双子物語-13話-
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 ピンポーン…ガチャッ

 並ぶ住宅街の一つの家のインターホンを押した後、少ししてからメガネのちょっと

無表情な男の人が出てきた。その人はやや表情を変えながら嬉しそうに私の前まで

歩いてくる。

 

田之上「来てくれたんだ、ありがとう。悪いね、俺のために時間を割いてもらって」

雪乃「いえっ、ですが。少し頼みたいことがあるんですが…」

 

 私は昨日の彩菜のことを頭の隅に入れながら田之上さんの手伝いをすることにした。

私の性格上、頼まれたことを途中で切るのは嫌だから。せめて、それが終わってから

行きたかった。そのことを、田之上さんに頼んだのだ。

 

** ****

 

「プレイボール!」

 

 審判の声があがった。ユニフォームに身を纏った選手達が相手と正面と向かって

挨拶をする。ただ、相手の態度が私と楓夏先輩を見るに、少しニヤニヤしているのは

女だからって理由だろうか。その態度にイラッときた私は楓夏先輩とアイコンタクトを

交わし、頷く。油断している相手をコテンパンにのしてやろうじゃないか。

 それにしても、まだ雪乃はこない。まぁ、話し半分に聞いていたから来ない可能性は

高いかもしれない。そのことが私のやる気を著しく下げるのだ。なるべく考えないように

しよう。そう、決めた。その時、近くに小夜子先輩が一枚の紙を見せてきた。

本日のオーダー表だ。ええと、向こうは1番ショート、2番センター…とポジションから

して足早いのが先頭にくる、オーソドックスな打順。こちらは…。

 

彩菜「私が…4番!?」

小夜子「ふふっ、あくまで実験でね。気楽にがんばってね」

 

 と言われてもさすがに緊張する。一番荷が重いポジションなのだ。守備はライトなので

守備にはあまり緊張しないが、これはちょっと。悩んでいる間に、風上先輩が勝手に

号令をかけて試合を開始させた。ん、まぁ。確かにこれは練習なのだ。

 いつもどおりの自分でいればなんてことはないはず。そして、もう一度全体の

スタメン表を確認すると、1番、2番がセカンドショートの生田兄弟。

3番が風上先輩で4番が私。5番楓夏先輩、6・7・8・9番と山田・竹橋・工藤・

大地くんと続く。うわぁ、大地くん期待されてないなぁ…。

 そうして、いつの間にか、1回裏1アウト1・2塁で私の番が回ってきた。

ああ〜こんなとき。雪乃が来てくれていたら心強かったんだけどなぁ。

まだ姿も見えやしない。向かってくるボールを見ながら私はミートすることだけを

考えて振りぬいた。

 

** ***

 

 なんだろう、そわそわする。昨日にない緊張感が私の中で沸き立つ。おそらく、

この作業ではない何かを察知しているのだろう。そう、何かというと彩菜のことだ。

いつもなら躊躇なくこの身はその場所へと移動しているに違いないが今は頼まれたことを

ただこつこつ積み重ねている最中だ。思ったよりも進みが速いそうで意外なことに

この作業は私には向いているみたいなのだ。教えられたらすぐに実行できたことに

自分でもびっくりしたのだ。現在、ベタ塗りが終わってトーン貼りというものを

やっている最中である。

 

** ***

 

 

 4回が終わり、0対0。大地くんがレフトにもかかわらず盛大なエラーをしてくれる

おかげで冷や冷やしていたが、他の先輩たちの華麗な守備によりなんとか失点は

免れたのだった。ベンチに下がって私は大地くんにチクリとトゲを刺す。

 

彩菜「とんだ、小学生エースね」

大地「ぐっ、言ってしまったもんはしょうがない。それより彩菜ちゃんもどうなのさ」

彩菜「うぐっ」

 

 人にとやかく言う成績じゃないのを突かれてはもう何も言えはしない。私の成績は

2打数2三振の散々な状況。相手チームに笑われても仕方ないということか。

が、私の代わりにというか。楓夏先輩が1打席目に二塁安打を放っているから

相手も気持ちを引き締め始めていた。こうなるといよいよ私もより打てなくなりそうで

やれやれだ。

 

