた。
雪蓮side
雪蓮の辿り着いた場所では、既に敵と味方の乱戦が始まっていた。
厳白虎軍の突然の襲撃に、孫呉の兵達は混乱の極みにあり、応戦はしているものの、兵は次々と討ち取られて被害は予想以上に拡大していた。
その状況を見た雪蓮は、すぐさま戦場に割って入ると、目の前にいた敵兵三人を一気に斬り倒した。
「ぐはっ!!」「ぐがあっ!!」「ぎゃあ!!」
まるで舞うかのように南海覇王を振るい、三人の敵兵を一瞬で斬り捨て、刺し殺し、首を刎ねる。そして兵士達に目を向けると、鋭い声で叫んだ。
「臆するな!!我が精兵達よ!!
お前達の武はこのような有象無象に蹴散らされるほど弱小なのか!?
お前達の勇はこの程度の奇襲で萎えるほど矮小なのか!?
断じて否!!
我等孫呉はこの程度の兵には屈しはせぬ!!
我等に敗北は在りはせぬ!!
兵達よ!!剣を抜け!!
弓兵達よ!!矢をつがえよ!!
皆の命、この孫伯符が預かろう!!汝らの持つ刃をもって敵を粉砕せよ!!」
雪蓮の言葉が終わると同時に、周囲から兵士達の雄叫びが響き渡った。
士気を取り戻した孫呉軍は、勢いづいていた厳白虎軍を一気に抑え込んだ。
それをみた雪蓮はほっと息を吐いた。
これでしばらくは持ちこたえられるだろう。
あとは冥琳が軍を率いてやって来るまで待てば・・・。
そう考えた時、突如空気を裂くような音が響い
「!?があっ!!」
それを聞いて横を向いた瞬間、雪蓮の腹部に凄まじい衝撃が走り、雪蓮は地面に倒れこんだ。
「中々いい演説だったわ♪思わず私もぞくぞくしちゃったわよ〜♪でもあなた、少し油断しすぎよ♪」
雪蓮は腹部を押さえながら何とか立ち上がると、そこには黒い革製の服を纏った、筋骨隆々の男が、体をくねらせながら立っていた。よくよく見ると男の右手には長さ三メートルはあるであろう長い鞭が握られていた。おそらく雪蓮を打ち据えた一撃はそれであろう、と雪蓮は確信した。
「・・・っち、まさか不意打ちを喰らうなんて・・・、油断したわ」
「そうそう〜、でも卑怯なんて言わないでね!戦場は生きるか死ぬかなんだから」
そう言いながら体をくねらせてこちらにウィンクしてくる男を、雪蓮は気味悪げに見つめていた。
「気持ち悪い男ね・・・・。で、あんた何者よ!?」
「あら、ごめんなさい!私ったら名前も言ってなかったわね!私の名前は厳白虎っていうの!よろしくね♪孫策ちゃん♪」
そして再びウィンクするオカマこと厳白虎を、雪蓮は目を逸らして出来る限り視界に入れないようにしていた。
「あんたが厳白虎・・・?まさかこんな気持ち悪いオカマ野朗だなんて・・・」
「んま!!失礼ね!!あなたったら束沙ちゃんと同じような事言って!!本当に失礼だわ!!」
雪蓮の発言に顔を真っ赤にして怒る厳白虎。雪蓮は溜息を吐きながら厳白虎の方を向いた。
「んで、あんたがこの軍の大将なのね?」
「そうよ?あなた達から、なんだかイイ男の匂いがしたから、ちょっと挨拶代わりに、って仕掛けちゃったのよ♪」
イイ男・・・、間違いなく一刀の事だろう・・・。そう考えた雪蓮は苦笑いをした。
一刀が知ったらかなり嫌がるだろうな、等と心の中で考えていると、厳白虎は突如雪蓮をしげしげと眺めてきた。
「それにしてもあなた、いい身体してるじゃない・・・。でも、私のほうがお肌が美白よ!!」
「・・・あっそ、悪かったわね、色黒で」
雪蓮は、もはやどうでもいいとでもいいたげな口調で厳白虎の言葉を聞き流した。そんな雪蓮に厳白虎は構わず、再びしゃべりだす。
「それにしても、なんて変態趣味な服装なの!?おっぱいはみだしすぎじゃない!!あなたそれでも女の子!?恥じらいというものが無いの!?はっ!!ま、まさかあなた痴女!?痴女だったのね〜!!」
「な、なんですって〜!!誰が痴女よ!!」
今まで無視していた雪蓮は、聞き捨てならないとでも言いたげに厳白虎を睨みつける。それに対抗するかのように厳白虎も鋭い眼光を雪蓮に向ける。
「だってそうじゃない!!そんな露出ばっかりの服、どう考えたって男誘惑するためのものじゃない!!そうよ!!きっと自分の部下を誘惑して乱交するために着ているに違いないわ!!」
「ちっが〜〜〜〜〜う!!!江東は暑いし湿気もあるから普通の服だと暑苦しいから露出を多くしているだけよ!!私はそんな乱交される趣味は無いわよ!!」
