レッド・メモリアル Ep#.14「同胞」-2 |
10:05 P.M.
ボルベルブイリ 国家安全保安局
ストロフ達は国家安全保安局の建物に戻ろうとしていた。現在《ボルベルブイリ》の街は戦時中の、そして首都攻撃に備えての戒厳令下にあり、一般人は外出する事が出来ない状態が続いている。ストロフ達は政府関係者という事で、政府に関する事に限定して外出する事ができるようになっていた。
白夜の夜も沈み、街はひっそりとしていた。走行している車も軍事関係のものでしかない。ストロフ達はそんな街の中を、国家安全保安局の建物に戻っていた。
ベロボグ・チェルノが生きている。これは一大事だった。空爆によって死んだかと思われていたのに奴は生きているというのだ。テロリストの親玉が生きている。しかも相手はこの戦争を起こした相手。次にいかなる計画をしかけていて、どのような攻撃を仕掛けてくるか分かったものじゃあない。
今は、国家安全保安局に戻り、ベロボグ達の計画を阻止しなければならない。
『WNUA』軍による首都攻撃が迫っていながら、ベロボグ達も迫る。この国が追い詰められているのは確かだった。もしかしたら、ベロボグはこれを狙っていたのか。
その時、ストロフ達のちょうど上空を、高性能のステルス戦闘機が通過していったが、それをストロフ達は知る事も出来なかった。
いくら経済危機であり、社会的発展が停滞していたとしても、『ジュール連邦』にも『WNUA』と戦争をする事ができる程度の軍事設備はある。そうした軍事的設備の発展は充実しているにもかかわらず、国民の生活は荒廃していると他国からの大きな批判がある。
だが、国民に対して軍事については、ほとんどが秘密とされているし、この戦争自体も『ジュール連邦』側の大きな優勢と国民には報じられていた。
しかしながら敗戦濃厚となっている今では、いつ真実が国民の眼に触れてもおかしくは無い状況だった。
《ボルベルブイリ》の首都付近の防衛システムが、突如として飛来してきた正体不明の物体を捉えたのは、そんな日々の夜中だった。
「防衛システムが、正体不明の飛行物体の接近を確認。時速900kmで、首都に接近中。3分で飛来します」
《ボルベルブイリ》の中央防衛システムを司っている、軍事基地の一つで、軍事レーダーは飛行物体を捉えていた。
それは『WNUA』側のステルス戦闘機さえも探知する事ができるレーダーで、首都に攻撃があると判断できればすぐに迎撃する事ができるシステムだった。
「飛行物体の正体は不明か?」
その基地の司令官がそのように言った。
すぐさまシステムが動き、戦闘機やミサイルの照会が始まる。レーダーで捉えられたミサイルは、解析が行われ、その姿形や型番が明らかになる。
「戦闘機、ミサイルにもデータはありません。我が軍の中にある『WNUA』側の戦闘機、ミサイルのどのデータにも一致しません」
オペレーターがそのように言い、司令官はすぐに判断した。
「首都は戒厳令下だ。『WNUA』側の首都攻撃が始まったのかもしれん。すぐに迎撃ミサイルで撃ち落とせ。続く第二波の攻撃にも警戒しろ」
司令官の命令により、システムは、遠隔で首都の防衛ミサイルを発射する機能を稼働させた。
《ボルベルブイリ》の首都近辺には、一般人には立ち入ることができない軍事基地が幾つもある。そこには、首都を防衛する為の迎撃ミサイルが格納されており、いつでも発射する事ができる状態下にあった。
その基地の一つのミサイル防衛システムが作動し、レーダーで捉えられている距離に照準を合わせ、即座に迎撃ミサイルは発射された。目標をロックオンしており、首都の市街地に到着する前に迎撃するようにと。
迎撃ミサイルは、正体不明の飛行物体に一気に近づいていく。
その飛行物体そのものであるレーシーは、自分に向かって迎撃ミサイルが飛来している事をすでに知っていたし、自分が首都にこのような姿で近づいていけば、ミサイルに狙われるだろうと言う事は知っていた。
しかしながら、お父様の言いつけを守るためには、何よりも早く向かわなければならなかったし、ミサイルに邪魔されるつもりもなかった。
レーシーは接近するミサイルを、自分の視覚内部に備え付けられたレーダーで確認し、それが接近するのを確認する。
彼女は自分が一体化している戦闘機から、迎撃ミサイルに向かって更にミサイルを放った。
『ジュール連邦』が持っているミサイルの防衛システムなど、お父様が手に入れた、最新の『WNUA』の軍事力に比べればたかが知れている。
レーシーが空中で放ったミサイル2発は、正確に自分に向かって飛んできている迎撃ミサイルを捉えて撃ち落とす。そしてレーシーは既に、その迎撃ミサイルが飛んできた元である軍事基地に対しての照準も合わせており、その方向に向かってもミサイルを発射していた。
