レッド・メモリアル Ep#.13「ノーザンクロス」-2
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《アルタイブルグ》近郊の『WNUA』軍侵攻地帯

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 『ジュール連邦』の白夜で日が長い中、セリアとフェイリンは、『WNUA軍』が侵攻してきている、《アルタイブルグ》の陣地の一つにやって来ていた。

 そこは戦場の最前線の一つであったが、『ジュール連邦』は首都攻撃に備えているらしく、セリア達がやって来た時は、《アルタイブルグ》の街は静かなものだった。すでに《アルタイブルグ》の街に対しては、空爆をきっかけとして制圧が進められているらしい。

 戦車や装甲車が行きかい、開戦から2日経った今の段階ですら、次々と『WNUA』軍は『ジュール連邦』内へと攻め入って来ていた。

 住民たちの抵抗は少ないらしい。彼らは逆に『ジュール連邦』の荒廃した社会よりも西側の発展した社会を望んでいるらしい。社会主義急進派を除けば、抵抗するよりも従った方が無難だと思っているせいだろう。

 セリアとフェイリンは、『タレス公国軍』特別捜査官、および臨時捜査官の身分証を見せた事で特別に陣営の中へと案内された。

 セリアは、リーに撃たれた傷を応急処置して貰っている所だった。彼女のすぐそばにはフェイリンがいて、更に熊のような体躯の軍服を着た男がいた。

「いい? 大佐でしたっけ? すぐにこのリー・トルーマンという男を指名手配してください。こいつは、この『ジュール連邦』側のスパイだったかもしれない。何よりも、わたしを撃って、重要参考人を拉致したんですからね!」

 セリアは肩を撃たれていたも気丈に振る舞い、《アルタイブルグ》侵攻部隊を指揮している大佐にそのように言っていた。

 その大佐というのは、『WNUA』加盟国の『プリンキア共和国』の軍の人間で、かなり訛った『タレス語』でセリアに向かって答えて来ていた。

「トルーマン少佐は現在捜索をしている。だが、戦時下の国ではそう上手くも行かない。衛星で追跡したところ、彼は西へと向かっている。西には、《ボルベルブイリ》の街がある。そこに向かっている可能性がある」

「そう? 応急処置は済んだ? 大佐。わたしはあの男に騙され、この地に来たんです。何故、あの男が、アリエル・アルンツェンという子を拉致したのは分かりませんが、これは…」

 セリアが応急処置を終えたばかりの体を起こし、立ち上がるものの、彼女の目の前には大佐が立ち塞がった。

「セリア・ルーウェンス捜査官。君は現在停職中とのことだ。すぐに君の国に連れ変えるように言われている。捜査は我々に任せ、帰国せよとの命令がある。この国にいても良い事は何も無いぞ」

「リー・トルーマンの事を知っているのは、わたしだけよ、大佐…」

 セリアはそう言いかけたが、大佐は何も言わずに負傷兵用のテントから外へと出て行ってしまった。

「どうするの? セリア? やっぱり、帰る?」

 フェイリンがそのようにセリアに尋ねてくるが、セリアは気丈に言った。もう肩を撃たれた傷の痛みなど感じていないかのようである。

「いいえ、わたしが執念深く、恥を負わせた奴を許さないのは知っているでしょう?あのリー・トルーマン。わたし達を利用しようとしたのよ。許せないわね。それに、聴きださなきゃあならない事もあるし」

 セリアは医療テント内の椅子から立ち上がるなり、新しく渡された白いシャツを羽織りだした。

「それって、あなたの娘さんの事?」

「ええ、そうよ。あのリー・トルーマンは私の娘の事を知っている。でも、どういう訳でわたしを呼び出したのか分からない。分からないことだらけ。このままにしておけると思う?どうせわたしが停職なら停職でいいでしょ。それに、どうせ臨時で軍に呼び出されたって事になっているんだから、ってちょっと!」

 セリアはそこで言葉を言いかけ、軍の医師に言葉を投げかけた。

「はい?どうかされました?」

 戦争の最前線に派遣された軍医は忙しそうな様子だったが、セリアに呼ばれ姿を見せた。

「白いスーツは無いの?わたしに軍服を着ていろと?前に着ていた奴は、リーの奴のお陰で血だらけにされたんだから」

 と不平を言い放った。だが医師は困った様子で。

「そんな、ここにはそんなものはありませんよ。それに外の寒さは『タレス公国』とは違うんですから、防寒着を着てください。傷に悪いですよ」

 するとセリアは鼻で息を鳴らし、医師から渡された防寒着を手に取った。それはフードもついたとても暖かそうなものではあったけれども、軍用のものでセリアの好みとは欠け放たれていた。

