鋼の錬金術師×テイルズオブザワールド 第五十話
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〜バンエルティア号〜

 

闇の精霊に出会う

 

その依頼を聞いたセルシウスが、不穏な表情になって俯いた。

 

『………………』

 

精霊の間でも、闇の精霊と言うのは評判が悪いのだろうか。

 

こればかりは、セルシウスも少し心配の表情をしている。

 

『何だ?そんなにやべぇ野郎なのか?シャドウって奴は』

 

『いや、私もこの目で見た事は無い』

 

その頼りない言葉に、エドは失望の溜息を吐いた。

 

そして、自分の準備を始めた

 

『だが、レムは闇の精霊を見て触れてはならないタブーと言っていた。』

 

『そのレムがとんでもねぇ野郎だったんだ。案外話が分かる奴かもしれねぇぜ』

 

エドがそう突き放すように言うと、セルシウスはそのまま黙り込んでしまった。

 

まだ、レムの思考についてはショックが残っているのだろう。光の精霊の話をすれば、黙り込んでしまう

 

『闇の精霊は完全なる闇を望む。そのような者が果たして話が通じるかどうか。世界の崩壊を望んでいるのかもしれんぞ』

 

セルシウスは、まだ闇の精霊について言葉を連ねる。

 

その返事をしたのは、エドに同行する一人のレイヴンだった

 

『セルシウスちゃん。アンタ、そうしつこく言っちゃうと、まだ光の精霊から乳離れしてないように聞こえるわよ?』

 

その下品な例え方に、セルシウスは不愉快になった。

 

『なっ…!』

 

『おっさん、たまには良い事言うじゃねえか。そうだぜセルシウス。今のお前はレムの考えには少なくとも反対なんだろ?』

 

エドがそう答えると、セルシウスは何も言葉が返せず、黙り込んでしまった

 

『………私は、ただ自分の考えを…』

 

『精霊も屁理屈を言うのね』

 

後ろに居たリザが、セルシウスに言葉を送った。

 

送られた言葉が不愉快だったのか、鋭い目つきでセルシウスはリザを睨みつけた

 

その目つきは、どこか嫌悪感が感じられたが、それが何かはエド達は理解できなかった。

 

『何も貶してるわけじゃないわ。精霊にだって人間味があったって良いじゃない。少なくとも精霊には遠ざかるでしょうけど。』

 

『………随分偉そうな口を聞くじゃないの。側近のくせに』

 

どうやら、セルシウスはリザを敵視しているようだ。

 

理由は分からなかったが、エド達はそれを理解した。

 

さらに後ろの壁にもたれながら、マスタングがそこに居た。

 

『側近ではない。私の忠実な部下だ。』

 

マスタングがそう言うと、セルシウスはまた機嫌が悪そうな表情になった。

 

『ところでリザ、本当に私の同行無しで行うのか?随分冷たい女性になったものだ。』

 

『大佐は、この船でやるべき仕事が残っています。まずそちらから片付けてください。』

 

リザはマスタングに向かってそう冷たく返事をした。

 

すると、笑顔でわざとらしく悲しい仕草をしながらマスタングは返答した。

 

『ははは。本当に冷たい。』

 

リザとマスタングのそのやり取りが続き、セルシウスはみるみる不愉快な表情になっていた。

 

そして、セルシウスはマスタングの袖を引っ張って甲板まで引きずって行った。

 

『稽古の時間だ。じっくり成長した私の錬金術に付き合ってもらおうか。』

 

ずりずりと床とマスタングの踵が摩擦で擦れる音がする。

 

引きずられながら、マスタングは腕を組みながら笑った。

 

『はっはっは。こちらの方は厳しい』

 

マスタングを引きずったセルシウスは、そのまま甲板の扉まで引きずり、

 

扉が閉められた。

 

『……………』

 

結局、不十分に情報を得たまま、エド達は出発する事になった。

 

『行きましょう。エドワード君』

 

リザは、特に気にも止めずそのまま入り口まで歩んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ゼルギアス洞窟 入り口〜

 

このクエストにエドと同行するメンバーは、

 

エドワード、レイヴン、リザ、しいな の四人となった。

 

入り口の前には、大きな看板と、黄色のロープが張り巡らされ、誰一人入れないようになっていた。

 

ロープを切れば簡単に入れるので、それ程でも難しい物ではなかったが

 

『……闇の精霊の面談かぁ……なんだか気が進まないねぇ』

 

しいなは、闇の精霊に出会いたくないかのような表情になっていた。

 

この世界ではそれ程までも闇の精霊はイメージが悪いのだろうか。

 

だが、”闇”という言葉には誰しも良いイメージは持たないだろう。

 

”得たいの知れない何か”と考えるのが妥当だとも思われる。

 

『ちょっとちょっと、この暗い洞窟の中でこのカンテラ一つで入っていくって言うの?オッサン不安でちびっちゃうかもしれないわよ?』

 

『しょうがねぇだろ。闇の精霊に会うんだから。最低限の光で行動する必要があるんだよ』

 

エドがそう言うと、入り口付近でカンテラに火をつけた。

 

ただそれだけで、暗闇の中では優しい光が少しだけ照らした。

 

『おおう。不気味』

 

そう言いながらも、レイヴンやしいなも光まで歩み寄った。

 

その場所でないと、かなり不安な空間に放り込まれる。

 

まるで蛾になったかのようだった。

 

 

 

 

 

〜ゼルギアス洞窟〜

 

しばらく一本道が続き、暗闇の中、カンテラ一つで進んでいくと

 

精神的にも辛い物があり、そのまま誰も一言も言えずに居た。

 

『………あのさ、誰かちょっと喋ろうよ』

 

しいなは、ついに耐え切れずに言葉に出してしまった。

 

『そうねぇ……オッサンもなんだか不安になってきたから……誰か面白い話しない?』

 

『レイヴンさん。しいなさん。ここは精霊が住み着く場所です。そのような場所でそんな覚悟を持たないで下さい』

 

リザが冷たく言い放つと、また冷たい空気がパーティの中で響いた

 

『ちょっとリザっち意地悪じゃない?こんな暗い所で長い時間歩いてたら、そりゃ明るい話くらいしたいでしょうよ』

 

『私をあだ名で呼ぶことを止めて下さい。そして、そのような覚悟を持ったまま、いざ出会うと大変な目に会います。自乗してください。』

 

また、そう言い放つとパーティの中で沈黙が響いた。

 

そしてついに、しいながエドに耳打ちをして話をした

 

『………ねぇ、この人、アンタの世界でどういう人間なのさ』

 

『ん?中尉は中尉だ。結構頼りになってくれるぜ』

 

エドのその答えに、しいなは苦い表情になる。

 

『…………頼りになるってもねぇ……』

 

渋々した表情のまま、耳打ちを終了し再び歩み始めると、

 

『うああああああああああああああああああああ!!!』

 

『ぎゃぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!!』

 

レイヴンが急に叫びだし、エドとしいなは驚きのあまりに更に叫びだし、抱き合ってしまった。

 

すると、レイヴンは笑い出した。

 

『はははは。こんな緊迫感まるだしの状況になれば、こーんな事態になった時、不安定じゃない?』

 

レイヴンの笑い声を聞いた瞬間、エドとしいなは離れ、怒りの形相でレイヴンを睨みつけた

 

『ジジィィィィ!!てんめぇぇぇえええええ!!!!』

 

『レイヴン!!殴るよ!!!』

 