迎撃ミサイルをこれ以上発射されれば、余計な邪魔が入る。基地もついでに破壊しておけば、首都への潜入が容易になると、これもお父様の命令だ。
レーシーは楽しかった。彼女にとってはこれも全て遊びだ。追いかけてくるミサイルを破壊し、更にその元さえも破壊してしまう。
自分を邪魔するものは、何もかも破壊してしまうのだ。
レーシーと一体化した戦闘機は市街地に突入した。すぐに《ボルベルブイリ》の厳戒態勢下の首都が眼下に広がる。レーシーは真っ先に目指すべき場所を目指し、最大の加速を出して突入していった。
「おい、どうした?破壊できなかったのか?」
首都防衛システムの司令官は、首都市街地に突入した飛行物体を捉えるレーダーを見て思わず身を乗り出していた。
するとオペレーターは緊迫した様子で司令官に向かって言う。
「破壊できませんでした。敵機体は戦闘機であった模様で、こちらの迎撃ミサイルを見せるによって破壊しています。首都市街地への侵入を許しました」
「被害は?攻撃があったのか?」
司令官はすぐに言葉を切りかえす。
「標的は、北地区付近に、時速500kmの速度で突っ込みました」
すぐにオペレーターが言ってくる。
「突っ込んだ?相手は戦闘機なのだろう?ミサイル攻撃などを仕掛けてくるのではないのか?首都に突入してきて、自爆作戦をしただと?」
司令官が訳の分からない様子でそう言うと、オペレーターは、
「攻撃が行われた位置が判明しました。国家安全保安局です。国家安全保安局の建物に戦闘機が突っ込んでいます!」
衛星による映像が防衛本部に展開する。そこには、一部が倒壊した国家安全保安局の建物が映っていた。
「すぐに被害状況を確認しろ。それに、次なる攻撃に備えろ。これは陽動作戦かもしれない」
国家安全保安局の建物の中に突っ込んだレーシーは、そのステルス戦闘機と一体化した身体を、元の状態に戻した。
半分崩れた保安局の建物の瓦礫の中を進んでいく。すぐにその場には武装した局員が駆けつけてきたが、レーシーは自分の体をそのまま巨大な砲台を備え付けたものへと変形させた。
腕をそのままロケットランチャーへと変形させたレーシーは、マシンガンを構えた武装局員に向かってロケットランチャーを向ける。
「退け!退けェッ!」
ロケットランチャーにはさすがにかなわないと思ったのか、急ごしらえの武装局員たちはその場から退いていく。
だがレーシーは容赦なく、まるで子供が遊びをするかのように、彼らの背後からロケットランチャーを発射して、廊下ごと吹き飛ばした。
「やり。命中」
吹き飛んだ廊下の有様を見ながら、レーシーは思わず楽しげに言った。国安保局の建物では警報が鳴り響き、警戒態勢が発令される。
レーシーは粉々に吹き飛ばした、国安保局の建物を、悠々とした様子で歩きだした。彼女の眼は何も恐れていない子供のように自信に満ちた姿をしており、現に何も恐れを抱いていない。
ただお父様の言いつけを守るだけ。それは子供のおつかいと同じ事なのだ。
そんな子供のおつかいも同然に考えているレーシーは、次々と国安保局の警備員達を始末し、廊下を破壊してやがてはエレベーターを見つけた。
それはレーシーがお父様から貰い、彼女に内蔵されているデータの中にダウンロードされている、国安保局の建物の見取り図から発見したものだった。そのエレベーターが来るのを待ち、レーシーは国安保局の建物の地下へと向かった。
一方、セルゲイ・ストロフは大急ぎで国安保局の建物へと戻ってきていた。彼は病院から乗って来た車を降りるなり、建物の一部が破壊され、瓦礫が散乱している有様を見ていた。
「おいおい、一体、どうなっている?『WNUA』の攻撃が始まったのか?」
ストロフはなるべく自分を落ちつかせながら言った。もしこれが首都攻撃であったならば、ストロフはすぐに避難しなければならない。
だが、起きた爆発がどうやら『WNUA』側が放ってきたミサイル攻撃のようなものとは違う。もし国安保局にミサイル攻撃が仕掛けられたならば、もっと大きな爆発を起こすはずだったからだ。
「分かりませんが、何者かが突入してきたようです。ちょうど、戦闘機のようなものが」
すぐに国安保局の中にいた人間がストロフに言った。
「突っ込んできただと?一体、どういう事だ?『WNUA』側の攻撃なのか?」
車から降り立った駐車場で言い合うストロフ達。しかしながらどうやら『WNUA』側の攻撃では無いらしい。
ストロフは駐車場から建物へと向かった。
