真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第26話
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真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第26話

 

(一刻=1時間)、(一里=4km)

 

 

【愛紗の気持ち】

 

 

 

《桃香視点》

 

「あっ!そうだ。ご主人様!」

 

「ん?どうかしたか?」

 

洛陽に向けて進軍している時、私はご主人様に声をかけた。

 

「どうかしたか?じゃ、ないよぉ!どうしてあの時、急に走り出したのかちゃんと説明してください!大体の事は愛紗ちゃんを見れば分かりましたけど」

 

私は虎牢関での戦いの時にご主人様が行き成り戦場に向かって走り出した理由を尋ねてみました。

 

「ああ、そうだね。雪華にも後で説明するって伝えてたからな」

 

「私も気になります。どうして私の得物が壊れると分かったのですか?」

 

私とご主人様の話に愛紗ちゃんも気になったのか話に加わってきた。

 

「ふむ。私も興味がありますな」

 

「鈴々もなのだ!」

 

「わ、私達もお聞きしたいです」

 

「です」

 

「あ、あの。私も聞いていいですか?」

 

「えっと。全員知りたいってことでいいのかな?」

 

いつの間にか私達の周りには星ちゃんたちみんなが集まっていた。

 

「それじゃ……実は愛紗の得物が壊れるんじゃないかって以前から判ってたんだ」

 

「それって愛紗ちゃんがちゃんと手入れをして無かったってこと?」

 

「そんな!毎日手入れを怠っていませんでしたし、刀身にも刃こぼれやひびなどありませんでした!」

 

私の疑問に愛紗ちゃんはすぐさま否定してきました。

 

「そ、そうだよね!いつも鍛錬の後とかにお手入れしてたもんね。ごめんね愛紗ちゃん」

 

「い、いえ。私も大声を出してしまい、すいませんでした」

 

「それで主よ。毎日手入れをしていた愛紗が気づかず、なぜ主はお気づきになられたのですかな?」

 

「なんて言えばいいのかな……簡単に言っちゃうと音が違うんだ」

 

「音?音って武器と武器がぶつかり合う音って事?ご主人様」

 

「ああ。見た目はいつも通りでも音を聞けば分かるんだ」

 

私の疑問に頷くご主人様。

 

「それはどんな音なのですか?」

 

「そうだな……透き通った音と篭った音って感じかな」

 

朱里ちゃんの疑問に少し考えて近い音を例に説明してくれた。

 

「ふむ。主はそんな些細な音の聞き分けが出来るのですな。いやはや、改めて思うが主は武に対して万能すぎではございませぬか?」

 

「そ、それを言われると……じいちゃんの厳しいごうも、ごほん!特訓の成果としか言いようが無いな」

 

ご主人様は苦笑いを浮かべながら頭を掻いていました。

 

「でもでも。いつ愛紗ちゃんの得物を作ったんですか?そんな暇無かったですよね?」

 

「桃香様。一度、ご主人様が一月ほど居なかった時期があるではございませぬか」

 

「え?あったっけ?」

 

う〜ん……覚えてないな……でも、一月くらい記憶がない時があったような気もするけどその時かな?

 

「ま、まあ、あの時の桃香様は精神状態が不安定でしたから覚えていないかもしれませんね」

 

「えっ!そうだったの!?私全然気がつかなかったよ!」

 

「ふぇ……ご主人様。今度居なくなる時は私も連れて行ってくださいね」

 

「?あ、ああ。わかったよ」

 

なぜか、涙ぐみながらご主人様にお願いする雪華ちゃん。

 

一体、その時何があったのかな?

 

「ま、まあ。その話は置いておきましょう!ご主人様、では、雪華の得物と共に私の得物を作ってくださったと、そう言うことですね」

 

「ああ。氾水関の戦いの時に華雄から一撃を受けたって報告をもらった時に、次の戦いの時に渡そうと思ってたんだ。そうしたら俺が気を失っちゃってさ。意識を取り戻したら愛紗たちが出陣したって雪華から聞いて急いで愛紗の元へと向かったと、そう言うわけなんだよ」

 

「そうだったんだ……あれ?それって私のせい?」

 

ご主人様が気を失った理由って私が抱きしめてたからだよね?……それなら愛紗ちゃんが危険な目に遭ったのも私のせいってことだよね。

 

「ご、ごめんね愛紗ちゃん!私のせいで危険な目にあわせちゃって!」

 

「と、とんでもありません!桃香様は何も悪くありません!」

 

「ううん。私がご主人様のことを気を失わせちゃったせいで危ない目に遭ったんだから私のせいだよ!」

 

「いいえ。あの時、無理矢理私が引き剥がそうとしたのがいけないのです。桃香様のせいではありません!」

 

「で、でも……」

 

「はい。そこまで」

 

「「ご主人様?」」

 

言い合っている私達を見てご主人様が止めに入ってきた。

 

「別に、桃香と愛紗のせいじゃないよ。もっと早くこの事を教えておかなかった俺がいけないんだからさ」

 

「そんな!ご主人様は悪くないよ!」

 

「そうです!ご主人様は何も悪くありません!」

 

私と愛紗ちゃんは二人して否定した。

 

「愛紗は桃香の事を悪くないって言って。桃香は愛紗の事を悪くないって言う。そして、二人は俺も悪くないってことは、誰も悪くないってことだよね。だったらこの話はお仕舞い。わかった?」

 

「そ、それはへ理屈ですご主人様」

 

「そうかもね。でも、終わったことを後悔するより、皆が無事で居られたことを喜ばないと。そうだろ?」

 

ご主人様は私達を見回して笑いました。

 

「なんだか。ご主人様に言いくるめられた感じがしちゃうな〜」

 

「ですね。でも、そこがご主人様のいいところでもあります」

 

私の話に朱里ちゃんが笑いながら答えてくれた。

 

「そうだ!愛紗ちゃん」

 

「はい?なんでしょうか」

 

「ご主人様から貰った得物の名前はどうするの?」

 

「ん?今まで通り、青龍偃月刀でいいんじゃないのか?」

 

「ダメだよぉ、そんないい加減じゃ!せっかくご主人様からの贈り物なんだから、ちゃんとした名前じゃないと!」

 

