恋姫三国伝〜四〜 |
・SDガンダム三国伝のキャラやストーリーを恋姫風にしてみたダイジェストっぽい短編集です。
・キャラの性格や口調が変わっていたり、武力が超パワーアップしていたりますが、ご了承下さいませ。
・元ネタが蜀ルートとの相性バッチリな作品なので、一刀と桃香は「二人で一人の劉備」なポジションです。
・この外史では本編で「天の国の言葉」扱いであるカタカナ等が普通に使われております。
―((長沙|ちょうさ))―
「……」
((孫権|そんけん))・((真名|まな))は((蓮華|れんふぁ))。
名門出身の姫ながら尊大な面は無く、情けを重んじ、誰にでも分け隔てなく接する清々しい武将。
彼女は、民を守る為に今日も鍛練に励む。
「はぁあっ!! ((双虎破刃|そうこはじん))!!」
折りたためば両刃の剣、伸ばせば長剣となり、その鋭い切れ味は虎の牙のようであるという愛用の((牙王剣|がおうけん))に氣を籠める。
剣にオーラを宿し、遠隔操作で変幻自在に操り敵を切り裂く技。どんな角度からでも攻撃出来る必殺技…双虎破刃。
自らの意思を持ったかのように、剣は空を舞いながら的を全て斬り裂いた。
「お〜、やってるやってる。頑張ってるわね、蓮華!」
「((雪蓮|しぇれん))姉様」
孫権の姉、((孫策|そんさく))・真名は雪蓮…『((江東|こうとう))の((小覇王|しょうはおう))』と呼ばれる王。
普段は陽気で自由奔放だが、家臣への面倒見が良く義にも厚い……三姉妹の長女とは思えない子供っぽい一面もあるが。
しかし…戦場では父・((孫堅|そんけん))から受け継いだ孫家の代々の王が継承する宝刀・((南海覇王|なんかいはおう))と、
((龍帝剣|りゅうていけん))と同じく伝説の((三侯|さんこう))の一人・((虎暁|こぎょう))の魂が宿る剣・((虎錠刀|こていとう))を持って戦場を駆ける勇者である。
「それにしても、あの((戦|いくさ))嫌いだった蓮華が積極的に強くなろうとするなんて…変われば変わるものねぇ」
「今でも戦は嫌いです。でも、民を守る為にはもっと強くならなければ…それが、私の正義ですから」
「ふぅん、正義ねぇ…それも、龍帝剣の彼の影響?」
「なっ!? ね、姉様!!」
「だって、貴女の口から正義なんて言葉が出るんだもの。それ以外に考えられないわよ」
雪蓮に指摘され、顔を真っ赤にする蓮華。
基本的に争い事を嫌い、『人は正義にのみ生きるにあらず』と言っていた蓮華が『正義』という言葉を使うようになったのも『彼』の影響だった…。
彼の名は((北郷一刀|ほんごうかずと))…龍帝剣に選ばれし勇者にして、天の((御遣|みつか))い。
『我が魂は正義と共にあり』と言う、以前の蓮華とは正反対の考えの持ち主。
「いや〜、恋する乙女は強いわね〜♪ でも一刀ってモテモテみたいだから、きっと恋敵多いわよ〜」
「こ、恋!? わ、私は一刀の事をそんな風には…」
「最近髪型短くしてイメチェンしたのも、それが理由?」
「ち、違います! 髪が長いままだと鍛練の邪魔になるからであって…」
「でも、一刀に『蓮華にはどっちの髪型も似合うよ』とか言って欲しいでしょ?」
「そ、それは…一刀なら言ってくれると思いますけど…って姉様!!!」
「お〜怖っ。じゃあね、蓮華ちゃ〜ん♪」
「姉様っ!! もうっ、本当に逃げ足速いんだから…」
妹をからかったら、あっという間に逃げ去る姉だった…。
「我が魂は正義と共にあり、か…龍帝剣一派が悪人退治をしながら今も旅を続けているという噂は、ここ張沙にも広まっている…。
あの最終決戦から、もう一ヶ月…一刀達、一体どの辺りを旅しているのかしら。
長沙に来たら、是非声をかけてって言ったのに…どうせなら、長沙に来て((仕官|しかん))すれば良いのに…」
蓮華は思い浮かべる…『我が魂は正義と共にあり!!』と叫び、龍の姿が刻まれた黄金に輝く剣を手に、悪と戦う彼の姿を。
彼と初めて出会った、あの反((董卓|とうたく))連合で共に戦った戦場を…。
・孫権、出陣!