『ウゴッ!!ぶっ!!』

 

エドがレイヴンを足払いした瞬間、レイヴンはバランスを崩して倒れこみ

 

その隙にしいなはレイヴンの腹に踵落としを食らわした。

 

『ひ……酷いじゃない…エドちゃん……しいなちゃん……。』

 

『『自業自得だ!!!』』

 

エドとしいながそう叫んだ瞬間、リザはそのままエドの持っているカンテラを持って進みだした

 

『そこでふざけ合うのなら、私は先に行くわよ?』

 

そのまま歩み始めるリザを見て、エド達は立ち止まってしまった。

 

先ほどの、リザの行動を見たのだが、レイヴンが脅かしてもピクリとも動かなかった。

 

それをエドは見てなかったが、レイヴンとしいなは、ちゃんと見ていた。

 

その光景を見たしいなは、再びエドに耳打ちをした

 

『……なぁ、本当にあいつ何者なんだい?どこかの武士かなんかじゃないのかい?』

 

『俺の世界には、武士なんてもんは存在しない。』

 

そう返答されると、しいなは頭を掻きながら歩みだした。

 

『……どうも、あのようなタイプは苦手だねぇ。』

 

そう言って、エドとしいなはカンテラの光目指して走り出した。

 

『ま……待ってよ三人とも……冷たいじゃないのよぉ。』

 

その後ろで、レイヴンがふらふらになりながらも歩みだした。

 

 

 

 

 

〜ゼルギアス洞窟 黒い滝〜

 

闇で広がる洞窟の中で流れる水は、どう見ても黒色に見えていた。

 

だが、手ですくい出すと透明色になっている為、それは目の錯覚だという事に気付く。

 

しいながそれをすくい、口に運んだ。

 

『うん。この水は飲める水だ』

 

そう、エド達に報告をすると、エド達は滝の音の方にカンテラを向けた

 

『それにしても……洞窟の中に滝とはねぇ。随分威厳のある洞窟なんだな。』

 

そう言って、湖の近くまでカンテラを持って行き、水の溜まり場まで光を点した。

 

湖付近まで近づき、立ち止まって光の見える範囲まで湖を見渡すと、ある事に気付いた

 

『おい……あそこ何か浮かんで無えか?』

 

『え?』

 

エドがそう言った後、しいながエドの指を指した方を見た。

 

そこには、大量の奇妙な形をした魚が居た。

 

『珍しい形の淡水魚ね。この洞窟の特有条件の影響かしら』

 

闇の精霊に近づいているはずなのに、その近い場所で生物が平和に生きている。

 

元気に自由に動き回る魚を見て、エドは思った。

 

『……やっぱ、そんなに悪い奴じゃないんじゃねえのか?闇の精霊って奴はよぉ。』

 

藻や微生物を食べて生きている魚は、どれも巨大で綺麗な模様をしていた。

 

その光景は、錦鯉が夜の庭で泳いでいるようにも思えた。

 

だが、湖の底でどこか気になる物が沈んでいた

 

『おい、あれは何だ?』

 

エドがカンテラで水の底を照らすと、そこには多くの藻に覆われた”何か”があった。

 

レイヴンは、分からずに首を傾げるだけだったが、

 

リザは何も思わぬような顔で答えた。

 

『あれは……人骨ね』

 

『へぇ……ん?え?人骨?』

 

エドは、聞き返すように返事をした。

 

『ええ。それも一人や二人じゃないわね。何があったかは、藻に侵食されていて把握できないけれども、確実にこの滝で何人かが死んでいるわ』

 

リザが言い終えると、その場でまた沈黙が流れた。

 

と同時に、しいなの表情が青ざめていった。

 

『わ……私、この水飲んじゃったよ……』

 

その言葉に、ただエド達は返事を返すことが出来なかった

 

『……この場所で、何かがあったのは間違いないな』

 

『闇の精霊が、この世界のイメージ通りの姿かも知れないという可能性も出てきたわね。』

 

そう言葉を連ねると、レイヴンが不安そうな表情になる

 

『ちょ……ちょっとオッサン達、大変な所に来ちゃったんじゃないの?』

 

『…………』

 

エドも、これに関してはしばし考えたが、ここで立ち止まっているわけにも行かず、

 

『不安も百の承知だろうが。ほらとっとと進むぞ』

 

そう言って、先に進むしかなかった。

 

『えぇ〜?おじさん達、殺されちゃうかもしれないのよ?』

 

『自分の身くらい、自分で守れ』

 

依頼は依頼。今までも死にそうになった時はあった。

 

もうこのくらいではエドは動じないようになっていた。

 

だが、さすがに先ほどの骨は気にはなる。

 

やはり、闇の精霊と言うのも伊達では無いのだろうか。エドの中の不安が膨れ上がった。

 

『ねぁ……どうしよう。私この水……飲んじゃったんだけど……』

 

不安な表情でしいなはエドとリザに問いかけた。

 

『知らねぇよ。確かめて飲まなかった奴が悪い』

 

『不注意が仇となるのは当然の事よ。忍者としての自覚はちゃんと持っておいた方が良いわ。』

 

エドとリザに冷たく言われて、しいなは不機嫌な表情になった。

 

『なんだい!ちょっとは優しい言葉をかけてやっても良いじゃないの!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ゼルギアス洞窟 精霊の間〜

 

今まで、何の魔物とも遭遇せず

 

敵と呼べる者とも遭遇せぬまま、エド達は広い広場に辿り着いた。

 

『………なんかさ、呆気なかったねぇ。』

 

しいなが、どこか物足りないような表情をしていた。

 

その意見には、エドも考えていた。

 

闇の精霊が居るとしても、どこでも妙な化け物や人を襲う化け物が居てもおかしくはないだろう。

 

だが、現実にこの洞窟には敵よ呼べる者が居ないのだ。

 

天空に属するヴェラトローパはともかく、ここは地上に存在する禁断の地とも呼ぶ場所なのだ。

 

なのに、ここまで無害な所であって良いのだろうか。

 

いや、逆にどうしてここが危険地域に指定されているのだろうか。

 

闇の精霊を恐れているから、そう考えても良いはずなのだが、

 

どこか、妙な感覚だ

 

『ここまで魔物が居ないとなるとさぁ……やっぱ闇の精霊というのはとんでもない存在なんじゃないの?』

 

『それは、会ってみねえと分かんねぇだろ』

 

そう言いながら、エドはカンテラを持ちながら広場の真ん中まで歩き続ける。

 

『ちょっと?そんな無警戒で…』

 

しいなが心配して声を出したが、エドは無視して歩き続けた。

 

真ん中まで辿り着くと、その場で立ち止まり、カンテラを置いた。

 

光が均等に、部屋に明い光を送った。

 

『氷の精霊を呼びだす時、大佐は喧嘩を売って呼び出した。火の精霊を呼び出すとき、師匠も喧嘩を売って呼び出した』

 

エドが、不意に言葉を連ねた。

 

その言葉を聴いたレイヴンとしいなが、嫌な予感がよぎる

 

『ちょ……ちょっとエドっち?一体何する気?』

 

レイヴンがそう言った瞬間、エドは手を叩いた。

 

『タダではあいつらは出てこねぇんだ。気ぃ引き締めろてめぇら!!』

 

そう言って、合わせた手をカンテラに合わせ、練成反応を起こした。

 

カンテラの火は空気を取り組み、蛇のようにカンテラから抜け出し、動き回り大きくなった。

 

『熱ちち!』

 