ご主人様の話に私は大きく首を振って否定した。

 

「そ、そんなものか?」

 

「そうだよ!それで、愛紗ちゃん、どんな名前にするの?」

 

「そうですね……ご主人様から頂いた得物……天の御遣い……天……天龍偃月刀、などいかがでしょうか?」

 

愛紗ちゃんは暫く考えると、思いついたようにポツリと喋った。

 

「うんうん!良い名前だね!ご主人様が贈ったって直ぐにわかるよ!」

 

「……これからよろしく頼むぞ。天龍偃月刀よ。ともに、ご主人様と桃香様も守って行こうではない」

 

愛紗ちゃんは自分の獲物に微笑んで誓いを立てていた。

 

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洛陽に向けて二日、私たちは何事も無く進軍していました。

 

「ねえねえ。ご主人様」

 

「ん?どうした?」

 

「普通、こういう山間のところって待ち伏せされてるものじゃないの?」

 

「言われてみればそうだな。まったく人の気配がしない」

 

ご主人様はあたりを見回して伏兵を探しているみたいでした。

 

「朱里ちゃん」

 

「はい。なんでしょうか?」

 

「伏兵が居ないけど、これってどういうことかな?」

 

「そうですね……襲撃は止めて、洛陽で全兵力を持って迎え撃つ作戦でしょうか。今の状況では確かなことがいえませんね。斥候を出してみましょう」

 

「うん。お願いね朱里ちゃん」

 

「御意です」

 

朱里ちゃんはパタパタと駆け出していった。

 

「ご主人様はどう考えていますか?」

 

「う〜ん。そうだな……俺も朱里の考えと同じだな。ただ、斥候も居ないことがちょっと引っかかるけどね」

 

「どういうことですかご主人様?」

 

「いくら襲ってこなくても敵の動向は気になるはずだ。それなのに斥候も居ない。董卓が袁紹みたいに間抜けなのか、はたまた、洛陽で何かあったのか……」

 

「あは、あはは……え、袁紹さんが聞いたら怒りそうだね。でも、そっかぁ。言われてみればそうだよね。斥候も居ないなんて変だもんね」

 

苦笑いしつつもご主人様が言ったように斥候が居ないのはおかしいと私も思った。

 

「まあ、俺たちがどうこう言ったって状況が判明するわけじゃないんだ。とにかく先に進もう。きっと朱里が出した斥候が情報を持ち帰ってきてくれるさ」

 

「そうですね。とにかく今は前に進みましょう!」

 

分からないことをずっと悩んでても解決しないよね。こういう時、まずは先に進んで何か分かったらそこで考えればいいんだよね。

 

私たちはとにかく先に進むことにしました。

 

………………

 

…………

 

……

 

斥候を出して六刻が過ぎ、ようやく斥候の人が戻ってきました。

 

「えっ。洛陽まで誰も居ないんですか?」

 

「はっ。伏兵も罠の一つも見当たりませんでした」

 

斥候の人の話によると伏兵や罠すらなく、洛陽まで行けてしまったということらしい。

 

「この状況。ただ事ではないと思います。如何いたしましょうご主人様」

 

朱里ちゃんはご主人様に今後の方針を伺っていた。

 

「う〜ん……洛陽が戦に備えてる準備とかは?」

 

「いえ。門は開かれており自由に出入りできる状態でした」

 

「わかった。報告ありがとう。持ち場に戻っていいよ」

 

「御意」

 

ご主人様は斥候に出した兵にお礼を言って戻るように伝えていました。

 

「それでどうするのご主人様?」

 

「とりあえず。袁紹に報告しよう」

 

「えっ!い、いいんですか?」

 

「ああ。きっとそれに袁紹の事だから何も考えずにまた俺たちを遣い走りにするだろうから好都合だよ」

 

「好都合?」

 

「董卓を助けるのにね」

 

「あ、そっか!」

 

ご主人様は小さな声で微笑みながら教えてくれました。

 

「おーい。愛紗か星!どっちか一緒に来てくれ!」

 

「うむでは私が」

 

「私が行きます!星は兵を頼んだぞ!」

 

「……だそうだ。私は大人しく待っているとしますぞ主よ」

 

星ちゃんが名乗り出ようとするとそれを遮るようにして愛紗ちゃんが名乗り出てきた。

 

「それじゃ、ちょっと行って来るよ。後のことは任せたよ」

 

「は〜い。気をつけてねご主人様。それと、愛紗ちゃん、ちょっと来て」

 

「?何でしょうか桃香様」

 

私は愛紗ちゃんを呼んでご主人様に聞こえないように耳打ちをした。

 

「ご主人様は鈍感さんだから積極的にね!」

 

「なっ!と、桃香様!?」

 

「あはは。それじゃ行ってらっしゃい愛紗ちゃん!」

 

私は慌てる愛紗ちゃんの背中を押して二人を見送った。

 

「良いのですかな桃香様」

 

「ん?なにが」

 

「愛紗に先を越されてしまいますぞ?」

 

「そうだね。でも、愛紗ちゃんは恥ずかしがりやだから、お姉さんである私が背中を押してあげないとね!」

 

星ちゃんの質問に笑顔で答える。

 

「流石は桃香様、お心が広いですな」

 

「そんな事無いよ?私だってご主人様のこと好きだもん。だから愛紗ちゃんにだって負けないんだから!」

 

両手を握り締めて気合を見せる。

 

「ふっ。主は幸せ者ですな。桃香様や愛紗に好かれて」

 

「でも、ご主人様はまったく興味が無いのか私たちのことを恋愛対象に見てくれないんだよね……」

 

「主は朴念仁ですからな。少々、いや。かなり強引に攻めなければ分からないでしょうな」

 

「だよね〜。はぁ……うん!私もがんばろう!」

 

ため息を一つ吐き、数拍置いて自分を奮い立たせた。

 

「その息ですぞ。我々の軍には主を狙っているものが多いですからな。朱里に雛里。それに雪華も少しずつですが主に恋心を抱いている様子」

 

「ええっ!し、雪華ちゃんもなの!?うぬぬ……雪華ちゃんは大丈夫だと思ってたんだけどな」

 

雪華ちゃんはご主人様のことをお父さん見たいって言ってたから安心してたんだけど……う〜ん。嬉しい事なんだけど、正直複雑だよ。

 

だって、恋敵が増えちゃうんだから!