「わォ〜、やってるやってる。本物の戦だ、凄い凄いっ!! お姉ちゃん、早く早く〜!!」
「はぁ…気乗りしないな…」
「まだそんな事言ってるゥ。雪蓮姉様に、正義の為に頑張りなさいって言われたじゃない!!」
「……正義ねぇ……はぁ、どいつもこいつも正義、正義――そんなモノが人の命より大事な事なのか……」
反董卓連合時…当時の蓮華は情を重んじて国内と人民を豊かにする事を目指し、無駄な争いを拒んでいた。
その妹、((孫尚香|そんしょうこう))・真名は((小蓮|しゃおれん))、ニックネームはシャオ。
((江東|こうとう))の((弓腰姫|きゅうようき))と呼ばれる武術の腕前を持つ、じゃじゃ馬姫。
「若将軍! 姫様!」
「どう、戦場の様子は? シャオが活躍出来そうな舞台はあったの?」
「そ、それ所ではありません! ((孫策|そんさく))様も((四騎衆|よんきしゅう))も苦戦中です!」
『何ですって!!』
((伝令|でんれい))の言葉に驚く姉妹。
二人の姉は『江東の小覇王』と呼ばれる王。
((長沙四騎衆|ちょうさよんきしゅう))…((孫堅|そんけん))の代から仕える幹部達である((黄蓋|こうがい))、((程普|ていふ))、((韓当|かんとう))、((祖茂|そも))の四人。
武勇の((誉|ほま))れ高い面々が苦戦…姉妹にはとても信じられない出来事だった。
時間を少し((遡|さかのぼ))る―。
「あれが虎の門ね」
「((古|いにしえ))より、あの門を破ろうとする者には天の裁きが下ると言う…」
「((司馬懿|しばい))め! それを知っていながら我等にここを攻めさせるのか!」
「いいえ! むしろこれは好機よ!! 天の裁き―すなわち、((天玉鎧|てんぎょくがい))!!」
「て、天玉鎧!! まさか!?」
「その為に、殿はあえてこの作戦を!?」
「天玉鎧以外には一切目をくれるなっ!! 必ず生きて、失われた((神器|じんぎ))をこの手に掴むのだ!!」
『オーッ!!!』
失われた神器・((天玉鎧|てんぎょくがい))を手に入れる為に雪蓮率いる張沙軍は((虎牢城|ころうじょう))に向けて出撃した。
「((呂布|りょふ))!!」
「まずは、虎の子が相手…」
「江東の小覇王って呼んでくれない? 虎の子は私の他にも二人いるの…今はまだ、子猫だけどね」
「策殿! こやつの相手は我々が!」
しかし、董卓軍最強の武将・呂布率いる部隊が立ち塞がる…四騎衆は主君を守る為に、雪蓮の前に出る。
「老いぼれ共は黙って見ていろ! 孫策と戦う前の肩慣らしだ! 長沙四騎衆の首、この首斬り((華雄|かゆう))様が頂く!!」
「だ…だぁれが老いぼれじゃあ!! おのれ女狐!! ((儂|わし))はそこまで老けとらんわぁ!!」
もう一人の武将・華雄の挑発に、黄蓋こと((祭|さい))は老いぼれ呼ばわりされた事に激怒する。
余裕の表情を浮かべる華雄だが、つい先程……曹操こと((華琳|かりん))の炎で服を燃やされ、慌てて虎牢城に逃げ帰って着替えて来た奴とは思えない。
「落ち着け、黄蓋! 子供の言う事だ。それにあやつは狐と言うより猪じゃ!」
「そうじゃ、華雄のような((小童|こわっぱ))の言う事に一々腹を立てるな!」
「あやつはかつて、孫堅様に手も足も出なかったではないか!」
「うう、しかしのぉ…」
祖茂、程普、韓当…黄蓋より年上の((侠|おとこ))三人が祭を((宥|なだ))める。
ちなみに……四騎衆の中では最年少で((紅一点|こういってん))と言うのは、祭の密かな自慢(長沙軍の面々にはバレバレ)である。
「だ、だ、だ…誰が猪だぁああ!! 誰が小童だぁあああ!! 孫堅のいない長沙軍なんぞに、二度と遅れを取る私ではないわぁああああ!!!」
「……華雄、うるさい」
「変わってないわねぇ、アンタ…だからお父様に負けたんでしょうが」
その言葉に激怒し、逆に挑発された形になってしまった華雄に呆れる呂布と雪蓮。
「ええい、覚悟しろ長沙軍!! 呂布、モタモタしていたら孫策の首も私が貰うからな!! 華雄隊、かかれぇ!!」
「……分かってる」
「あら、やる気満々ね…でも、神器を目前に退ける訳ないでしょ! 皆、行くわよっ!!」
『おう!!』
双方、気を取り直して…張沙軍と董卓軍の戦いが開始された。
「見つけたぞ、呂布ーっ!!!」
「…!」
「貴方達は?」
「我等、((幽州義勇軍|ゆうしゅうぎゆうぐん))!! 孫策将軍! 加勢致します!!」
「わお、良いタイミングで来るわねぇ♪」
「お前達は…((恋|れん))に膝をつかせた…」
「呂布! いつぞやの決着をつけてやる!!」
「……虎の子の次は、龍帝剣……来い」
「行くぞ! 皆!!」
(へぇ、あの子が噂の龍帝剣かぁ…)
雪蓮と呂布の1対1の戦いに、幽州義勇軍が参戦する…!
「ほぉ! あの((孺子|こぞう))共、呂布とまともにやりあっておるわい!」
「おお…『((人中|じんちゅう))に呂布あり』と怖れられる一騎当千の豪傑相手にやるではないか!」
「あれが黄巾党をたった四人で倒したと言う、噂の龍帝剣一派か」
「あやつ等が殿の足を引っ張る心配は無さそうじゃな」
祭、祖茂、程普、韓当はそれぞれ幽州義勇軍を評価する。
「おい!! 私を無視するな老いぼれ共〜!!」
「やかましいわ、小娘! お前なんぞ儂一人で十分じゃ!!」
「やれやれ、祭にも困ったもんじゃ…程普! 韓当! わし等は兵を率いて華雄隊の相手をするかの!」
『((応|おう))!!』
売り言葉に買い言葉で、祭と華雄が一騎討ちを始める…。
祖茂、程普、韓当は祭の短気さに呆れつつも、長沙軍を率いて華雄隊と激突する。
・((白虎|びゃっこ))の((咆哮|ほうこう))!! 目覚める天玉鎧!!
