歩幅から始まるツンデレ
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 Kは歩くのが速い。

 足が長いので歩幅があるせいもあるが、周りの景色や風景を見ていないせいもあるだろう。

 別に目的地もないくせに、ただ前だけを見てズカズカと歩いていく。

 

 Rは、いつもそんなKの後ろを結構な早足でついていく。

 草むら、険しい山道、砂利道……。

 とにかく、ついていく。

 

 Kは休憩をとらない。とにかく、歩きっぱなしである。

 そうすると段々、Rの内股がヒリヒリ痒くなってくる。

 そうなってくる頃には、疲れもピークに達している。

 元々ついていた歩みの差が、増々出てくる。思わず道に座り込む。

 

 Rが「先、行ってていいぞー」とKの背中に呼びかける。

 ……しかし、もちろんKは振り向かない。

 

 別にいい。それでいい。

 私が勝手にKについていっているだけなのだ。

 Kは私に気なんて使う必要がないのだ。

 Rは水を飲んだり足をマッサージしたりと適当に休憩してから、再び歩き始めた。

 

 しばらく道を進むと、Kの姿が見えた。

 ……あのKが立ち止まっている。何かあったのだろうか。

 近くに寄ってみると、Kは手に何かの実を持っていた。

 

「よぅ。……おい。食うか?」

 KがRに実を差し出した。Rは面食らった。

 Kが、憎い男の娘である私なんぞにそんな親切をするわけがない。

 ……そうか、これは何か“毒の実”なのか。

 Kが「死ね」と願ったのなら仕方ない。私は喜んでその毒の実を食らおう。

 Rは決心して、差し出されたその実を食べた。

 

 実は甘じょっぱくて、汁気があった。

 

「………………あれ?」

 食べても何も起こらない。苦しくならない。

「……なぁK。コレ、遅効性の毒なのか?」

 それを聞いて、Kが若干挙動不審になった。

「そ、そうだよ!  ……ははは! 毒が効いてくるのが楽しみだ!!」

 ふとRが頭上を見ると、今食べているその実が木のだいぶ上の方に成っている事に気がついた。

「……あれ? わざわざこの実、登って採ってきたの?」

「ふぐぁっ………!!!」

 Kが変な声を出した。

「お、落ちてたのをてめぇにあげたんだよ!!!」

「それにしては、この実、随分キレイ……」

「“落ちたて”だ!!!!」

 Kがものすごいムキになって答えた。

 

 ……さっきからKがイライラしている。

 指を噛んだりしていて、何か思い悩んでいるようにも見えた。

 

「………………おい、R」

「ん?」

「ちょっと、後ろ見てみ。後ろ」

 言われたとおりに首だけを後ろにやる。

 

 その瞬間、意識が途絶えた。

 

*********

 

 気がつけば、目の前に天井があった。

 ベッドの横には、腕組みしているKがいた。

「………お前、いきなり倒れやがったからこの俺が街の宿まで引きずってやったんだぞ! 感謝しろ!!」

 Kがふんぞり返る。

 ごめん、とRは謝った。

 

 ……何故か、首の辺りが痛んだ。

 痛みが、Kに手刀を打ちこまれたのと似ている気がしたが、気のせいだろう。

 

「……引きずられた割には、体が首以外どこも痛くな……」

「〜〜!! ……それはお前が丈夫だからだよ!!」

 

 何故かKが怒りだした。

 そのまま立ち上がり、部屋を出て行こうとした。

 

 一瞬、Kの後頭部に1本の金髪が見えた。それは、Kの黒髪の上でよく目立った。

 

………ん? あの毛……私のか?

 

 Rは、自分の髪がKの後頭部にどうやって付着したか考えてみた。

 考えてみて、1つの仮説が浮かんだ。

 しかし、 そ れ はありえない事なのですぐさま脳内で却下した。

 

 Kには悪いが、ラクをしてしまった。

 歩かなくて済んでしまった。

 

 申し訳ないなぁ、と思った。

 

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