聖六重奏 2話 Part1
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2話「怪異の真相」

 

 

 

冥府から響く叫喚

 

 

 

「この数日間で、大分些希たんの気配は覚えたつもりだったけど……ここまで存在感が希薄とか、ある意味天然記念物指定受けて良いって……」

 杪さんは目を瞑り、必死に些希さんの気配を探っているが、それはかなり難航しているらしかった。

 彼女の、巫女として持ち合わせる霊力の探知能力は、数キロにもその力が及ぶ非常に強力なものだ。

 それに、髪の毛とはいえ、些希さんの体の一部を媒介にして術を使っている。

 これ以上がないほどに理想的な条件がそろっているというのに、些希さんは見つからない。

 勿論、丸一日を使って、学校内を探しまわった。

 警察には捜索願が出され、町の方で動いてくれている筈だ。

「杪。巫女装束を着てはどうですか?後は、御幣を持つとか」

 会長は今日も、ロクに髪をセットしないまま学校中を走り回って、今やっと一息吐いたところだ。

 杪さんが動けない分をしている、と本人は言うけど、きっとそんな単純な理由ではないのだと思う。

 一時は冷酷にも思えた会長だけど、そんなことはないんだろう。

「アレでプラスされる力なんて、本当に誤差の範囲のものだけど……今は藁にも縋らなくちゃ、か。ごめん、萌行ってくれるかな」

「はい。杪は一度、休んでおいて下さい。あまり長い時間探知をしていては、精神力も擦り減るでしょう」

「うん、わかったよ。萌には敵わないな、本当」

 阿吽の呼吸。それか、以心伝心。僕はふと、そんな言葉を思い出していた。

 幼い頃から、二人はこんな感じだったんだろう。

 いつものおちゃらけたやりとりからも二人の友情はわかるけど、それ以上に深い、一種のテレパシーの様なものが感じられた。

「あなたが心労で倒れるのを、何回見て来たと?では、いってきます」

 会長は苦笑すると、走り去って行った。

 いちいち塔の上にある生徒会室で集まるのは、事態がこうなって来ると非効率的なだけ、ということで今は弓道部の部室を使わせてもらっている。

 副会長が手を回しやすく、また、一階にあるお陰で色々と動きやすいからだ。

 そして今、この部屋には僕と杪さんだけが居ることになる。副会長と冰さんは、情報集めに奔走してくれている。

 僕は、逐一ここに入って来る情報を受け取るのと、一応杪さんを護衛するのが担当だ。

「もえたんは、なんだかんだで優しいし、冷静な判断も出来るんだけど、今回のはちょっと残酷だよなぁ」

 僕の処遇のことだろう。

「いえ、妥当だと思いますよ。体を動かしていれば、確かに気は紛れるかもしれませんけど、ね」

 それに、ここに居れば、常に最新情報が手に入る。

 杪さんが許可してくれれば、勝手に動いても良いことになっているし、会長は僕の気持ちを汲み取ってくれたんだと思う。

 これ以上の贅沢を言うのは、あまりに調子が良過ぎる。

「河ちゃん。一応一つ、言わせてもらっていい?」

「は、はい」

 杪さんがいちいち許可を取ってから話し始めるなんて、珍しい。

 それだけ真面目か、厳しい内容なんだろう。

「もえたんはね、案外、君に期待してるんだよ。なんていうかな、単純な武力とか、頭の良さだけじゃない、もっと別なものの可能性を信じてる。些希たんを救い出すのは、二人の期待に応えることになるんだよ」

「………………」

 思わず、沈黙してしまった。

 僕が会長に期待されている、そんな考えもしなかったことに呆気に取られてしまったのだった。

「あ、勿論あたしもだけどね。ま、生徒会入る子はどっか変で、どっかすごい子ばっかりだからね。当然って言えば当然なんだけど、うん、森君よりは期待されてるかな、事件解決面では」

 つまり、武力や頭の良さでは、劣っていると言われているのか……とちょっと悲しくなったけど、少しは自信が出て来た。

 杪さんや会長がそれぞれの得意な面から、必死に些希さんを探しているのに、ただ待つだけだった僕はどこか後ろめたく感じるのと同時に、焦燥に駆られていた。

 そんな憑き物が、一気に落ちてくれた気がする。

「杪さん、ありがとうございます……」

 適当そうに振る舞っているけど、本当にすごい人だ。

 自分も相当疲れているだろうに、僕の心にまで気を回してくれるなんて。

「へ?あたしはただ、思ったことを言っただけだけど」

 照れ隠しなのか、意外と天然なのか。どっちもありえる気がする。

 でも、本当にただ口をついて出た言葉に、他人を労わる効果がある、という方が杪さんらしいかもしれない。

「ところで河ちゃん。さっき何気なく出て来たけど、御幣、ゴヘーってわかる?」

「えーと……神職の人が持ってる、俗に言うお払い棒ですよね」

 木の棒の先に、菱形が連なった様な感じの紙がくっ付いている、一番ポピュラーなそれをイメージする。

 実際、あれにどれだけの退魔の力があるのかは知らないが、この期に及んで登場するということは、それなりの力はあるのだろう。

「そうそう。ひのきっぽい棒に、びらびらーっとした紙をくっつけたやつ。ウチでは、ご神木と、ちゃんと清めた紙で作ったのを使ってるんだけどね。これが案外効果があるんだよ。ただ、霊力自体の底上げにはならないし、探知についての性能は微妙なんだけど」