「苦戦してるって聞いて来たけど……じい達の方は大丈夫そうね」
「じゃあ、シャオは雪蓮姉様の助太刀に行って来る! 呂布なんて、シャオがやっつけてやる!!」
「ちょっと、シャオ!!」
孫策達の方へ向けて突っ走る小蓮を、慌てて追い掛ける蓮華。
「旋風…大烈斬…!」
『うわあああっ!!』
((方天画戟|ほうてんがげき))を頭上で回転させ、凄まじい暴風を巻き起こして敵を斬りつける、防御不能の大技…((旋風大烈斬|せんぷうだいれつざん))。
「更に強くなっている!!」
「戦慄の((暴将|ぼうしょう))なんて呼ばれる訳ね…何て化け物よ…!」
「これで、終わり……旋風…爆裂衝…!」
方天画戟を地面に突き立て、発生させた衝撃波で向かう敵を((尽|ことごと))く粉砕する恐るべき技…((旋風爆裂衝|せんぷうばくれつしょう))。
「皆、避けて!!」
「姉様〜!!」
「シャオ!? ダメ!! 来ないで!!」
「孫策将軍!!」
呂布の必殺技が放たれた直後…小蓮が駆け付ける。
雪蓮は妹を((庇|かば))う為に走り出す…無防備な背中を((晒|さら))して…。
「危ない!! ((龍帝盾|りゅうていじゅん))!!」
「((桃香|とうか))!!」
「桃香様!!」
「お姉ちゃん!!」
桃香は((靖王伝家|せいおうでんか))に氣を籠めて水平に構え、巨大な盾型の結界を作り出し、衝撃波を防いだ…!
「恋の爆裂衝を、防いだ…お前も、やるな…」
「ご主人様が悪を斬る龍帝剣なら…わたしは、皆を守る盾…靖王伝家だもん…!」
「靖王…伝家…?」
「わたしのご先祖様…高祖・((劉邦|りゅうほう))様が、民を守ったと伝えられる守り((刀|がたな))だよ…!」
「でも……守るだけじゃ、恋には勝てない…」
「いいの…だって、わたしの役目は守る事だもん…貴女に勝つのは、ご主人様達だから…!」
衝撃波の力に押され、吹き飛ばされそうになるのを必死で耐える…。
次第に、衝撃波の威力が落ちて行く…。
「……盾が、まだ壊れない…?」
「威力が落ちて来た…! 桃香! もう良い、下がるんだ!!」
「うん…皆、今がチャンスだよっ…!」
「ああ! 行くぞ!! 龍帝イイイ剣ンンッ!! だぁあああっ!!」
「……!」
衝撃波の威力が落ちた事で、呂布に((隙|すき))が出来た…!
桃香の結界が消えた瞬間、一刀が龍帝剣を出して衝撃波を叩き斬る!
「((愛紗|あいしゃ))! ((鈴々|りんりん))!」
「はっ! 鬼の裁きを受けろ、呂布!! ((鬼牙百烈撃|おーがひゃくれつげき))!!」
「覚悟するのだ〜!! ((爆裂大雷蛇|ばくれつだいらいじゃ))!!」
「……っ!!」
一刀の右側から愛紗、左側から鈴々が飛び出し、必殺技を叩き込む!!
呂布は方天画戟で防いで踏ん張るが、二人の必殺技の威力に押されて((僅|わず))かだが後方に下がる…。
「シャオ…どうやら助かっちゃったみたいよ、私達。あの子達、見事な((連携|れんけい))よね」
「うん、雪蓮姉様…」
「あの団結力…私達、長沙軍と良い勝負かも」
「特にあの子の盾、凄い…呂布の攻撃を防ぐなんて」
「龍帝剣達三人と比べると、普段は全然目立たないみたいだけど……可愛い子なのに、お気の毒様」
「あのほわほわ〜っとした雰囲気と巨乳は腹立つ位に目立ってるけどね…」
「よ、良かった…でも、龍帝剣一派がいなかったら危うく雪蓮姉様とシャオが死ぬ所だった…。
呂布…う、うう…うううぅぅぅ!! うわあああ!!」
呂布への怒りを爆発させ、蓮華が叫ぶ…まるで、虎の咆哮のように。
「いくぞ、呂布ッ!!」
「来い…龍帝剣…」
お互いの武器を構える一刀と呂布…。
「呂布…」
「彼女は!?」
「……誰?」
「蓮華!?」
「お姉ちゃん!?」
その時、光を((纏|まと))った蓮華が二人の間に割って入る…!
驚く一刀と、首を((傾|かし))げる呂布。
「はぁああああっ!!」
「やる……でも、そんな力じゃ恋は倒せない…」
「くそお…くそぉぉ…くそーっ!!」
蓮華は牙王剣で呂布に斬りかかる。
しかし、呂布には遠く及ばない…何度斬りかかっても、方天画戟で簡単に防がれてしまう。
『力が欲しいか? 大いなる力が!!』
「欲しいっ!! 力が!!!」
「……!?」
突如、自分の無力さを悔やむ蓮華の頭の中に声が直接響く…声に答えるように両手を天に掲げ、力を欲したその時、体が光に包まれる…!