「ふん!どうかしら!大方あなたの武勇も、男の人が目のやり場に困って本気出せなくなったところをバッサリやったとかそんなところでしょ!?そして夜には複数の兵士達に徹底的に犯されぬいて・・・・」
「何勝手に想像しているのよ!!大体私が身体を許した男なんて一人しか居ないわよ!!」
「あら?そうなの?ちょっとイ・ガ・イ?」
厳白虎は意外そうな顔をして体をくねらせた。それを見て雪蓮は苦々しげに顔を顰める。
「何がイ・ガ・イ?よ!!そんなに私の格好が痴女に見えるわけ!?」
「というより露出狂よね〜。恥ずかしいという観念が無いみたいな・・・」
「うっさい!!あんたみたいなおっさんに言われたくないわよ!!」
「だ、だれがおっさんですって〜!!!こんなピチピチの女の子に向かって〜〜!!むっき〜〜〜!!」
雪蓮と厳白虎は、傍目から見るとかなり馬鹿馬鹿しい罵り合いを繰り広げていた。だが、言い争うのも嫌になってきたのかついに雪蓮は剣を抜いた。
「も〜〜〜〜頭きた!!せいぜい目に物見せてやるわよこのオカマ!!あんたに一刀は渡さないんだから!!」
「あら?彼氏の名前は一刀ちゃんって言うの?あれ?それって真名?」
「うっさい!!さっさとかかって来なさいこのおっさん!!」
「!!!!またおっさんって!!もう許さないわ!!私がお仕置きしちゃうんだから!!」
キれた厳白虎は、右手を振るって地面に鞭を叩き付ける。
鋭い風切音と共に鞭が地面に叩きつけられると、その地面には鞭と同じくらいの幅の溝が出来ていた。
恐らくあの鞭はそうとう丈夫な素材で作られているのだろう、ならばあの腹部への衝撃も納得できる。雪蓮は未だに鞭が命中してずきずき痛む腹部にそっと手を当てた。
鞭自体の殺傷能力は、本来そこまで高くは無い。元々拷問や刑罰等の人間を痛めつける為の道具である為、そこまで高い殺傷能力は必要無いのだ。
だが、拷問に使われるだけあって、その一撃の痛みは筆舌に尽くしがたい。実際鞭で百叩きの刑を受けた罪人が、痛みのあまり百回に達する前に死んでしまったという話も有る。皮や木の枝等で作られた鞭でその威力なのだ、相手が持っているのは鉄線を束ねて作った鉄の鞭、あんなもので打たれたら痛いではすまない、下手をすれば致命傷だ。先程の不意打ちは恐らく手加減をしていたのだろうが、それでも打たれた腹部はずきずきと痛む。
「それじゃあ、いくわよ〜ん!!」
厳白虎は手に持った鞭を雪蓮目掛けて振るう。雪蓮はそれに反応して剣で鞭を受け止める。確かに鞭は剣の刃に当たった。・・・・が、
「ぐああああ!!!」
瞬間背中に凄まじい痛みが走る。受け止めた鞭の先端が曲がり、雪蓮の背中を打ち据えたのだ。
知ってのとおり鞭は良く曲がり、しなるため、使いこなせれば例え受け止められても鞭で相手に打撃を与えることが可能だ。その上曲がりくねって軌道が読めないため受け止めたと思ったら攻撃を喰らう、ということもある。
「ほらほら〜♪休んでいる暇は無いわよ〜♪」
鞭の攻撃を受けてひるんだ雪蓮を見て、厳白虎は鞭で次々と攻撃を仕掛けてくる。雪蓮はそれを必死で避け続けるものの、その予測不可能な軌道から、完全に裂け切ることができず、何発か喰らってしまう。
「くう・・・!いっつう・・・・・」
雪蓮は打たれた箇所から発する激痛に顔を顰めながら厳白虎を睨んだ。
いかに体を鍛えようとも、痛みを克服するのは並大抵のことではない。たとえ筋肉を極限まで鍛えたボディービルダーでも、完全にいたいのは平気、ということは有り得ない。ましてや皮膚は、どれだけ運動しようとも、どれだけ筋トレしようとも鍛えることは出来ない。その為皮膚の痛みは老若男女問わず、ほぼ平等に感じる。
古来より人間はそれを利用し、鞭打ち、棒打ちなど刑罰、拷問はもっぱら皮膚に痛みを与える物が多かった。
雪蓮も同じだ。
雪蓮は、自分自身痛みに慣れていると思っていた。
幼少期、物心ついた頃から母親、祭、六花に武の稽古でしごかれ続けた日々、あの鍛錬で、痛みが無いもの等無かった、痛くない日々等無かった。今でも行う鍛錬でも、しばしば痛みは襲ってくる。
まして戦場では、敵の槍が、剣が、弓が、自らの命を奪おうと次々と襲ってくる。
斬られたこともあった、矢を受けたこともあった、一生残る可能性もある大怪我も負ったことがあった。
今までの人生が、戦いの連続。
人生そのものが、痛みの連続。
だから自分は痛みには慣れている、免疫がある。
そう、雪蓮は思っていた。
・・・・だが
(・・・痛い!!いたい!!イタイ!!)