 

「まあともかく。まずは主に言われた様に先に進みましょう」

 

「あ、うん。そうだね。それじゃ少し歩くのを早くしようか」

 

星ちゃんに言われて洛陽に向けて少し早歩きで向かった。

 

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《愛紗視点》

 

「……」

 

「……」

 

無言でご主人様の前を歩く。

 

先ほどから桃香様の言葉が耳から離れない。

 

『ご主人様は鈍感さんだから積極的にね!』

 

「愛紗」

 

「っ!は、はい!なんでしょうか!」

 

ご主人様に呼ばれ振り返る。

 

「えっと……同時に手足が出てるんだけど」

 

「……っ!」

 

自分の手足を見てみると本当に同時に出ていた。

 

な、何を緊張しているのだ私は!

 

「そう言えばさっき桃香に何か言われてたみたいだけど。それと何か関係しているのか?」

 

「いいえ!まったくもって!そんなことは!ございません!」

 

「そ、そうか……ならいいんだけど」

 

ご主人様の言葉に全力で否定した。

 

うぅ……本当は関係してるなんて言えるわけが無いではないか!

 

だ、だが桃香様から頂いたこの好機を無駄にするわけには行かない!

 

「あ、あのご主人様?」

 

「ん?」

 

「そ、その……お、お……」

 

「お?」

 

言うのだ愛紗よ!勇気を持って『お慕い申し上げております』と!

 

「お、お……お腹が空きましたね!」

 

「え?さっき昼食べたばかりだよね?」

 

「そ、そう言えばそうでしたね。はは、あははははっ!」

 

な、何を言っているのだ私はーーーーっ!!!ああ……ご主人様に変な子だと思われてしまっただろうか!

 

平静を装いつつも、内心では恥ずかしさの余りのた打ち回っていた。

 

戦では負け知らず、いや。呂布には負けたが。それでも臆することなく突き進むこの私が、たった一言が言えないだなんて。

 

なぜ言えないのか。理由ははっきりしている。恥ずかしさもある。だが、それ以上に恐れているのだ私は。

 

何に恐れているのか、それは『ご主人様に嫌われてしまうのではないか』と言うことだ。

 

実際、そんなことはないのだろう。しかし、告白をして気まずくなってしまったらどうする?もし避けられでもしたら……そう思うだけで全身が震えだす。

 

戦では恐怖を感じたことの無いこの私が、恋という軟弱なものに恐怖を感じているのだ。

 

「……」

 

歩きながら前を行くご主人様を見つめる。

 

ご主人様……私はこの想いをどうすればよいのでしょうか?

 

しかし、答えが返ってくるわけでもなく。ただ、時間が流れるだけであった。

 

………………

 

…………

 

……

 

「すいません。劉備軍の北郷一刀だけど。袁紹さんと話をさせてもらえないかな」

 

「はっ!少々お待ちください!」

 

袁紹の陣営に着き、近くに居た兵にご主人様は話しかけていた。

 

「お待たせしました!どうぞこちらへ」

 

「それじゃ行こうか愛紗」

 

「は、はい……」

 

「?」

 

兵は私達を袁紹の元へと案内してくれた。

 

「おーっほっほっほっほっ!、おーっほっほっほっほっ!」

 

相変わらず癇に障る笑い方だ……なんであの二人は平気なのだ?

 

「それで?このわたくしに何の用かしら?」

 

「実はさっき洛陽に向けて斥候を出したんだ……」

 

ご主人様は袁紹に洛陽の状況を説明し始めた。

 

しかし、そんな事を話して一体どうすると言うのだろうか。

 

私は詳しいことをまだご主人様から聞いていなかったのでその意図がわからないでいた。

 

「おーっほっほっほっほっ!どうやら董卓さんは私の華麗な作戦に恐れをなしたようですわ!おーっほっほっほっほっ!」

 

「流石ですね姫!もう姫に勝てる奴らなんてきっといないですよ!」

 

「当たり前ですわ!資金も大量にあり、門地もよく、兵が多く居るわたくし、このわ・た・く・しの軍に勝てる人なんて居ないのですわ!おーっほっほっほっほっ!」

 

「も、もう姫も文ちゃんもちゃんとお話し聞かないと!」

 

「ちゃんと聞いていますわよ」

 

「本当かな〜」

 

「何か言いまして顔良さん?」

 

「いいえ。何も〜」

 

「……顔良さんは後でお仕置きですわ」

 

「ええっ!?何でですか!」

 

「何となくですわ」

 

「そんな〜」

 

……斗詩はこんな君主の元に居て辛くはないのだろうか?私なら直ぐにでも出て行くぞ。

 

「まあ、顔良さんの事は後回しでいいですわ。さてと、それではあなた達は華麗に洛陽へ進軍して董卓さんを探し出してきてくださるかしら?」

 

「探し出してどうするんだ?」

 

「決まっていますわ。董卓さんは見せしめとして皆さんの前で打首に致しますわ」

 

「なっ!袁紹殿!流石にそれ」

 

「愛紗」

 

私は『やり過ぎでは』と抗議しようとするとご主人様に呼び止められた。

 

「ですがご主人様っ!」

 

「……」

 

「くっ!」

 

ご主人様は無言で首を横に振った。

 

「なんですの?わたくしの素晴らしい作戦に何か文句でもありまして?」

 

「いや。なんでもないんだ。ただ、本当に素晴らしかったから愛紗が興奮してしまっただけなんだ」

 

「当たり前ですわ。わたくしの華麗で完璧な作戦。あのちんちくりんのくるくる娘だって泣いて許しをこいてきますわ!おーっほっほっほっほっ!おーっほっほっほっほっ!」

 

――その頃、曹操軍

 

「くちゅん!」

 

「華琳様、お風邪ですか?」

 

「いいえ。体調に問題はないわ。どうせ何処かの馬鹿で間抜けで脳みそが空っぽの胸だけ女が私の悪口を言っているのよ」

 

「は、はぁ……なら良いのですが。お体だけはお気をつけください華琳様」

 

「あら。私の体を心配してくれるの?なら、今夜は私の閨で体を温め合いましょうか桂花?」

 

