外史異聞譚〜幕ノ二十九〜
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≪洛陽/張公祺視点≫

 

あんのコマシ野郎、よくもまあこんな事をやろうと思うよ

やっぱアレはバケモノだ…

 

アタシは現在、忠英ちゃんと一緒に医療兵と工兵を指揮して洛陽の復興支援をしている

 

そのきっかけは、アタシらが“天譴軍”を宣言し劉弁陛下を擁して董相国となった洛陽を支援する、という名目からだ

 

アタシはまあ、そこに怪我人や苦しんでる人達がいるのなら、乗り込むのはむしろ望むところなんだけど、あのコマシの考えには多分一生追いつけないと思ったのも確かだ

 

それは、出陣前の円卓会議での出来事だった

 

 

「とりあえず公祺さん、忠英さんと一緒に先行して洛陽にいってくれないかな?」

 

「そりゃアタシは構わないが…」

 

歯切れの悪い返事になったのも当然で、当初の予定ではアタシは漢中待機組になっていたんだ

それが急に洛陽に行けってんだから、そりゃ歯切れも悪くなるってもんさ

 

「うん

 当初の予定では俺が最初に直接いくつもりだったんだけどね

 多分それだとまずいんだよね」

 

そう言って困ったように頭を書くアイツに質問したのは、最初の予定で一番に洛陽に行くはずだった令則だ

 

「まずいとは、どういう事でしょうか?」

 

アイツはその質問に、困ったように天井を仰ぐ

 

「上手くいえないんだけど、このまま俺が乗り込むとね、どうにも足元を掬われそうなんだよ

 なにしろ予定では劉弁陛下はよくて廃立、場合によっては死んでると思ってたからね」

 

なんつーか、相変わらず恐ろしい事をさらりと言う男だよな

 

仲達ちゃん以外がその言葉に(腹立つけど毎度のごとく)凍りつくのを他所に、アイツはいつものようにのんびりと話を続ける

 

「これってね、多分劉弁がかなり“できる”皇帝だってことの証明なんだよ

 もし俺の知識にあるように暗愚で惰弱なら、さすがに董仲穎はともかく、その軍師である賈文和がそのままにはしておかないと思うんだ

 彼女らにお荷物を抱える余裕はないからね」

 

俺の知識じゃ5ヶ月で廃立されてるからなあ、とか呟いてる

その“天の知識”の説明を要求するアタシらの視線に頷いて、アイツは訥々と説明をはじめる

 

「俺の知識の中の劉弁はね、17歳で何大将軍に担ぎ出された

 …当然、霊帝に対する何皇后の影響力もあったんだけど、それでも当時9歳の劉協と比較されて“暗愚”と断じられたってくらい“使えない”皇帝だったんだ

 結果として5ヶ月で宮廷を追われて、諡号も“王”しかもらえていない

 皇帝として認められることすらなかった人物なんだよ」

 

黙って聞き入るアタシらに一刀は説明を続ける

 

「これは董仲穎が同姓の董太后側だった劉協を推した、という話もあったりするんだけど、そこらの細かい事はまあ置いておこうか

 そんなはずの人物を董仲穎が残した

 この事実が問題なんだ」

 

これに元直ちゃんが質問する形で話を繋げる

 

「しかし、それもある意味想定内ではありますし、問題はないのでは?」

 

「確かに、どういう形であれ洛陽を纏めて表向きの事柄を背負ってくれるのなら問題はないでしょう?

 くきゃきゃきゃきゃ」

 

子敬ちゃんの答えに、アイツは鼻に皺を寄せて眉を顰める

実はこれは本当に珍しい

アイツはこの事を本当に問題視してるって意味だからだ

 

「そう言えなくもないんだけどね

 最終的には俺達の想定通りになるとは思うんだけど、この場合は“立場”が違ってくるんだ」

 

「立場、ですか?」

 

伯達ちゃんの呟きにアイツは頷く

 

「そう、立場

 相手から

 『お願いします、天の御使いとして我々を支えてください』

 と言われるのと

 『共に戦いましょう』

 とこちらから言うのでは、結果が同じでも全く異なるってこと」

 

なるほど、理屈は確かにその通りだ

しっかし、本当に性格悪いなコイツ…

 

てことは、相手から言わせるためにすぐには行けないってことか

そのためにアタシらが先にいって“人気取り”をしてこい、ということかよ

それが判ったのか、忠英ちゃんが渋い顔をして呟く

 

「私はまあ構わないけどさ、ちょっとあざとすぎないかい?」

 