コントロールが効かないのか、仲間にかすったりもした。

 

そして、火はいつの間にか部屋全体に光を灯していた。

 

闇の精霊が存在する精霊の間が、いつも間にか光しか存在していないかのように明るくなっていった。

 

もう誰も、この場に闇の精霊が居るとは思わないだろう。

 

『おら!!出てきやがれ闇の精霊!!もうすぐ人間が世界樹が殺されようとしてやがる!分かっている事、洗いざらい吐きやがれってんだ!!』

 

エドが、部屋の真ん中で闇の精霊を挑発するように叫んだ。

 

ここまでしなければ、闇の精霊は動かないと思ったのだろう。

 

『ちょっとエド!!アンタこれやりすぎじゃないのかい!?』

 

しいながそう叫んだ後、エドは返すようにまた叫んだ

 

『知るか!これでもまだ甘えくらいだ!』

 

エドの返事を聞き終える前に、火の蛇はしいなの前を横切り、しいなはその場で転んでしまった。

 

火の光と闇の間の明度の差が激しく、その光景は見られなかった為、エドはそのまま前を向いていた。

 

そして、次第に火の蛇の火の量が薄まり、小さくなっていった。

 

『………!』

 

徐々に、体力が徐々に確実に減っていくように、火の蛇が消えていった。

 

飛び回りながら、空気に吸収されていくように小さくなり、ぐるぐる回っていった。

 

すると、だんだんと真ん中の方へと向かうように、円周がだんだんと小さくなり、幅も小さくなる。

 

そして火の蛇が一点の方に辿り着いた瞬間、ただの火の玉となった。

 

エドは練成でここまでの事はしていない、つまりだ、

 

『………………』

 

この間に、闇の精霊が姿を現したのだろう。

 

火の玉が部屋の真ん中に出来た瞬間、全員がエドの居る所まで歩き出した。

 

『エドワード君。これは錬金術じゃ無いみたいね。』

 

リザが、エドに答えとも取れる質問をした。

 

『ああ。錬金術ではここまでの事をしない。いやする必要が無い。』

 

エドがそう言った瞬間、次にしいなが言葉を出した

 

『ねぇ!今ここに”シャドウ”って奴が居るのかい!?じゃぁさ、もったいぶらずに姿を現しておくれよ!』

 

しいながそう叫んだ。その後、しばらく沈黙が続いた。

 

何にも返事が無い。そんな時間がしばらく流れた。

 

『…………』

 

ここに、この空間に”何か”が居る事は確実なのだが、

 

それが、闇の精霊で無い可能性だってある。

 

だんだん、怪しい空気に包まれる中、火の玉に異変が起こった。

 

『何?何?』

 

エド達が慌てる中、火の玉の動きはだんだんと大きくなる。

 

そして、火の玉は空気を吸収しているかのようにだんだんと大きくなった。

 

一回り大きくなると、火の玉は動くのを止めた。

 

『……………』

 

またしばらくと沈黙が続いた。

 

今度は、違う見解の沈黙だった。

 

後ろに、気配がするのだ。

 

『ここに生物が来るのは久しいな』

 

低い男性の声

 

というよりは、何か機械のような物を使って声を低くしているようにも聞こえた。

 

振り向くと、黒い鎧、黒い仮面を被った青年の姿があった。

 

端から見れば、鎧が飾ってあるようにしか見えないだろう。

 

だが、先ほどまでそこに存在しなかった物を見て、エドは確信した

 

『え……、お前が……闇の精霊……シャドウ?』

 

『いかにも』

 

また、意思で低くしているような声が部屋に響き渡る。

 

『あれ?もっとこう……大きくて怖いものかと思ったけど……』

 

しいなも、その姿に意外な表情をした。

 

『精霊の姿というのは、必ずしも定まった物ではない。人間が見てこのような姿に見えるだけだ。人種外の生物からは、別の姿に映っている』

 

だからと言って、魚が見ても恐らく恐ろしい姿として映っていないだろう。

 

鳥が見ても、肩に乗っても平気だと認識して寄ってくる可能性だってある。

 

だが、例え恐ろしい姿とは違っていても、精霊は精霊だ。

 

それも、光の精霊と対になる程の者だ。必ずしも何か知っているだろう。

 

『まぁまぁ、姿かたちは別に良いじゃないの。それに……』

 

レイヴンが、少し真面目な表情になってエドに問いかけた

 

『俺達は、結構大事な事を聞きに来たんじゃない』

 

その言葉を耳にして、エドは頷いた。

 

その後、エドの口が開いた。

 

『まぁ、それもそうだ。』

 

シャドウは、その言葉を聴いて再び問いかける。

 

『ほう?一体我にどのような事を望む?』

 

『精霊様にはどうって事無い話題かもしれねえが、近くに起こる”全ての問題が掻き消される事”の事だ』

 

エドがそう言うと、聞き覚えがあるようにシャドウは対応した

 

『…………。まだ行われていたのか』

 

シャドウのその言葉に、エドは疑問が生まれた。

 

その答えは、まるで知らなかったかのような言葉であったからだ。

 

『え?その言葉って…ど……どういう事だい?』

 

『悪いが、その”全ての問題が掻き消される事”というのは、私も詳しくは知らないな。』

 

シャドウのその答えに、エドは少し不満を持った。

 

『はぁ!?どういう事だよ!闇の精霊だってのにこの世の全て知らねえってのか!?』

 

『その通りだ』

 

そのあっさりした答えに、エドは黙り込んでしまった。

 

呆れ果てたのか、溜息を大きく吐きながら手を顔にやった。

 

『………なんだよ。光の精霊と対になってる奴じゃなかったのかよ………』

 

『対になっている?どういう事だ?』

 

やはり、この闇の精霊はどこかおかしい。

 

まるで、世の中の何もかもが知らないかのようだ。

 

『……もしかして、この闇の精霊……。』

 

リザが、思った事を素直に口に出した。

 

『この洞窟以外の世界を知らないんじゃないかしら?』

 

『え?』

 

リザのその答えには、全員が疑問を感じさせた。

 

『おい……それって嘘だよな?』

 

エドが念のためシャドウに確認を取ると、シャドウは頷いた。

 

『この世の世界は、この洞窟に訪れる前の世界しか知らぬ。』

 

シャドウがそう言葉を口に出した瞬間、また空間に沈黙が流れ出した。

 

そして沈黙を破るように、エドは言葉の一つ一つを叫びだした。

 

『使えねェェぇェぇええええええええええええええええ!!!!』

 

そう叫んだ瞬間、しいなが止める様にエドを叱った。

 

『おい!仮にも闇の精霊にそんな事言うんじゃないよ!』

 

『使えねえ!!使えねえよ闇の精霊!!ここまで来て骨折り損じゃねえか!!!』

 

エドがそう駄々こねている時、レイヴンがエドを掌を見せながら宥めていた。

 

『まぁまぁ、だけどそこまで希望の光が無いわけじゃぁないじゃない。』

 

レイヴンがそう言って、もう一つの提案をエドに提出した

 

『逆に気になると思わない?闇の精霊がこの洞窟に来る前の世界とか、どうしてこの洞窟に訪れたのか?とか』

 

レイヴンの答えを聞いて、エドはピタリと止まった。

 

確かに、それは聞く価値はあるだろうと考えた。

 

だが、その的確な意見をしたレイヴンをエドは睨みつけた

 

『……なーんかお前…今日は、いつもと違う頭の作りだよなぁー…?』

 

『え?何それ褒めてんの?』

 