「は、はい!喜んで!」

 

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「ご主人様っ!なぜ止めたのです!」

 

帰り道、私はご主人様に問い詰めていた。

 

「董卓は悪政をしていないと分かっているではありませんか!なぜそれを袁紹に伝えなかったのです!確かに当初の目的を考えれば言わない方が得策かもしれません。ですが、馬騰殿のように分かってくれるかもしれないではありませんか!」

 

「それじゃ、それを袁紹に伝えたら何か変わったと思うか?あの袁紹にだぞ?」

 

「っ!そ、それは……」

 

ご主人様は少し声を低くして私に話しかけてきた。私はその質問に答えることが出来ず言葉を詰まらせてしまった。

 

「そう。何も変わらないよ。逆に今度は俺達も危なくなっていた可能性だってある。董卓を擁護する反逆者としてね」

 

「なっ!」

 

何も言えなくなってしまった。私は……私の一言でご主人様や桃香様、それに皆を危険に晒すようなことをしてしまっていたかもしれないことに。

 

「……今日の愛紗は少し変だよ?何かあったの?」

 

そして、今度は私を労わるように優しい声で話しかけてきた。

 

「な、んでもありません……」

 

「なんでもないなら。俺の顔を見て言ってくれるかな?」

 

「っ!」

 

見れるわけが無い。桃香様の言葉で舞い上がり、そして落ち込み。さらには私の一言で危険な目に遭わせようとしてしまったのだ。

 

「……」

 

「……俺は愛紗に嫌われちゃったのかな?それなら仕方ないね。俺は先に戻ってるよ」

 

「っ!あ……」

 

ご主人様は私を置いて先に歩いていってしまう。手を伸ばせばまだ届く距離。だがその手を伸ばせない……伸ばす資格がない……

 

『まったく。だからお主はダメなのだ愛紗よ』

 

「っ!」

 

何処からか、星の声が聞こえたような気がした。

 

………………

 

…………

 

……

 

「聞いているのか愛紗よ」

 

「聞いている。だが私はご主人様の家臣だ。ご主人様にそんな思いを打ち明けていいはずが」

 

「はぁ。さっきから言っているだろ。主と家臣。一皮向けば所詮は男と女よ。ならそんな考えは捨ててしまえ」

 

「そ、そんなこと出来る訳がないだろ!私は武人として育てられてきたのだ!それに恋など……」

 

「では、誰かに主を取られても仕方ないと?」

 

「……ああ」

 

「この虚けが」

 

「なっ!」

 

「人並みの幸せを放棄してどうする。愛紗よ、お前も幸せになっても良いのだぞ?」

 

「……」

 

「主が好きなのだろ?なら、その思いを主にぶつけるのだ。出ないと、きっと……いや。必ず後悔することになるぞ」

 

「後悔……」

 

「そうだ。もしかしたら主に好きな人が現れ、我らの前から居なくなってしまうかもしれないのだぞ?主は魑魅魍魎、ましてや神などではない我らと同じ人だ。人を好きになる事に理由などないのだぞ」

 

「っ!」

 

「私はな愛紗よ。後悔した生き方をしたくないのだ。だからしたいように、やりたいように生きている。だから私は今ここにいる。なぜここにいるか分かるか?」

 

「……桃香様、ご主人様の思いに賛同したからではないのか?」

 

「それもある。だが、一番の理由ではない」

 

「ではなんだというのだ」

 

「簡単なことだ。私が主を気に入ったからだ」

 

「なっ!」

 

「ふふ。主に自分の思いを最初に言うのは誰なのだろうな」

 

「せ、星!ちょっと待て!それはどういうことだ!」

 

………………

 

…………

 

……

 

そうだ。私は……私は後悔したくない!

 

「ま、待って下さいご主人様っ!」

 

私はいつの間にか駆け出していた。

 

ご主人様に嫌われたくは無い。でも……でも、それ以上に私の前からご主人様が居なくなるのはもっといやです!

 

「ご主人様っ!」

 

「おっとっ!」

 

私は勢い良くご主人様に抱きついた。

 

「すみませんご主人様……私は……私はっ!皆を危険な目に」

 

「……何も言わなくていいよ。わかってるから」

 

「はい……はいっ!」

 

ご主人様は私が落ち着くまで背中を擦り続けてくれた。

 

「うっ!……くっ……」

 

私は声を上げることなく泣いた。声を上げなかったのは武人としての意地が有り、そして、ご主人様の前でそんな姿を見られたくないと言うのもあったからだ。

 

………………

 

…………

 

……

 

「すみませんご主人様。あのような醜態を晒してしまい」

 

「別に気にすることじゃないよ。愛紗は正義感が強いからね。許せなかったんだよね」

 

「はい……ですが、私は当初の目的を忘れ袁紹に」

 

「そこまで。言わなくてもいいよ。それにあそこで愛紗が大声を上げたから。俺は冷静で居られたんだ。もし、あそこで愛紗が言わなかったら俺が言っていたかもしれないしね」

 

「ご主人様……」

 

笑顔で答えるご主人様。分かっている。これは嘘。私を慰めるために吐いた。優しい嘘……

 

「……ご主人様。一つお願いがあります」

 

「ん?何かな。俺に出来ること?」

 

「はい。ご主人様にしか出来ないことです」

 

「そっか、それじゃなにかな?」

 

「目を……目を閉じていただけますか?」

 

「目を?いいけど……これでいい?」

 

「はい。そのまま動かずに居てください」

 

「わかった」

 

私のお願いに疑うことなく目を瞑るご主人様。

 

「……」

 

桃香様……お許しください。私は……

 

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《一刀視点》

 

愛紗に言われ俺は目を閉じた。

 

すると愛紗が近づいてくる気配があった。

 

「……ご主人様」

 

愛紗の声が直ぐ目の前から聞こえた。

 

「……ご主人様、ずっと……ずっとお慕い申し上げていました……ん」

 

「んっ!?」

 

愛紗の言葉に驚き目を開けようとした直後だった。唇に何か当たる感触があった。

 

こ、これってまさかっ!

