真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 9話(上編) |
真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 9話(上編)
人物紹介
一刀(二代目)一人称:僕 雛里への呼び方:雛里ちゃん
・外形:白髪に金色の瞳、肌も日を浴びなかった白い肌。そのせいでちょっと病弱そうにも見える
・服:白いシャツの上に狼の皮で作ったジャケット、ブルージーンズ、狼の皮で作った手袋
・やってること:大陸一周を企んでいる。
・天の御使いという名について:無関心
・武器:木刀→日本刀『鳳雛』
・特徴:雛里ちゃんへの愛情が以前より外に出ている。
雛里ちゃんからの愛情表現に弱い。(良く頭がショートする)
反戦主義(先代の死によった繋がり)、人の死に関して非常に感情的。→孫策に対して軽蔑感を持っている
(先代に比べ)活動的な性格している
己の存在に常に違和感を感じるも、雛里ちゃんへの愛を持って歩き続けている。しかし、その愛が揺るがされた時……
倉(真名:遙火) 一人称:あたし
・外形:黒髪(ショットカット)日を浴びなくて真っ白な肌。体が細くて旅行用キャリア鞄にも入れる
・服:白いシャツにプルージャケットに同じくプルージーンで作ったホットパンツ。飾りとかはしない。
・やってること:友だち作り、一刀たちと大陸一周
・今までで出来た友達:真理ちゃん、明命ちゃん
・武器:木の棒→『??』
・特徴:管理者の『左慈』と『孟節』の間の娘で、炎を操る力を持っている。
幼い時になんだかの理由で森の中に捨てられ、裴元紹という前山賊群れのお頭に育てられた。
雛里ちゃんに名前を付けられる前は名前がなく倉番をされていたので皆そう呼んでいた。後の『倉』という名前の元となる。
光を浴びない場所を好む。
裴元紹おじさまを殺した孫策を敵と思っている。
雛里SIDE
蓮華さんの屋敷を出た私たちは、荷馬車に乗って豫州に向かいました。
長い道で、街道はあるものの険しい山脈の間をくぐり抜ける道なせいで、なかなか長い道になっていましたが、蓮華さんが手配してくれた馬車のおかげで、なんとか苦労を抑えて豫州までたどり着くことが出来ました。
「ここは豫州か……太守ってたしか袁術だよな?」
「はい、以前荊州刺史劉表と組んで江東の虎、孫堅を排除した袁公路の本拠地がここです」
四世に渡り三公を出した名門袁家には現に2つの派閥があって、一つが河北の冀州刺史にいる袁紹、そして豫州の袁術です。
二人は従姉妹の関係ですが、その仲は非常に悪いとか。
「しかし、袁術か………蜂蜜水が飲みたくなる名前だな」
「あわわ?何ですか、それは?」
「いや、僕が知ってる歴史だとね……あ、いや、ちょっとそれは言っちゃダメか」
普段なら天の世界にある私たちの記録について衝撃的な発言も平然とする一刀さんなのに、何故か今回は気まずそうに口を閉じました。
まるで私の記録について聞いた時と同じです。
ちなみに真理ちゃんの場合は、
『………知らない』
『!!』
こんな感じで、真理ちゃん半日ぐらい衝撃から正気に戻れずに居ました。
「まぁ、歴史だと袁術は中盤までは相当腹黒だからな……孫堅が死ぬのは……まぁ、それはさすがにどういうことなのって感じだけど…」
「…一刀、あたしお腹空いた」
倉ちゃんがそう愚痴っている一刀さんの主狼さんの皮で作った上着を引っ張りながら言いました。
ちなみにあの上着、前白鮫と戦った時匕首に斬られたんですけど、その後ちゃんと縫っておきました。