「権殿っ!? 一体何が!?」
「呂布!!」
「な、何なのだ!? この地鳴りは!?」
「分からん! が、ただ事では無いぞ!」
「あああああ!!」
「虎の門が!?」
「な、何か出て来る!!」
戦場全体に激しい地鳴りが発生し、虎牢城にヒビが入る…。
「あの光は!?」
「む!? 城が!?」
「おお、あれこそまさしく天玉鎧“((弩虎|どうこ))”!!」
「孫権様が神器を呼び覚ましたのかァ!?」
そこから現れた天玉鎧は、鎧と呼ぶには大き過ぎる((代物|しろもの))だった。
戦艦、戦車、装甲車、宇宙船…一刀の頭の中に、様々な「乗り物」の絵が浮かぶ。
「うあああああっ!!」
「……っ!! こ、この力は…!!」
「恋!! くっ…全軍撤退! 撤退だぁ!!」
蓮華と合体した弩虎は白虎のオーラを纏い、呂布を吹き飛ばした!!
華雄はすぐさま呂布に駆け寄り、肩を貸して撤退を始める…!
「こ、これは…この圧倒的な力は…!?」
「お姉ちゃん…」
「蓮華…天玉鎧を制御出来ていない…!?」
「何がどーなってるのだー!?」
その後も弩虎は暴れ狂い、((雄叫|おたけ))びを上げながら、虎牢城全体を破壊して行った…!
弩虎が蓮華と分離し、天に飛び去って行くまで…。
「呂布との戦いで自分の無力を痛感した私は、力を欲した…その結果が、天玉鎧・弩虎を暴走させてしまった…」
・弩虎の((爪痕|つめあと))。
「これが、天玉鎧の力…」
「難攻不落の虎牢城がこの有様か…」
「うう〜っ、後味悪いのだ〜!!」
「私は…何て事を…」
「権殿…」
「やはり来るべきじゃなかった…私のせいで、何万もの兵が…」
「若将軍…」
「孫権さん…」
「蓮華…」
「小蓮…もう張沙に帰ろう…」
「お姉ちゃん…」
(蓮華…やはり、この子に戦は向いていなかったか…)
呂布への怒りに震え、天玉鎧・弩虎を呼び覚まして虎牢城を陥落させてしまった…。
蓮華はその場に座り込み、ずっと泣いている…涙が止め((処|ど))なく((頬|ほお))を伝っている…。
「ご主人様!」
「愛紗?」
「あれを!! あの方向は洛陽!!」
「洛陽が…燃えている!!」
愛紗が指差した方向には、闇夜でもハッキリと見える巨大な炎…!
光の((都|みやこ))と呼ばれた洛陽が焼き払われて行く光景だった!!
「!! 何の為の戦いだったんだ…俺達は何の為にここまで…」
「董卓め…」
「民ごと都を焼くとは…」
「むごい事を…」
「こ、これが洛陽…酷い…酷過ぎる…」
「ゆ、許せない!! シャオは…わたしは董卓軍を許せない! この有り様を見ても、お姉ちゃんは長沙に帰るつもりなの!?」
「シャオ、((無理強|むりじ))いは良くないわ」
「でも、雪蓮姉様!」
「私達がここにいても出来る事は無いわ。虎牢城のようになるだけよ」
「若将軍、そんなに自分を責めるな」
「龍帝剣…」
「悪いのは董卓なんだ。奴を倒せば―」
「そしてまた、多くの命が失われる!!」
「若将軍…」
「こんな事はもうたくさんよ!!」
「蓮華…」
「お姉ちゃん…」
廃墟となった洛陽…建物は原形を((留|とど))めている物は一つも無く、逃げ遅れて焼け死んだ民達の死体が横たわっていた…。
「貴様、それでも虎の子かッ!!」
「曹操将軍!?」
「我が部下も、みな((三璃紗|みりしゃ))の平和を願って戦い―散って行ったわ。
その想いを無駄にしない為にも我々は戦い続けなければならない。違うかしら?」
「戦は人々を不幸にするだけよ! それでは董卓と同じじゃない!!」
「((殺戮|さつりく))と犠牲は同じではない!! 犠牲から目を背けては正義は為し得ぬぞ!!」
「そんな正義はクソくらえよっ!!」
「眠りから((覚|さ))めた神器―天玉鎧。
いずこかへと飛び去ったあれを…あの力を董卓が手に入れたらどうなると思う?
貴女の故郷も民も、この廃墟のようになるのよ!!」
「!!」
「そうだ! 正義の為だけじゃない!! 三璃紗に生きる全ての者達の為に…董卓だけは倒さなくちゃいけないんだ!!」
「曹操…龍帝剣…」
「おっと、自己紹介がまだだったね…俺は姓は北郷、名は一刀。((字|あざな))と真名は無い。北郷でも一刀でも、好きに呼んでくれ」
「字と真名が無い…!? じゃあ、貴方が、天の((御遣|みつか))い…」
「一応、そう呼ばれてる」
「私は…孫権。字は((仲謀|ちゅうぼう))よ」
曹操は巨大な黒馬・((絶影|ぜつえい))に((跨|またが))ったまま、蓮華を一喝する。
一刀と蓮華は、ここで初めてお互いの名を名乗る。
「この世の終わりかと思う程に落ち込んで、泣きながら長沙に帰ろうとした私を…一刀と曹操が止めてくれた」
「あれが一刀との出会い…龍帝剣を振るい、真の正義の為に行動する彼が…私を変えて行った…」
・龍帝剣と戦慄の暴将…最後の戦い!