『ほーんと…。いつもはセクハラしかしてこないのにねぇ……』

 

エドとしいなの言葉に、レイヴンが少しだけうろたえた表情をしていた。

 

『ちょ……ちょっと?いつの間にかエドっちとしいなちゃん、仲良くなってない?……悪い意味で』

 

エドは溜息を吐きながら、再びシャドウの方に向きなおした。

 

そして、改めて精霊に向かって質問を問いかけた。

 

『……さーて、んじゃ答えて貰いましょうか。この洞窟に来る前の世界。一体どんな世界だったんだ?』

 

そして、再びシャドウの仮面の目を見て言葉を出した。

 

『そして、どうしてこの洞窟に閉じこもってたんだ?』

 

『何も、閉じこもりたくて閉じこもっていたわけではない。』

 

シャドウはそう答えて、エドの方を睨みつけた。

 

『……この洞窟に来る前、私……いや私達は太陽の精霊だった。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜10万年前〜

 

太陽の精霊

 

シャドウとレムの二人は、元はそう呼ばれていた。

 

精霊という割りには、まだ幼い姿をしていたが。

 

シャドウは、太陽の”影”という存在だった。

 

光が発生するときに必ず現れる、”影”という存在。

 

だが、そんな事は誰も気にしていない。

 

シャドウも、レムと同じく”太陽の精霊”として称えられていた。

 

称えられていた。というよりは”可愛がられていた”のが正しいのかもしれない。

 

『シャドウ!』

 

レムは感情豊かな少女だったにも関わらず、シャドウは無愛想な少年だった。

 

感情が無いかのように、シャドウはただ頷いたり、首を横に振ったりするだけだった。

 

『もうすぐカーニバルが始まるよ。早く行こうよ。』

 

レムでさえ、シャドウの言葉を聴いたことが無い。

 

だからか、一番近くに居るのに何も知らない気になっていた。

 

それと同時に、どこか好奇心があった。

 

 

 

 

 

『おう!!レムとシャドウじゃねえか!お前らもカーニバルに来たのか?』

 

一人の少年剣士が、笑顔で二人の元へと駆け寄った。

 

それと同時に、レムも無邪気な笑顔でその剣士が笑顔を返した。

 

シャドウは、無言で剣士を見つめていた。

 

『おいおい、もう少し素直に笑ったらどうなんだシャドウ。』

 

『クリス!!また精霊様に為口を言って!!』

 

後ろから、茶髪の少女が怒った口調で剣士の元へと歩み寄った。

 

そして剣士の耳をつまみ、引っ張った。

 

『痛てててて!!そんなに引っ張るなよ!』

 

『この二人は仮にも精霊様なんだよ!?もう少し敬意を表す姿勢になる事は出来ないの!?』

 

茶髪の少女がそう叫ぶと、レムが笑顔で対応をした。

 

『う……ううん。良いんだよアーヴィング。私たち、常に敬語で話されてるんだから。一人くらい為口で話してくれたほうが、助かるよ。』

 

レムがそう言うと、フェイルは少しだけ不機嫌な表情でレムの顔を見た。

 

『でも、クリスのこの無礼な態度。敬意の姿勢となる者が無いと思われますが……』

 

その丁寧口調に、レムは少し戸惑う表情をして、俯きながら答えた。

 

『私は……敬意が欲しいんじゃないの。』

 

すると、後ろに居た男性がまた言葉を発した。

 

『では、どのような物をお望みで?』

 

そう聴かれた瞬間、少しだけ気恥ずかしそうにボソリと答えた

 

『………友達』

 

その言葉が発せられた瞬間、しばらく沈黙が流れた。

 

そして、一斉に全員が笑い出した。

 

『なっ何よぉ』

 

全員の代弁をするように、クリスが言葉を発した。

 

『はっはっはっはっは!!これは傑作だ!てっきり俺達はもう友達なのかと思ってたぜ!』

 

『………え?』

 

『安心しろ!皆、精霊様精霊様とか言ってるけど、全員ただ敬ってるだけじゃないぜ。ただ定着してるだけなんだ。』

 

クリスがそう言って、フェイルがまた怒り出す口調になってクリスを問い詰めた。

 

『クリス!!またそんな失礼な事を!!次に私たちを巻き込んで!』

 

『いや?クリスの言うとおりだぜ?』

 

カーニバルの準備をしていた大柄な男性が、陽気な態度で答えた。

 

『お父さん!』

 

『俺達全員、太陽の精霊様達をただ祀る為の存在だ何て思ってねえさ。だって、ここに実態として居るんだ。それに良く俺達の前に現れる。親近感湧かない方がおかしいだろう。』

 

フェイラの父がそう言うと、フェイラは更に不機嫌な表情になりそっぽ向いた。

 

『これだから男は……もう知らない!』

 

『あっ!待てよフェイラ!』

 

親子の追いかけっこが始まった。

 

その光景を見て、クリスは笑い出した。

 

『全く、あいつら親子はいつもあんな感じだよなぁ。』

 

そう言って、クリスはシャドウの方に向きなおした。

 

『お前も楽しんでるか?このカーニバル、かなりおめでたい日の第一日として称えられた祭りなんだぜ』

 

そう言って、クリスは矢倉の頂上を指差した。

 

矢倉の中には、一人の少年が椅子に腰掛けていた。

 

『世界樹から人間が生まれたんだ。俺達の先祖から言われてきた、”ディセンダー”という存在らしい。先祖の言い伝えによると、”ディセンダー”は世界を救うヒーローなんだとさ。そいつが俺達の村に来た事で、名誉ある事だって大人達は、はしゃいでるんだ。』

 

そう言うと、クリスは笑顔のままシャドウの頭に手を置いた。

 

『お前らも、”ディセンダー”を見るのは初めてだろ。同じ高貴なる存在として、仲良くしろよ』

 

クリスは、次にディセンダーの方に大声で叫んだ。

 

『おーい!!ディセンダー!!』

 

クリスの言葉で、矢倉に居るディセンダーはこちらに振り向いた。

 

『俺の名はクリス!クリス・ブルーネルってんだ!んでこの黒い奴が太陽の精霊のシャドウ!茶髪の女の子がレムってんだ!よろしくなー!!』

 

言い終える前に、ディセンダーは前に向きなおした。

 

それを見て、クリスは少しだけ気分を悪くした。

 

『……あいつとは、余り仲良くなれそうに無えな。』

 

だが、シャドウとレムを見る時には笑顔に戻り、再び言葉を送った。

 

『でも、お前らはあいつと仲良くしてくれよ!そうそう。あいつの名前は”エドガー・エルリック”って言うんだってさ!本人は”エドガー”って呼んで欲しいらしいけどな』

 

クリスがそう言うと、レムは首を傾げた。

 

『……エルリック?』

 

変な名前だ。そう感じたがレムは何も言わなかった。

 

そして、金具と金具がぶつかる音が響いた。

 

『おっ!始まるぞ!』

 

クリスが空に指を指した瞬間、火が蛇のように空へと向かって伸びた。

 

すると、火は花が開くかのようにいくつもの火花になり、規則的に散らばった。

 

それは、今で言う”花火”だった。

 

『うわぁ………』

 

レムは、そのいくつもの色の火で作られる花火を見て、目を輝かせていた。

 

シャドウは、まるで死んでいるかのようにじぃっと空を見つめていた。

 

『うっひょーう……やっぱ綺麗だなー。』

 