「そうですね。ここまで来るまでちょっと汝南に通った時以外はずっと野宿でしたし、私もそろそろ夜狼の声を聞かずに寝たいです」
「いや、真理ちゃん、狼にディスるなよ。あいつら最高なんだぞ。夜襲って来なかったら」
あ、さっき『なんとか苦労を抑えて』ここまで来たというのは、一刀さんは除きます。一刀さんここまで来るまでちゃんと寝ていません。寝てる間猛獣やら山賊やら会ったら危ないので夜不寝番してました。結局何も出なかったのですけど、たまに狼たちが降りてきた時は一刀さん寧ろ歓迎してて……あぁ、その話はもう二度としたくありません。
「と、とにかく、街に行って旅館を決めたら何か食べに行こう」
「はい」
「……あたし、肉が良い」
「遙火ちゃん、昨日肉食べたじゃない」
だから狼からイノシシの肉をもらったことはもう話したくありませんってば。
一刀SIDE
「……ぁ、眠い」
旅館の部屋に入った途端、僕は寝床に倒れた。
いやー、さすがに一週間も不寝番とかきつかったわ。まさかここまで汝南からここまで来るにちゃんとした家一つもないとは……
こうなると思ったらちょっと遠回りでも淮南から行ったらよかったな……そもそも何でそこに行かなかったのか……あ、孫策居たからか。
「いや、ここに来ても運悪かったら会うんだけどね」
一応袁術は淮南地方を孫策に任せているらしいけど、百合さんに聞いた話だと、何らかの理由を付けてこき使われたりするらしくて、ここ寿春に来ることも稀に良くあるらしい。
やばいよなー、あいつ会ったらまた戦わなきゃいかないんだよなー。ってか倉ちゃんがすごく暴れだすだろうな……
「……あ、そんなことどうでもいい」
寝よう。
…………
………
ガタン!
「一刀……!」
「ぶごぁ!」
突然門が開く音がして、倉ちゃんがうつ伏せになって寝ようとしてる僕の背中にのっかかった。
「……行く」
「逝きそうだったぜ……」
膝が……膝が腰に入った。
「…く、倉……僕は良いから、雛里ちゃんたちと食べに行ってくれるか?」
「……一刀、行かない?」
「ちょっと……休みたいんだ…行けそうに無いんで……雛里ちゃんにはそう言ってくれ」
「……うん、分かった」
答える倉の声がすごくしょんぼりしていたが、僕はとりあえず僕の背の上から離れてくれたら助かった。割りと本気で。
「ぐぅ……」
寝よう。
「………」
「……真理ちゃん」
「はい」
「君の部屋は向こうの雛里ちゃんたちと一緒の部屋だ」
「はい」
「……出てけ」
「てわわ、北郷さんが冷たいです」
頼むから休ませてくれ。
雛里SIDE
「……一刀、元気なかった」
「何か、ちょっと怒ってました」
「二人して邪魔するからじゃない。今日はそっとしてあげよう」
一刀さんの部屋から出た倉ちゃんと真理ちゃんが何かしょんぼりした顔で部屋に戻ってきたので、とりあえず一刀さんの言う通り、二人を連れて近くの飯店に行きました。
「そういう雛里お姉さんは、ここに来る間一刀さんと良い気分だったじゃないですか」
「あわわ、な、何のことかなぁ……」
「御者台に一緒に座って、陽気に誘われたっていいわけで馬を操ってる一刀さんの肩に頭を任せて眠ったり、夜不寝番してる一刀さんがうっかり寝ちゃったところで毛布をかけてあげたり」
「……体温を分け合うとか言いわけでそのまま一緒の毛布で眠ったり…」
「てわ?何、それ遙火ちゃん、それは初耳だけど…」
「あわわ!そんなことなかったから!」
前の2つは普通にありですけど、倉ちゃんが言ったのは完全に捏造だから…!