 さっきもそんなことを言っていた。

 ここでの効果がある、というのは退魔業において、なのだろう。

 あんなものより、退魔器で攻撃した方が効き目がありそうだが、やっぱり巫女さんが持つとあれだけの簡単な道具でも、大きな意味を持って来るらしい。

「巫女装束も同じでね。ただのあざといだけのコスチュームと思いきや、霊力の安定の作用があったりして、巫女にとっては大事なものなんだよ」

「巫女にとっては、ってことは、普通の人が着ても意味はないんですか?」

「んー、そうだね。神職の一族の血には、そういう力が宿っているみたいだから。で、あたしは最近の一族の中では、一番その血が濃く出てるみたいだから、巫女装束や御幣で得られる力も大きいんだよ」

 腕を組んで説明する杪さんは、得意気だ。

 退魔士の素質と、その役割を知っていた僕だけど、意外と神職については多くを知らない。

 まだまだ聞いておくべきことがあった気がするけど、会長は直ぐに戻って来た。

 何故か退魔器――黄金の剣を手に持ち、体の至るところには銀の鎖が巻き付いている。

「おー、もえたん早……って、穏やかじゃなさそうだね。別件?」

「はい。直ぐに私が祓って来ますが、二人に注意を呼び掛けようと思って」

 別件。

 些希さん失踪とは関係のない、単純な悪霊の出現なのだろう。

 こんな時に厄介だ――いや、こんな時だからこそ、なのかもしれない。

 今現在、この学校には部外者の出入りも激しい。それに、新年度早々の事件で、学校全体がばたばたしている。

 悪霊も混乱の時期を見計らって攻めて来たのだろう。

「数は?後、ブツは持って来てくれてるんだよね」

「五です。大した力も持っていないので、行きずりに祓って来ても良かったのですが、念の為に。巫女装束と御幣はこの通り。今は少し霊力が乱れているので、無事に祓ってから……」

「OKじゃあ、あたしがパパッと片付けよう。そーいえば、まだ河ちゃんには見せてなかったしね」

 一方的に会話を終わらせてしまうと、杪さんは松葉杖を突いて立ち上がった。

 それから、退魔器を顕現させる。魔本という、行動的な杪さんには不釣り合いに感じる武器だ。

「ま、今回はシンプルに。牛頭、馬頭。頼んだぜっ」

 魔本『千曳岩』が開き、空中には二つの図形が光の線によって描かれ始めた。

 初めは西洋魔術の魔方陣の様に見えたそれだが、よくよく見るとその輪郭は円ではなく、十二角形だ。

 日本で十二というと、一年十二ヶ月や黄道十二星座の他に、十二支や十二神将、十二天将など、思い当たる節が多い。

 そのどれを暗示しているのかはわからないが、杪さんが描き出した、その中に漢字やよくわからない幾何学的な模様を含んだ魔方陣は完成すると輝き出し、その中心からはそれぞれ一体ずつ、鬼が姿を現した。

 牛の頭を持った、筋骨隆々とした肉体の鬼、牛頭鬼。

 馬の頭を持った、こちらはしなやかな筋肉を持った長身の鬼、馬頭鬼。

 どちらも金棒を得物として持っており、その長さは二メートル以上もある。

「後は二人に任せておけば良い、と。いやー、自分から動かなくて良いっていいよね。ニート退魔器万歳ー」

 杪さんはもう退魔器を消してしまい、また椅子に腰かける。

 召喚された二体の鬼は部室のドアを開けることなく、それをすり抜けて外へと向かって行った。

 リアルな質感を持っていた金棒も透けて行ってしまったということは、召喚された鬼達は霊に近い存在なのだろうか。

「退魔器を消しても、召喚されたものは消えないんですね?」

「うん。こっから先は全自動でやってくれるんだよ。召喚の際に命令は既に定義してあるからね。後から別な命令を与えるなら、また退魔器を出して定義し直さないといけないんだけど、今回みたいな場合は勝手に戦ってくれて、祓った後は勝手に消えてくれる、と。どう?なんか召喚師って感じでかっけーだろう?」