風上「どうした、いつもと違って動きが硬いぞ」

大地「えっ、僕ですか?」

風上「違う、お前じゃない。澤田のことを言っている」

彩菜「ごめんなさい・・・」

風上「…いつもより力を入れすぎている。もっと肩の力を抜け」

 

 私の肩をポンポンと軽く叩くと去る間際に大地くんには「植草は基本もなってないから

今後は猛特訓だな」と試合中なのに更なるプレッシャーを与えていた。その重圧による

せいか、おかしな動きをしていた姿を見た私は指を差しながら大笑いしていた。

 そして私の三打席目に甘く入った外角高めの抜けたスライダーを私は見事に捕らえて

流し打ちを放ちレフト前に落ちたボールを確認して一塁でストップした。本格的な試合

での初ヒットに私はワクワクドキドキしていた。

 

** ***

 

 時間が経つのは早いもので、原稿の手伝いもそこそこは進んでいたが。それと比べると

時間の進みの方が異常に早いことに驚いた。彩菜は今どうしているのだろうか、徐々に

そっちの方が気になり始めたがまだ約束のノルマまで進んでいない。これはマズイ。

 

雪乃「いっ…」

 

 別のことを考えていたら指を切ってしまっていた。傷は浅いので少し血が滲む程度で

済んだ。田之上さんはすぐに気づいて絆創膏を持ってきてくれ、その上、気遣いまで

させてしまった。でも私にだって意地はある。一度受けた仕事はどんなことがあっても

仕上げる。しかも、今回は初体験のことで次があるかわからない。私は田之上さんの

言葉を受け入れずペットボトルのお茶を一口飲んでからもう一度集中して作業を再開

した。

 

** ***

 

風上「すまん、逆転された」

楓夏「お兄ちゃん、私のリードをことごとく無視してくれたわね」

 

 不満げな楓夏先輩と風上先輩が2点取られて戻ってきた。前は私がホームに

戻って1点取っているから1点差で負けている状況である。もう7回、そろそろ

本格的に危なくなっているものの、練習試合だからか、あんまり気を張っているのは

少ない。やはりこういうときでも張り切ってしまうのが一年生というものだろうか。

 ヒットこそ割と出ているのに得点に絡んでいないのは繋がりが悪い証拠。

特に私と大地くんの成績は散々。じっと考えていると頬に冷たい感覚が襲って変な声が

出た。そこにはジュースを買ってきてくれた三島先輩が私にそのジュースを手渡して

くれた。スポーツ飲料で少し甘味と酸味がきいていた。そろそろ、雪乃にも見にきて

欲しいな。今日はもう来ないのだろうか、と少し寂しい思いを感じていた。

 

** ***

 

田之上「ごめんね、手伝わせちゃって」

雪乃「いえっ、まだ途中だけど・・・」

田之上「もうここまでくれば十分だよ。ありがとう」

 

 他人から、しかも異性に優しい言葉をかけられたことが少ない私には新鮮で

顔が熱くなってきた。顔が熱くなるなんてことは熱出したとき以来だから

一瞬どっちかわからなくなったが。今はそれどころではない。せっかくの彩菜の

試合を見ないわけにはいかない。玄関でそうやりとりをしてから深く頭を下げて

軽く走り出した。

 

雪乃「はっ、はっ」

 

 全力で走るとすぐに倒れそうと予感していたから、ゆっくりとそれでも歩きよりは

早くしようとした。どんな相手かもわからないからアドバイスはできないけど、

自分なりの応援をしてやろう。そう考えながら走っていると学校のグラウンドが見えて

きた。私の通っている学校はグラウンドがかなり広いのでよく他校の練習試合とかに

使ったり、借りられたりしている。正門を入ってわき道に入ってグルッと回ると

すぐに目的地が見えてきた。建物と建物の間を狭い場所を過ぎると先輩たちの

ベンチが見えて、息を切らしながら向かって試合の状況を確認。1点負け越しの

2アウト。最終回!