「露骨だね、それは百も承知してる」

 

アタシなんかにはそう見えるんだが、なんつーか黒い笑顔でニコニコ笑いながらアイツは背伸びをする

 

「この際人気とりもやむなし、てとこかな

 とりあえず足場を固めさせてもらって、せめて“双方が妥協した状態”で手を組めるところまでもっていかないとね

 とりあえず打つ手がそれしかない以上、不本意でもやって貰わないと、洛陽を踏み潰してしまわないといけなくなる」

 

でないと涼州に手出しできなくなるしね、とか呟いてやがる

本当にこの野郎、どこまで性格が悪いんだか…

 

「では、洛陽はそれでよいとして、長安はどうしますか?」

 

仲達ちゃんがアタシらの雰囲気を故意に無視して先に話を進める

本当になんというか、この子が健気すぎて涙が出てくるよ、アタシは

 

「逃亡した宦官狩りの後始末もあるから、そうだな…

 令則さんと元直ちゃんが適任かな?

 ふたりなら無理なく纏めて、後で董仲穎に引き渡せるだろうしね」

 

それには皆が納得して頷く

 

「頃合を見て俺も洛陽にいくから、それまで“漢中のやり方”で洛陽の民衆を助けてくれればそれでいいよ

 後は俺がなんとかするからさ」

 

アタシは不承不承、忠英ちゃんはまあいいか、という感じで頷く

 

「工兵連中の実地訓練とでも考えれば、まあいいかって感じだな」

 

「ウチの連中も、災害訓練とでも思えってことでやらせるしかないか…」

 

こうしてようやく納得の兆しを見せた会議だったんだが、あのヤロウ、まーた爆弾発言をしやがった

 

「てことで“もしも”に備えて他の全員はここで待機しててね?」

 

これにはさすがに皆が黙ってられず、五胡との交渉のときの実例もあったため全員が反対したんだが、あのコマシ野郎、最後には笑って誤魔化しやがった

 

いや、それで誤魔化されちまったアタシらも悪いんだけどさ…

 

いつか後ろから刺すぞこのコマシ野郎が…

 

 

そんな訳で、アタシは今洛陽にいる

 

ここであの野郎の何がすごかったかというと、せいぜい炊き出しと建築資材の供与程度しかできていないところに大量の生活物資を放り込むって手段をとって、無償で工兵を貸し出し、各所に天幕を張って診療所を設置させたってところだ

 

確かにこれはアタシらのやり方なんだけど、ここまで徹底すると思ってなかった

 

これじゃまた国庫が空になるってところまで吐き出すとは誰も考えてなかったし、アタシもここまでやるとは考えてなかった

忠英ちゃんだけは遠慮がいらないと喜んでたけどね

この子にも金勘定をちっとは教えないとな…

 

アタシが言えた義理じゃないか

 

どうして助けてくれるか民衆に聞かれた場合は

「董相国と陛下のご依頼です」

と答えるように配慮もさせている

 

いや、アタシがいうのもなんだが、政治って汚いよな

ホント、アイツの性格の悪さが判るってもんだ

 

味方でよかったよ…

 

こうして民衆が“天の御使い”が董相国と皇帝陛下の味方という風評が根付いた頃に、アイツは堂々と洛陽に来たって訳だ

 

よくやるよ、本当に…

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≪洛陽宮中/董仲穎視点≫

 

「聞きしに勝る手腕であるな」

 

皇帝陛下が嬉しそうに呟いています

 

へぅぅ…

喜んでいいのかなぁ…

 

洛陽で発生した大粛清は、表向きは沈静化しました

暴徒と化した民衆も上手に煽動されていたらしく、悪評高い官匪や宦官の家や家族は襲撃し略奪や殺害をしたみたいですが、無関係の場所を襲おうとした人達は殺されたり気絶したりしていたのが大半のようです

 

その報告を聞いてみんなは、ものすごく苦い顔をしていました

 

私もちょっと怖かったです

 

仮にもこの洛陽で、どうやってそこまで用意周到に準備ができたのでしょうか

 

詠ちゃんに言わせると

「それは逆ね

 洛陽だからできたのよ

 陛下のせいではないんだけど、戸籍もなにもかももうぐちゃぐちゃ

 一部の方が頑張ってはいたみたいだけど、これじゃどうにもならないわ」

と言っていて陛下が苦笑なされておいでだったので、洛陽の人口が多いことが仇になったのだと思います

 