((長安|ちょうあん))の北に位置する要塞――((?宇|びう))城――
光の都「洛陽」を焼き払った董卓軍は、険しい山々に囲まれたこの要塞で連合軍との最終決戦に備えていた…。
「遂にここまで来たか…人の命を((弄|もてあそ))び、三璃紗の民を苦しめる董卓! 倒すべき真の悪があそこにいる!」
最終決戦を間近にして、一刀の言葉にも気合が入る。
「これは我等の正義を決する最後の戦いであり、全ての始まりである!! 全軍、突撃ぃぃ!!」
『おおおおお!!』
「幽州義勇軍! 行くぞ!!」
「はい!」
「おう!!」
「やってやるのだ〜!!」
大剣・((炎骨刃|えんこつじん))を天に掲げた曹操の号令で、反董卓連合が一斉に動き出した!!
「孫策、覚悟!」
「華雄! アンタの相手をしているヒマは無いのよ!」
「何だと! ((父娘|おやこ))揃って私をコケにしおって!!」
「南海覇王と虎錠刀の二刀流、アンタに防げるかしら!?」
「ふざけるな!! 孫堅と同じ手が、二度も私に通じるかぁ!!」
雪蓮と長沙四騎衆が率いる長沙軍と、華雄率いる華雄隊が激突する!
しかし、長沙軍は誰一人気付いていなかった…蓮華と小蓮がいない事に。
「呂布!!」
「曹操…」
「傷付きながらも、この力…((流石|さすが))は戦慄の暴将!! だが、ここまでよ!」
曹操と絶影、呂布と((赤兎馬|せきとば))…名馬に跨った武将同士が激しく激突する!
炎骨刃と方天画戟が何度も激しくぶつかり合い、火花を散らす!
「これ位の傷じゃ…恋は止められない…」
「くっ!!」
呂布の方天画戟から放たれた衝撃波を、曹操は絶影から飛び降りて回避する。
「曹操…覚悟…」
「呂布…!」
呂布も赤兎馬から飛び降り、必殺技の体勢に入る…曹操も、自分の必殺技で迎え撃つ!
「我が紅蓮の炎に焼かれよ!! ((大紅蓮斬|だいぐれんざん))!!」
「炎なんて、吹き飛ばす……旋風…大烈斬…!」
炎となって燃え盛る闘志を刀身へと集中させ、それを刃の背面から吹き出す事で敵に炎の塊を飛ばしたり、自ら突進して行く事も可能な大技。
その炎に触れたものは灼熱の火に身を包まれてしまう…曹操の必殺技、大紅蓮斬。
曹操の炎と、呂布の竜巻が真正面から激突し…((相殺|そうさい))される。
「引き分け…ならば、直接斬る…」
「来るか…!」
必殺技の激突は互角…ならばと、呂布は曹操に接近戦を挑む為に向かって来た!
「呂布ぅ! シャオが相手よ!!」
「長沙の姫! 下がりなさい! 死ぬ気なの!?」
「いいえ! わたしも戦います!!」
「……お前、邪魔」
「いけない!!」
そこに乱入する小蓮だが、曹操は彼女に逃げる様に忠告する。
曹操との一騎討ちを邪魔されたと思った呂布は、小蓮を狙う…!
「龍帝ィィ剣!!」
「一刀!!」
「北郷…! 龍帝剣一派は((張遼|ちょうりょう))の部隊と戦っている筈…大将の貴方が何故ここに?」
「桃香達に任せて来ました!」
「((劉備|りゅうび))が…そう、本当に良い部下達を持ったわね」
「部下じゃありません、仲間ですよ。さぁ…俺が相手だ! 呂布!!」
「龍帝剣…お前だけは、恋の手で…」
そこに、駆け付けた一刀が龍帝剣で呂布の攻撃を防いだ!
何度も対決し、ライバルと認めた侠の登場に…呂布の闘気が増大する!
「きゃあ!」
「凄まじい((闘気|とうき))!!」
「来る!!」
「旋風…爆裂衝…」
「速いっ!!」
「ダメだ、直撃を…」
敵を尽く粉砕する衝撃波が、大地を破壊しながら三人を襲う…!
「((蒼晄壁|そうこうへき))!!」
「蓮華姉様!?」
「若将軍!!」
「もう戦いで大切な人を傷付けさせはしないっ!!」
「面白い……まとめて斬る」
「呂布! 覚悟!!」
その時、蓮華が戦場に現れた!
全身から放ったオーラで防御壁を張る技…蒼晄壁で一刀達の周りを囲み、呂布の必殺技を防ぐ!
蓮華の参戦に、呂布の闘気は更に高まる…!
「くっ!」
「何!?」
「無差別攻撃か!?」
しかし、その直後…敵味方の区別無く傷付ける破壊兵器・((弩弓乱射砲|どきゅうらんしゃほう))が発射された!
弩弓が((豪雨|ごうう))のように降り注ぎ、次々と部隊兵達が倒されて行く…敵も味方も関係無く。
「暴君…!」
「これは董卓の仕業なのか!? 味方ごと攻撃するなんて、何て奴だ…!」
「違う…アイツは董卓じゃない…」
「董卓じゃ、ない…?」
「……(コクッ)」
呂布は方天画戟を回転させて弩弓を次々と弾き飛ばしながら、一刀の質問に無言で((頷|うなず))いて答える。
「ぐははは、そうだ! 全て滅びるが良いのだ…このワシにたてつく愚か者よ! 無能な部下共よ!! ワシの力を思い知れっ!!」
両肩にそれぞれ3連装ロケットランチャー…邪悪な闘気を((瘴気|しょうき))弾として発射する六つの大筒…((六門煉獄鎧|ろくもんれんごくがい))を装備し、
右手には((霊帝陛下|れいていへいか))を((殺害|さつがい))して奪った皇帝の証である((玉璽|ぎょくじ))を持ち、
身長2m以上はある筋肉の((塊|かたまり))のような大男…((暴君|ぼうくん))・董卓が遂に姿を((現|あらわ))した。
董卓は?宇城の頂上から両肩の大砲を撃ちまくり、更なる無差別攻撃を開始する!!