クリスは、花火を鑑賞するようにじっくりと見つめていた。

 

『カーニバルは、やっぱ花火が無かったら祭りでもなんでもないよな。』

 

そう言った後、クリスはシャドウとレムの方を見つめた。

 

『なぁ、お前らもそう思わねえか?』

 

クリスは、その言葉を言いかけたが、

 

レムがシャドウの左手の上に右手を重ねていたのを見て、言葉がつっかえた。

 

結局言えずに、そのまま前に向いた。

 

そして、どこか楽しそうにクスクスと笑った。

 

『…………また来年、この花火が見れると良いな。』

 

まるで、どこか懐かしいものを見るかのようにクリスはそう言った。

 

するとレムはクリスの方を向いて笑顔で返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が美しい花を見たのは、これが最後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

村が血まみれになっていた。

 

それは、カーニバルが終わって三日が経った時だった。

 

半分になった人も居れば、

 

頭部しかない人も居る。

 

皮膚を剥がされた奴も居た。

 

肉片しか存在しなくなった奴も居れば、

 

眼球がそっくりそのままくりぬかれた者も居る。

 

レムは、それを見てただ震えているだけだった。

 

震えながら、シャドウの腕を掴んでいた。

 

その姿は、まるで無力な子供のようだった。

 

『ねぇ……どういう事……?』

 

レムが問いかける。

 

だが、シャドウは何も答えられなかった。

 

感情が、表に出ない。

 

それだけの事が、とてつもなく辛くなるのを感じた。

 

向こう側に、悲鳴と内臓が一斉に散らばった。

 

内臓と血が飛ばなくなった瞬間、血の上を歩く足音が聞こえた。

 

こちらに近づいてきている。

 

だんだんと、近づいてきてる

 

もうすぐで二人の目の前に現れるというときに、後ろから襟首を掴まれた

 

『!?』

 

『こっちだ!!』

 

クリスが、レムとシャドウの襟首を掴み、建物の影へと誘った。

 

『走れ!』

 

そして間髪を入れずに、”あれ”から逃げ出した。

 

レムは何も言わない。クリスの手を握りながら、ただ走り続けた。

 

シャドウは、表情に少しだけ恐怖が表れているが、ほぼ無表情に近い表情で走り続けていた。

 

 

 

 

 

 

『お父さん!!お父さん!!!』

 

シェイラが、血まみれの父親にしがみ付いて泣いている。

 

だが、もう既に父親は事切れていた。

 

虚ろな目で空を見るように、眼球は働かず、瞼も動きを停止しているようだった。

 

シェイラは震えながら父親の服を掴んでいる。

 

たくましかった、とても強いはずだった父親の身体は、

 

今は脆い氷のように冷たい。

 

腹に風穴が開いて、今にも上半身と下半身に分かれそうだった。

 

大粒の涙を流しながら、父親の顔を眺めていた。

 

その表情は、まるで何かを心配するように顔を歪ませる表情だった。

 

きっと、私を探していたんだ。

 

『ごめんね………』

 

そして、だんだん声が枯れて言った。でも、それでも泣いた。

 

『ごめんね……ごめんね………』

 

すると、後ろから聞き覚えのある声が響いた。

 

『シェイラ!!』

 

クリスが、叫ぶように彼女の名前を呼んだのだ。

 

彼女が振り向くと、彼女の下に倒れている人間の顔が見れた。

 

『……!!』

 

その人間を見て、一瞬で巨大な悲しみがクリスを襲ったが

 

ただ震え、拳を強く握り締めることしか出来なかった。

 

『うわぁあぁぁああああああ!!!!』

 

『!?』

 

更に後ろから、子供の叫び声が聞こえた。

 

建物の奥から、一人の幼い男の子が泣き叫びながら喉に流れる血を抑え付けていた。

 

どうやら、器官の管部分からは避けたようだ。声が出ている。

 

『お母さん!!お母さぁぁぁん!!!!!』

 

子供の声が少しかすれていた。

 

喉をよく見ると、釘のような物が打ち込まれていた。

 

その釘に先端部分に、光が規則的に点滅していた。

 

その点滅は徐々に早くなり、早くなればなる程、少年は慌てだした。

 

『うわぁぁあああ!!ああああああ!!!ああああああああああああああ!!!お母さ』

 

瞬間、光が点滅せず発光して止まった瞬間、子供の首が弾け飛んだ。

 

『……………』

 

その唐突さに、そこに居る4人はただ眺めることしか出来なかった。

 

少年の脳みそと砕けた骨が、辺りに散らばり

 

頭部を失った少年は、しばらく彷徨い続け

 

電池が切れたように倒れこんだ。

 

『……………!!!』

 

その光景を見たシェイラは、またガタガタと震えだした。

 

『あ……あああ……あああああ』

 

発狂するまで時間はかからないだろう。

 

心配したクリスはシェイラの手を握った

 

『シェイラ!!しっかりしろ!!シェイラ!!!』

 

シェイラの瞳孔は定まっておらず、ぐるぐると眼球の中を回り続けていた。

 

ほとんど正気を失っている。この状態では危険だ。

 

瞬間、足音が聞こえた。

 

それも、一人ではない。複数の足音だ。

 

建物の置くから、一人の少女が現れた。

 

そいつは、血まみれの生首を持っていた。

 

『!!!』

 

そいつは、エドガーが着ていた服と同じ物を着ていた。

 

さらに奥から、もう一人見覚えのある少年が現れた。

 

その少年をみたクリスは、怒りの形相で睨みつけた。

 

『………エド……エドガー・エルリック!!!!』

 

二人、ディセンダーが現れた。

 

エドガーの持っている剣には、血がついている。

 

もう一人の少女が着けている拳の手袋にも、大量の血がついていた。

 

そして二人は、戦闘体性を取った。

 

『逃げろ!!!』

 

クリスがそう言った。

 

そう言った瞬間、レムはシャドウの手を握って走りだした。

 

レムの表情は、恐怖で強張っていた。

 

シェイラは逃げなかった。

 

逃げずに、そのまま気絶知ってしまったのだ。

 

『…………』

 

それを見たクリスは、屈みこみ、シェイラを見下ろし、優しい口調で言葉を送り、頭を撫でた。

 

『……絶対に、絶対に守ってやる』

 

また、微笑をかけた。

 

そして表情を変え、ディセンダーの方を睨みつけるように見た。

 

剣を抜き、クリスも戦闘体制を取った。

 

『掛かって来いよディセンダー……。お前が救世主って言うのなら……お前の正義を否定してやらぁぁあああ!!!!』

 

駆け出した瞬間、エドガーも地面を蹴った。

 

その時、クリスは怒りと恨みの表情をしていた。

 

エドガーと少女は、全くの無表情で掛かってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

至る所にディセンダーが徘徊している。

 

今日、この日何故かディセンダーが大量に発生していた。

 

そして誰もが、人間を殺していた。

 

そして、人肉を食べる者も居た。

 

ただ火で炙って食べるのではない。切り刻んで刺身にしたり、竹の中にみじん切りにしたのを詰めて食べていたりしたのだ。

 

コックと思われる服装の奴は、人間の肉を細かく刻み、小麦粉や卵や玉ねぎを入れてハンバーグを作っている者も居た。

 

脳みそをコンソメのスープにあえて作っている者も居た。

 

だが、太陽の精霊達は走るのを止めなかった。

 

何度か、捕まりそうになった。

 

だが、シャドウの剣でディセンダーを殺していった。

 