 

「っ!んんっ!」

 

「ん……」

 

目を開けると俺は言葉を失ってしまった。

 

目の前に目を瞑り俺にキスをする愛紗の顔があったからだ。

 

「……ん……ご主人様」

 

その時間はほんの数秒だったのかもしれない、だけど俺には一分、いやそれ以上の時間にも感じられた。

 

「あ、いしゃ……どうして」

 

愛紗が離れ、俺の最初に出てきた言葉がそれだった。

 

「私は……私はご主人様をずっとお慕い申していました」

 

「っ!?」

 

もう一度言われ、俺は衝撃を受けた。生まれてこの方、女の子からそんな事を言われたことは無かったからだ。いや、妹からはあるがあれは別だ。

 

「えっと……それって好きってことだよね?」

 

俺は確認を兼ねてもう一度聞いてみた。

 

「……(コクン)」

 

愛紗は無言で、でもしっかりと頷いてくれた。

 

「こんな時に不謹慎だとは思っています。皆が戦をして戦い、そして傷ついているのに。ですが、もうこの思いを心の中に留めて置けないほど私はご主人様の事を好きになってしまったのです!」

 

「……」

 

俺は黙って愛紗の話を聴いた。いや、そうすることしか出来なかった。

 

「その想いがあふれ出そうになったのが、先の呂布との戦いです。私は武人、当の昔に私は戦で死ぬ覚悟は出来ていました。ですが呂布との戦いの時、私は未練がましくも思ってしまったのです。『まだ死にたくない。まだご主人様と一緒に居たい!』と、そんな時でした」

 

「ご主人様は息を切らせながら私を助けに現れてくださいました。私はとても嬉しくなりました。またご主人様と一緒に居られると。それだけで胸が一杯になってしまうほどに」

 

「ですが、それと同時に思っても居ました。『私には勿体無いお方。ご主人様には桃香様のような物腰の柔らかいお方がお似合いだ』と。ですが、桃香様はそんな事を気にするお方ではなかった。桃香様は優しく、時には強引に私の背中を押してくださったのです」

 

「愛紗……もしかして、今日の様子もおかしかったのも」

 

「……はい」

 

愛紗はこんなにも我慢していたのか。俺はそんな愛紗の気持ちに気づいてあげられていなかったのか……

 

「……っ!ご主人様?」

 

「ごめん、愛紗。愛紗の気持ちに気づいてあげられなくて」

 

俺は愛紗を労わるようにそっと抱きしめた。

 

「良いのです。こうしてご主人様に伝えることが出来ました。これで私もあきらめ……んっ!?」

 

今度は、俺から愛紗にキスをした。せめてもの罪滅ぼし、いや。この後、俺が愛紗に言う為に自分自身の逃げ道をなくす為に。

 

「ん……俺も愛紗の事が好きだよ」

 

「っ!ご、ご主人……さま……い、ま……なんと?」

 

「何度でも言ってあげるよ。俺も愛紗の事が好きだ。凛々しい愛紗も。怒っている愛紗も。照れている愛紗も。全部好きだ」

 

俺はきっとあの時から一目惚れをしていたのかもしれない。俺を黄巾党の三人組から助けるために颯爽と現れたあの時から。

 

「愛紗……こっちを向いて」

 

「は、はい……んっ……ちゅ、んふ……あっ」

 

もう一度、今度は少し長めに愛紗にキスをした。

 

愛紗の唇はとても柔らかくてプルプルしていてずっとこうしていたかったが、そこは我慢をして離れた。

 

「それじゃ、戻ろう愛紗。これ以上遅くなると皆が心配するからね」

 

「は、はぃ……あ、あのご主人様」

 

「ん?」

 

「そ、その……て、てて手を握っても……よろしいでしょうか?」

 

「ああ。いいよ」

 

「〜〜っ!あ、ありがとうございます!」

 

「では、お姫様。お手をどうぞ。なんてね」

 

なんだか今までのやり取りに恥ずかしくなり、俺は少しおちゃらけて見た。

 

「お、おおおお姫様!?わ、わわわわ私がっ!?」

 

愛紗は俺の冗談を本気で受け取ったのか、今まで以上に顔を赤くして言葉を噛んでいた。

 

「落ち着いて愛紗っ!冗談だから!」

 

「じょ、冗談ですと!?やはり私はご主人様には相応しく無いのですか!?」

 

「飛躍しすぎだから!ほら、これでいいだろ?」

 

「あぅ……は、はぃ……」

 

愛紗の手を握ると、愛紗は落ち着いたのか大人しくなった。ホント、こういうところ可愛いよな愛紗は。

 

「?あの何か私の顔についていますか?」

 

俺が愛紗の顔を見ながら微笑んでいるのに気がついたのか首を傾げて話しかけてきた。

 

「いいや。ただ、可愛いなって思っただけだよ。愛紗の事がね」

 

「っ!かかか、かか可愛いですと!?」

 

俺の言葉にまたもすっとんきょな声を上げる。

 

「じょ、冗談はほどほどにしてください!は、早く戻りますよご主人様っ!」

 

不機嫌そうに答えた愛紗は俺の手を引っ張り歩き出した。だけど、その横顔はとても嬉しそうに、そして幸せそうな笑顔をしていた。

 

「ああ」

 

本当は冗談なんかじゃないんだけど。これ以上言うと愛紗はまた言葉がカミカミになるだろうから止めて置いた。

 

「〜〜〜♪」

 

愛紗。これからも俺の傍に居てくれよ……

 

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《桃香視点》

 

「ん〜。遅いなぁ」

 

台車の上で頬杖をつきながらご主人様たちの帰りを待つ。

 

「と、桃香様。そんなに足をブラブラさせてはその、み、見えてしまいますよ?」

 

「わわっ!あは、あはは」

 

雪華ちゃんに指摘されて慌てて服を抑える。

 

「ふむ。それにしても主たちは遅いですな。袁紹の所で何かあったのだろうか」

 

「ええっ!そ、それなら助けに行かないと!」

 

「はわわっ!落ち着いてください桃香様っ!。まだそうと決まったわけではありませんから!」

 

星ちゃんの言葉に慌てる私を朱里ちゃんは落ち着かせようとしてくれた。

 

「……あっ。ご主人様たちが戻ってきましたよ」

 

「本当っ!?」

 