「ぐうううっ…」
「お姉ちゃん!!」
弩弓の豪雨と、暴君の砲撃の嵐…その破壊力が、蒼晄壁を襲う。
「危ない!! ((龍鱗壁|りゅうりんへき))!!」
「桃香! 何でここに!?」
「愛紗ちゃんと鈴々ちゃんが…自分達の事は良いから、ご主人様達を助けに行ってって…」
「そっか…ありがとう、桃香。後で愛紗と鈴々にも礼を言わないとな」
「そうだね。その為にも、生き延びなきゃ…!」
「打ち合わせも無しに、私の蒼晄壁に重ね合わせるとは…」
「何気に凄い事サラッとやってるよね…」
「劉備…((季衣|きい))と((流琉|るる))の命を救った事と言い、((侮|あなど))れないわね。龍帝剣一派…中々の人材揃いじゃない」
その時…駆け付けた桃香が靖王伝家を天に掲げ、ドーム状の結界を蒼晄壁に重ねがけする。
半透明の桃色の結界は、無数の龍の((鱗|うろこ))が重なったような((模様|もよう))が描かれている。
「なぁ、呂布…これ以上の被害を抑える為にも、俺達は真実が知りたい」
「呂布さん、結界の中に入って下さい。そして、もっと詳しいお話を聞かせてくれませんか?」
「……分かった」
「か、一刀!? 劉備まで何を!?」
「な、何考えてんのよアンタ達!?」
「呂布、下手な真似をしたら我が炎で燃え尽きて貰う…分かっているわね?」
「……分かってる」
一刀と桃香の提案を受け入れ、呂布は赤兎馬と共に結界の中へ入った。
「くうっ! 洛陽を焼き払うわ、味方ごと無差別攻撃するわ…噂以上の暴君ね!」
「あ、あの腐れ外道がぁああああ!! 無能な部下共だと!? 貴様の部下になった覚えなど、一度も無いわぁ!!」
「か、華雄!?」
「今まで屈辱に耐えて従って来てやったが、もう我慢の限界だ!! 我が金剛爆斧の((血錆|ちさび))にしてくれるわぁあ!!」
「相当恨んでいたのね、あの暴君を…」
「当然だ!! 華雄隊の勇者達よ!! 今こそあの暴君を倒し、((月|ゆえ))様と((詠|えい))をお救いするのだ!!」
『おおおおおーっ!!』
「…なるほど、本来の主君を人質に取られていたって訳ね」
「孫策! ついて来たければ勝手にしろ!! 我等は?宇城に突撃する!!」
「ええ、勝手にさせて貰うわ。長沙軍はこれより、華雄隊と共に?宇城を攻め落とす!!」
華雄隊と長沙軍は『共通の敵』を倒す為に、共闘する事になった!
目標は暴君を倒し、華雄達の『真の主君』を救い出す事…!
「月は本物の董卓…詠は((賈?|かく))。月は優しい…詠は、月の親友…」
「本物の董卓が優しい!? それにあの名軍師、賈?が親友だって…!?」
「ご主人様の世界じゃ違うの?」
「ああ…俺の世界の董卓は、あの暴君そのものだし。賈?は、董卓の親友では無かった」
「月は皆の為に頑張り…詠は月を助けて…皆笑顔で、とても平和だった…。
でも…月と詠、あいつに捕まった…助けて欲しければ、言う事を聞けって…」
「董卓と賈?を人質に取られ、貴女達は無理矢理従わされていた…と言う訳ね」
「……(コクッ)」
「ひ、酷い…」
「な、何て卑劣な…許せん!!」
「そうよ! 絶対許せない!!」
「真実を教えてくれてありがとう、呂布…一緒に、あの暴君を倒そう!! 俺達の敵は同じだ!!」
「…礼を言うのは、こっち……恋の言う事、信じてくれた…」
呂布が語る真実を知り、暴君への怒りを爆発させる一同…!
つい先程まで敵だった自分の言う事を信じて貰えた事を、呂布は喜んだ。
「まさか…あの大男は董卓の名を騙る偽者で、本物とその親友である側近の軍師、賈?を幽閉していたなんてね…」
「雪蓮姉様の話によると、華雄が異常な程に短気だったのは本物の董卓を人質に取られた怒りを連合軍にぶつけていた…と言うのも納得出来たわ」
・終わり無き死闘の果て!
「呂布め、裏切りおったか…まぁ良い。どの道、始末する予定が早まっただけの事だ。
龍帝を継ぐ者と、戦慄の暴将…どちらも我が覇業の妨げとなる輩…生かしてはおけぬっ!!
消えろ消えろ! 消えてしまえ!! ((滅殺爆煉弾|めっさつばくれんだん))!!」
闇のオーラを両腕の大砲に充填し、六発の暗黒瘴気弾として敵めがけて一斉に発射する超絶奥義が一刀達を襲う!!
「来る…!」
「呂布!?」
「旋風…大烈斬…!」
呂布は結界から飛び出し、旋風大烈斬で迎撃するが…威力が押し負けてしまう!
「…っ!!」
「呂布!!」
桃香と蓮華の結界でも、迫り来る滅殺爆煉弾を防げないと判断した呂布は…更に前に飛び出し、一刀達を庇った!