ねねちゃんも

「今にして思えば、反乱軍を捕虜にして連れ帰った事もこの策のうちでありましょうな

 あれだけの人数を完璧に統制していたあやつらの事です

 洛陽にそれを利用して間諜を送り込む事など造作もないことでありましょう」

との意見を言っていたので、あの人達が私達と会った時にはこれらを想定していたのだろうと思います

 

陛下はむしろ楽しそうです

 

「なるほど…

 確かにこれでは伯父上や十常侍あたりでは相手にもならん

 朕も使い潰されぬように気を付けねばな」

 

そんな事を言って笑っておられます

 

へうぅ…

笑い事じゃないです…

 

私はあの後、陛下やみんなと相談して“相国”という地位に就く事になりました

身分としては陛下に次ぐ地位で、事実上漢室の実権を手にしている地位になります

 

私はこんな地位、恐れ多くて無理だと思ったのですが、陛下が笑いながら

「貴様等がいう“あの男”と渡り合うには、この程度の地位がなければ無理であろうな」

などとおっしゃって、それにみんなが力一杯頷くので陛下の申し出を押し戴く事にしました

 

みんなが手伝ってくれれば、身に余るこの地位でもなんとか頑張れるような気がします

 

それから数日して、漢中から“義援”と称して兵と物資が届きました

彼らに十分な資金と物資があるのは私も解っていましたが、どこにこれだけの、と思えるくらい大量の物資と、壊れた城壁や家屋を修繕できるだけの資材、そしてお医者さんがやってきたのです

 

来てくれた方達は漢室の身分を持たないので、挨拶は詠ちゃんが代表で行いました

 

その席で物資をこちら側に引き渡して指示に従うように求めたらしいのですが、それは頑強に拒まれたようです

 

「董相国が賢明な漢室の臣であり、今上帝も聡明であるとお聞きしているが、どのような官匪がいるかいまだ判らない以上、これらをお渡しする訳には参りません」

 

こう言われてしまって詠ちゃんは歯噛みせざるを得なかったそうです

 

彼女達は

「我々は“天の御使い”に従い義により助けに赴いたものであり、漢室の臣ではありません」

とも言っていたとのことで、これを理由に不敬罪を問うべきかどうかという意見も出ました

 

ですが陛下が

「よいではないか

 天が助けてくれるという事は朕を助けると宣言しておるのだ

 聞けば漢中は天の御使いが降り立って朕等と共に歩むであろうと宣したと聞く

 ならば自由にやらせた方がお互いの益であろう」

と、大度を示すべきとの意見を出されたので、それに従う事になりました

 

結果としてそれが功を奏したようで、天譴軍と名乗る彼らの人気が高まると共に、それを呼び込んだとされている私達の評判も日に日にあがっているそうです

 

これらの事について陛下とお話したときに、陛下はこうおっしゃっていました

 

「貴様等がいうこの男、確かに悪人ではあろうが善人でもあるな」

 

「へぅ…

 どういう意味でしょうか?」

 

「悪人であるから、ここまであざとく人気取りができる

 善人であるから、人気取りに手を抜かぬ」

 

私はこの言葉に少し考えます

確かに、結果として悪辣というか卑怯というか、私達には許せない事も多いのですが、私にはなぜか“悪意”だけはずっと感じられないでいたのです

 

陛下は機嫌よく酒杯を掲げながら話されます

 

「この男、稀代の悪人であろうが匪賊や奸臣・佞臣とは一線を画すであろうな

 このような男がひとりでも父上の傍におれば、このような様にはなっておらぬであろうに」

 

「へぅぅ…

 まだ間に合いますよ

 私達で建て直せばいいと思います」

 

確かにその通りだ、と笑う陛下に、私も笑います

 

「これで真実天の御使いというのであれば、朕の婿に所望したいところではあるな

 いや、朕は男故婿は無理か」

 

「陛下!」

 

「いや、すまぬすまぬ

 戯言だ、許せ」

 

そう言って大笑する陛下ですが、私にはなんだか本気に聞こえました

 

「敵にできぬのであれば、何をしてでも味方にしておくべきなのだ…」

 

そう呟く陛下のお顔は、なんだか寂しそうで…

 

そして、あの人の顔を思い浮かべて、何故か私も少し顔が熱くなりました

 

 

陛下とそんな会話をして数日後

 

宮中に早馬がやってきました

 

それは、天の御使い・北郷一刀が陛下と私に拝謁願いたい、という報でした

 

そして、それを聞いた陛下が悪戯っぽく私におっしゃいました

思わずぞわっとした私の悪い予感は、見事に当たる事になります

 

 