「……ないの?」
「ないよ!」
「……そんなの絶対おかしいよ」
「確かに、言われてみればそうだよね」
「おかしくないよ!」
何か今回倉ちゃんが私に地味に嫌がらせしてます。
「…ふっ、でも、二人とも私にそんなこと言って大丈夫なのかなぁ?」
「てわわ、なんですか、突然その自信は……」
そうです。こんな時のために私は、一刀さんに心強い武器を持たされているのです。
それは……
「私たちの財布の紐を握っているのはこの私。つまり、今二人が食べる料理の質を決める権利はこの私にあるということ!」
「な、なんだってー!」
「……そんなのずるい」
ずるくもなんともありません。これは当然な人選なのです。
一刀さんがちょっとでも余裕があったら、街で直ぐお菓子や甘いものを買って来るし、倉ちゃんに任せたら街でとんだボッタクリをされてもそのままやられてしまうに決まってます。
真理ちゃんの場合は、そもそも商売が成立しないですし。
「というわけで、食事は一人五百円(※金の単位は皆さんの目を通ってる隙に脳内変換されるようにプログラムされてあります by記録者)以内だからね」
「異議あります。その予算内では白飯以外には何も食べられません」
「……せめて大盛り可能を要求します」
倉ちゃんは手をびしっと手を上げてそう訴えました。
倉ちゃんは白飯と基本に出るおかずだけで食べてもいいらしいです。
「私たち、あまり路銀豊かじゃないんだよ。節約して行かないと……」
「蓮華さんからもらったお金あるじゃないですか」
「だからって余裕持って使えるほどじゃないの……」
「……雛里ちゃん、コレ」
「うん?」
ふと倉ちゃんは店にあった((菜譜|メニュー))を見て、一瞬驚きました。
「あわわ、何これ」
「てわわ、白飯だけでも千円越えてますね」
なんですか、このふざけた価格は。他の料理も、他のところの倍の値段になってます。
どれだけ物価が高かったらこうなるのですか?
「真理ちゃん、倉ちゃん、ここは引き上げましょう」
「…雛里ちゃんのケチンボ」
「いや、遙火ちゃん、さすがに私もこれはないと思ったよ」
真理ちゃんも値段を見てさすがに引いてます。
「……お昼食べないの?」
「うーん……さすがに食べないというわけにはいかないけどね」
「でも、ここって別に高級な店なわけでもないよね。どうしましょう、雛里お姉さん」
「旅館の女将さんに頼めばあるほどの食事は出るだろうと思うよ。材料とか買って行ったら厨房を貸してももらってもいいし」
「てわわ、その方がいいですね。手作り作ったら一刀さんとも一緒に食べれますし」
「あわっ!そ、そうだね…」
「…あたしは今直ぐ食べたい…」
倉ちゃんはさすがに理性よりは食欲が先走るのか物欲しそうな顔をしてそう言いました。
「最近はちゃんとした食事食べたことないし…代わりにちょっと豪華にするからね。倉ちゃんが食べたいもの作ってあげるから」
「………」
倉ちゃんを説得して、私と真理ちゃんは飯店を出るのでした。
真理SIDE
市場に出た私たちは、そのまま自分たちで料理を作るための材料を買うために市場に向かいました。
そして、この街の酷さが良くわかりました。
「てわわ…これはひどいです。お店であんな価格で料理を売ってるのも納得が行きます」
野菜の場合他のところの倍、肉は酷ければ五倍以上至るものもありました。
「売っているものの質自体も良くないし、人も少ない。一体ここの人たちはどうやって食べているんだろう……」
ここまで街が酷い経済状態になっているのに、太守の袁術さんは一体何をしているのでしょうか。
当然のように街の人たちの顔には活気も見当たらな……
「てわ?」
「真理ちゃん、どうしたの?」
「ちょっとおかしくないですか、雛里お姉さん」
「確かに、こんな状態を放置しているということはおかしいね…袁術さんは一体何を考えているのかな」
「いえ、そうじゃなくて、人です」
「人?」
こんなとても辛そうな経済状況なのに、少なからず市場を回っている人たちの顔には疲れの様子が見当たりません。寧ろちょっと浮かれたような笑顔で街を歩いています。
これは一体……
「ほんとだね。こんな状態なのに、街の人たちの顔に疲れが見当たらない」
雛里お姉さんも私と同じ結論にたどり着いたようです。
「……他に何かがあるのでしょうか…?」
「それはまだ解らないよ…あわわ?倉ちゃんは?」
「てわ?」
二人してすっかり街の様子を語り合ってる間に、遙火ちゃんがどこかに行っちゃったみたいです。
「てわわ、遙火ちゃーん」
またこれですか?ここでまた賊襲ってきたーとか言われたら、また同じ状況になりますよ?