爆発の後、煙が晴れた時…一刀が最初に見たのは、全身がボロボロになりつつも立っている呂布の姿だった…!
「呂布…俺達を、庇って…」
「真名…恋で良い…」
「恋…俺の事は、一刀って呼んでくれ」
「…(コクッ)」
自分の体を気遣う一刀に、真名を許す恋…一刀もこの世界では真名に当たる、自分の名を教える。
命を懸けて自分達を庇ってくれた勇者への、せめてもの敬意と感謝の気持ちを籠めて…。
「ごめん、一刀……後は…任せても、良い…?」
「ああ!! ゆっくり休んでてくれ…!」
「……(コクッ)」
「ありがとう、恋…」
力を使い果たし、仰向けに倒れそうになる恋を支える一刀。
「桃香、恋の怪我の治療を頼むよ」
「う、うん!」
「行くぞ!! 我が魂は、正義と共にあり!!」
一刀は氣の力で、暴君のいる?宇城まで飛び立つ!!
「お兄ちゃん! あいつをやっつけるのだ〜!!」
「あ奴だけは絶対に許せぬ!! ご主人様、私の力も!!」
「((三位一体|さんみいったい))!! うおおおおおおお!!」
離れた場所で戦う愛紗と鈴々が、一刀に力を託す。
三位一体…一刀・愛紗・鈴々の正義を求める心が一つになった時、一刀の星龍斬に愛紗の闘気と鈴々の雷が加わる必殺技・三位一体星龍斬を使う事が出来る状態。
三つの力が一つとなり、体に黄金の闘気を見に纏った一刀が、更にスピードを上げて飛ぶ!!
「ぬう! まだワシに盾突くつもりか!?」
「お前に聞こえるか、この声が!!」
「声…だと!?」
「散って行った者達の魂の叫びが!! 三璃紗に生きる全ての人々の怒りが!!」
「ぐわっはっは! 下らん!! 誰に向かって言っておる!? この玉璽が目に入らぬか! ワシは三璃紗の王…!?」
見せ付けようとした玉璽が突然消えた事に、暴君はオロオロと慌てふためく。
「消えた!? 玉璽が!? これは一体!?」
「ここだ!」
「何だとおっ!? 何故だあ、何故ワシの手を離れた!?」
「人々の心を尊ばぬお前に、三璃紗の王たる刺客無しっ!!
天を、地を、人を、三璃紗を守れと俺を呼ぶ!! 大いなる力、今…ここにっ!!」
玉璽は自らの意思で一刀の左手の中に納まっていた!
王の証であり、支配する力が宿ると言われる((聖印|せいいん))。
その資格が無い者が手にすれば闇の力を呼び起こす危険な代物だが…天玉鎧を発動させる鍵でもある!
「あ、あれは!?」
「天玉鎧!!」
「ご主人様が!?」
「でも、お姉ちゃんが呼び出した時と形が違う…」
「…龍…」
蓮華、曹操、桃香、小蓮、恋…それぞれが、一刀が天玉鎧を呼び出した事に驚く。
「((蒼龍|そうりゅう))!!!」
「ば、バカなああああ!!!」
蒼龍と一体化して((青龍|せいりゅう))のオーラを纏った一刀は、光の龍となって暴君を完全に消滅させた…!!
「お兄ちゃあああん!!」
「ご主人様ーっ!!」
蒼龍が一刀と分離し、天に飛び去って行く…。
「おっと!!」
「ご主人様…」
「やっぱり、鈴々達もいないとダメなのだ!」
「死ぬ時は共にと誓った我等…これからもずっと…」
「なのだ!」
愛紗と鈴々は、上空から気を失ったまま頭から落下して来る一刀を急いで受け止めた。
「それにしても、天玉鎧を手に入れて暴君を倒した時の一刀は本当に格好良かったわ…そして、羨ましかった。
弩虎の力を二度と暴走させない為にも…彼の正義に負けないような、強い心を持たなければ!」
・それぞれの道へ!
こうして、戦いは終わった。
天玉鎧は再び光となり、天に還って行った。
董卓軍を倒した連合軍は、それぞれの故郷へと戻って行き――。
玉璽は、連合軍の盟主であった((袁紹|えんしょう))の手に託された――。
「皆様、この度は本当にありがとうございます。何とお礼を申し上げたら良いか…」
「月様ぁあああ!! ご無事で何よりでございますぅううう!! この華雄、この日が来る事を心から願っておりましたぁああああ!!」
「ちょっと華雄!! アンタの大声のせいで月の声が聞こえないでしょ!」
華雄隊と張沙軍によって救い出された本物の董卓は…『お姫様』や『お嬢様』そのものな、礼儀正しくおしとやかな少女だった。
将軍も軍師も部隊兵も関係無く、董卓の姿を見た者は『こ、この子が董卓!?』と驚いた。
特に……『三国志』の董卓を知っている一刀や、暴君を間近で見た面々は驚きを隠せなかった。
大声で嬉し泣きする華雄を叱る賈?だが、彼女の目にも嬉し涙が流れている。
恋も、呂布隊の副将・((高順|こうじゅん))と軍師・((陳宮|ちんきゅう))も、張遼も、董卓軍の兵士達も…皆が嬉し涙を流しながら、董卓が助かった事を心の底から喜んでいた。
「え? 俺達を曹操将軍の軍に?」
「貴方達の力は存分に見せて貰ったわ! 張遼、((徐晃|じょこう))と共に我が軍に招きたい!」
「ありがとうございます――けど、今は辞退させて下さい」
「うえ? お兄ちゃん、大出世なのに?」
「俺達はこのまま旅を続けます。そして――もっともっと多くの人と出会い、多くの事を知り、自分の中に本当の正義を見つけます」
「フ…互いに目指す明日が、同じ物である事を願っているわ」
曹操の誘いを辞退し、旅を続けると決めた幽州義勇軍。
「長沙に来たら、是非声をかけてね。あの子も、貴方が気に入ったみたいだから」
「え?」
(私も…だけどね)
「若将軍、姫、孫策将軍…また会いましょう!」
「さぁ、行こう! 俺達の旅はまだこれからだ!!」
蓮華達にまた会う約束をして、再び旅立って行った…。
一つの時代が幕を閉じ、新たな歴史が幕を開ける…。
((風雲急|ふううんきゅう))を告げる三璃紗―明日の為に立ち上がった((数多|あまた))の豪傑達。
彼等を待ち受けるものは果たして何か!?