 杪△っス。

 心の中で呟いておいて、僕は会長の持って来た物に目を向けた。

 御幣の方は、シンプルなもので、特に目を引くものではないけども……。

「杪さん、あの、その服って本当に巫女装束なんですか?」

 紅白の衣装ということは、これが例の巫女装束で間違い筈なのだけど、ちょっと自信がない。

 何故かと言えば、明らかに……洋服だ。

 しかも、ワンピースとか、スーツとか、そういうのじゃない。

 ドレスだ。それも普通のドレスではなく、兎に角真っ赤で、襟元や袖口、裾にまで、白いフリルがあしらわれている。

「ゴスロリ巫女、新しいだろう!」

「新し過ぎて、人類には早過ぎやしませんか!?」

 可愛いのには間違いないんだけど、何かが違う。

 そう、僕が巫女さんに求めていたものとは、何かが違う。

 どうか、どうか白小袖+緋袴の伝統のスタイルを貫いて欲しかった……!

「……杪。何故か河原さんが息をしていないので、今の内に着替えておいて下さい。もう、あちらの決着も付くみたいなので」

「はいはーい。んー、河ちゃんのツボには入らなかったかなぁ、去年の文化祭では存外に好評だったんだけど」

「文化祭用のコスプレ衣装だったんですか!?」

 新事実に、息を吹き返してツッコミを入れる。

 何かおかしいとは思っていたけど、そういう事か……。

「あー、いや。これはガチでウチに代々受け継がれている装束だよ?なんか、五代ぐらい前の人が、勝手に改造したんだって。で、去年のウチのクラスの文化祭での出し物が仮装喫茶だったから、それに着て行ったら、もうね、ちょっとしたメイド喫茶よりも儲かるっていう大繁盛を超える大繁盛をしちまって」

 くっ……男って馬鹿だ。

 退魔士の学校に通いながら、ノーマル巫女さんではなく、ゴスロリ巫女さんに惹かれるとは、なんたる痴れ者か!