ただふっ飛ばしても、また起き上がってくる。こいつらは人間よりタフなのだ。

 

殺さなければ、また起き上がってくる。

 

まるで、気絶という概念が無いかのように。

 

『シャドウ!』

 

ついに、レムが翼を生やしてシャドウの手を掴んで空まで逃げていった。

 

だが、それも無駄な事だろうと考えていた。

 

空を飛ぶディセンダーだって存在するのだ。

 

そいつは、弓を持っている。

 

しばらくは撒けたが、そんなに簡単ではなかった。

 

『キャッ!』

 

矢が翼を貫いた瞬間、レムは悲鳴を上げて地に叩き付けられようとした。

 

しかも、落ちる場所は森の上だった。

 

落ちていくとき、木の枝や幹にぶつかり、所々怪我をした。

 

二人が叩きつけられた瞬間、大きなダメージが二人を襲った。

 

まだ幼い二人に取って。これは非常事態だろう。

 

レムが、そのまま気絶してしまったのだ。

 

『…………』

 

気絶したレムを見て、シャドウをレムまで駆け寄った。

 

レムを背負い、また逃げ出すことに決めたのだ。

 

幸い、落ちた先は森の中。そんな簡単に奴らも見つからないだろう。

 

森の中を走り回り、隠れる場所を必死に探した。

 

岩陰の中

 

草の中

 

森の中は、隠れる場所が多かった。

 

そこで見つけたのは、大きな洞窟だった。

 

この洞窟が大きければ、暗いし簡単には見つからないだろうと考えたのだ。

 

 

 

 

 

 

洞窟の中は、予想通り大きな所となっていた。

 

だが、単純な構造になっているのが仇だった。

 

このままでは、見つかるのも時間の問題だろう。

 

だけど、今は休むことが大切だ。

 

レムも、翼を怪我している。

 

ついに最深部まで辿り着くと、シャドウは背負っていたレムを壁に置いて、自身も座りだした。

 

そして、引っかかる部分を思い出した。

 

クリスは大丈夫だろうか。

 

シェイラは助かってるだろうか。

 

まだ、生き残っている人達は居るのだろうか。

 

その事が、シャドウの脳裏に浮かんだ。

 

『……………』

 

しばらくすると、レムが目を覚ました。

 

瞼を開けると、何度か瞼を開けたり閉めたりしていた。

 

真っ暗で、目を開けているのか閉めているのか分からなかったらしい。

 

シャドウは、目が慣れてなんとも無かったのだが。

 

『………シャドウ。守って……くれたんだね』

 

レムがシャドウに微笑を送った。

 

だが、シャドウには何の反応も無かった。

 

それを見たレムは、もっと笑顔になった。

 

『やっぱり、シャドウは笑わないね。』

 

レムがそう言っても、やはりシャドウは無反応だった。

 

だけど、レムは笑顔を止めなかった。

 

『………皆、死んじゃったね』

 

次に、レムの表情は少しだけ暗くなった。

 

『皆…皆……。殺されちゃった』

 

もっと、もっと暗くなった。

 

体育すわりをしながら、泣きそうな顔になって。

 

そして、完全に顔が膝に埋ってしまった。

 

『……………』

 

ついに、何も言わなくなった。

 

その沈黙の時間がしばらく流れ、時がどんどん流れていく。

 

そしてついに、この洞窟内から足音が聞こえた。

 

『―――!!』

 

その足音に気付いたシャドウが、立ち上がって戦闘体性に入った。

 

『シャドウ…?』

 

レムは、足音にまだ気付いていないようだった。

 

だが、しばらくしてついにレムも足音が耳に入ってしまった。

 

『………!!!』

 

時間の問題、その問題が、今訪れようとしていた。

 

シャドウは、この部屋から出ようと入り口の方へと歩み寄る。

 

『待って!』

 

レムがそう言うと、シャドウは立ち止まった。

 

すると、レムが後ろからシャドウの方へと歩み寄った。

 

『私も……私も戦うよ』

 

そう言うと、シャドウはレムの方を見た。

 

レムの目を見た瞬間、シャドウはそのまま前へ向きなおし、再び歩き出した。

 

すると、レムはシャドウの手を握り、そのまま動かなかった。

 

シャドウは意地にでも動こうとしたが、なかなか動けない。

 

そして、ついにシャドウは握っていた手を振りほどこうとした。

 

だが、意地にでもレムは手を離さない。

 

シャドウがまた振り向くと、レムはこちらにもう一つの手を見せていた。

 

『魔宝晶!!』

 

すると、小さな球体がレムの横から現れ、

 

その球体がシャドウを襲った。

 

『……!?』

 

シャドウは、そのまま部屋の奥へと飛ばされ、レムは入り口の方へと向かった。

 

レムが部屋から出た瞬間、シャドウも出ようとしたが

 

それはレムの呪文から失敗に終わった。

 

『レイズ・バリア!!』

 

部屋に結界が発生され、シャドウはその結界の中へと閉じ込められたのだ。

 

どういうつもりだ。

 

そんな表情でレムを睨みつけた。

 

すると、レムは涙を流していた。

 

だが、シャドウの望んでいた答えを言わなかった。

 

『………また、綺麗なお花見ようね』

 

そう言って、大粒の涙を流しながら、笑顔でシャドウを見つめた。

 

シャドウは、この状況でレムの涙を流した笑顔を見つめる事しか出来なかった。

 

そして、レムがシャドウに背を向けた。

 

そのままシャドウから去ろうと歩み始める。

 

待て、行くな

 

ずっと、ずっとお前を守ってきたんだ。

 

どうしてここで、俺から逃げようとするのだ。

 

幼いお前一人で、あいつらを討伐できると言うのか。

 

『レ……』

 

声を出そうとした。

 

それは、大切な物を失いたくない。そんな思いだった。

 

その一言、シャドウの声がレムの耳に届いたとき、レムはそこで立ち止まった。

 

『レ……ム……………』

 

声を出したことが無いシャドウの声は、弱弱しくも、はっきりした声だった。

 

声帯が成長しておらず、レムよりも声が高かったが。

 

シャドウの声を聞いたレムは、肩を震わせていた。

 

恐らく、泣いているのだろう。様子からそれが分かった。

 

レムは決して振り向かず、その場で声を出した。

 

『……優しい………声だね……』

 

そして、レムはシャドウから姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、ディセンダーが部屋の中へと入って来た。

 

しばらく部屋を散策していたが、僕の事を誰も見つけなかった。

 

いや、視界に入っても無視をしているのだろう。

 

そう考えていたが、それは違うようだ。

 

『この洞窟には、居ないようだ』

 

ディセンダーは、確かにそう言った。

 

目の前に居る僕が、どうやら見えないのだろう。

 

太陽の精霊の結界は、シャドウの存在までも守ってくれるらしい。

 

ディセンダーは異常なしと知り、場から離れると

 

シャドウはそこで独りぼっちになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界は、いつまでも僕を包んだ。結界は洞窟の中を大きく包み、僕は洞窟の中でしか生きられないような精霊となった。暗闇の中を彷徨い続けて、とても長い時間、本当に長い時間が経ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ゼルギアス洞窟 精霊の間〜

 

『………………』

 

『これが、我の知っていることの全てだ。』

 

シャドウの語りが終わると、しばらく誰も何も言えなかった。

 

最初に沈黙を破ったのは、エドだった。

 

『そんな……。でもレムは…あいつは世界樹から生み出される星晶の原材料を知っていて、それを知った俺達を敵視した!!』

 