「俺達の旅はまだこれからだ…って言っていたけど、貴方の旅はいつ終わるの、一刀…。
次に会えたら、若将軍って呼ぶのは止めて貰わないと…戦場では孫権で良いけど、普段は真名で呼んで欲しいし」
「叶うなら、今すぐにでも追い掛けたい…共に旅がしたい…。
それに、一刀と一緒に旅をしているあの子達……義理の妹達って言っていたけど、どう考えても恋敵よね」
「一刀の女版みたいな劉備……うっ、胸は完全に負けてる。
いつも一刀に付き従う((関羽|かんう))……何故かしら、彼女はどこか他人とは思えない感じがするのよね。
((張飛|ちょうひ))はまだ子供だけど、あと五年もしたら分からないし……一刀、幼女趣味じゃないわよね!?」
「もしかして曹操の所に行ったんじゃ…ううん、それなら噂はすぐに流れて来る筈!
曹操って、一刀の事を気に入って部下に欲しがっていたけど…あくまで彼の力であって、彼自身が欲しいって訳じゃないわよね!?」
「それとも、董卓の所…!? 呂布はもう一刀に真名も預けていたし…」
一刀との再会の日を待ち侘びながら、恋敵達の存在に一人やきもきする蓮華であった…。
「うふふ〜♪ れんふぁちゃんってば、可愛い〜♪ これは面白い事になりそうね〜」
こっそりと妹の様子を見て面白がっている雪蓮がいる事に、蓮華は気付いていなかった…。
この日以来、雪蓮は面白がって一刀の事で蓮華をいじるようになるのであった……蓮華哀れ。
〜あとがき〜
SDガンダム三国伝の劉備と孫権は熱い侠の友情で結ばれるのですが、そんな二人の出会いを一刀と蓮華でやると…やっぱり、恋愛フラグになってしまいますね。
「人は正義にのみ生きるにあらず」という考えだった蓮華が、「我が魂は正義と共にあり!!」な一刀に出会い成長するキッカケに…。
一刀が旅を続けていると、蓮華はこんな風に待ち続けているんだろうな…と思いまして。
元ネタ通りなら尚香がヒロインなので、シャオがメインヒロインに……なれないのが恋姫風。
その場合、一刀と蓮華が親友で義姉弟になりますが…。
元ネタでは呂布に付き従う『女性の』((貂蝉|ちょうせん))がいるのですが、出来るだけオリキャラは少なくする方針でカットしました。
変わりに、孫家と因縁のある華雄の出番になりました。
この外史の孫堅は男性で、「せめて蓮華だけでも、お淑やかに育って欲しい」……とか思ってたようです。
偽董卓ですが、三国伝のは本当にこんな感じの小悪党です。
顔は……三国志ものの「極悪人」な董卓を思い浮かべて下さい。
元董卓軍の面々は故郷に帰りましたが、張遼こと((霞|しあ))は曹操軍に加わる事になりました。
戦に負け、月と詠を救えなかったと思い込んで自害しようとした所を、曹操に「散った者の魂を継いで生きる事は恥ではない!」と説得されたのがキッカケです。
月と詠が救われたのを知り、ちゃんとお別れを言って、その時に恋から赤兎馬、月と詠から「遼」の((牙門旗|がもんき))を貰いました。
説明 | ||
「子猫」から「静かなる猛虎」に成長を始める蓮華回です。 彼女の視点で、総集編っぽいノリで一刀との出会いを振り返ります。 |
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コメント | ||
Raftclansさん>>恋姫風にしたので、元ネタの侠同士の友情やライバル対決が恋愛フラグになってますから。SDガンダムシリーズは勧善懲悪な「光と闇の戦い」がメインですし。(ノワール) やたら熱いというか、暑苦しい一歩手前な感じですねw三国伝は詳しく知らないですが、武者ガンダムとか昔からトンでもない物とかあったり暑苦しいんでこうなるのは当然ですかw(Raftclans) 劉邦柾棟さん>>基本的に三国伝の孫権そのままなんですけどね。違いは武力と、妹の恋を積極的に応援する辺りで。 三姉妹の真ん中で苦労人ですからね〜……あと、王道ツンデレ繋がりでもありますね。(ノワール) 何となくこの作品の『蓮華』は無印の蓮華要素がありますね。 「あまり戦いたくない=天下統一より呉の繁栄や呉の民を守る事が大事だ!?」って『恋姫†無双』の蓮華は言ってますし。 愛紗が他人と思えないのは、やはり姉と妹関係で苦労している同志であるって本能的にわかってるからかなwwww。(劉邦柾棟) |
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