「ところで、謁見に際してであるが、朕は名を変えて相国の臣として出たいのだが」

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≪洛陽宮中/北郷一刀視点≫

 

これは参ったな…

 

まさか、劉弁にここまでの遊び心を発揮する行動力があったとは…

 

俺は予定通りといえる状態で劉弁への謁見を申し出、それを受理されて現在宮中に赴いている

 

足が不自由という触れ込みをしているので、車椅子等は念入りに調べられたが、そこは心得ていたので問題なく通された

 

そこまではいいのだが、劉弁が座る席は空席のままだ

 

いや、それは問題ではない

 

問題は董仲穎の幕僚がひとり増えているという点だ

しかも、賈文和の上座に位置している

 

彼女達の関係を考察するに、軍師として賈文和より重用される人材など普通はありえない訳で、そうなると次席に位置している女性が誰なのか、という事になる

 

しかも、陛下が来るまでという事で自己紹介されたが、その人物は李文優だという

それって李儒だよな…

 

いやいやいやいや!

あれ明らかに劉弁だし!

だってみんなが居心地悪そうに気を使ってるんだもの!!

 

しかし俺がそれを突っ込む訳にもいかない

 

なんて拷問だよこれ!!

 

つーか、やっぱツッコミ入れなきゃだめかな、これ…

 

ただ、あれだな…

5ヶ月で廃立された理由が女性だったっていうなら、なんとなくアリだよな…

なにせ、何皇后は劉協が生まれたら王夫人を暗殺してまで劉弁を立てようとしたっていうし

 

こうなると我慢比べになる訳で、俺としてはひたすらに待つしかない

どのみち全員、官位もなにもないから、漢室の慣例に従うならここまでこれない訳だし…

 

そう考えながら、俺は劉弁と董仲穎に対する評価をかなり上方に修正する

 

この後に及んでここまであけすけに来れるのであれば、十分に俺達と手を組める

欲を言えば最終的な俺の考え方に着いてこれるかどうかだが、いくつかの条件をクリアすればそれが可能な人物であるように思えた

 

こうしてかなりの時間が経過したところで、李文優を名乗る女性が急に笑い出した

 

「いや、この我慢比べは朕等の負けであるな!」

 

そう言って颯爽と玉座に向かい、堂々と座る

 

「許せ!

 座興である!」

 

唖然とする董仲穎とその仲間達に俺は心から同情する

 

「へぅぅ…

 陛下、それはあまりにも…」

 

困ったような泣きそうな顔の董仲穎がいっそ憐れに思える

 

つかさあ、いいのか?

 

今上帝が実は女でしたってばらしちゃってさ…

 

いや、俺は別にそれでも困らないからいいんだけどね?

 

さすがに呆れ返る俺に向かって、劉弁はなんか機嫌よさげに喋ってくる

 

「ふむ…

 やはり貴様、聞いていた程の悪人ではないようだな」

 

「いや、自分では十分悪人のつもりですがね…」

 

形式をもう繕えなくなってる俺はまだまだ未熟だなあ…

 

「で、貴様は朕等にこう言わせたいのであろう?

 『天の御使いとしてどうか朕等と共にあってください』

 とな」

 

あー…

悪い予感や想像ってやっぱ当たるもんなんだな…

頭の回転いいわ、この人

 

「まさか…

 俺としては

 『陛下と董相国の御為に是非ともこの御使いめをお使いください』

 とお願いするつもりでしたよ?」

 

それに呵呵と笑う劉弁

 

「言いおるわ

 それで、貴様は朕とその重臣である董相国のために、どこまで力になってくれるつもりなのだ?」

 

うわ、すっごくやりづらい…

いいのか、アンタがこうまで腹芸を拒否した会話して…

 

ちらっと横を見れば、賈文和はもう、眼鏡がずり落ちてたり、張文遠も羽織がずり落ちてたりと、みんなものすごく悲惨な事になっている

董仲穎なんかもう涙目だ

唯一普通なのは呂奉先くらいだが、なんかあれはずっとぼーっとしてたから、解ってないだけかもな

 

まあ、敢えてそちらが腹芸を拒否するなら、それに付き合うのが良策だろうな

 

「そうですね…

 とりあえず約束しましたんで、董相国が危機に陥ったときは必ず一度、お助けしますよ」

 

「ほう、その後は?」

 

「それは俺が決める事じゃないんじゃないかな…

 だって、俺が嫌いでしょ?」

 

俺がそういうと劉弁以外の顔が強ばる

その空気を察したのか、劉弁はゆっくりと顎を撫でる

 

「なるほどな…

 貴様が嫌いか。朕はそうでもないのだがな」

 

「いやあ…

 体良く利用しましたからね」

 

俺の言葉に反応したのは董仲穎だった

 

「でも、助かりました…

 そこは感謝してます」

 

これに勢いを取り戻したのか、賈文和が火を噴くように噛み付いてくる

 

「そうよ!