「行くわよフェイリン」

 と言うなり、セリアはフェイリンを伴ってその医療テントから外に出た。

「まだ安静にしていないと! 薬があるんですよ!」

 という声がテントの中から聞こえてきたような気がしたが、セリアは既に渡されていた痛み止めと、化膿予防の薬をコートのポケットに突っ込み、何事も無かったかのように外に出た。

「何で、わたしまで。国に戻れば仕事があるのに…」

 フェイリンはそのように不平を漏らしていたが、セリアは彼女に言った。

「国に戻るフリをして、リーの奴を見つけるのよ。あなただけが頼りだわフェイリン。わたしが停職中であろうとなかろうと、奴を見つける事が事件の解決につながるの。何しろ、あいつは軍を裏切ったんだからね!」

 そう言うなり、セリアはフェイリンよりも力強い足取りで、前線基地の中を歩きだした。

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9:12 P.M.

 

 白夜の夜はリーが想像していたよりも長いものだった。まだ日の光が差し込んできている。ここは針葉樹林帯の一角で、どの町からも200km以上離れた人里離れた森林の中だった。森林の中を道路だけが1本走っている。

「まずいな。軍に我々の居所がバレた」

 リーはそんな森林地帯の一角に車を停車させ、フェイリンから奪って来た携帯端末をチェックしてそう言った。

 そこにはグリッド線の中にこの一帯の地図が表示されており、そこに赤いポイントがあられ、中央へと近づいてきている事を示している。

「それって、どういう事ですか?」

 アリエルが心配そうな声でそう尋ねてきた。リーは『ジュール語』で彼女を安心させようという口調で話し始めた。

「いいか、我々はこの地方にまで侵攻してきた『WNUA』の軍に追われている。私が独断で行動しているのだろうと思っているのだからな。だが、捕まるわけにはいかない。我々は軍に捕まるよりも前に、ある人物の所にまでいく必要がある」

 と言うなり、リーは停車させた車の中でシートベルトを外し、運転席と助手席の間にセットしておいた端末を取り出すと外に出た。車の外は、肌寒い外気に包まれている。リーは更に後部座席から防寒具も取り出した。

「ある人物って、誰ですか」

 アリエルも同じように車の外に出てきてリーに尋ねた。

「それは、私が本来の仕事をしている同志の一人だ。君のしかるべき扱い方を知っているし、ベロボグ達からも君を守ってくれるだろう」

 そう言うなり、リーはアリエルの方へと防寒具を一つ渡してきた。アリエルの着ているライダースだけでは、この山岳地方はあまりにも寒かった。

「車なしで、どうやって行くんですか? ここには何も無いんですよ」

 アリエルはそう言ったが、リーにはすでに考えがあった。

 どうか近くから、周囲に響き渡るかのようにして、汽笛の音が聞こえてきていた。汽笛は鳴り響き、それを鳴らしているものは、どうやら近づいてきているようである。

「あれを使おう。私の同志とは安全な場所で落ち合う事になっている」

 そのようにリーは言い、車をその場所に置き去りにして動き始めた。

「軍には衛星を使って居場所を追跡されたんだ。森の中を行こう。深い森の中ならば、空からは位置が分からない」

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 ほんの数分歩くと、リーとアリエルは森の中を貫いて伸びている線路を見つけた。単線の線路が延々と延びており、線路の状態からして、それはうち棄てられたものではなく、まだ使われている線路であるようだった。

 そして森林の中を走っている線路は、一定のリズムで音を立てており、どうやら列車が来る事を示しているようだった。

「よし、列車が来ている。これに乗り込もう。同志にもこの線路の先で会うように連絡を入れておく」

 そう言うなり、リーはアリエルを伴って線路脇の木の陰に身を隠す。リーは携帯端末のキーボードにメッセージを入力し、それを送信した。

 やがて森林の線路のカーブを、機関車が姿を見せ、貨物をけん引してきていた。カーブの為と、長大な貨物の重量のせいで列車は徐行しており、十分に飛び乗る事ができそうだった。貨物列車が運んでいるのは、樹木を伐採し、それを積み込んだ無蓋車ばかりのようだったが、後部にはコンテナ車もあり、リーはそのコンテナ車に向かってアリエルを先導した。

 アリエルはきちんとリーに付いてきて、その貨物列車のコンテナの手すりに飛び乗った。

 コンテナの扉は錆び付いていて動かしにくかったが、リーはそれを開き、アリエルを先に招く。コンテナの中は外気を凌ぐ事ができるようになっていたが暗かった。

 リーが扉を閉めてしまうと、列車が車輪を軋ませている音は大分減った。

「これでしばらく凌げるが、軍はこの列車もすぐに追跡してくるだろう。早く落ちあわなければ」

 貨車の中で落ちつこうともせず、リーはそのように言い、貨車の内部を持っていたペンライトで照らしていた。中には木箱があり、どうやら『ジュール連邦』のどこかからの積み荷が積んであるらしい。