「雛里お姉さん、私から絶対離れないでくださいね」
「あわわ、わ、分かったよ」
どうせお腹が空いてる遙火ちゃんのことですから、どこかで美味しい匂いがして引かれていった、とかだろうと思います。
「あ、居るよ」
「え、どこですか?」
「ほら、あそこ……」
雛里ちゃんが差した場所には、ほんとに遙火ちゃんが居ました。
遙火ちゃん以外にも多くの人たちがその店の前に立っていました。
「遙火ちゃん、ダメじゃない。一人どっか言っちゃ」
「……真理ちゃん、ここで甘い匂いがする」
「もう……」
確かに甘い匂いがするのは分かりますけど……ここは、お菓子屋でしょうか。
「倉ちゃん、ご飯も食べてないのに、お菓子食べちゃダメだよ」
「おや、お嬢ちゃんたち、お菓子が駄目なら蜂蜜なんてどうかね」
「あわわ?」
そう聞いてきたのは、店主らしい男の人でした。
店主と言っても、屋台で売っているだけですけどね。
屋台には、お菓子が少しと、となりには蜂蜜のつぼが並んでありました。
どっちかと言うと、お菓子よりも蜂蜜の方が本命って感じです。
「って、なんですか、コレ?ほんとにこんな価格で蜂蜜を売ってるんですか?」
雛里お姉さんが驚くのも無理もないのが、こんな物価の高い街で、奢侈品であるはずの蜂蜜が、他のところよりも遙か安い価格で売られていたのです。
「そうさね。ウチは価格もいいし、味も美味しいって定評なのさね。どうだ?一壷買っていくかね?」
「いくら何でも…これぐらいの価格は……」
偽物としか思えない価格を見て雛里お姉さんは帰ろうとしましたが、
「ウチの蜂蜜を疑うかね?それならこのお菓子食べてみたらどうかね。この蜂蜜がたっぷりはいったウチの自信作さね」
「……食べる」
「あ、倉ちゃん」
雛里お姉さんが止める前に、お腹が空いていた遙かちゃんの手は店主が出したお菓子に向かいました。
「<<むしゃむしゃ>>……美味しい!」
「そうさね。ウチの蜂蜜を使ったお菓子を食べた人は皆またこの店に来ることになるさね」
「……雛里ちゃん、あたし、これ欲しい」
「倉ちゃん…んもう……分かりました。買います」
「はい、毎度ありがとうございますさね」
「倉ちゃん、それ持って」
「…うん」
他のものに比べると、そう負担になる価格でもなかったせいか、雛里お姉さんもそれ以上いわずに、蜂蜜を買いました。
・・・
・・
・
蜂蜜を含めて、色々材料を書い集めた私たちは、そろそろ旅館に戻ろうと市場を後にしていました。
「……倉ちゃん、指で蜂蜜舐めないの」
「……美味しい」
「遙火ちゃん、後でご飯食べられなくなっちゃうよ?」
「……真理ちゃんも食べる」
「てわ?」
指を差し伸ばされて、私はちょっと迷ったのですが、その指を口に入れました。
友だちだし、大丈夫ですね。うん。
「…てわわ、甘いし、美味しい。確かに引かれる味ですね」
「そんなに美味しいの?」
「はい、他の蜂蜜よりも質はよさそうです」
「……何か、一刀さんがここに着いた時言った言葉が引っかかるよ」
今日一刀さんなんて言いましたっけ…確か、袁術さんについて、蜂蜜水が飲みたい名前だとか言ってましたね。意味は分かりませんけど。
「「…!!」」
「……てわ?」
私がそんなことを考えて歩いていたらふと、二人が後ろにピタっと止まっていました。
「てわ、二人ともどうしたんですか?」
「……何故あなた達がここに居るの?」
「それはこっちのセリフです。なんでこんなところで貴女達に会わなければいけないのですか?」
え?何か、雛里お姉さんがすごい剣幕で前を立ち塞がった長身の女の人と話しています。
と、思ったら、さっきまで蜂蜜ツボを持って嬉しそうにしていた遙火ちゃんも、今でも直ぐ目つきだけで人を殺せそうな剣幕で睨んでます。
一体何なのですか……?