雛里ちゃんは望遠鏡を覗きながらご主人様たちが帰ってきたことを教えてくれた。

 

「……あっ!本当だ!おーい!ご主人様〜〜〜〜っ!!」

 

私は遠くを見つめ、ご主人様を見つけると両手を振り大きな声でご主人様を呼んだ。

 

「ぉ〜〜〜〜〜ぃっ!」

 

「あっ!手を振ってくれたよ!」

 

私の声が聞こえたのかご主人様も声を出して手を振ってくれた。

 

「お帰りなさいご主人様。愛紗ちゃんも」

 

暫くしてご主人様たちは私達に追いついてきた。

 

「ただいま桃香」

 

「遅れてすみません桃香様」

 

「随分と遅かったですね。何か問題でもあったのですか?」

 

「えっと。まあ、色々とね」

 

「?」

 

雪華ちゃんの質問に曖昧に答えるご主人様に、雪華ちゃんは首を傾げていた。

 

「?……っ!あーーーっ!愛紗ちゃん、ご主人様と手を繋いでる!」

 

愛紗ちゃんがご主人様と手を繋いでいるのを発見して大声を出してしまった。

 

「はわわっ!」

 

「あわわっ!」

 

「ふえっ!?」

 

「ほうっ!これはこれは!」

 

「うにゃ〜。愛紗、子供みたいなのだ!」

 

「あ、い、いやこれは!ち、違います!断じて手を繋いでいたわけでは!」

 

みんなの反応に愛紗ちゃんは慌てて手を離しちゃいました。

 

「ご、ご主人様からも何か言ってください!」

 

「えっと……結構、愛紗の手って小さいんだなって思った」

 

「な、何を言っているのですかご主人様!これでは有らぬ誤解を招いてしまいます!」

 

「へ〜……愛紗ちゃん」

 

「な、なんですか……」

 

私の態度を見て愛紗ちゃんは少し警戒した表情をした。

 

「かわいい〜♪」

 

「なっ!」

 

頬を赤らめて恥ずかしがる愛紗ちゃんはとても可愛くて、すごく女の子していた。

 

「〜〜〜〜っ!そ、そんなことより!洛陽に向けて進みます!準備をしてください桃香様!」

 

「袁紹さんから許可が下りたのですか?」

 

「おおっ!そうなのだ!ご主人様の機転でな!やはりご主人様は凄いお方だ!」

 

愛紗ちゃんは朱里ちゃんの質問に待ってましたとばかり話をすり替えちゃいました。

 

「それでは詳しい方針を決めてしまいましょう。雛里ちゃん。手伝ってくれる?」

 

「うん」

 

「なら、俺も居たほうがいいよね。着いていくよ。雪華もおいで、勉強になるから」

 

「ふぇえ!よ、よろしいのですか?」

 

「はい。雪華さんの為になるならよろこんで!ね、雛里ちゃん」

 

「うん、そうだね。雪華さんにも少しずつ軍師としてお勉強を教えていかないとね」

 

「あ、ありがとうございます。朱里先生!雛里先生!」

 

「よかったね雪華ちゃん」

 

「はい!これでご主人様のお力になれます!」

 

雪華ちゃんはとても嬉しそうに答えてくれました。

 

「まったく。主も隅に置けないですな」

 

「あはは〜……ご主人様。あとでお話があるから覚悟しててね」

 

「え?な、なんで?」

 

「それはご自身で考えてみてはどうですかな主よ」

 

「?」

 

「ほれ、主よ。朱里たちが呼んでおりますぞ」

 

「あ、ああ。それじゃ行って来るよ」

 

ご主人様は納得がいっていないのか首を傾げながら朱里ちゃんたちの元へと向かっていった。

 

-7ページ-

「さてと……桃香様」

 

「ん?どうかしたの星ちゃん」

 

「これで邪魔者が居なくなりましたぞ」

 

「え?」

 

星ちゃんの言葉の意味が分からず首を傾けた。

 

「これで、心置きなく愛紗から事情が聴けると言うことです桃香様」

 

「なっ!」

 

「なるほど!流石は星ちゃんだね!」

 

「お褒めの言葉。ありがたき事です。では、早速……」

 

「な、何をする星!」

 

「いやなに。愛紗が逃げぬように捕まえておこうかと思ってな」

 

「な、なんだと!?」

 

星ちゃんは愛紗ちゃんの後ろに周って愛紗ちゃんを羽交い絞めにしました。

 

「さぁ、愛紗ちゃん。ご主人様とはどうなったのかな〜?折角、お膳立てしてあげたんだから教えて欲しいな?教えてくれないと……」

 

「お、教えないとどうすると言うのですか桃香様……」

 

「それは……えへへ♪こうだ!こちょこちょこちょ」

 

「ちょ!や、やめ、あ、あはははっ!や、止めて下さい!と、桃香さあひゃっ!」

 

私は愛紗ちゃんのわき腹や脇をくすぐり始めた。

 

「面白そうなのだ!鈴々もやるのだ!」

 

「ちょ!り、鈴々!お前は加わらなくてよ、良いのだ!」

 

「ほらほら〜♪早く話さないとやめてあげないよ?」

 

「あは、あははははっ!は、話します!話しますからやめ、止めてください!」

 

「うん。それじゃ教えてもらおうかな」

 

「はぁ、はぁ……じ、実はですね……」

 

愛紗ちゃんは息を切らせながらご主人様とのやり取りを教えてくれた。

 

「ふわ〜……愛紗ちゃん。大胆」

 

「なんと、まさかそこまでの勇気を見せるとは」

 

「はぁ、はぁ……くっ!一生の不覚!」

 

「何言ってるの!ご主人様に告白したんだから凄いことだよ!」

 

「うむ。戦では先陣をきる愛紗が恋になると億手になるというのにこの進歩。いやはや、愛の力ですな」

 

「〜〜〜っ!も、もういいだろ!私はご主人様たちの話に参加してくる!」

 

愛紗ちゃんは顔を赤くしてご主人様たちの所へと行っちゃいました。

 

「はっはっは。あんな可愛い愛紗を見たのは初めてですぞ」

 

「愛紗ちゃんは前から可愛かったよ。だけど、自分の気持ちに正直になれなかっただけなんだよ」

 

私は愛紗ちゃんの成長に、義妹の成長に喜んだ。それと同時にちょっと悔しくもあった。

 

確かに私もご主人様と口付けをしたけど、あれは事故みたいなものだったし……やっぱり、私もちゃんと告白してご主人様ともう一度口付けをしよう!