 

雪乃「次は・・・。彩菜?」

 

 しかしどうしたことだろうか。彩菜の目がやや虚ろになっていて今にでも折れて

しまいそうな顔をしている。彩菜らしくない、いつものやる気と自信はどこにいったのか。

私は声にならない声で必死に呼び止めるが誰も気づかない。しかし、双子だからだろうか。

そんな蚊のような声で遠くにいた彩菜だけは私の姿をはっきりと捉えていた。

 だから、私はこう言った。「しっかり腰を落とし、ヤマを張って…」

 

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 驚いた。夢でも見ているのだろうか、全く打てずに心が折れかけていたその時、私の

前に天使が誰も聞こえないような声で囁いていた。そして、私にアドバイスをして

こう元気つけてくれた。「腰を落としてヤマを張って、フルスイングしろ」と。

 膝に手をかけて息切らしている天使、もとい。雪乃が来てくれていた。私の冷えた

心が今、マグマがわきあがるように鼓動の音が耳に打ち付けられた。

 

審判「さぁ、早く入って」

彩菜「はい!」

 

 審判に注意され終わる前に私はすぐにバッターボックスに入っていつものように

構える。ダメで元々、私らしく振舞えば自然と結果が向こうからやってくる。

だから、目の前のことを悔いなく精一杯やってやる!

 迫ってくるボールを私は渾身の力を込めて振った。

 

 

 

彩菜「ただいま〜」

雪乃「ただいま」

 

 泥だらけで帰ってきた二人の娘を見て、お母さんはニヤニヤしながら試合の結果

を心待ちにしていた様子。そのせいか、今日は仕事にも身が入らなかったという。

 

菜々子「で、どうだったの?」

彩菜「うっ、負けました…」

 

 シュンッとして頭を垂れる彩菜を見て、私は少し前のことを思い出していた。

しっかりと振っていたが、読みがズレていてことごとく空振りになり三振をとられて

ゲームセットしてしまったわけである。その後、私に彩菜が無言で抱きついてきて

私の胸元に顔を押し付けて唸っていた。よほど悔しかったのだろう。

 そのせいで、プレーで泥だらけになった服で抱きつくものだから私も一緒に

汚れてしまったのだ。みんなの視線が気になって慰めることもままならなかったから

なんとか言葉で落ち着かせて、なんとかかえってきたのだ。

 

菜々子「よかったね」

彩菜「どこが!?」

菜々子「だって、それだけ感情的になってるんだもの。楽しくないわけがないじゃない」

 

 お母さんにとって「楽しい」は感情の起伏によるものらしい。わかるようなわからない

ような。でも、彩菜にはわかったみたいで、すごく感動したのか。目をウルウルさせて

叫んでいた。「楽しかった」って。それから最近めっきり一緒に入ることがなくなった

お風呂を今日は彩菜と私とで一緒に入ることにした。

 湯煙の中、彩菜がはしゃいで手でお湯を水鉄砲のように飛ばしたりして子供っぽい

ことをしていたが。たまにはいいかもしれない。彩菜だって環境が急に変わったのだから

時々はこうやって子供に戻るのがちょうどいい。

 そして、同時に。彩菜の弱い面を垣間見えて私は少し彩菜に優しくなろうと思った。

 

バシャッ!

 

彩菜「ゲラゲラゲラ」

雪乃「あ・や・な・・・?」

 

 可能な限りは…。

 

 

 次の日、朝練はなかったのだが早い時間についてしまったので。私と彩菜は野球部の

部室に向かっていく。すると、こういうときでも一生懸命に動いている三島先輩がいて

何をすることもなく、ジッと三島先輩を眺めている風上先輩が居たのだった。

 

雪乃「手伝わないんですか、掃除」

風上「ああっ、これは小夜子の仕事だからね」

 

 だからといって、何もしないで動きまくっている三島先輩に悪い気がするけど。

彩菜を見た風上先輩は立ち上がっていつものように声をかけてきた。刹那、ビクッ

とする彩菜だったが風上先輩の口からは彩菜の褒める言葉が出てきた。

 

風上「相手のピッチャー。お前のこと「良いバッターだ」って言ってたぜ?」

彩菜「え?」

風上「彩菜は配球には気を配らなかったが闇雲に振らなかったろう。その気迫が

 相手を追い詰めていたというわけだ。結果は失敗に終わったがお前は良い選手に

 なれる。安心しろ」

 