「雪蓮、その辺にしておけ」
「ちょっと待って、冥琳、私はこの娘たちに聞きたいことがあるのよ」
「……お前、殺す」
「倉ちゃん、駄目……貴女達に話すことなんてありません。今回は見なかったことにしてあげます。それじゃあ、私たちはこれで…」
「ちょっと待ちなさい」
「雪蓮」
桃色の髪の綺麗な女性が隣の黒髪の美人さんが止めることも聞かずに、そのまま通りすぎようとする雛里お姉さんの前を再び立ち塞がりました。
桃色の髪に焼けた肌……あれは江東の人の特徴……そういえば、この前まで会っていた孫権さんもこの人と同じく桃色の髪に碧眼をしていましたね。
まさか、この人が、北郷さんたちが、あんなに憎んでいる……
孫策。
「あの日、あなたが私の首に刃を向けていた時、私は確かに一刀を殺したと思っていた。だけど半年前、私の記憶とはまったく違う男が北郷一刀と名乗って私の前に現れたわ。あなたは何か知ってるでしょう?」
「私、今後ともあなたに会いたくないってあの時言いましたよね?いつまで私の前に立っているつもりですか?」
「私の質問に答えるまでよ」
「雪蓮、いい加減に……」
これ以上場を険しくしてはいけない、そう思った私はとなりにあった屋台の日覆いを支える棒を倒しました。
幸い、場の空気から離れていた私は、完全に4人から存在を消していましたので、誰も私を止めるものはありませんでした。
そしたら、日除けの天幕が丁度よく孫策の上を襲いました。
「なっ!ちょっ、何よ、これ!」
「!」
「雛里お姉さん、今のうちに」
私は雛里お姉さんの服の袖を引っ張ってこっちに気づかせました。
「真理ちゃん」
「早く、逃げましょう」
「…分かったよ。倉ちゃん」
「…うん」
私達三人は、孫策さんが慌てている隙にさっさとその場から逃げ出しました。
冥琳SIDE
「雪蓮、大丈夫か?」
「うっ、ぷはーっ!何よ、もう!なんでそこで天幕が襲ってくるのよ!逃しちゃったない!」
天幕から顔を出した雪蓮は苛立った顔で天幕の主人である八百屋の店主をにらみ付いた。
「す、すいやせん!大丈夫ですか?」
「大丈夫も何もないよ!どうしてくれるのよ!」
「いい加減にしないか、雪蓮!八つ当たりなんて醜いぞ」
さすがに何の関係もない民に剣幕を出す様まで見ては居られなかったので少し怒った。
「っ!……ごめん、冥琳」
「…雪蓮、お前の気持ちはわからなくはないが、今は我々の過去の出来事に時間を使ってる暇はない。直ぐにでも戻って準備しなければ…」
「分かってるわよ。…分かってるけど、あんなこと、誰がやりたいというのよ」
「………」
雪蓮が言っていることは、少し前、袁術から受けた命令のことだった。
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「反乱鎮圧?」
「そうなのですよ。最近組織的に反乱を謀っている人たちが居るそうで、雪蓮さんには今回その人たちを探し出し、鎮圧させて頂きます」
「まったく、妾の領地で反乱など無礼なのにもほどがおる!孫策、直ぐにあの無礼ものどもをボッコボコにさせてやるのじゃ!」
「そうですね、美羽さま。自分が食べ物に重税を課したせいで苦しむ民たちのことはまったく考えないその仕草。よっ!天性の暴君め!そこに痺れる、憧れる!」
「うはは、もっと褒めてたも」
「そんなこと貴女達の専門分野じゃない。何でこっちが貴女達のそんな世話までしなくちゃいけないのよ」
「うーん、そうは言いますけどね、今回の反乱は少し厄介なのですよ。噂だと、今回の反乱を計画している者が、青州で有名な犯罪者の太史慈子義とか」
「誰、それ」
「自分が住んでいる街で暴政を行ってる管理を街の真ん中で殺したらしく、それから青州では英雄と挙げられたのですけど、捕まるのを恐れて隠れたと聞いたのですが、ここに隠れていたのかも知れませんね。それで、噂だと凄い猛者だとか」
「どうせ噂でしょう?管理一人殺したぐらいで英雄になれるものだったら、私は今でも英雄になれるわ」
「そうですね。孫策さんなら、そんなことも平然とできそうですもんね」
「………」
「とにかく、そういうことじゃ。孫策、早急に反乱軍を殲滅して、その太史慈とやらの首を妾の前に持ってくるのじゃ」