 リーは貨車の扉を閉めてしまったが、アリエルは車輪を軋ませながら動いている貨車の中で、扉の目の前に立ち、リーの側にはよっては来なかった。

 リーはすぐさま貨車の中の木箱の一つに座り込んでしまったが、アリエルにはその気は無いらしく、今にも貨車の扉を開き、外へと逃げてしまいそうだ。

 だがそれよりも前に、彼女は口を開いて話し始めた。

「私は、ここ一週間、何度も騙されてきました。ショックだった事ばかりです。親友が実はテロリストだったり、父親が養母をさらって無理矢理手術をされたり。今度は、私が戦争を止めるための手立てですって。一体、どこまであなたを信用していいのか分かりません」

 なるほど、無理もない。リーはすぐにそう思った。何しろ、アリエルは18歳だったか。

 自分がそんな年齢の時に、目の前に現実を突きつけられたらどのように思うか。それを受け入れることなどできないだろう。

「君の身に起こった事は、気の毒に思う。だから我々は君を助けたいと思っている」

 リーはそのように答えた。『ジュール連邦』の言葉を話す事ができると言っても、彼女を安心させる事ができる口調になっていたかは自信が無い。

 実際、アリエルは全く安心する事ができていないようだった。

「このまま、この貨車の扉を開いて外へと逃げれば、私は自由になれるでしょう? 私は、誰かに縛られる生き方なんて嫌なんですよ」

 アリエルは口先を尖らせてそう言って来た。彼女はテロリストにさらわれる恐怖や、今起こっている現実に対して、恐怖を通り越し、既に怒りさえ感じているのだろう。

 だが、リーはアリエルに向かって言った。

「ああ、そうか。だが、ここは何も無い所だ。歩いて近くの街まで100km以上もあるんだ。それに外は寒いし、もう日だって暮れるだろう。それでも君はそんな事をするのか?」

「するかも?」

 アリエルはそう言うなり、貨車の扉を思い切り開け放った。

 すると外からは寒気が思い切り入って来て、貨車の中を一気に冷やす。しかも列車は直線区間に入ったらしく加速をし、飛び降りれば大けがをするほどの速度になっていた。

「テロリスト達の言葉じゃあないが、あんまり、我々の手を煩わせないで欲しい。何も君を取って食おうとしているわけじゃあない。我々はベロボグを倒し、戦争を止めたいわけだし、その為には君の協力が不可欠なのだ」

 リーはそう言った。するとアリエルは開け放たれた、貨車の扉を背にしながら言い放ってくる。

「だからもう、曖昧な言葉は止めて、具体的に私に何をしてほしいかを!」

 そこまでアリエルが言った時だった。突然、貨車の上空からヘリの飛行音が聞こえてきていた。

 そのヘリの音で、リーはすぐに反応した。

「おい、貨車の扉を閉めろ。軍に見つかる!」

 アリエルは戸惑ったようだったが、すぐに貨車の扉を閉めた。

「思った以上に早いな。軍は私の事を国家反逆者だとでも思っているらしい」

「私を誘拐したりするからですよ!」

 アリエルは貨車の中に響くくらいの声でそのように言って来た。

「ああそうか。だが、私がした事は誘拐じゃあないぞ。軍の任務などよりももっと大切な事があるからこそだ」

 そのようにリーが説明している間にもヘリはどんどん接近してきていた。

 やがてある一定の距離まで達した時に、貨車の中にまで響き渡るくらいの音で、声が響き渡ってくる。拡声器の声だ。

「そこの列車。すぐに運行を停止しなさい! これは『WNUA軍』の命令だ! 現在、この地帯一帯は、我々の占領統治下にある! 運行を停止しなければ、即座に強硬手段に移る!