 

「うん!がんばるぞ!」

 

「おやおや。ここにも、乙女が居りますな」

 

「うにゃ?何のことなのだ?」

 

「鈴々はまだ知らなくても良いことだ。それより少し小腹が好いたな、人暴れする前に少し食べるとするか鈴々よ」

 

「おおっ!お腹が減ったら力が出ないのだ!早速食べに行くのだ!」

 

「では、桃香様。我々は少しここを離れますぞ。まあ、陣内ですから危険はないと思いますが、一応用心を怠らぬようお願いしますぞ」

 

「あ、はい!わかりました」

 

星ちゃんはそう言うと鈴々ちゃんを連れて居なくなりました。

 

「ふぅ……ご主人様に告白したいけど、今は大事な時だし、落ち着いたらかな……」

 

空を見上げて溜息を一つ。

 

でも、その間何もしないってわけじゃないよ。愛紗ちゃんにご主人様を独り占めなんてさせないんだから!だって……

 

「私だってご主人様が好きだから……それに私が始めて好きになった人でもあるんだから。絶対、負けたくない!」

 

私は一人頷き、作戦会議中のご主人様たちのところへ向かった。

 

負けないよ愛紗ちゃん!それに他の誰にも!

 

《To be continued...》

-8ページ-

葉月「二週間ぶりです。やっと研修も終わりぐったりしている葉月です」

 

愛紗「う、うむ。ご苦労だったな葉月よ。そうだ、茶などどうだ?淹れるぞ」

 

葉月「……」

 

愛紗「な、なんだその『信じられない!あの愛紗が!』と言う目は」

 

葉月「い、いや。いつも斬りかかって来る愛紗がこんなに優しい事を言うなんてと思いまして」

 

愛紗「それはお前がいつもくだらないことを言うからだろうが!私とてたまには労うさ!」

 

葉月「ま、まあ。愛紗がそう言うのでしたら一杯貰いましょうか」

 

愛紗「うむ。待っているが良い」

 

葉月「……随分と上機嫌でしたね。まあ、今回の話でやっと一刀に告白できたのですから当然ですかね?」

 

愛紗「待たせたな。茶だ」

 

葉月「ありがとうございます……それで?なんでそんなに機嫌が良いのですか?」

 

愛紗「そ、それを言わせるきか!?」

 

葉月「当たり前じゃないですか。伝えないと分からないものですよ?」

 

愛紗「うぐ!そ、その……ご主人様と、その……」

 

葉月「一刀と?」

 

愛紗「だ、だからだな……こ、こい……こい」

 

葉月「鯉?一刀は鯉じゃないですよ?」

 

愛紗「魚の鯉ではない!私が言いたかったのは恋仲ということだ!」

 

葉月「ああ。そのことですか」

 

愛紗「貴様、わかってからかっていたな」

 

葉月「何を仰いますやら。いいじゃないですか、一刀と恋仲になれたんですから」

 

愛紗「う、うむ。これでご主人様ともっと親密になれる」

 

葉月「親密ですか……閨で可愛がって貰うとか?」

 

愛紗「な、なな!何を言っているのだ貴様は!そ、そんな恥ずかしいこと出来るか!」

 

葉月「なら愛紗は一刀に愛されたくないと?」

 

愛紗「そんなことは言っていない!だ、だが、ものには順序と言うものがあってだな……」

 

葉月「初心ですね〜。まあ、そこが愛紗の可愛いところですが」

 

愛紗「う、煩い!そ、そうだ!前回、今回と私の話が続いているな。あれだろ!お前たちの世界ではこう言うのだったな。『ずっと私のたぁん!』」

 

葉月「話を逸らしましたね、まあいいですけど。確かに愛紗の話が続いていますが、いいですか?次回は当等、董卓たちがでてくるんですよ?そんなことで大丈夫ですか?」

 

愛紗「うぐ!だ、大丈夫だ。問題ない」

 

葉月「……それ死亡フラグですよね」

 

愛紗「大丈夫だと言ったら大丈夫なのだ!」

 

葉月「まあいいですけど……そうそう。言い忘れるところでしたが、次回、お待ちかねの拠点投票を行います。果たして一体誰が一位を獲得できるのでしょうか」

 

愛紗「もちろん私だろ!」

 

葉月「私の予想は、1位:月、2位:詠、3位:雪華、4位:星なんですけどね」

 

愛紗「なっ!それでは私の話が無いではないか!」

 

葉月「まあ、人気の違いですかね。こればかりは私ではどうしようもないですからね。皆さんの意思ですから」

 

愛紗「いいや。お前にも出来ることはあるだろ……」

 

葉月「な、なんですか。偃月刀なんて構えて」

 

愛紗「枠を広げろ」

 

葉月「はい?」

 

愛紗「当選枠を広げろ!」

 

葉月「そこまでしますか!?」

 

愛紗「当然だ!人が増えれば枠も増えるのは当然であろう!」

 

葉月「そんなむちゃくちゃなど通りがあるとでも!?」

 

愛紗「ある!」

 

葉月「断言した!この人、断言しちゃったよ!一刀とイチャイチャしたいがためだけに!」

 

愛紗「当然だ!ご主人様と一緒に居られるのであればなんでもする!さあ、どうなのだ葉月!」

 

葉月「わ、わかりました!考えておきますから堰月刀を仕舞ってください」

 

愛紗「その言葉忘れるなよ」

 

葉月「はぁ、はぁ……お、落ち着く為にお茶でも、ああ、冷めちゃってますね……ずずず……ぶはっ!」

 

愛紗「なんだ。茶を噴出して汚いではないか」

 

葉月「あ、愛紗さん?お、お茶に何か入れましたか?」

 

愛紗「?ああ、疲れているだろうからお茶に栄養のあるものを入れた」

 

葉月「よ、余計なことを……お、お茶はそのままで飲みたかった……がくっ」

 