 アレは確かに助かったというか、すごく感謝してるけど!!

 その後のアレは一体なんなのよ!!」

 

それを契機に全員が一気に俺に噛み付いてきた

 

「そやなぁ…

 アレはいっぺん、アンタをとことんボコらな気がすまんとこやなぁ…」

 

「体良く利用された身としては、このまま済ます訳にはゆかぬな」

 

「許す訳には参りませんぞ!

 この公台だけならともかくとして、奉先殿まで利用するとは!!」

 

「……………おしおき」

 

「確かに朕の身も母上や協らの身も危ういところではあったな」

 

俺は溜息でこれに応える

 

「そうは言うけどさ…

 だったら君達はどうしたかった訳?

 俺としてはそこが聞きたいんだけど?」

 

全員が一瞬言葉に詰まるが、それでも賈文和が反論してきた

 

「せめて最初から言っておいてくれればボク達だって…」

 

「言ったと思うけど?」

 

彼女はいっそ冷め切った俺の言葉に、再び言葉を詰まらせる

 

「俺は最初から言っている

 この宮中で董仲穎がどうしても動かなければならないようになったら助力する、と」

 

そして笑みを崩さないでいる劉弁に向かってこう告げる

 

「確かに貴女の事は全く考慮してなかったのは認めますよ、劉弁陛下」

 

彼女は「この無礼者が」と楽しげに呟いて席を立つ

 

「なるほど、確かに貴様は天啓であるな

 今こうして朕が生き残っているから話す価値がある、そう言いたいのだろう?」

 

俺に近づいてくる劉弁に苦笑しながら答える

つーか、このまま殺されたらどうしよ……

 

「そこまでは言いませんよ

 むしろあまりに予想外でしたし

 俺にとって貴女という存在は嬉しさ半分悔しさ半分の誤算ってとこです」

 

劉弁は俺の目の前までくると、俺の顔を覗き込む

 

あ、気付かなかったけどかなりの美人だなこの人

 

「悪人ではあるが、無意味な嘘をつくようには見えぬな…

 母上や太后様や協に群がってきたような連中とは目が違う」

 

「それはどうも…」

 

ありがとう、と言葉を続けようとした俺の唇が急に塞がれる

 

えっと…

これって…

もしかして…

 

 

 

き・す・さ・れ・た・?

 

 

 

全く思考が追いつかない俺から離れ、劉弁は呵呵と笑いながら離れていく

当然周囲も俺も硬直したままだ

 

「はははははははは!

 天の御使いにならこの程度の事はよかろう!

 気に入ったぞ北郷一刀、貴様を天の御使いと認め、董相国と共に朕の隣に立つ資格をくれてやろうではないか!

 ははははははははは!!」

 

俺は呆然としながら、心の中で呟いていた

 

 

仲穎さん、あなたもしかして、とんでもない爆弾を抱えたんではありませんか………?

説明
拙作の作風が知りたい方は
『http://www.tinami.com/view/315935』
より視読をお願い致します

また、作品説明にはご注意いただくようお願い致します

当作品は“敢えていうなら”一刀ルートです

本作品は「恋姫†無双」「真・恋姫†無双」「真・恋姫無双〜萌将伝」
の二次創作物となります

これらの事柄に注意した上でご視読をお願い致します


その上でお楽しみいただけるようであれば、作者にとっては他に望む事もない幸福です

コラボ作家「那月ゆう」樣のプロフィール
『http://www.tinami.com/creator/profile/34603』
機会がありましたら是非ご覧になってください
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コメント
うわーフリーダムな皇帝様だなw(minerva7)
堂々と李儒と抜かして正面から視察に来るのか、お忍びで一刀の閨を狙ってくるのか、はたまた折衷案を取るのか、楽しみにしておりますw(通り(ry の七篠権兵衛)
時代の常識をたやすく踏みつぶす規格外の女帝・劉弁。そこに痺れる憧れるぅ!・・・というか、こっそり漢中来そうで怖いですよね。(通り(ry の七篠権兵衛)
前も思ったけど核爆弾級ですよね。仮にも皇帝が、しかも儒教の価値観が蔓延している国の一番偉い人がやる事じゃない。(陸奥守)
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