「軍の防衛レーダーは、首都に近づく、一機の飛行物体の姿を捉えたと報告がありました。次いでミサイルによる迎撃システムを作動させましたが、飛行物体からもミサイルが放たれたらしく、撃墜されました」
国安保局にいた人間がストロフに説明する。
「飛行物体だと?迎撃ミサイルを撃ち落とすような相手なのだぞ。『WNUA』以外にあるか?しかし、一機だけで首都攻撃をしてくるとも思えん。偵察機か?」
「今のところ分かりません」
そのようにストロフが聞いた時、国安保局の建物の内部で爆発が起こり、ストロフ達は思わず身を伏せた。
謎の飛行物体は『WNUA』のものではない。となると、ストロフはある人間が思い浮かんだ。
爆発が止んだ所で、ストロフは身を起こす。
「突っ込んできた戦闘機は、『WNUA』のものではないのだな?」
「確証はありませんが、軍の報告では、未確認の飛行物体のようです」
そう答えてきた国安保局の人間。ストロフは確信した。
「ベロボグの組織の奴か、本人だ。すぐに地下の警備を強化しろ。この攻撃の目的が分かった」
そのように言いつつ、ストロフは自分も国安保局の建物の中へと向かい出した。再び爆発音が響き、天井にヒビが走るほどだった。
「地下の警備ですか?それよりも、防空の強化をした方が」
だがストロフは相手の言葉を遮って言い放つ。
「違う!敵は中にいる。分からないか?この建物に突っ込んできたのは、ベロボグ・チェルノの組織の連中だ。目的は、この建物の地下にいる小娘を救出に来たんだ!」
そう言い放ち、ストロフは自分も急いで建物の地下へと向かおうとした。
レーシーは地下に到着するなり、自らの体内に内蔵されている、コンピュータを国安保局の機密情報にアクセスさせ、目的の場所を探した。
その情報は、国家安全保安局の一般局員では知りえないような情報だ。そもそもこの国安保局の建物の地下施設は、一部の局員しか知られていない。
だがレーシーは簡単にその情報をダウンロードしてしまい、目的の情報を入手する事が出来てしまった。
地下施設には武装した警備員がおり、彼らはマシンガンさえ構えてレーシーに向かって発砲して来ようとしたが、レーシーは、すかさず彼らに向かってロケット砲を発射する事で彼らを始末した。
地下施設内の狭い廊下で爆発が起こり、その煙と炎が吹き荒れる。だがレーシーは構わずそんな中を進んでいく。
幾度かの曲がり角を曲がり、また何人もの警備員をレーシーは始末した。
そして彼女は、ある扉の前までやって来ていた。
彼女がその扉の前までやって来た所で、突然、扉が内側から開かれ、何者かが姿を現す。その大柄な男は突然、レーシーに向かって飛びかかって来て、彼女に向かって掴みかかって来た。
掴みかかられたレーシーは、その大柄な男が何かを自分に向かって放ってきた事に気が付く。すかさず彼女はロケット砲を男の方に向かって放とうとしたが、その際、自分の内部にある回路に異常があるのを感じた。
「あらら?どうしちゃったの?」
レーシーは、自分の体の中に流れた異常な存在、異常な電流を感じ取った。
扉を開けた瞬間に男が放ってきたのは電流であり、それがレーシーに襲いかかって来たのだ。
男は、電流によって怯んだレーシーに、更に掴みかかって来ようとしてきた。レーシーはすぐに気がついた。目の前にいるこの男は『能力者』だ。
レーシーはすぐさま自分の体を動かすが、体の中に内蔵されている一部機器がショートしているおかげで上手くいかない。目の前の男は、次々と迫って来て、動きを上手く取れないでいるレーシーに向かって、再び手を押し当ててきた。
そのごつごつとした手から、電流が流され、再びレーシーの中に内蔵されている機器の一部がショートした。
「お前のようなガキが来るような場所じゃあねえぜ。しかし恐ろしいガキだ。たった一人で、こんなにできるとはな?」
その大柄な男は、レーシーが破壊行為を行った廊下の有様を見てそのように言うのだった。レーシーはというと、体を痙攣させながら、ぐったりとした様子で、床に跪いた。
「このガキのどこに、ここまでできる兵器が隠されていやがるんだ?」
そう言って男が、レーシーの姿を覗きこんで来ようとした時だった。レーシーは素早くその男に向かって飛びかかると、至近距離から、体内に内蔵されていたマシンガンを発射した。男の体は至近距離からのマシンガンの砲撃によって吹き飛ばされ、シャーリのいる部屋の奥側の壁へと激突した。
レーシーはふらつく自分の体を感じる。今仕掛けてきた男の目の前の電流の攻撃によって、体内で融合している一部の回路がショートしてしまった。幾つかの兵器や機器が使用不能になってしまっている。
だがレーシーはそんな事など構わず、ぐったりとした様子で、窓もない地下室の椅子に拘束されているシャーリの元へと近づいていく。