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豫州で起きる反乱は、袁術の暴政が原因となっている。
確かな規模は分からないが、今の袁術軍の状況は以前と違って相当弱っている。数によっては、豫州は本当に転覆するかもしれない。
だが、それでは私たちの夢を叶えることができない。
孫呉の独立と袁術への復讐を成すためには、我々の手で袁術を打ち砕かなければならない。
この状況に便乗するにも今の我々じゃその次を備える力を保ってない。
袁術に従った袁家の爺どもの残存勢力も考えたら、豫州を完全に孫呉の手中にするのは無理がある話だ。
結論的には、ここは袁術の言う通りにこの反乱を鎮圧する他方法がない。
それがたとえ『どんな手段を使ってでも』だ。
「冥琳、あの娘たち追うわよ」
「雪蓮!」
雪蓮が今回のことが釈然をしないのはわかる。当然のことだ。
私も元々ならこんな裏がありそうな気持ちわるいことしたくない。
だが、他に手が見当たらない。
そんな時に彼女らを見つけたのだ。
「良いから」
「なっ、ちょっ、雪蓮」
雪蓮に腕を引っ張られながら私は考えた。
あの時の怒気に満ちていたあの水鏡の弟子の顔を。
正気を失って私に剣を振るって来た雪蓮の前に、私を庇って身代わりになった北郷一刀の最後を。
あの時私がもっと早く気づいていたら、ここまでは来なかったのかもしれない。
だけど、いつまでもそんな過去のことを考えていては前に進めない。
私は雪蓮の軍師だと。百合が、深月が雪蓮のものを離れてからも、私は雪蓮を支えなければならないと。
そう自分にいいつけながらここまで来た。
なのに、何故ここまで来てまたあいつらに会ってしまったのか……
雪蓮SIDE
ちっ、逃がしてしまったわ。
なんなのよ、丁度いいところで天幕が落ちてきて……
そもそも、私は何故あの男を探そうとしているのかしらね。
さっきまで袁術の所で受けた指令で苛立っていたのに、街を歩く途中で―忘れもしない―私が初めて許しを乞った女が見えた。
私より強いわけでもないその娘に剣を突かれて何も出来なかったあの夜の出来事が未だに目に移るように鮮明。
あの日、私は北郷一刀と名乗る男を殺した。しかも、私の記憶にもない内に……
だけど、妖な力に操られていたとは言え、彼を殺そうとしていた私の意志は本物であったのかも知れない。
彼に否定された私の力、義、夢、誇り、それが許せなくて私はその剣を握ったのだった。
そして、全てが終わった後、私は後悔した。
なのに、半年前、彼がまた現れた。
冥琳は信じてくれなかったけど、私は確かに見たのよ。
姿は違えどその物言い、力、確かにあの夜私が殺した男のもの。
私は確かめたかった。知りたかった。あの日、あの時彼に出会ったこと。
それが私にとって何の意味を持つのだろうか。
市場から出ると、丁度街を角を曲がるあの娘たちの姿が見えた。
確かあそこは宿屋が並んでる区画だったはず。
間違いないわ。あいつは今ここに居るのよ。私の勘がそう言っているわ。
一刀SIDE
がちゃ
「一刀さん、大変です!!」
「ぶごぉーっ!」
大の文字にだって寝ていた僕のお腹を的確に全体重を乗せて加撃する見事な攻撃をした主人公が雛里ちゃんだと認識した時、僕は彼女を武闘家として鍛えようと思った。
軽い精神錯乱状態だった。
「アイツら居ました!もうすぐここに来ます!」
「雛里お姉さん、落ち着いてください。さっきの剣幕はまるで嘘のように取り乱してます!」
「……準備は出来た。ここで迎え討とう」
「遙火ちゃんも門に向かって構えなくて良いからー!」
三人が何やら慌てているということは良くわかった。
真理ちゃんがなんとか混乱状態を解除しようと頑張っていたが、僕が見た限り彼女の存在は混乱の渦の中消されていた。
「と、とりあえず、雛里ちゃん、『頭を冷やそうか』」
あ、間違えた。
「落ち着こう、雛里ちゃん。ちょっと深呼吸しようか、後僕の上に乗ってるのもやめて」
「あ、はい、すー、はー…すーはー」
僕から離れてベッドの上で深呼吸する雛里ちゃんの両手には食材を詰めた紙袋があった。
お昼、食べてきたのではなかったのか?