 列車の中には、我が軍の指名手配犯がいる! 即座に停止しなさい!」

 『ジュール連邦』の訛りのある声が辺りに響き渡った。列車はその声に反応したのか、だだんとその速度を落としていく。

「参ったな。この列車は止まるぞ…」

 リーは立ち上がり、貨車の内側から空を仰ぐようにしてそのように言った。

「じゃあ、どうするんです? 私は誰にも捕まりたくありませんよ!」

 アリエルが言ってくる。だがそんな事はリーには周知の事実だった。

 列車はやがて急ブレーキの激しい音を立てながら、車輪を思い切りきしませてその地点で停止した。

「それは、私とて同じ事だ。無理やりにでも動かさせるさ。君にもついてきてもらう」

 そう言うなり、リーはアリエルの腕を引っ張って、更に貨車の扉を開くと、彼女の方を先に降ろさせた。

 アリエルはだんだんとリーを信用して来ているのか、無用な素振りは見せなかった。貨車の外に出ると、上空にはヘリが飛んできている事が分かる。

 それも二機。上空から、まるでリー達のいる列車を挟み込むかのように迫って来ており、隠れているような場所は無かった。

 案の定、リー達の姿はすぐに見つかってしまった。リーは、材木が積まれた無蓋貨車を背に移動していたのだが、

「リー・トルーマン少佐! 逃げ場は無い! 大人しく投降せよ! 少佐、あなたは包囲されている!」

 拡声器からの声が響き渡る。

「どうするんですか!?」

 ヘリの音と拡声器からの声に耳を塞いでいるアリエルを先に行かせる。そうしつつもリーは彼女に言い放った。

「行ったろう? 列車を動かしてこのまま行く!」

 先頭で貨車を牽引している大型機関車までは、まだ100mほどの距離があった。

「どうやって!」

 アリエルがそう叫んだ時、再びヘリが接近してきて拡声器から大声が発せられる。

「リー・トルーマン少佐! 我々には発砲許可が降りている! 投降しないのであれば、発砲しろとの命令だ!」

 わざわざ警告を発しているのならば、まだヘリを動かしている指揮官はためらっているという事だ。リーがした事は決定的な軍への裏切り行為ではあったが、彼らがまだリーを敵として認めているわけではない。

 リーはアリエルを急がせた。もう隠れる必要は無い。彼らは全速力で機関車の方へと向かった。

 その時銃声がして、リーの足元の地面、線路のバラストが砕け散って、それが顔の方にまで飛んできた。ヘリからマシンガンが発砲された。

 だが、リーを狙ってきてはいない。これは威嚇射撃に過ぎない。

「リー・トルーマン少佐。投降せよ!」

 そのようにヘリからは言ってくる。だがリーは足を止めず、アリエルを急がせた。

「大人しく従った方がいいんじゃあないですか!?」

 アリエルがそう叫んだ。だがリーは構わない。

「君の方へは撃ってこない! 目的は私の方だ! 私が撃たれないように速く先に行ってくれ!」

 リーが叫ぶ。先頭の機関車は目前に迫って来ていた。アリエルはただ列車を前の方へと進んでいった。

 リーはマシンガンの弾を凌ぎながら、自分は振り向きざまに一発銃を発射した。彼が発射した銃弾は光を放つ弾となり、その銃弾はそのままヘリに命中したが、軍用の防弾のボディには銃弾はかすり傷程度しか付けられない。

 しかりながらリーが発射時に銃弾に帯びさせた光は、そのまま折りたたまれた網であるかのように手を伸ばし、ヘリを覆い始めた。

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『WNUA』軍侵攻地帯

 

(何かがヘリに絡みついています! これでは飛行不能だ! 不時着するしかありません!)

 叫び声であるかのように響き渡るヘリの操縦士の声が、通信機から聞こえてくる。

 リー・トルーマン少佐を追跡するために飛び立った部隊のヘリは、即時に彼を発見する事は出来たが、どうやら彼に抵抗されているらしい。

 侵攻地帯に設けられた前線基地の、大型テントの一つにある通信施設では、光学モニターと共に、ヘリの現在位置も表示されている。

「不時着だと! 一体、何が起こっていると言うのだ?」

 この場にいる最高司令官が声を上げた。彼の本来の任務は『ジュール連邦』の侵攻計画の最前線を任されたものであったが、リー・トルーマンの軍への反逆行為により、彼の追跡が最優先任務になっていた。

 たった一人の将校の反逆行為、そしてその逃亡の追跡などは、1部隊に任せれば良い。そう考えていた司令官だったが、『WNUA』軍からの命令では、即時に彼を捕らえ、拘束したうえでその目的を尋問するように、との事だった。

 『タレス公国』では、こともあろうか空軍基地の兵器開発部門を統括する将軍が、実はテロリストであったなどという、信じがたい事実も発覚したばかりだ。

 このリー・トルーマンという少佐もそうなのか。テロリストと通じ、何かを画策しているのか。ならば、この戦争をすみやかに成功させるためには、この少佐を速やかに捕らえなければならない。

 司令官は即座に命じた。

「一機は不時着。もう一機は、列車の反対側から回り込み、すぐにトルーマン少佐を捕らえろ!何としてでも逃がすな!」

 

 ヘリの一機を航行不能にした。リーの『能力』を使えば、ヘリの機器系統を破壊する事ができる。ヘリのシステムを入力できる端末も持っていれば、ヘリを遠隔から操る事もできるだろう、だが今はそれだけで十分だ。