愛紗「ん?寝てしまったのか?仕方の無い奴だ。では、皆のもの次回もまた読んでくれ」=

説明
二週間ぶりになります。
ようやく研修も終わりまったりしている今日この頃。

そろそろ反董卓連合軍編も終わりに近づいてきました。

前回までのあらすじ
愛紗の危機を助けたのは一刀が作った一本の偃月刀だった。
愛紗はそれを手に取り呂布と再び立ち向かう。
一刀の視線を背中に感じ、愛紗は普段以上の力を発揮して呂布と戦っていた。
そして、虎牢関も持たないと判断した陳宮は呂布と合流してその場を離れるのであった。

それではお楽しみください。

この作品では、
一刻=1時間
一里=4km
として話を進めています。

2011/10/29:誤字修正
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コメント
samidare様>そうなんですよ〜。他の方にも指摘されていて、今直しているので少々お待ちを〜(葉月)
あとがきの袁月刀って偃月刀じゃありませんか?(samidare)
西湘カモメ様>なんて非道なことをーーーっ!そんなのが出回れば私の命が無いじゃないですか!(葉月)
きさらぎ様>愛紗をもっと可愛く、もっとヤキモチ焼きに書くのがもっとうですから!次回もお楽しみください!(葉月)
jonmanjirouhyouryuki様>あはは……確かに桃香あたりが告白しそうですよね。まあ、今後も愛紗のヤキモチは治まることはないってことです!(葉月)
Nyao様>誤字報告ありがとうございます。一刀の鈍感は一生治らないでしょうね。(葉月)
berufegoal様>き、気のせいですよ。そんな人の台詞なんて!まあ、投票はどうなるかは楽しみですな!(葉月)
萌香様>投票は一体どんな結果になるんでしょね〜。そして愛紗の順位は!?(葉月)
よしっ?一刀と愛紗のキスの瞬間を激写したぞ?すぐにプリントして雪蓮さまに献上だ?あとは雪蓮さまが大陸全土にばら蒔いてくれるだろう・・・。モチロン仕掛け人の名は「葉月」さんで決まり?(西湘カモメ)
葉月さん、ご苦労様です!!次回も楽しみにしてますよ〜。 にしても、愛紗可愛すぎる!(きさらぎ)
抜けなのか → 間抜け?、居たい → いない?。愛紗の気持ちにようやく気づきましたか。これで一刀の鈍感も少しは直・・・らないか(笑)(Nyao)
一番乗りおめでとうございます愛紗さん!一刀さんに(閨で)可愛がってもらってください!!そうですね〜投票は・・・・う〜ん・・・愛紗と星にしておくとしましょうかね!(萌香)
オレンジぺぺ様>「ふぇ。そ、そんなところでご主人様とふ、二人っきり……ぷしゅ〜〜」ああ、雪華の頭から煙が!っと、恋はまだ投票には入りませんぞ!(葉月)
ブンロクZX様>ホント、公式の人気ランキングでも上位にいましたからね。愛紗も大変ですね。って、愛紗に背中から斬られてる!?(葉月)
T.K69様>ま、まだ増えるとは決まっていませんぞ!?それと、そんな映像を見せないでください!(葉月)
joker様>やっぱり毒牙に掛かるのは前提なんですね。まあ、そうじゃないと一刀じゃないですけどね。(葉月)
雷斗様>やきもちは無くならないでしょうね。さてさて、愛紗の恋路はどうなるのか!次回もお楽しみください!(葉月)
mokiti1976-2010様>「は〜〜ず〜〜き〜〜〜っ!なんでお兄様が愛紗にネトラレてるのよ!お兄様は一姫のお兄様なんだからね!」……ものすごくツッコミ満載な台詞ですね。「煩いです!早く一姫のお兄様を返してください!」(葉月)
アロンアルファ様>誤字報告ありがとうございます。袁月刀ってなんですかね。そんな武器があったらなんか嫌だなw 本当にやりそうで怖いですよね……そうなると私の負担が!(葉月)
アルヤ様>そんな気しなくても二週間たっちゃってるんですよね〜。も、もしかして私も歳か!?(葉月)
ven様>ああ、ありがとうございます……ごく……ぐはっ!は、鼻が鼻がーーーーーっ!!(葉月)
転生はりまえ$様>ですね!愛紗はこうでないと!「ちょっとー!なんで一姫とお兄様との告白がないのよ!」あるわけないでしょ!?(葉月)
スーシャン様>まあ、袁紹は寝ても覚めても袁紹ですからね。このまま変わらないことでしょう!(葉月)
やった!拠点が増えたぞ!! 愛紗さん、虹色の輝きを放つ物体を入れたらだめじゃないですか。僕の隠し撮り映像で確認しましたよ。あ、あとこの映像は一刀と星と雪蓮に渡しときますねw(T.K69)
月たちには助かってほしいです。そして種馬の毒牙に・・・(幼き天使の親衛隊joker)
愛紗おめでとさ〜ん!いやぁ、やっと思いが実りましたね。これで今後を読んでもやきもきしな………くなるのだろうか?愛紗ですし。さらに、やきもきさせられそうな……。まあ、その辺は今後に期待で。さて、次回はいよいよ月&詠の登場ですか。さてさて、どうなるんやろか?次回も楽しみにしています。(雷斗)
愛紗さんおめでとう。桃香さん頑張ってね。そして密かに手に入れた今回の一刀と愛紗さんの映像を一姫さんへ宅急便で送っておきました。もちろん差出人は葉月さんの名前になっていますのでご安心を。(mokiti1976-2010)
きっと入らなかったら偃月刀で枠を拡げますよ、愛紗なら… あと誤字報告です。奥付けで『袁月刀』になってますよ。袁家の偃月刀?(アロンアルファ)
二週間ぶり・・・・・・そんな気しない・・・・・・(アルヤ)
おつで〜すノシ口直しにどうぞ〜(・∀・)つ[わさび風味ラムネ](ven)
やっぱ愛紗はこうでなくてはデレツンデレが愛紗の持ち味だからな、ねぇ葉月さん・・・・・(後方でなにやら誰かが騒いでます)(黄昏☆ハリマエ)
とりあえず愛紗やったね!v( ̄Д ̄)v それとやっぱり始めの袁紹はバカなんだねw成長してくれることに期待(スーシャン)
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