「ふぅ…はい、落ち着きました」
「そう、良かったね。それじゃ……真理ちゃん、どういうことか説明してくれる?」
「あわわ!?」
「てわわ?私ですか?えっと…」
ちょっとやられた分返したくなったので意地悪してみた。
「お店でお昼を食べようとしたのですが、あまりの物価の高さに絶望して市場で材料を買って帰ろうとしたら孫策さんに逢いましてそのまま逃げてきました」
「……何?」
孫策がここに……!
そうなってしまう可能性もある程度あったのだけど、僕が居ない状態で会ってしまうというのはさすがに想定外だったな。
僕がちゃんとしていれば皆を危険な目に合わせず済んだのに……
「ひとまず逃げてきたのですけど、追いかけてくるのも時間の問題でしょう。北郷さん、どうしますか?」
「……そうだな」
あいつの方から探す以上、こっちから打つ手はない。
こんなに早くバレてしまうとは……
「雛里ちゃん」
「は、はい」
「それ、何か作ろうと持ってきたんだね。真理ちゃんの話だとご飯もまだのようだし、何か作って食べよう」
「はい?」
「そんな悠長にして大丈夫なのですか?」
「慌ててどうするよ。二人とも軍師目指してるんでしょう?冷静さは軍師の基本だよ」
「あう…」
「てわわ……」
「そして、倉」
「………何」
僕はその時まで凄い剣幕で武器を構えている倉を向かって言った。
「僕たちが旅をする前に誓ったことを思い出せ。その上でも孫策への私怨を晴らしたいと思うのなら止めはしないよ」
「………!!!……そんなのずるい」
僕が言うことの意味を理解したのか、倉は怒った顔で僕に迫った。
「…あいつのせいで全部死んだのに……おじさまも…皆死んだのに……!」
「知ってる」
「……一刀も殺されたのに…」
「……だから、そんな僕が言うこと、倉ちゃんは聞いてくれるって、僕は信じてるよ」
「……!!」
こんなにまでは言いたくなかったのだけど、倉には復讐心に飲まされて行動するようにはさせたくない。
世界をやっと知り始めた娘だ。そんなこと、死んだ裴元紹も望んでいないだろう。
「……うぅ……」
「泣いても良いよ。でも、孫策のことは僕に任せて」
目の前で悔しそうに僕を睨んでいるその少女を安心させるほどの器用さは僕にはない。
でも、ただ憎しみだけで孫策を裁くと思うのなら、それは孫策の間違いを裁いたとは言えないんだ。
「…………一刀」
「うん」
「……あいつ、殺すの?」
「倉は、僕が孫策を殺して欲しいの?」
「……ううん、一刀はそんなこと出来ない」
「そうでもないよ。僕も孫策がまた倉にしたようなことをしたら迷いなくあいつを殺せる」
「……それでも、一刀に殺させたくない」
「自分で殺したいから?」
「……ただ、一刀が人殺すの、見たくない」
「!」
……そうなんだ。
「ありがとう、倉は優しい娘だね」
「…だから、一刀が孫策殺しそうになったら、その時はあたしが孫策殺す」
「…………」
そうならないと良いね。
僕は倉に向かって微笑みながら彼女の頭を撫でた。
「…ね?雛里ちゃん、ご飯食べよう」
「……一刀さん」
「………」
「…分かりました。一刀さんに任せます」
「ありがとう、雛里ちゃん」
僕はもう片方の手で雛里ちゃんの頭を撫でた。
「あうぅ……」
「二人とも、心配してくれてありがとう。でも、孫策の目的はきっと僕だし、僕も孫策には用がある。だから、今回は僕に全部任せてくれ」
「…うん」「はい」
僕の我侭なのだろうか。
それだとしたら、二人がとてもいい子って意味になるだろう。
「……そして、真理ちゃん」
「てわ?」
「どうして、僕の膝の上に座ってる?」
「何か仲間はずれでしたので…私の頭も撫でてもらえますか?」
「手が足りないね」
「じゃあ、このまましてるしかありませんね」
「あわわ、真理ちゃん、この手を貸しますのでそこを退いて」
「だが断ります」
「いや、これ僕の手だから…」
・・・
・・
・
あとがき
はい、皆さんこんにちは、TAPEtです。
「どうも、さっちゃんです♪」
というわけで、豫州反乱編が始まりますが、
「そうですね」
さっちゃんの出番今回ないよ