全身を苛む激痛にその場で飛び跳ねそうだ。端も外聞も無く泣き叫んでしまいたい。
それほどまでに痛い。
あまりの痛みに今まで何でもなかった剣を振るうことすら難しくなってきた。
(くっ・・・まさか鞭の一撃がここまで効くとはね・・・。鞭打ちの拷問を受ける人の気持ち、今になって分かったわ・・・)
最も分かりたくも無かったが、と雪蓮は心の中でぼやいた。
「あら?もう駄目なの?あなた案外痛がりなのね〜?」
「くっ・・・悪かったわね、あんたの攻撃が、思った以上にきいたのよ・・・」
「ごめんなさいね〜♪私、女の子には厳しいの!」
話が終わるや否や再び厳白虎は鞭を振るう。
目で捉えられないほどの速さのそれを、雪蓮は己の勘のみで回避する。目だけに頼っていられない、聴覚を総動員して空気の鳴る音を察知して避ける。それでも紙一重、一秒でも遅かったら間違いなく命中していたであろう。
「あら!すごいじゃない!!私の攻撃避けるなんて!!なら、もっと本気だしちゃおうかしら!!」
厳白虎は自身の攻撃を全て避けた雪蓮に驚きながらも、再び鞭を振るった、それも、前の攻撃よりもさらにスピードを上げて。
(・・・ちっ!!)
雪蓮はさらに速さを増した鞭を必死に回避する、が、先程の速さでもぎりぎりであったのだ。速度をさらに増した攻撃が、雪蓮の身体をなんども打ち、その度に激痛が雪蓮の身体を走る。
(せめて・・・、近づければ・・・)
雪蓮は心の中で歯噛みした。せめて奴の懐に入れれば、一撃を入れることが出来る。鞭は接近した敵に対しては有効なダメージを与えることが出来ないのだ。だが、厳白虎はそれを熟知しているのか鞭を自由自在に操り雪蓮の接近を許さない。さらに鞭を斬りおとして攻撃範囲を狭めようにもくねくねとまるで蛇や蛸の脚のように動く鞭を捕らえるのはかなり至難の業だった。
(やばいわね・・・、これは・・・)
雪蓮は冷や汗をかいていたが、休む間もなく鞭の一撃が背中に直撃する。あまりの痛みに意識が跳びそうになるが、再び叩き付けられた一撃で、意識が強制的に引き戻される。
「ん〜〜〜〜、そろそろ限界みたいね〜・・・。それじゃあそろそろ引導渡しちゃおうか・し・ら?」
厳白虎は不気味な笑みを浮かべながら鞭を振りかぶった。全身に走る激痛で地面に膝をつそれを見ながら雪蓮は一瞬思った。
(あ、私死ぬかも・・・・)
そう考えた瞬間、突然無数の矢が降り注ぎ、厳白虎軍の兵士達を射抜いていった。
そして矢は雪蓮に止めをさそうとしていた厳白虎にも襲い掛かった。
「な、何なのよ一体〜!!どこの無粋なおバカさんが〜!!」
厳白虎は雪蓮に止めをさすのは後回しに降り注ぐ矢を鞭で次々と叩き落していった。
(・・・これって・・・、冥琳・・・・?)