シャーリは随分と長い事、この地下室に拘束されていたように思える。恐らくは1日かそれ以上、飲まず食わずで絶え間ない拷問をされてきているようだ。
だが、そんな彼女の有様に向かっても、レーシーはいつものシャーリに対する話かけ方と同じような方法で話しかけた。
「ねえ、シャーリ。お父様の言いつけどおり、あなたを助けに来てあげたよ」
レーシーはそう話かける。シャーリは眠ってしまっているか、気を失ってしまっているのか、すぐには反応が無かった。
だが、レーシーはシャーリの手を拘束している鎖の錠を壊し、彼女の両腕を自由にしてやった。彼女の両腕はだらりと力なく垂れ下がるばかりだったが、やがてシャーリは意識を取り戻したかのようにその顔を上げる。
彼女の顔は疲れ切った疲労の痕跡がはっきりと見え、酷い有様だったが、シャーリに向かっていつもの猫撫で声で言葉を発した。
「あら、遅かったじゃない」
どうやらいつものシャーリとしての姿は失われていない。レーシーはそんなシャーリを見てひとまずは安心した。
真っ暗闇に覆われてしまった施設内では、局員達が慌てているようだった。だが、タカフミは手近にあった懐中電灯を手に取り、リー、アリエルを先導して、施設の中にいる者達を落ちつかせた。
「落ちつけ。状況はどうだ?ただ、電気障害が起こった訳ではないのだろう?」
タカフミは懐中電灯を手に取り、中央フロアにやって来ていた。そこはこの組織のシステムが活動する場所で、局員達はそこで『ジュール連邦』の情勢や、各行政、更には軍や衛星などを監視している。
広いフロアには、光学画面が行きかい、大型のサーバーもある部屋だったが、今では光学画面もブラックアウトしてしまっており、コンピュータは停止してしまっているようだ。
タカフミの元に局員の一人がやってくる。
「やられました。サーバーも全てダウンしてしまっています。データも消失しました。他の局と共有していたもの以外は全てが…」
タカフミと同じく懐中電灯を持った局員が、慌てた様子でそう言ってくる。
「サイバー攻撃か?ネットワークを使って攻撃があったと?」
タカフミはそう言うが、
「いいや、タカフミ。これはネットワークからの攻撃じゃあない。電気系統も全てやられてしまっている。それと、何の検知も無く突然起こった。君の作ったシステムならば、そう簡単には侵入できるものではないだろう?もっと、直接的な攻撃が起こったんだ」
リーはすぐさま反論した。彼の声は幾分も落ち着いており、突然の攻撃にもすぐに対応した心構えが出来ているようである。
「じゃあ、EMP(電磁パルス爆弾)か?しかし、ここの建物自体が、電磁波攻撃には耐えられるだけのものを持っている」
タカフミは懐中電灯をリーとアリエルの方に向けてそう言った。
「内部から起こされたらどうだ?外壁はいくら強化されていても、内部で電磁波攻撃をされたら、ひとたまりもない」
冷静にリーは指摘をするのだった。だが、タカフミは苦虫をかみつぶすような思いで言った。
「俺の設計したシステムは、それぞれのコンピュータ端末でさえ、電磁波攻撃に耐えられるようにできているんだぞ…」
信じたくは無い。だが、現に攻撃が起こってしまったのは確かだ。その攻撃にすぐに対処するためにも、タカフミはすぐに指示を出した。
「仕方ない。警戒態勢を強めるんだ。システムのダウンは恐らく陽動作戦だろう。もっと直接的な攻撃が来るはずだ!」
タカフミはそう言いながら、リーからあるものを受け取った。リーはそれをすでにタカフミの部屋から持ち出していたらしく、彼は部屋まで戻る必要が無かった。
彼の手にずっしりと重い感触がやってくる。それはマシンガンだった。多少古い型のものだったが、十分に使う事ができる。
「この相棒を、できる事なら使いたくはないんだがな」
独り言のようにタカフミは言った。
「一体、何が起こっているんですか?」
ここで使われている言語が理解できないアリエルが言ってくる。だが、タカフミは彼女を心配させまいと彼女の肩に手を乗せて言った。
「君は、何も心配する必要はない。ただ、俺達についてくればいいんだ」
しかしアリエルは、
「ここが襲われたんでしょう?狙いは私で、襲って来たのは、私の父の仲間。そうなんでしょう?」
アリエルは必死な様子でそのように言ってくる。タカフミも、施設に攻撃を仕掛けてきた連中の正体は薄々すでに感づいている。彼らがした攻撃に違いない。だからこうしてマシンガンを手にし、武装局員を配備すると言う措置を取る。
「大丈夫だ。君には誰も近づけたりはしない。だが、ここは危険だ。すぐに避難しないとな」
リーもそのように言いながら、拳銃を構えて警戒をしていた。