 僕は違う。巫女さんの良さは、その清楚なところにあるのであって、あざといゴスロリ衣装になど……。

「よし、着替え終わり、と。どうだい?河ちゃん」

「アイルビーバーック!」

 親指を突き立てて、僕は意識が遠のいて行くのを感じた。

 服だけを見ると普通の長さのゴスロリ服だったけど、足が長くてスタイルの良い杪さんが着ると、丈が足りなくて物凄いミニになってしまう。

 上の方も同じで、体が長くて、胸もある所為で鎖骨まで露出してしまっている。

 ――簡単に言えば、とんでもなくエロい。

「さて、じゃあ引き続きやってみるかな。んー、久し振りに着ると、やっぱり調子が良くなる気がする。プラシーボ効果かもしんないけどね」

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 これは――夢だ。

 人が見る夢には、三種類あると思う。

 一つは、それが夢だとわからない夢。起きてがっかりするものだ。

 一つは、それが夢だとわかっている夢。夢なのだから、とどんな理不尽や悲劇があっても、どこか冷静に見ていられる。

 そしてもう一つ、それが夢だとわかりながらも、冷静に見ていられない夢。

 夢だとわかっているのに、その夢の内容が許せない。

 これを悪夢と言うのだと思う。

 この夢は、二つ目なのか、三つ目なのか。

 地面があるのかどうかすらわからない、おかしな世界だ。

 足元にはネズミ色の床か、雲の様なものが広がっている。

 目の前にも同じ色の空間が広がっていて、霧が張っているのか、遠くまで見通せない。

 立ち止まっていても仕方がないので、足を動かす。

 普通に足は前に出て、どんどん進むことが出来た。

 何十歩も、何百歩も前へ。果ては見えないし、誰も居ない。物もない。

 こんな夢を見るのは、初めてかもしれない。

 そもそも、僕はなんで夢を見ているんだっけ。

 さっきまで、部室に居て……ああ、そうか。興奮し過ぎて意識が飛んだのだろうか。

 そんなマンガみたいなことが起きるなんて、愉快過ぎるけど、そうとしか考えられない。

 ……邪なことが原因で見た夢なんて、悪夢だろうか。

 とりあえず、前進は続ける。

 やっぱり、いくら行っても何も見つからない。

 そうしている内に、不安が込み上げて来る。

 夢だから、覚めてしまえばそれまでなんだけど、何もない、ただっ広い空間に投げ出されたこの感じが、恐ろしくて仕方がない。

 ああ、これは「三つ目の夢」だ。

 なんて嫌な夢なのか。

 寝起きを気持ちの良いものにする為にも、歩み続ける。

 相変わらず、のっぺらぼうの様な景色しか見えて来ない。退屈な世界だ。

 昨日見た夢は、変な怪人みたいなやつと銃撃戦を繰り広げるという、なんともハッスルした夢だったのに、これは本当に酷い。

 ――体感経過時間、十分。

 夢なんて一瞬の記憶なのが普通なのに、こんなに長く夢を見るなんて。

 僕は窓付きか、うろつきにでもなったのだろうか。変な考えまで生まれて来る。

 対象的に何も生まれて来ないのは、この夢の世界。

 自分の夢なんだから、何か出て来いーと念じたら勝手に弄れそうな気もするけど、そうでもないらしい。

 仕様がないので、ただただ、前へ前へ。

 漠然と「何か」を探し続ける。

 もう、歩く目的が変わってしまっていた。

 初めは夢が覚めるまでの時間潰しだったのに、無理に強いられる様に、僕は何かを探し続ける。

 草なんてないけど、草の根を掻き分けてでも、何かを見つけたい。そんな衝動に駆られる。

 そうして歩いていると、時間の感覚も曖昧になって来る。

 こんなに長い夢は初めて。それだけはわかるけど、後はもう何もわからない。

 ――時間と空間の二つが無限にある様な夢の世界を歩き続けて、遂に僕は「何か」を見つけた。

 足元のネズミ色の中に一本、光る糸の様なものがある。

 きっと、ここが学校の廊下だったり、教室の中だったりしたら、絶対に見つからなかっただろう。

 この世界の退屈な色は、視覚を鈍らせるどころか、逆に鋭敏にさせていた。

 僕はその糸を拾い上げる。糸ではなかった。

 光源はないのに、それは独りでに輝いている。

 薄いピンク色で、光沢のある髪。

 染めているのではなく、地毛でこんな髪の色をした人を僕は一人、知っている。

 新しい手掛かりが見つかったのは良いけど、なんでよりにもよって、それが夢の中なんだ。

 これはやっぱり悪夢だ。いっそ、夢だとわからない夢なら、覚めるその瞬間まで喜んで居られたのに。

 些希さんの髪を指の先で持ちながら、僕はこんな夢を見てしまった僕自身を呪った。

 すると、ネズミ色が晴れて、黒い世界がやって来る。

 もう今度は、手足を動かすことが出来ない。

 死後硬直の様に、些希さんの髪の毛を掴みながら、固まってしまう。

 そして、夢が覚めた。

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「……っ、はぁ」

 溜め息と一緒に目覚めた僕を、会長と杪さんの二人は不思議そうな顔で見て、それから杪さんだけがにやりと笑った。

 今度は僕の方が不思議がりながら、時計を確認すると、もう一時間が経っていた。外は夕暮れ。

 夢の中で経過した時間と、現実で意識を失っていた時間がイコールで結ばれている、そんな気がする。

「陰陽師の見る夢には意味がある。退魔士も今風の陰陽師みたいなもんだし、そうなのかな」

 御幣を弄びながら、杪さんは僕にそんな事を言った。

 その様子からすると、霊力の探知は一区切り付いたらしい。

「どういう事、ですか」

「いや、タイミングがタイミングだからね。もしかして、些希たんの夢だったんじゃない?」

 思わず、冷や汗が出た。

 杪さんには、心の内すら見透かされている様な威圧感の様なものがあるけど、それは本当だったのか、と恐ろしくなってしまう。

 顔色の変化で、図星だとわかったのか、杪さんはけらけらと笑う。

「うんうん。今日も名探偵ぶりを遺憾なく発揮してるねぇ。河ちゃん、あんたが目覚めると同時に、見つかったよ」

 永遠が?

 なんて言っている余裕もない。

「些希さんが、ですか」

「そう。灯台下暗し……というか、些希たんの見つけにくさが異常って言うか。本当に校内に居るみたいだよ。しかし、こうなると巫女装束さまさま。エロいだけじゃなかったかー」

「自覚はあったんですね」

 冷静にツッコミを入れる会長だけど、僕はもうほとんど浮足立っていた。

 一昨日、会長に暴走をたしなめられただけに、勝手なことは出来ないけど、もう気持ちは走り出してしまっている。

「さて、じゃあそこの熱血漢ともえたん、今から道案内を用意するから、早々に決着と行こう。冰たんと森君にはあたしから連絡入れておくから」

 杪さんは退魔器を出すと、直ぐに何かを召喚した。

 それは鬼ではなく、もっと形の定まっていない、人魂の様なものだ。

「水先案内人、ってことで舟幽霊なんだけど、水がないからただの人魂だね。ちゃんと行き先は定義してあるから、付いて行くだけで良いよ。ただ、その子自体に戦闘能力はほぼ皆無だから、ちゃんと退魔器は出して行ってね」

 言われる前から、僕は銃を握っていた。会長も僕が気絶する前に出していた退魔器を消してはいない。

「――河原さん。行きましょう。活躍、期待していますよ」

「はいっ!」

 部室のドアを透過して行った舟幽霊を追って、僕達は駆け出した。

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長編 ファンタジー 学校 聖六重奏 

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