「雪蓮!!」
雪蓮が頭の中でぼんやり考えていると、誰かの声が響いた。
ふと目を開けると、そこには、愛する男が肩で息をしながらこちらを見つめていた。
「か・・・ずと・・・」
「雪蓮・・・、こんなに傷を負うまで無茶しやがって・・・。もう大丈夫だ。冥琳が援軍を率いてきてくれた」
「・・・え?」
雪蓮がゆっくりと一刀の指差している方向に目を向けると、そこには無数の弓兵を率いた冥琳が、視線だけこちらに向けて立っていた。
「ふう・・・、どうやら間に合ったみたいだな」
「あら!!何貴女!!貴女も孫策ちゃんに負けないほど破廉恥な格好してるじゃない!!もう!!呉は痴女の集まりなの!?」
「誰が痴女だ!!・・・我が名は周公瑾。貴様に痛めつけられた孫策の軍師を務めている。我が主が世話になった礼に、矢の雨でも馳走しようと思ってな」
厳白虎に痴女と言われて少々キレ気味の冥琳は厳白虎を睨みつけた。弓兵達は今か今かと弓に矢をつがえて待っている。冥琳の合図があればすぐにでも矢を放つつもりだ。厳白虎はそれを見て、肩をすくめた。
「悪いけどその御礼はお・こ・と・わ・り・よ♪今回はせいぜい様子見で来ただけなのよ。残念だけど此処でお別れさせてもらうわ♪」
「・・・逃がすと思っているのか?」
「思ってるわよ〜!!」
厳白虎の言葉が合図になったのか、突然敵兵が次々と白い玉を投げつけてきた。
「!?迎撃しろ!!」
冥琳が弓兵に命ずると弓兵達は再び敵に向けて放とうとした、が・・・。
突然地面に落ちた玉が弾けて、そこから白い煙が出てきたのだ。
「な!?煙幕だと!?」
突然の煙幕に冥琳は困惑する。冥琳の率いてきた軍も、突然敵が見えなくなったため混乱して滅茶苦茶な方向に矢を放っていた。
「じゃあね〜、孫呉の皆さん♪また次の機会があれば会いましょ〜♪」
白い煙の中で、そんな声が響いた。その声は段々と遠くへ遠ざかっていった。
「ちっ、逃がしたか・・・。一部部隊は残って被害の確認を、残りの部隊は煙が晴れ次第追撃を行え!!」
冥琳が部隊に次々と命令を飛ばす。伝達係の兵はすぐさまその指令を部隊に伝えた。冥琳はそれを見送ると、雪蓮と一刀の方へ歩み寄った。
「大丈夫か雪蓮」
「なんとか・・・生きてる・・・、けど、体中が痛いわ・・・」
「これだけの量の傷だ・・・。仕方がないだろう・・・。とにかく早く手当てを・・・・」
「雪蓮様!!冥琳様!!」
冥琳の言葉を遮るかのように誰かの声が聞こえた。一刀達が咄嗟に声の聞こえた方向を向くと、そこには額を汗でぬらして、どこか焦った表情をした明命が控えていた。
「明命!どうしてたんだよ一体!そんなに焦った表情で・・・、あ、聞いてくれ明命、実はさっき奇襲があって・・・」
「はい!既に兵士から聞いています!!それよりも雪蓮様、一刀様、冥琳様、一大事です!!」
「どうしたというのだ、明命!」
冥琳の言葉に明命は一度言葉を切ると、再び口を開いた。
「さ、祭様と六花様率いる兵糧部隊が襲撃されております!!現在なんとか耐えてはいますが、崩壊は時間の問題です!!」
その言葉に、一刀達は凍りついた。
あとがき
皆さん申し訳ありません〜〜〜〜!!
此処最近バイトと資格試験の勉強で忙しくて書くのに時間がかかってしまいました〜!!
・・・ついでに最近にじファンに「狩人†無双」投稿始めたのも影響しているんですが・・・。
そんなこんなでこんなに時間がかかってしまいましたが四十九話、なんとか投稿いたしました!これからどんどん時間減ってくし、大丈夫か、自分・・・。
厳白虎のモデルはもうお分かりでしょうが仮面ライダーWのキャラ、泉京水です。ですのでオカマで鞭使いです。上手く表現できたか分かりませんが・・・。
まあともかくこれから更新は遅くなっていくかもしれません。が、どうか拙作を見捨てないで見守ってやってください・・・。やっぱり二作投稿は無茶だったかな・・・。
説明 | ||
長い間お待たせしてすいません!!ようやく投稿できました!! 色々と事情があり遅れてしまい申し訳ありません!!楽しみになされていた読者の皆様に深くお詫び申し上げます!! |
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コメント | ||
jonman 様 あの二人と絡ませるところもいつか書いてみたいものです・・・。まあそうなったら男キャラが地獄なんだがwww(海皇) 関平様 単にオカマなキャラに書いただけなんですがそんなにウザいか・・・。こっちは書いてて楽しいんですがね。(海皇) BLACK 様、アルヤ様 呉の人達は特に露出度高いですからね、冥琳と雪蓮、穏はもう痴女にしか見えないwwんでアルヤ様の言うとおり、立ち絵だけ見たら蓮華はどう見ても穿いてないようにしかwww(海皇) ↓ 大胆な雪蓮や冥琳、穿いてないようにしか見えない蓮華や穏とかですか?(アルヤ) 厳白虎はてっきり「私の方がおっぱい大きいんだから!」と言うと思った。(笑)しかしよく考えてみれば恋姫キャラの何割かは痴女と言われてもおかしくない格好でしたな。(笑)(BLACK) |
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