「緊急時のための避難通路がある。そこを利用しよう」
タカフミがリー達にそのように言った時だった。突然、何かが破裂したかのような音が響き渡り、地下施設は揺れた。自身のような衝撃が襲いかかり、タカフミは、ホールにある手すりに寄りかかる形になる。
天井からは砂埃が落ちてきたのが分かった。
「どうした?何があった?」
タカフミは半ば慌てた様子でそう言い放つ。局員達も、慌てた様子で身をかがめた。
「音からして爆弾だ。北の避難口の方から攻撃されている」
リーが冷静に言った。地震のような衝撃が襲いかかって来ても、リーはしっかりと拳銃を構えたまま、いつ攻撃が来ても不思議ではないような姿勢をしている。
リーは倒れかかったアリエルの身体を彼女は支え、タカフミに向かって言う。
「北の方からは逃げられんぞ。別の出口はあるのか?」
タカフミはいつもの癖で、自分のポケットから携帯端末を取り出し、その電源を入れようとしたが、電源は全く入らない。
「駄目か。EMPの攻撃と言うのは本当だな。俺の端末もやられちまっている。この建物の設計図があったんだが。一応、逆方向に古い下水道があるから、そっちの方から逃げよう」
「逃げる?逃げるって言ったんですか?」
タカフミの言葉に、アリエルが声を上げて言って来た。
「ああ、今はそれしかない」
そう言うのはリーだった。彼女はアリエルの手を掴み、引っ張ってでも連れていこうとしている。
「逃げて、一体どうするって言うんですか?私は、ずっと、あなた達に従って、逃げていく事しかできないんですか?」
アリエルは必死になって言っている。タカフミは確かにアリエルの安全は保証し、身を守ると言った。だが、この施設が直接攻撃を受けてしまっては仕方が無い。
タカフミは暗闇の中で懐中電灯の明かりだけを頼りに彼女の目を見た。その目は、不安に震えている事が分かる。
「この施設からは、逃げるしかない。敵の奇襲ではこちらの方が不利だし、君を危険にさらすわけにはいかないんだ。だが、俺達を信用してくれ。《ボルベルブイリ》だ。あそこに行けば当てがある。そもそも君を《ボルベルブイリ》まで連れて行くつもりだった」
タカフミがアリエルにそう言う最中にも、どこかで爆発音が響き渡る。敵の攻撃は確実に迫って来ていた。
「あの街に、戻るんですか?」
「そうだ。そうすれば、当てはあるんだ」
爆発音が響き渡って来たのに引き続いてやって来たのは、銃声だった。誰かの叫び声も聞こえてくる。地下にある施設内にその音は響き渡り、暗闇の中で混乱状態が広がった。
「具体的にどのような当てがあるって言うんですか?もう私は、誰かに振り回されていたりするのは嫌ですよ!」
アリエルはそのように叫ぶ。タカフミは手に持ったマシンガンを構えながら、暗闇の通路を進んでいく。
「我々の協力者が《ボルベルブイリ》にいる。彼からベロボグの計画を暴露すると、政府高官に伝える事ができる。君が、その証人であり証拠だ」
そう言ったのはリーだった。彼はアリエルをタカフミと共に挟み込む形で守りながら、暗闇の通路の中を進んでいく。懐中電灯だけが照らし上げる通路は狭く、天井も低い下水道のような所だった。
だが懐中電灯で通路を照らし上げるのは、リー達だけではなかった。背後から何者かが更に強い光を持つ懐中電灯でタカフミ達の姿を照らしてくる。
その光に素早くリーは振り向いた。光を突然照らされた彼は思わず怯む。光を向けてきた者達はマシンガンを構えた武装部隊だった。この施設の中に配備してある警備部隊ではない。
見た事も無い武装部隊だった。だが軍ではない。
「大人しく降伏しろ!この施設は包囲されている!」
そのように部隊の者達は言い放ってきた。
タカフミはすぐに理解した。この者達は攻撃を仕掛けてくるために、EMPによって、施設の電子機器を破壊した。そして今は、混乱状態になった施設へと乗り込んできている。
もしこの施設をただ単純に制圧したいのであったら、その手に持った機関銃をこちらに向けて発砲してくれば良いだろう。だが、武装部隊達は、こちらに向かって銃を向けてくるだけであり発砲して来ない。
彼らの向けているライトがどこに集中しているのか、タカフミは確認する。そのライトがアリエルの方に向かって集中している事に気づくと、タカフミは武装部隊達の目的も正体も理解した。
「リー。こいつらの狙いは」
タカフミはそう言いつつ、アリエルを自分の背後へと隠して守る姿勢へと移った。
「ああ分かっている」
リーはそのように言うなり、武装部隊に銃を構えたまま言い放った。
「お前達の目的は、アリエル・アルンツェンだろう?彼女を傷付けるなと、ベロボグに言われている。だから、彼女と一緒にいる我々には攻撃ができない!その銃を降ろせ。アリエルを傷つけたくないのはお互い様だ」