「酷っ!私と遙火のラブラブシーンは?」
いや、そんなものは最初からない
「作ってよ!」
だが断る。
というわけで、こうして新しい話を始める前に、皆さんにお詫びしようと思います。
最初これを書く時、3編で終わらせるとかふざけてましたが、現在執筆中で、発端だけで3編使っちゃいました。
というわけで、今回もまた白鮫江賊団の話みたいに長くなるかもしれません。
後、予告の話ですけど、以前と同じく、あれはまだ書いて無い時に勝手にこんな展開だと良いなとか思いながら書いた、謂わば釣りですので、実際そういう展開じゃなくてもご了承ください。
まだ多く書いてないので語れませんが、今回の一刀はひとまず孫策と一緒に行動することになります。
なんか書いていたら地味に孫策と一刀と似たもの同士になってきて『あるぇ?』となっている作者です。
「まぁ…遙火の出番増やしてくれたら私はどうでもいいんだけど」
それが今回は戦いする予定はあまり入って居ないからね……どうなるかは約束できないかな。
あ、後、金髪のグゥレイト―さんが先日新しく作ったオリキャラ『楽就』が袁術軍だということで、緊急で入れようとなんとか頑張ってます。丁度見た目も倉と連れ合いそうなんで、紀霊と一緒に絡めるよりはずっと楽かなぁとか思っていたりします。
「なんで敢えて金髪さんのオリキャラ入れるの?」
だって自分でキャラ作るの難しいし。あと許可はとってないけど金髪のグゥレイトさんのオリキャラの詳細設定とかも作れるでしょ?真理ちゃんとかすっかりサブヒロインからメインに上がって来そうだし。
「遙火は?」
倉は完全僕のオリジナル設定だけど……てかヒロインって、お前一刀に遙火抱かせるつもり?
「シニタイノ?」
冗談だって……
この外史だと一刀は雛里ちゃん一途だから……多分。
「随分と弱気でまぁ……」
ちなみに倉の場合、読み方は元キャラの「○倉」からして『そう』と呼ぶようにしていたけど、作者は最近自分でも『くら』と呼んでいます。皆さんは読む時倉のことどう読んでいますか?答えによっては設定が変わりますので教えてください。
てな感じで今回のあとがきはこれでお終い。
では、次回でまた
ノシノシ
「バイバーイ」
説明 | ||
真・恋姫無双の雛里√です。 雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。 それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。 コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。 やっと着いた豫州 ここではちょっと楽に出来るかなぁと思ったらそうでもなさそうです。 いや、寧ろこっちの方が前のより忙しくなるかも? 一刀たちと孫策の再会、豫州の反乱、そして裏で己の欲が操るまま動く傀儡になってしまった人間の姿が…… もはや恋姫とは関係なく完全にオリジナルストーリーを開拓しているこの外史ですが、よろしければ見ていただければ幸いです。 |
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生えるのか!生えるのね!一刀の後ろの貞操が雛里ちゃんに・・・(ごくり あれ?TINAMIで書けなくね?(通り(ry の七篠権兵衛) 初日から孫策に出会うとはついていないですね。明らかにおかしい蜂蜜もあるし……今度はどんな厄介事やら……(山県阿波守景勝) アルヤさん>>この外史において言うだけ野暮な話ですよねー(TAPEt) 通り(ry の名無しさん>>寧ろ生えたりしたら(誰得?!(TAPEt) 所々にネタがちりばめられてるwwwwww(アルヤ) ・・・って、なめたら雛里がぼんきゅっぼんになる効果があったりしたりして・・・(通り(ry の七篠権兵衛) なんか怪しい薬が入ってそうな蜂蜜だー!?(通り(ry の七篠権兵衛) |
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