 ヘリは低空を飛行しており、激しい音を立てながら、線路脇の針葉樹林をなぎ倒していき、それをクッションにして不時着した。

 だが、ヘリはもう一機いる。列車を隔てて反対側にヘリは降り、どうやら列車を回り込んでくるつもりのようだ。

 リーが再び機関車の方に進もうとした時、アリエルがリーの銃を握っていない方の手を掴み、突然に言って来た。

「あなたも『能力者』とかいう!」

 アリエルは眼を見開いてそのように言って来た。

「ああ、だが、今、それが大して重要な事か? 私が『能力者』であるという事は大した問題じゃあない。今の状況を潜り抜けないとな!」

 リーはそう言うなり、銃を片手に、貨物列車の機関車の扉を思い切り開け放った。すかさず彼は中に踏み込み、機関士達に銃を向けた。

「列車を動かせ!私は軍の者だ。この一帯はすでに『WNUA』軍により包囲下にある!軍の命令に従え!」

 狭い機関室。『ジュール連邦』の交通事情が伺える。この機関車ももう50年以上も走行しているものだろう。

「わ、分かった!だが、あのヘリも軍の者で、おれ達に、止まれと言ってきている」

 機関士の一人のヒゲ男の方がそう言って来た。

 リーは自分の軍の身分証を、男達に叩きつけるかのように見せた。

「ああ、そうだ。だが、今は私の命令に従え。速く列車を動かせ。ほんの10kmほど進めばいい!」

 リーがそう言った時、アリエルも機関車の中に乗りこんできた。西側の人間であるリーと、真っ赤に髪を染めた娘が突然列車に乗り込んできて、一体、何事なのだと機関士達は思った事だろう。

 だが、銃を向けられていては彼らも何もできない。

「わ、分かった!」

 そのように機関士は言い、機関車のマスコンを握った。

 ゆっくりと貨物列車は動き出した。

 

(おい!何をしている!列車を止めろ!)

 ヘリからの通信が聞こえてくる。司令官は、思わず通信機に向かって言い放った。

「構わん。発砲してでも列車を止めろ!」

 すぐにヘリから応えが跳ね返ってくる。

(民間人が一緒です!撃てば巻き添えになるでしょう)

 司令官は、先走った答えを訂正し、すぐに答えた。彼はすでに身を乗り出している。

「忘れたか?これは戦争で、その列車にいるのは敵だ。民間人の犠牲など止むをえんだろう?ミサイルで列車を走行不能にしろ!」

(了解!)

 不服に思ったのか、ヘリから返って来たパイロットの返事には、迷いが現れていた。

 

「早く出せ、ヘリに追い付かれるな!」

 リーはそのように言ったが、重厚な貨物列車の機関車が加速をするのには時間がかかり、ゆっくりとした動きで、停止地点から走りだしていた。

「これ以上は無理だ!」

 リーが銃を向けている運転士が大声で言い返してきた。

 列車の前方にはヘリがおり、そこからは機関砲がこちらに向けられていた。更にミサイルも向けられている事をリーは知っていた。

「仕方あるまい!」

 そのように言うなり、リーは素早く運転席の窓ガラスから先に見えているヘリへと銃を向け、2発の銃弾を発砲した。銃声が狭い機関室内で響き、アリエルや、2人の機関士は怯む。

 銃弾はヘリに命中した。リーが放った銃弾は、ヘリのパイロットや乗っている軍人を狙ったものではなかった。ヘリ本体を狙ったものだ。

 ヘリに青白い電流のようなものが走る。すぐさまその体はがくがくと震いを立て、その体制を崩す。リーが自らの『能力』によってヘリの航行を不能にさせた為だ。

 だが、ヘリのミサイル発射機能は失われていなかった。ゆっくりと加速し出す貨物列車の先の方から、ミサイルが発射された。

「伏せろ!」

 リーはそのように叫んだが、機関室の中にいる者達にとっては、伏せる間さえ無かった。発射されたミサイルは、ヘリがバランスを崩していたため、列車の頭上を飛び越して行き、一両後ろにあった、材木を剥き出しの形で積んでいた車両を吹き飛ばした。爆風と爆炎が、機関車の背後で吹き荒れる。

 その衝撃は前の車両である機関車にも響き渡った。

 だが、機関車には被害は無いらしい。ゆっくりと加速し出していた機関車は、やがて一定のスピードで走りだしていた。

 機関車の前に立ち塞がるようにしていたヘリは、そのまま、燃え盛る材木を積んだ貨物列車の側の線路に不時着していた。

 

「軍も、リーの奴も本気ね。このままじゃあ民間人も巻き添えになるわ」

 離れた場所から事の有様を見ていたセリアは、フェイリンに双眼鏡から機関車を失った貨物列車を見させていた。

 離れた場所、それも、森林によって遮られており、本来ならば機関車の姿を道路から見る事などできないのだが、フェイリンの持つ特殊能力は、全ての物体を透過して見る事ができる。赤外線の波長をフェイリンは認識できるらしく、彼女はその『能力』のためにセリアに連れだされてきたようなものだった。