そのようにジュール語でリーは声高らかに言い放つ。だが、武装部隊の中にいる一人の背の高い男が近づいてきた。
「お前の言うとおりだ。だが、お前達は包囲されている。アリエルを傷つける事はしないが、お前達もろとも捕らえる事はできる。大人しく降伏しろ。無駄な抵抗は止めろ」
と言ってくる男の声。
「いいや、止めておけ。彼女を危険な目に合わせれば、アリエルがどのような事になるか、分かったものじゃあないぞ。このまま我々を行かせろ。そしてお前達は立ち去るんだ」
リーはそのように言いながら、タカフミとアリエルの元に後ずさってくる。
「逃げられると思うか?包囲されていると奴は言った」
小声でタカフミは言った。
「ああ、だが、所詮は武装した部隊でしかない。我々『能力者』に叶う相手ではないだろう?かなり旧型の車はあるか?EMPによる攻撃があってもダメージを受けずに動く事ができるものだ」
リーが言葉を返してくる。
「ああ、置いてあるが、地上に隠してある車庫の中だ」
「それでいい。悪いが、ベロボグの奴に言っておけ。アリエルは我々の手中にある。大人しく計画を諦めろ、とな」
リーはそのように言うなり、武装部隊の者達に向かって銃弾を発砲した。
それを合図に、リーはタカフミとアリエルを通路の先へと行かせる。
「ちっ。地上にいる奴らに捕らえるように言え!何としてもアリエルを逃がすんじゃあないぞ!」
武装部隊を率いていた男も、部隊と共に後退せざるを得なかった。リーは絶え間なく銃弾を放ち、アリエル達を通路の先へ先へと行かせる。
その時、武装部隊の背後にいた者が、突然何かに吹き飛ばされるかのように通路の壁に激突し、体をめり込ませていた。
更に2、3人の武装部隊が身体を吹き飛ばされる。リーは銃弾を発砲しながら、その先にいる暗闇の中でほのかにオレンジ色の光を放つ者の姿を見ていた。
「セリアか?こんな所まで来ていたのか?」
そう呟きつつも、リーはアリエル達を先に行かせ、通路の闇の中へと身を隠していった。
「何だ?貴様は!」
そのような叫び声が響き渡ったが、セリアにはジュール語はほとんど理解できないので、彼女は構わずマシンガンを持ったその武装部隊の男を、蹴りによって壁にめり込ませた。
その後も何発も銃声が響き渡ったが、彼らが放った銃弾がセリアに命中する事は無く、彼女はその場にいた謎の武装部隊の人間達を次々と打ち倒した。
(撤退するぞ!奴らを追う!)
声が響き渡る。言葉は分からずとも、彼らがその場から撤退し、通路の奥の方へと逃げて行くのだと言う事が分かったセリアは、傍らにいたライフルを構えたフェイリンに向かって言った。
「奴らが逃げるわよ。逃がさないようにしなさい!」
セリアがそう言うと、真っ暗闇の中でもフェイリンはライフルを発射した。銃声が破裂するかのように響き渡り、銃弾が通路を突っ切って行く。そして、逃げようとしていた武装部隊の男の一人の脚を撃ち抜いた。
フェイリンはすかさず次の銃弾を放とうと、暗闇の中で再度狙いを定める。セリアと同じ能力者である彼女は、暗闇でもものを見る事ができる特殊な目を持っていた。暗闇であっても、物を透過してみる事ができる目は、通路の奥へと逃げて行く男達をはっきりと捕らえる。
続いて発射した銃弾も逃げ出す男達の一人を撃ち抜いた。だが、最後の男は奥の方の通路を曲がり、ライフルでは狙撃できない位置へと走って行ってしまった。
「一人逃がしたわ!」
フェイリンはそのように叫んだ。
「リー・トルーマンの奴はいなかったでしょ?一人逃がそうと、逃がさないと関係ないわ。あいつはとっくにこの秘密基地から逃げているんだわ」
セリアは舌打ちと共にそのように言うのだった。そして、自分がのし上げた武装部隊の男の一人の襟首をつかみ上げ、暗い廊下の壁に叩きつけるなり言い放った。
「あなた達は何者よ!」
そうタレス語で言い放ったセリア。相手の襟首が、とても女の力とは思えないほどの力で締まり、相手はうめき声を上げた。
相手の男は答えない。何やらジュール語で呻いたらしく、それがセリアには分からなかった。
「軍に連絡して、この基地を制圧してもらうように言うわ」
セリアはこのままこの男達を締めあげても仕方ないと思い、フェイリンにそう言った。
「でも、携帯電話も何もかもやられてしまっているよ。ライフルとか、アナログ時計とかは、無事みたいだけれども、これは多分、電磁パルス兵器による攻撃」
フェイリンがそう言った。彼女はライフルの構えを解いており、すでに警戒を緩めてしまっている。