『ならば、時と共にレムの心情が変わったのかもな。』

 

闇の精霊の、その突拍子も無い意見にしいなは崩れるように落胆した

 

『そんな酷い話が……あって……』

 

『残念だが事実だ。私はこれ以上の真実を知らない』

 

シャドウがそう言うと、エドはレムの言ったある事を思い出した。

 

≪…星晶の材料と、ディセンダーの存在とは、大いに関係がある……≫

 

『星水晶はディセンダーが人を殺して補充している……それが本当の真実なんだな』

 

エドがそう呟くと、反論するようにレイヴンが言葉を連ねた

 

『でも、どうして世界樹は星晶を作るのかしらねぇ。今やほとんど、人間の発展する為のエネルギーだとしか使われていないのに』

 

その反論に、リザが間髪いれずに答えた。

 

『……恐らく、人間を育てる為ね。』

 

その言葉を聴いて、シャドウもただ黙り込むしか出来なかった。

 

エドも、リザの言葉を鵜呑みにした。

 

『人間を育てて……そしてまた殺す……ってのかい。』

 

しいなが悲しそうにそう言った。

 

そしてシャドウは、感情の無い子供のように言葉を伝えた。

 

『簡単で頭の悪い様に聞こえるが、全体的に言えばそうなるだろう。』

 

『でもどうして!どうして人間がこんなにも殺されなければいけないんだい!星晶なんか作って……ただ人間の役にしか立たないようにしたような物を!!』

 

『星晶は、人間だけの物じゃぁ無えだろ。植物や土にも、星晶は必要だ』

 

エドの言葉に、シャドウがまた反論をする

 

『我が外の世界に居た時、星晶という物質は存在しなかったが』

 

その言葉に、エドはある答えにたどり着く。

 

しばらく考える仕草をして、その答えが明白になる

 

『………世界樹にも思考がある…』

 

そして、更に思いついた事を連ねて語った。

 

『恐らく、世界樹の養分とするのは人間の魂……。星晶は、人間を助ける為……。じゃぁ』

 

エドの言葉がそこまで語られた瞬間、しいなもエドの見た見解が脳裏に浮かんだ。

 

『あたいらを……肥え太らす為……』

 

恐らく、牧場で豚や牛を飼っているのと同じだ。

 

狩りやすくする為に、甘えの産物を作り出し

 

人間というのを弱くした。

 

関係もギクシャクさせるような、星晶という物体を。

 

この時代、現代の人間は大昔の人間よりも遥かに弱いだろう。

 

『………………』

 

エドは、拳を強く握り締め、歯を噛みしめた。

 

しいなは、その場で泣いてしまった。

 

今まで信じてきた物に、ここまでボロクソに裏切られるのはとんでもなく辛い事なのだろう。

 

最初にエドにレムから聞いた真実を聞いた時、誰もが信じようとしなかった。

 

だが、証拠が揃ってきてそれが確定してきて

 

たった今、それが現実だと証明された。

 

ここまで来れば、ほとんど絶望物だろう。

 

そのまま動かないかのように、しいなは四つん這いで静止した。

 

だが、ある事に気付き、前を向いた。

 

『………骨は』

 

『ん?』

 

両手を浮き上がらせ、再びしいなは立ち上がった。

 

『滝の中にあったあの骨は!!一体あれはなんなんだい!?』

 

『骨?』

 

闇の精霊は、少し疑問を持つ表情になった。

 

『あ、それオッサンも気になるわね。あれは一体なんなの?』

 

湖の底で苔だらけとなった骨、

 

それを闇の精霊が知らないはずがない。

 

何か、そこで何かあった。

 

今、しいなはエドの言った真実をほとんど信じきっていたが、

 

まだ、認めていない自分が糸口を探って突っかかっている。

 

出来れば、自分の信じた現実が現実であって欲しい為に。

 

『…………』

 

闇の精霊は答えない。

 

それに突っかかるように、更にしいなは追求した

 

『答えられないのかい!?』

 

『あれは、比較的近い年の話だが』

 

近い年の話

 

それはそうだ。何万年も経てば人骨の形すら残っていないのだから。

 

だが、だとしてもそこには何かがある。

 

『ああ。教えてくれ』

 

エドがそう言うと、シャドウは俯いていた。

 

『……あれは、この洞窟に武器を持って入ってきた者が滝に現れ、その場で私を見た瞬間、溺れて死んだだけだ』

 

その呆気ない答えに、エド達は固まった。

 

『…え?たったそれだけかい?』

 

『それだけだ。あれから……4ヶ月は経つかな』

 

しかも意外に近い

 

呆れるほどどうでも良かった話に、エドとレイヴンは脱力した。

 

『なんだなんだ……すっげぇどうでも良い話じゃねえかよ……』

 

『なんだかオッサン……やる気削がれるわぁ……』

 

座り込んだ二人を見て、シャドウはその二人を睨みつけた

 

『今、ここで座り込む暇は無いと思うぞ』

 

『え?どういう事だよ』

 

エドが聞き込むと、シャドウはエド達に状況を伝えた

 

『今この洞窟に、武器を持った者が二人、侵入してきている』

 

『!!』

 

その状況を聞いて、エドとレイヴンは立ち上がった

 

『こりゃ、座ってられないわねぇ。』

 

そう言って立ち上がると、シャドウの姿が徐々に薄くなった。

 

『あっ!シャドウ!!』

 

しいなが叫ぶと、そのままシャドウは薄くなっていく

 

『安心しろ、結界の力が強まっているだけだ。次第に見えなっても消えてはいない』

 

シャドウがそう伝えると、全員は少なくとも安心した表情にはなった。

 

『そう……なのか。』

 

そして、エド達は感謝の言葉を送った

 

『ありがとうね…。わざわざ出てきて、私たちの質問に付き合ってもらって……』

 

『闇の精霊ってのも、結構良い奴なのね。ちょっと感心しちゃったわ』

 

リザは、軽くお辞儀をした後、敬礼をした。

 

『私たちの依頼に付き合って頂き、ありがとうございます。』

 

そしてエドは、シャドウの目を見た。

 

『……”全ての問題が掻き消される事”が現れたとき、お前はどうするんだ?』

 

そう質問をすると、シャドウは間髪を入れずに答えた。

 

『ここまで辿り着いた者が居るのだ。今度こそ世界を守らなくてどうする。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ゼルギアス洞窟 黒い滝〜

 

短剣と弓を持っている二人は、洞窟の辺りを見渡していた。

 

『ここが……闇の精霊の居る洞窟か』

 

『ここで……幹部は行方をくらました……というのか』

 

背中にあるマークの彫った服を着て滝を眺めた

 

『………だが、闇の精霊の邪道もこれまでだ。これから、私たちが邪神を滅ぼすのだからな』

 

『それはどうかな?』

 

二人が話しているのを割って入った言葉が、二人の警戒心を高まらせた。

 

『!!何奴!!』

 

『姿を現せ!!』

 

すると、洞窟の奥から一人の少年が歩み寄った。

 

『!!……貴様は!』

 

『お久しぶりだな。狂った宗教信者共よぉ』

 

エドが自己紹介を終える前に、一人の暁の従者が弓を構え、発射した。

 

だが、すぐにエドの錬金術で作られた壁に遮られ、エドにダメージを与えられなかった。

 

『ここで会ったが運命!!今こそ邪教従を地獄へと陥れるまでよ!!!』

 

『と言っても。俺、神様なんか信じて無えんだけどねぇ。』

 