 その言葉に、彩菜は気をよくしてか元気に返事をした。それから、私と彩菜は三島先輩

の手伝いをしてから教室に入ると大地くんが机に顔を突っ伏して微動だにしなかったので

恐る恐る声をかける。

 

雪乃「どうしたの、具合でも悪い?」

大地「んーん。これからは先輩にしごかれると思うと憂鬱で・・・」

彩菜「あー・・・」

 

 序盤は見ていなかったからわからなかったが、彩菜の話しから大地くんは終始

へっぴり腰で打席で打てなかったから私たちが行く前に部室に訪れたときにすごく

説教を受けたようだ。そして、これからは練習量も半端無いということも察することが

できる。

 

大地「辞めようかなぁ・・・」

雪乃「あれ、でもそんなことすると。三島先輩にますます会えなくなるよ?」

 

 大地くんは三島先輩が好きなはずだから学校での楽しみをむざむざ無くすことは

しないはずだが。その予感は的中して、ぶつくさ言いながら先ほど言った言葉を

撤回していた。女がかかると男って奴は随分変わるものだ。

 私は彩菜の顔を見てお互いに苦笑した。色んなことが一段落したせいか、授業内容

がはっきりとしてきた。それとも、学校に慣れ始めたからだろうか。

 どっちにしろ、あんまりよくなかった成績も徐々に上向きにあがっていた。

それと、最初の頃よりクラスメイトが話しかけてくる人数が増えた気がする。

やはりこの白い髪の毛と参加し辛い体育とかの影響で腫れ物に触るかのような態度

だったし、悪口も聞こえたりしたけど。それも、大分減った気がする。

 休み時間に入ってから、大地くんは男友達とおしゃべりしたり、私も少し

話しする機会が増えた女の子と軽く会話して時間を潰せた。

 

彩菜「雪乃〜、ここ教えて〜」

雪乃「あれ、これってこの間教えた公式でできるところじゃない」

彩菜「うそぉ、全然解けないよ?」

雪乃「しょうがないな。ここをこうして・・・」

 

 彩菜の汚い字で大雑把に書かれた隅にカリカリと音を立てながら書いていく。

見慣れた順序まで来るとようやく彩菜の口から「なるほど」と聞こえてきた。

後の問題も同じようにすればいいから、とノートを彩菜に返すと次の授業に入った。

 

県「中学の先生になったから楽しみが減ってしまったわ」

雪乃「なんですか、急に」

県「以前と同じ距離にいるのに、あなたたちとは前より距離を感じるわ」

 

 放課後、私がカバンに教科書とかノート等を整理しているとつまらなそうに

人の顔を覗きこんでいる県先生。そんな、いい年して上目遣いとかやめてください。

とは、なかなか口に出せなかった。

 

雪乃「彩菜だって私だってやることはあるんですから」

県「あーあっ、野球部だって顧問既にいるし。授業ばかりじゃ退屈〜」

雪乃「しょっちゅう勤める場所変えるからそうなるんです!」

 

 その時、他の先生が慌てるような表情で県先生の前まで来ると青ざめた男性教諭が

驚くべきことを告げていた。間違っても冗談じゃないだろうし、冗談じゃすまない

内容だった。

 

教諭「野球部の顧問の先生が事故にあって、命に別状はないらしいですが」

県「あらぁ、大変ね。でも、命に関わることじゃなくてよかったわ。後でお見舞いに

 いかなきゃ」

教諭「そうしてください」

 

 男性教諭の後についていく途中、県先生は私に振り返って軽く片方を瞬きをしていた。

えっ、まさかそんなはずは。と思いつつも、この人はやりたいことが急にできると

何をしでかすかわからないところがあったので、その思った不安は拭い去れなかった。

 あまりの急展開に私はふらつきながら教室を出ると暇そうに彩菜が待っていた。

私の顔を見るにすぐ心配そうに見ている。さすがに今のは顔に出てしまう。

 