 ミサイルによって車両1つが吹き飛ばされ、その衝撃で背後の車両も脱線しているような様子は、フェイリンにだけ見る事ができる。

 この『能力』を使えば、覗きもし放題だなとフェイリンはいつも思っていたが、女である彼女はそんな事に興味は無かった。

 セリアは車両の助手席に、フェイリンが運転席にいる車は、列車の線路から離れた場所に停車していた。

「何で、わざわざ列車ジャックなんかしたのよ?」

 運転席側にいるフェイリンがセリアに尋ねる。

「わたし達の乗っていた車は軍のものだからね。それに、こんな場所じゃろくに車も手に入らないだろうし。それとも、他に何かあるかもしれないわ。あの走っていた機関車を追うわよ」

 セリアがそう言うと、フェイリンは、

「あ、あたしは、セリアのためにやってあげているんだからね。あのリー・トルーマンを追う事が、あなたのためになるから、そう思ってやっているんだからね」

 と言いつつ車のアクセルを踏み込んだ。

「はいはい、あなたのお節介には感謝しているわ」

 セリアは独り言のようにそう言い残した。

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135号線付近 ジュール連邦

 

 リーはアリエルを連れて、機関車をある場所で降りた。

 最初から最後まで、貨物列車の機関車達は二人の事を列車強盗か何かと思っていたようだったが、リーは構わない。彼らが警察なりに連絡する頃には、会うべき人物と接触する事ができるだろうからだ。

 列車は135号線との交差している踏切付近で停車させ、彼らは車を降りた。そこは針葉樹林の森林が立ち込めており、リーはそこで降りれば木に邪魔され衛星が二人を見つけられない事を知っていた。

「ここまできて、私もあなたについて行く理由が、分からなくなってしまいましたよ」

 アリエルは森林の中を先に進むリーにそのように言った。

「帰りたいか? だが君の存在は我々にとって、何よりも大切なのだ。特に今起こっているこの戦争にとってはな」

「それが、分からないんですよ。一体、この私が戦争の何だって…」

 リーの言葉を遮るようにしてアリエルはそう言った。

「まあ、安心してくれ。彼が、君をより安全で、いるべき場所へと連れていってくれる」

 リーはそう答えるが、アリエルが不服の表情をしていたのがすぐに目についた。この娘はほんの1週間前まで何一つ不自由することなく自由に暮らしていたのだ。それを無理矢理この世界に引きずり込んでも不満しか生まれないだろう。

 あとは、あの彼に上手く丸めこんでもらうしか無い。

「その、いるべき場所と言うのも分からないままで、私がそう簡単についていくと思いますか?」

 アリエルはリーの様子を伺いつつそう尋ねてくる。

「まあ、心配するな。あの彼が連れて行ってくれる」

 リーはそう言って、針葉樹林の向こう側に見える、舗装されていない道路に止められた一台の車を指差した。

 そこには1人の大柄なスーツ姿の男に護衛されている、一人の男が立っていた。

 男の姿は中肉中背。年齢は50くらいだ。彼が、レッド系の、それも極東地方の出身の顔立ちをしていると言う事は、アリエルも近付いていった時に良く分かっただろう。

 その男はアリエルがやって来ると、彼女の姿を見て、まるで待ち望んでいたものがやってきたかのように、好意的に迎えた。

「よく来てくれた。アリエル・アルンツェンさん。私の名前は、タカフミ・ワタナベという。君をある場所へ案内したい」

 それはとてもたどたどしい『ジュール連邦』の言葉ではあった。彼、タカフミ・ワタナベが元はNK人と呼ばれる人種であり、母国語も大きく違うものだから無理も無い。彼が発したのは、荒削りのジュール語だった。

「ある場所とは?どこなのですか?」

 アリエルはそう尋ねた。彼女のジュール語は、ネイティブのものだったがタカフミは理解できた。

「今起こっている戦争を、食い止める事ができる組織のアジトの一つだ。心配しないでいい。君は客人として招待するから、まあ乗ってくれ。コーヒーでも飲みたいだろう?」

 とタカフミは言い、アリエルを停車している車の後部座席へと促した。車は4輪駆動のもので、森林の土地でも走る事ができるようになっていた。

 後部座席の扉は開かれたが、アリエルは立ち止まった。彼女はこの車に乗り込むことで、また新たな陰謀に巻き込まれていくのではと、そう思っているのだ。リーは彼女の表情をみてすぐに理解した。

「アリエル。君のお母さんだが、無事だ。我々の組織のメンバーが、《ボルベルブイリ》の病院で見張っている。ベロボグ達の手が入らないようにとな…」

 タカフミはアリエルにそう言った。

「私は、母に会いたい。それで、元通りの生活に戻りたい」

 アリエルははっきりとした口調でそう言った。

「これが終わったら、すぐにでも君を元の生活へと戻そう。君のお父さんの、ベロボグの陰謀を暴き、戦争を止めなければ、彼らは何度でも君を狙ってくる。だが我々は君を保護できるし、陰謀を止められるのも君だけだ。何故かは、これから説明しよう」