「電磁パルス?何だってそんな攻撃をこの施設に仕掛けるの?この基地は、ジュール連邦の軍事施設でも無いわ。もっと別の施設よ。テロリストの秘密基地にしても、出来過ぎているわ」
セリアがそこまで言ったところだった。
「それについては、私から説明しよう。セリア・ルーウェンスさん」
と言葉が聞こえ、セリアは素早くその方向を振り向き、拳を構えた。その方向からはライトが当てられ、セリアは思わず眼が眩んだ。
「誰よ、あんたは!」
セリアは目がくらみつつも、攻撃の姿勢を崩さない。
「私はこの組織の者、名をトイフェルと言います。世界規模で世界の安定を司る組織の一員です。幹部の一人が今、外へと避難したので、代わりに支部長である私が説明しましょう」
光に目が慣れてくる。セリアはライトを当ててくる者達の姿を目にした。特に武装しているようではない。服装がばらばらで、スーツを着ている者もいれば、普段着のような姿という者達もいる。セリアに話しかけてきているのは、恐らく『ジュール連邦』の人間だ。この地方の訛りが強い。
「組織?説明?何言ってんのよ?私は、軍を裏切ったリー・トルーマンを追ってここまで来たのよ!」
セリアが堂々とした姿を持って言い放つ。目の前に立ち、トイフェルと名を名乗った男は、スーツを着た紳士風の男だ。攻撃的な態度を見せず、有効的な素振りを見せているが、セリアは警戒したままだ。
「何故、リー・トルーマンがあなた達の軍を裏切ったと思うような行動をしたのか、私ならば説明できる。それにあなたにとっても、重要な事を我々は知っている。いずれ、我々もあなたと会うつもりでいた」
ようやくライトの光にも慣れてきた。
「何の事を言っているのか、分からないわ!」
セリアはそのように言い放った。
(支部長。敵は撤退しました。やはり目的はこの施設では無く、あの娘だったようです)
(そうか、分かった)
ジュール語で何やらやり取りが行われる。セリアは言い放った。
「何を言っているか、分からないって言ったのよ!私にも分かる言葉で言いなさい!」
セリアがいら立つのを抑えるかのように、トイフェルは落ちつかせるような声で言ってくる。
「分かりました。説明しましょう。まずは落ちつかれてください。この基地をたった今、襲って来た連中は、ベロボグ・チェルノの配下の者達です。彼らは撤退していきました。この基地が攻撃の目的では無かったからです」
「ベロボグ?目的?そんな事はどうでもいいから、リー・トルーマンが向かった場所を教えなさい!できれば、使う事ができる電話もあると嬉しいわね!」
セリアは言い放つ。
「まあ、落ちついて下さい。ここでは落ちつかないでしょうから、きちんと話をしている場所へとお連れします」
「私達は、急いでいるのよ!」
セリアはその男を遮って言い放った。男の体は突き飛ばされ、その身体を背後にいた彼の仲間達が受け止めた。
「ちょっと、セリア。話だけでも聞いていった方が?この人達、何かを知っているかもしれないし」
見かねた様子でフェイリンが間に割り込む。だがセリアにはフェイリンの考え方に従っている余裕などなかった。
「わたしは、急いでいるの。あのリー・トルーマンが何をしているかを突きとめて軍に報告するっていう義務が」
セリアがそこまで言いかけた時、彼女によって突き飛ばされたトイフェルは、その身体をようやくといった様子で持ち上げ、セリアに近づいてきた。
「やれやれ、私達ならば、説明ができるというのに。リー・トルーマンが何をしようとしているのか。そしてあなたの本来の目的である、娘さんに会いたいと言う願いも叶えられると言うのに」
トイフェルはふらつきながらセリアに近づいてきた。
「セリア・ルーウェンスさん。私達は、あなたの娘さんの事について知っている。あなたは18年前、ベロボグ・チェルノによって、あなたが出産したばかりの娘さんを誘拐されたと言う事についても知っています。そして、ベロボグがあなたの娘さんの父親であると言う事についても知っています」
セリアは突然申しだされた言葉に対して狼狽する。それは彼女が実際に長年探し求めてきたものだったからだ。
その事を、何故こんな人里離れた場所にいる、得体の知れない連中が知っているのだ。しかも彼らはどうやらリー・トルーマンが通じていた人間達のようだ。
「何を言っているのか、分からないわ。わたしはあなた達が何者かという事すら知らない。それなのに、あなた達をわたしが信用する事ができるとでも思う?」
セリアはそのように冷たくあしらってしまう。
「無理に信じて欲しいわけではありません。ですが今、あなたの娘さんには危険が迫っています。あのベロボグ・チェルノはあなたの娘さんを探しだし、そして何かの計画を立てようと画策している。我々はそれを食い止めようとしている組織です。なぜならば、ベロボグの計画は世界的な危機に陥る危険性があるからであり、現にそうなってきています」