彩菜「雪乃、顔色悪いよ。大丈夫?」

雪乃「うん・・・あのね、彩菜」

彩菜「なに?」

雪乃「県先生だけは敵に回しちゃダメよ」

彩菜「?」

 

 私の言いたいことは理解できていない緩みきっただらしない顔をしていたが

もう一つ、顧問が県先生に代わったよ、というと両手を挙げて大喜びしていた。

ものすごく不謹慎だからやめろ、と手を下ろさせた。

 

 そして、帰り間際に部室に誰かいるかなと覗き込む前にグラウンドで大地くんが

先輩にしごかれていた。しかも妙に嬉しそうなのは、三島先輩が見つめているから

だろうな。何も知らないというのはここまで可哀想なものなのか。

 誰がどう見たって三島先輩は風上先輩のことしか見ていないというのに。

 

雪乃「今日は二人で帰ろうか」

彩菜「うん」

 

 帰り道、ふと思ったことがある。あの原稿はどうしたのだろうか。無事に終わった

のだろうか。まだ携帯というものを所持していないせいか連絡も取れないので

非常に気になったが、こちらからではなかなかコンタクトできないし、相手もしてこない

のでそうそう会えることもないのだ。近所だというのにおかしな話があったものだ。

 

田之上「ああ、雪乃ちゃん」

 

 そうしたらどうだ、こういう風に何気ないときに会うこともある。しかも田之上さんの

自宅前だった。

 

雪乃「久しぶりです」

彩菜「・・・」

 

 あからさまに嫌な顔をする彩菜の横っ腹に肘を打ち込み悶絶している間に会話を

済ませてしまおう。

 

田之上「前はありがとう、なんとか間に合ったよ。お礼といっては安いけど。本、いるかい?」

雪乃「欲しいです」

田之上「じゃあ、今とってくる」

 

 そういって中に入ると、彩菜がようやく痛みから解放されてから涙目で私に訴えてくる。

 

彩菜「何をする」

雪乃「もう少し表情緩めて、失礼でしょ」

彩菜「はっ、あいつに失礼ってこたぁないでしょ!」

 

 

 少しして田之上さんが戻ってくると、さっきと変わらない体勢で苦しんでいる彩菜を

見て心配するが、私は「平気です」と即答してから本をもらった。そうして、田之上さん

との他愛ないやりとりはすぐに終わってそこにいる用事もなくなってしまったから

彩菜の手を引きお辞儀をして家まで向かったのだ。

 

 

彩菜「死ぬかと思った」

雪乃「自業自得」

 

彩菜「もう、あんなオタクのどこがいいのさ!」

雪乃「それ言ったらこれ読んでる私もオタクと言い張ってもいいのよ」

 

彩菜「うぐぅ」

雪乃「それに、面白いもの。あの人の作品は」

 

彩菜「ううぅ」

 

 彩菜が作品に関して文句が言えないのは「うっかり」読んでしまって楽しんで

しまったために何も言えず唸っているのだ。彩菜にとっても可愛がっている妹を

取られるのは面白くないのだろうが、反応が一々大袈裟で私の対応も大変だ。

 そして、定番として拗ねるので頭撫でてあげるだけで機嫌がよくなるのだから

そこんとこは楽だけど。あれ、それって妹としての対応じゃないよね?

 

雪乃「あのさ」

 

 なでなで。

 

彩菜「なに・・・?」

 

 なでなで。

 

雪乃「これじゃどっちが姉だかわかんないって」

 

 なでなで。

 

彩菜「私がお姉ちゃん」

 

 なでなで。

 

雪乃「そういう意味じゃなくて、まぁ・・・いいや」

 

 もうどうでもよくなった。とにかくこれから、この子の操縦するのはけっこう大変

ということだけはよくわかった。そして、同人誌を読みながら撫でるのも慣れてるのも

どうなのか。一つため息を吐いて後、下から定番の夕ご飯の御呼ばれが聞こえたのだった。

 

 

説明
過去作より、書き手の野球好きのせいでこれより野球中心の話になってしまいます。あんまし上手く表現できなかったのは失敗したかなって今では思ったり^^;ここで出る先輩方の話もあるんですが、上手くまとまりませんね。
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