 タカフミはアリエルを落ち着かせるようにそう言った。彼自身、リーのようなサイボーグのように無機質な口調ではなく、人間味のある好意的な声をしていたから、アリエルも幾分は安心できただろう。

「あなた達を信用して良いか、まだ迷っています。でも、今の私には居場所が無い。あるとしたら、あなた達と行くくらいの事だけです」

 アリエルはそれだけ言ってしまうと、自分から車に乗り込んだ。

「随分と、手荒に扱って来たようだな、リー? 我々の事を信頼していないぞ?」

 タカフミは今度は、タレス語に切り替えてリーに向かって言った。

「そうでもしなければ、彼女を連れてくる事はできなかった。修羅場だったのでな」

 リーはそのように答えると、アリエルと共に後部座席に乗った。最後にタカフミが助手席に乗り、ついてきた男が運転席に座ると、車はすぐに森の中を走り始めるのだった。

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《アルタイブルグ》チェルノ記念病院跡

 

 昨日に空爆が行われた、チェルノ記念病院の跡地では、その空爆の後の有様がまだ生々しく残されていた。ミサイル攻撃によって木っ端みじんに吹き飛んだ病院は、瓦礫の山となっており、黒く焦げ付いた病院の外壁や鉄骨がそのまま残されていた。

 《アルタイブルグ》はこの攻撃の後、侵攻してきた『WNUA』によって迅速に制圧され、現在は侵攻軍による戒厳令が敷かれていた。若干の住民とのトラブルはあったものの、現在は《アルタイブルグ》の街は落ち着いている。

 しかし街のあり様は物々しい。『WNUA』の連合軍の軍用ジープや戦車が市内をひっきりなしに動きまわり、交通も規制されていた。《アルタイブルグ》の住民が街の外に出る事は許されておらず、市内の鉄道、バスも運休させられていた。

 《アルタイブルグ》は首都、《ボルベルブイリ》から、わずか100kmしか離れていない。この先に、『ジュール連邦』と『WNUA』軍の境界線が張られ、両軍は対峙している。双方の軍は空爆という形でミサイル攻撃を主な攻撃手段としていたが、対空ミサイルを『ジュール連邦』側は首都近辺に多く設置。『WNUA』からの首都空爆攻撃に対し備えている。

 その対空ミサイル兵器をどうにかしない限りは、『WNUA』も空爆を実施する事はできない状態にあった。

 だがその『ジュール連邦』の防衛システムも、近いうちに破られる事になるだろう。『WNUA』側にとって『ジュール連邦』の防衛システムなど何世代も前のものでしかない。近いうちに、首都《ボルベルブイリ》は制圧され、『ジュール連邦』の領土は『WNUA』側のものとなるのだ。

 そんな戒厳令下にある《アルタイブルグ》のチェルノ記念病院では、今だに瓦礫の中に埋もれており、生存者はもはやいないという事だった。この病院で起こっていた人質監禁事件は、『WNUA』軍の侵攻前に人質が解放され、空爆の制圧という形で幕を閉じている。

 『ジュール連邦』の軍がその場に残ってはいたものの、彼らは抵抗を見せる事なく降伏して、今では『WNUA』の捕虜の下にある。

 病院は廃墟のまま放置されていた。火災も鎮火されており、不気味な廃墟と、黒ずんだ瓦礫が織りなす悲惨な有様には誰も近寄ろうとしていなかった。

 だが一部、『WNUA』の『タレス公国軍』の部隊がその場に残り、残された手掛かりを探っていた。この空爆を受けた病院は、テロリストの拠点の一つだったのだ。そのテロリストはこの空爆により事実上崩壊したかのように思える。

 しかしながら軍はまだテロリストの残党がいると判断し、《アルタイブルグ》を制圧した部隊の一つに、この病院の跡地を探るように命じたのだ。

 だが、ここには瓦礫の山しか残されていなかった。空爆に巻き込まれたテロリストの死骸も残されていたが、損傷が激しく手掛かりにはならない。

 病院が空爆を受けてから丸2日が経とうとしていた。もはやこの病院には何も残されていないだろう。そのように部隊長が判断を下そうとしていた頃だった。

 突然、病院の瓦礫の山の中から、巨大な咆哮のようなものが上がっていた。

 崩れた建物の中を通り抜けた風のせいだろうと、最初は思った。だが、その咆哮はとてつもなく大きなもので、まるで猛獣がどこかにいるかのようだった。

 中には、『WNUA』軍の偵察機が上空を旋回しているせいだとも思い、上空を見上げる者もいたが、上空には何も見る事は出来なかった。

 だが、咆哮は絶え間なく繰り返され、やがて、病院の瓦礫の中心部から、何かが突き出してきた。

 それは病院の瓦礫の中に埋まっていたものが、突然姿を現した事によって起きた。

 咆哮は、瓦礫に埋もれていた者が上げたものだった。

 彼は、瓦礫を吹き飛ばし、埋もれていた中から姿を見せる。部隊の隊員がそれに気がついたのは、次の咆哮が彼から上がった時であった。

 瓦礫の中に埋もれ、経った今、眼を覚ましたのは、他の誰でも無い、ベロボグ・チェルノだった。彼は元々大きな体格を、更に巨大なものであるかのような姿で見せ、どこまでもとどくかのような巨大な声を上げていた。

 彼は、その小脇に、ぼろぼろの白い衣服を纏った少女の体を抱えていた。それはベロボグの娘のレーシーだった。

「な、何者だ! そこを動くな!」

 まさか生存者がいるなどと思っていなかった、軍の隊員は、ベロボグに向かって銃を向けた。病院の患者の生き残りならば、すぐに救出しなければならなかったが、堂々と瓦礫の中に立つその姿は、彼らにとっては脅威の存在にしか見えていなかった。

 ベロボグは、その体をその場で屈ませ、今度は咆哮ではなく、うめき声のようなものを上げると、軍の隊員達が見ている中で、だんだんとその姿を変え始めていった。

 彼の背中側から、巨大な翼のようなものが出現した。翼とはいえ、それは鳥のような翼とは似ても似つかない。

 それは戦闘機のような姿をしたものであった。その戦闘機の翼のようなものが、ベロボグの背中に現れ、彼の背後からジェット機がエンジンを噴出するがごとく、火花が放出された。

 ベロボグはあくまで人間の形を保ったままであったが、背中から噴出されたエンジンを放出させたまま、彼は少女の体を抱え、その場から飛び上がる。それはあたかも、戦闘機が中空に舞うかのようだった。

 唖然とする軍の部隊員達の前で飛び上がったベロボグは、小脇にぼろぼろの衣服を纏った少女、レーシーを抱えたまま、上空に一気に飛びあがり、廃墟と化した病院を後にするのだった。

 

 ミサイル攻撃の直前に、レーシーの能力を吸収する事ができたのは、ベロボグにとっては幸いだった。

 他者の能力を吸収する事ができるというベロボグの能力を、彼が使うのは実に久しぶりの事であり、それが彼の脳に大きなダメージを与える事も知っていたが、ミサイル攻撃から生き抜くためには、レーシーの能力を吸収する以外に方法は無かったのだ。

 彼女の能力、機械と融合する事ができる能力を利用し、ベロボグは、シェルターを自分の体で作った。さすがに『WNUA』の放った高威力のミサイルの直撃を受けては、体の損傷を隠す事は出来なかったが、致命的なダメージにはならなかったらしい。

 気絶してしまったようだ。これもレーシーの能力だが、体内に内蔵されている機械の時計類を見れば、2日が経ってしまっていた。

 計画には間に合うだろうか。急がなければならない。レーシーが戦闘機とさえ融合していたお陰で、ベロボグはその能力を吸収し、自身も戦闘機に変形する事ができるようになっているが、これができなければ、あの病院から脱出する事も出来なかっただろう。

 他の能力者の能力を吸収する事ができるというこの力は、脳に大きな負担をもたらす。ベロボグは以前までに10の能力を会得していたが、脳腫瘍が拡大するにつれ、その能力は全て失われた。そして今得ている能力はまた脳に負担を及ぼすだろう。

 特にレーシーの持つこの能力はかなり危険なものだ。おそらく自分にかかる副作用は相当なものになるだろう。

 しかし今は急がなければならない。

 『WNUA』軍が、『ジュール連邦』の首都である《ボルベルブイリ》への侵攻を始める前に行動を起こさなければならない。

 ベロボグはその新たな目的の為に動いていた。

「お父様…」

 小脇に抱えていたレーシーが、そのように小さく呟いた。彼女はベロボグによって庇われていた為、ミサイル攻撃に対しては軽傷で済んだが、まだ完全に意識を取り戻す事が出来ていないらしい。

 ただ、父親に抱えられているという事で、安心しきったかのように眠っている。

「安心するのだレーシー。向かおう。我らが最後の楽園へ」

 それはまるで詩を詠むかのような言葉であったが、ベロボグにとっては本気だった。

 彼らは、目指すべき地を求め、空を飛行していく。

説明
アリエルを救出したリー達。しかしながらリーはセリア達を裏切り、アリエルを自分たちの組織の者達と引き合わせる事に。一方、ミサイル攻撃で死亡したと思われていたベロボグは―。
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