そう言って、再び両手を合わせて錬金術を発動した。

 

次に、攻撃用の突撃した突起物を練成させたのだ。

 

『喰らうものか!』

 

暁の従者は、そのまま突起物から避けてエドに向かって再び弓矢を発射した。

 

だが、エドの後ろからも矢が発射された。

 

『!!』

 

その矢は、エドに向かってきた矢を相殺して、地に落ちて行った。

 

『あ〜ららら。そんな腕じゃぁ、このおチビちゃんには傷一つ付けられないわよぉ。』

 

レイヴンがそう言った瞬間、エドが怒りの形相で睨みつけた。

 

『誰が豆粒ドチビかぁぁあ!!!』

 

だが、その間にも一人の剣を持った者が襲い掛かってきた。

 

『隙あり!!』

 

だが、その瞬間にエドの後ろから御札が大量に出現し、剣を持った者を囲んだ

 

『!?』

 

『衝弾符!!』

 

すると、札の全てが爆発し、剣を持った物を火で囲んだ。

 

『ああああああああああああああ!!!』

 

その者が悲鳴が響く中、しいなが次々に札を召還した。

 

『攻撃できるものならやってみな!!』

 

その大量の札の中、残った一人は怯えだした。

 

その隙を突いて、エドは機械鎧をむき出しにし、その男に向かって走り出した。

 

『うおらぁぁあああああ!!』

 

『ひっぃいいい!!!』

 

男は、弓を捨てて懐から短剣を抜き出した。

 

この距離では、エドがダメージを負ってしまうだろう。

 

そのタイミングを狙った男は、口元が緩んで一瞬にやついた。

 

だが、男が短剣を抜き出した瞬間、

 

乾いた爆発音と共に、短剣は弾かれた。

 

手に強い衝撃を打ち、痺れたと同時に、ある奴を見つけた。

 

金髪の女が、こちらに銃を向けているのだ。

 

まさか、あんな距離から

 

絶望を感じた男は、そのままエドに殴られた。

 

『ああああああああああああ!!!』

 

叫びながら殴ったエドに殴られた男は、そのまま壁まで飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

壁の元へと歩み寄り、エドは腕の骨を鳴らしながら問いかけた

 

『おい』

 

だが、男に返事が無い。

 

エドは、お構い無しに質問をした。

 

『こんな所で何のようだ。何をするつもりだった。』

 

『……光の精霊レム様の敵であろう、闇の精霊を始末するつもりだったんだ。』

 

エドは、本当に光の精霊は、今の闇の精霊を敵視しているかは疑問だったが、

 

それは無視した。

 

『残念だったな。この洞窟には闇の精霊は居ねぇ。噂は全部嘘だったんだよ』

 

『嘘だ!!』

 

男が再び立ち上がろうとした瞬間、リザは銃口を、レイヴンは弓を、しいなは札を取り出した。

 

囲まれている事を自覚した男は、歯を食いしばりながらも、悔しさを噛みしめた。

 

『闇の精霊を討伐しに来た……本当にただそれだけか?』

 

『…………っくそ!!!』

 

壁を叩いた男は、そのまま呟くように自分の弱さを語るように言葉を連なり始めた。

 

『……教祖様とディセンダー様と光の精霊様の平穏な生活の為に……闇の精霊という邪悪な存在を排除すべきなのに……』

 

ディセンダーという言葉を聞いて、エドは反応する

 

『ディセンダー!?』

 

『ああ……。最近、捕獲したんだ。前に神殿の中で見た少女と気配が同じだったから……間違いは無い。』

 

捕獲した、神殿で見た

 

『おい、捕獲したってどういう事だよ』

 

『文字通りだ。森の中でこの世に生まれた事に不安を持っている所を、私達の教祖の下、暁の本当の従者にお届けしたのだ。』

 

それは……拉致ではないのか

 

『それは、一般的に言うと”拉致”では無いかしら』

 

『何とでも言えば良い。だが、ディセンダー様が神殿で名乗った名前と同じ者だ。……そうだ、”カノンノ・イアハート様”だ』

 

カノンノと言う言葉を聴いて、エドの形相が変わった。

 

『お前……今、カノンノと言ったか?』

 

『ああ。』

 

すると、次にしいなが男の襟首を掴んで問い詰めた。

 

『ざっけんな!カノンノはアタイラの仲間だ!!』

 

『何を言っている!!ディセンダー様はお前らのような汚い種類の人間の所に居てはいけない存在なのだぞ!!』

 

次に、エドが鋭い表情で男を睨みつけた

 

『おい』

 

男がエドを見ると、エドは真剣に質問をした。

 

『お前らのアジト、どこだよ』

 

エドがそう言うと、男は笑い出した

 

『言うはずがないだろう。信者でも無い者が、他言するわけにはいかない。特にお前らのような奴らにはな』

 

『ふざけんな!!俺達の仲間を誘拐しやがって!!!返しやがれ!!!!!!』

 

エドが男の襟首をしいなから横取りすると、怒鳴るように言葉を送った。

 

すると、男はにやつきながら懐から魔道具を取り出した。

 

『!!』

 

しいながそれに気づくと、エドに言葉を伝えた

 

『エド!!そいつにそれを使わせるな!!』

 

だが、言った時にはもう遅かった。

 

男の持っていた魔道具は、発光し、男を丸ごと包んだ。

 

発行が止むと、男は姿をくらました。

 

『おい……ちょっと待てよ……』

 

振り向くと、床に伏せていた男も居なくなっていた。

 

どうやら、ワープ魔法らしい。

 

恐らく、自分達のアジトに戻ったのだろう。

 

『ちくしょう………畜生!!』

 

エドは、強く地面を蹴るように踏みつけた。

 

『返しやがれ!!イアハートを返しやがれよ!!畜生ぉぉおおおおおお!!!』

 

エドの叫びが、洞窟の中を響き渡った。

 

だが、返事が帰って来る事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

セネルが、様々な情報を元に、暁の従者の本拠地と思われる場所という者を探し出した。

 

だが、3日程探索しているが、そのような物は見つかっていなかった。

 

だが、今日はその転機が現れる日だった。

 

『………?』

 

いつの間にか、視界に暁の従者が居るのだ。

 

それも、本拠地に属する者のみに与えられる制服を着て、

 

一人の男はアップルグミを食べて、

 

二人の男は、笑いあいながらある方向へと向かい、歩き出した。

 

それを見たセネルは、無線機魔道具を取り出した。

 

魔道具を発動させると、ダオスの元へと繋がった。

 

『ダオス、暁の従者の者を見つけた。今のところ、俺には気付いていない。』

 

セネルが報告すると、ダオスはしばらく黙り込み、そして告げた。

 

≪奴らは、今どこか向かおうとしているか?≫

 

『ああ。一人はボロボロだが、誰も気にせずにある方向へと向かっている。』

 

セネルが報告すると、魔道具無線機の向こうに居るダオスは的確に報告をした

 

≪そうか、ではそいつらの追跡を頼む。くれぐれも気付かれないようにな。≫

 

『分かった。』

 

そう言って、セネルは電源を切った。

 

今、セネルは仇と呼べる者達の前に居る。

 

今までの標的が、追うべきものが、目の前に居るのだ。

 

『よし。』

 

セネルは決意を再び固め、小さく息込んで動き出した。

説明
ついに五十話突破。年数で行くと半世紀です。嬉しいです。がんばります。
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鋼の錬金術師 テイルズ クロスオーバー 

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