セリアは彼の言葉に鼻で笑って見せた。
「ふん。それは素晴らしい事ね。こんな人里離れた地下に籠っているあなた達が、この戦争を止める事ができるとでも言うの?」
「ええ。我々は、『ジュール連邦』側とも、『タレス公国』側とも重要なコネクトを持っています。政治的な有力者ともつながりがあり、影響を及ぼす事ができます。リー・トルーマンはその有力者に会うため、私達の同志と共に《ボルベルブイリ》へと向かいました。あなたはリーを追えば良いでしょう。ですがそれよりも前に、私達の話を聞いて言って下さい」
トイフェルは、あくまでセリアの気持ちを逆撫でしないように、自分達をへりくだらせるかのような口調で言ってくるのだった。
今にもリーを追いたい気持ちのセリアだったが、良く考えたら先程起きた武装部隊の襲撃の際、自分たちの乗ってきた車が動かなくなってしまったのを思い出した。この地下施設の暗闇と言い、フェイリンは原因はEMP、つまり電磁パルスだと言う。
と言う事は、車も駄目になってしまい、人里離れた山奥で身動きが取れないという事だった。
セリアは冷静に考え直し、紳士風の男達の方に向かって向き直るのだった。
「いいわ。でも、質問には答えてもらうわよ。わたしの娘は今、どこにいるの?」
アリエル達を乗せた旧式の車は、武装部隊の包囲網を突き破り、森林の中にある、線路の横道を走っていた。もう夜になっており森林の中の視界は開けていない。
とても古い車だった。内部がカビ臭く、しかもシートの一部が裂けていて乗り心地が悪い。そんな中、荒地のような線路わきの道を進んでいくものだから、振動はより酷いものとなってしまっていた。
「包囲は抜けたか?」
しばらく走行した後にリーがタカフミにそう尋ねていた。
「ああ、しかしこのままこの車で《ボルベルブイリ》まで辿りつけるかどうか、それは分からないぞ。電子機器は全てやられてしまったしな」
タカフミは車を運転しながら答える。身一つで組織のアジトから抜け出してきた彼らは、携帯電話も電子機器も何も持っていない。
「どこでもいい。この車は途中で乗り捨てて、別の車を頂くしかないだろう。それで《ボルベルブイリ》まで行く事ができる」
「《ボルベルブイリ》に一体、何があるって言うんです?」
リーとタカフミの言葉の中に、突然、アリエルが割り込んだ。彼女はたどたどしいながらも、タレス語を操り、それを使ってリー達に話しかけるのだった。
突然のタレス語に、リーは少し驚かされたようだった。
「私だって、学校の授業でタレス語くらいは習っているんです。成績には自信もありますよ」
アリエルのその言葉に、リーはどうとも反応しなかった。タレス語を彼女が多少話す事ができるかどうかなど、今ではどうでもいい事であるかのように。
「アリエル。私達は《ボルベルブイリ》にあるこの国の有力者と繋がりがある。この『ジュール連邦』で裏の活動をする事ができるのも、その人物の協力があっての事だ。その人物はさらに『ジュール連邦』首相とも繋がりがある。
彼に君が接触する事ができれば、ベロボグの陰謀を暴く事ができ、この戦争を終わらせる事ができるだろう」
リーは揺れる車内でそのように答えた。ただ彼の言葉には何の感情も篭っていないかのようだ。まるでそうする事が彼の義務であるかのような口調で答える。
「それも大切かもしれませんが、私は、私と、自分の母親の安全を保障される事の方が優先します」
今度はジュール語でアリエルは答えるのだった。
「心配いらない、アリエル。君とお母さんについては、我々がきちんとベロボグ達から匿い、保護するように動く。安心してくれ」
そう言ったのは運転中のタカフミだった。彼は暗闇の森林の中に車を走らせ、突き進んでいく。彼の視線はしかと前方を見つめ、一点も揺らがない。
「《ボルベルブイリ》だ。あそこに行けば決着がつく」
リーが言った。
しかしながら彼らの言葉を聞いても、アリエルの不安は消える事はなかった。
説明 | ||
アリエルを連れ去ったリー達、“組織”のメンバーは、彼女を世界規模で活動する組織の拠点へと案内します。一方、軍を裏切ったリーをセリア達も追うのでした。 | ||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
1041 | 327 | 1 |
タグ | ||
レッド・メモリアル SF アクション オリジナル | ||
エックスPさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |