遊戯王‐デュエル・ワールド‐(6) |
異世界に飛ばされて、一夜が過ぎた。遊鳥達はなんとか町に辿り着き、チェルルと合流し本格的に西稜寺を捜す事となった。一方西稜寺は((真竜神騎団|しんりゅうじんきだん))極北支部に暫く居座る事となった。
チェルルが持ってきた世界地図で、自分達の居場所を確認する。この世界は北部分が欠けた環状の外周大陸と、それに囲まれた中央大陸の二つに分かれている。遊鳥は、外周大陸の西南に居る様だ。ちなみに、西稜寺の居る極北支部は東側の欠けた部分にあり、本部は北西部の小島にある。
「まあ、遊鳥君のお仲間さんも早くて今日中、遅くて三日以内には見付かるだろうし、暫くこの町でゆっくりしようじゃないか。下手に町から出ると厄介な集団に捕まるしね。」
全員、その意見には賛成だった。先日の暴走集団みたいな輩に度々絡まれては、身がもたない。
「じゃあ、俺は町の人とでも戦ってこようかなー?水無都君もどう?」
「あ、それ面白そう。私も行くわ。…でも、デッキ調整が先ね。特に鳥羽君。」
やっぱり?と苦笑する遊鳥。実は、水無都と暴走族のリーダーとのデュエルに結構苦戦していた。1対3だった為に、多少仕方が無いと言えば仕方ないのだが。
遊鳥と水無都、ルリスの三人は、カードショップに向かう事にした。チェルルは昨晩寝ずに動いていた為、昼寝。
「…あれ、アタシは?何してたらいいの?」
朱璃は途方に暮れた。デュエリストでもないのに、こんな世界に連れて来られてもする事が無い。それ以前に何が有るか分からないのだが。
そう言えばと、遊鳥はこの世界のお金を持っているのかが気になったが、多分問題無いだろうと考えるのを止めた。
カードショップに着いた3人。此処に来て、水無都が例の問題を遊鳥に問いかけた。
「そう言えば、遊鳥さんはこの世界のお金持ってるんですか?」
「俺を嘗めるな、あの痛恥ずかしいDホイールの装飾を売り捌いておいたから、この通り。」
懐から分厚い札束を取り出す。一目で、かなりの大金である事がわかる。
「い、何時の間に…。って、法外な値段で売れるんですね、あの装飾部品。」
横からルリスが「結構広い家一軒買えるわよ…余裕で。」と呟く。そこまでいい物だったのかと驚く遊鳥も驚く。どうりで中古屋の店主が目の色変えて算盤を弾いていた訳だ。それを取られた暴走族のメンバーが可哀想に思えてきた。当然、返しはしないが。
店内に入ると、少し薄暗かった。ダンディな髭が良く似合う体格のいい店主曰く、ショーケースのカードの日焼けを少しでも防ぐ為だとか。照明も、特殊な電灯を使っているそうだ。なかなかの配慮に、感心せざるを得なかった。
「色んなカードが有るな〜。見た事無いカードばっかりだ。…コレは時間掛かりそうだな〜。」
「一つ一つ見てるとそうかもね。そこの端末で、色んな条件で絞りこめるから、それで探したら?」
ルリスがレジの横の機器を指差す。このカードショップにあるカードのデータが入っているらしい。これは便利だと、遊鳥は種族を魔法使い族に絞り込んで検索してみた。なかなか面白いカード群だ。
カードを見ていると、水無都が不意に遊鳥に問いかける。
「遊鳥さんは、魔法使いがメインでしたよね。なのに何で“グレンザウルス”が入っているんですか?」
「え?あ〜…グレンか。俺がデュエルモンスターズ始める前の話なんだけど、コイツ道に捨てられててさ。勿体ねーなと思って拾ったんだよ。そん時に皇軌に出会って、ルールとか教えて貰って…。それ以来の相棒みたいなモンだからかな。」
(成る程…だから、実体化したのか。でも、エクシーズモンスターが実体化するなんて…。)
水無都も、デュエリストの魂を宿したカードのモンスターは実体化すると言う事を知っていた。だが、融合・儀式・シンクロ・エクシーズモンスターが実体化されるという話は今までに無い。
「まあ、ぶっちゃけ手札事故時用でもあるんだけどね。あ、これ良さそう。おじさん、これ1枚ちょーだい。」
「はいよ。えーっと、F段の485番…これな。毎度有りぃ!」
ぶっちゃけなければ素直に感動出来たのに、余計な事を言うものだ。コケそうになったが、何とか持ち堪えた水無都は横から選んだカードを見る。…なかなか恐ろしい効果だった。
それぞれにカードを購入しデッキの調整をしている時、思い出した様にルリスが店主に尋ねる。
「すみません、私、真竜神騎団の者です。回収品は有りますか?」
店主は無言で立ち上がり、店の奥から小さな箱を持ち出して来る。それをルリスに手渡す。
「半年分で、数は17だ。…宜しく頼むよ。」
短く言葉を返し、箱をポケットに箱を仕舞い、二人のもとに戻ってくる。何なのか気になる二人だったが、ルリスの浮かない表情を見て、詮索しない事にした。
「さて、中々面白いデッキになったし、そろそろ町人と戦ってみますか。」
重苦しくなりかけた空気を、遊鳥が吹き飛ばした。水無都も立ち上がり、やる気をアピールする。ルリスもいつもの表情に戻り、揃って店を出て手当たり次第に戦う。
「トランサーで、“ブラック・マジシャン”を攻撃!ボクの勝ちだ!」
「お、俺のブラマジが…!くっそ〜、もう少しだったのになぁ。ま、いいデュエルだったよ。」
「おお…!あのジャンク使い、13連勝だ!アイツに勝てる奴は居ないのか!?」
「いや待て、あっちのXYZ使いの女もスゲーぞ!5回もノーダメージで勝ち続けてやがる!」
野次馬達が次々と集まり、最早大会の様な雰囲気になっていた。水無都とルリスが素晴らしい記録を塗り立てている中、遊鳥は勝ったり負けたりといった感じだ。現時点での勝率は6割程度。
「いやいや、凄いね〜二人共。軽く伝説になっちゃうんじゃない?」
「貴方は何で暴走族集団の一対多には全勝だったのに負けてるんですか。」
「何でかな?でも、意外とグレン役立ってるし、いいかな〜って思うよ。」
「確かに、毎回出てきては素材無くなるまで奮闘してるわね。…意外性の勝利かしら。勝負には負けてるけど。」
毎回、遊鳥の対戦相手は“グレン・ザウルス”の召喚に驚かされている。何ともいいタイミングで召喚する為、対応出来ずに効果を受けてしまう。そして、エクシーズ素材が無くなった頃に破壊されるという謎の現象が起きている。
そして、それぞれ次の対戦相手が決まったらしく、再びデュエルに臨む。そこに、朱璃と叩き起こされたチェルルが現れる。
「勘弁してよ朱璃ちゃ〜ん…マジ眠いんだって…。って、何か凄い事になってるね。」
「疲れをデュエルで癒すってのがデュエリストでしょ!アンタも混ざって来い!」
「えええええ…。それ以前に生物として睡眠が大事だと思…あ、いえ、何でもないです…。」
仕方なく、チェルルも祭りと化した三人の修行に混ざり込む。それを見た野次馬達がさらに熱狂する。
「おい、あの人、真竜神騎団だぜ!これはまた行方が分からなくなってきたぞぉ!」
「あ!俺あの人知ってるぜ、レッドアイズ使いの人だ!」
野次馬の声に、「あれ、俺って意外と有名人?」とチェルルが照れくさそうに頭を掻く。そうと分かると、対戦を申し出るデュエリストが次々と詰め寄って来る。流石にチェルルも困惑する。そこに朱璃が割って入り、遊鳥・水無都・ルリスの三人の内誰か一人にでも勝利した者だけがチェルルに挑めるという条件を出した。町のデュエリスト達は、その条件を素直に受け入れる。この中で一番負けた数の多い遊鳥に挑戦者が集中しそうだったが、意外とルリスへの挑戦者が多かった。
「…あ、水無都君負けた。じゃあ、あの((TG|テックジーナス))使いが初戦の相手かー。」
「宜しくお願いします!」
順番待ちのデュエリスト達も野次馬達に混ざって二人のデュエルを観戦する。先攻は挑戦者のTG使いだ。
「先攻ドロー!まずは、“TG サイバー・マジシャン”を召喚して、サイバー・マジシャンの効果で、手札の“TG ラッシュ・ライノ”とシンクロ召喚します!レベル4“TG ラッシュ・ライノ”に、レベル1“TG サイバー・マジシャン”をチューニング!レベル5“TG ハイパー・ライブラリアン”をシンクロ召喚です!」
「うわぁ、1ターン目からそいつか…。」
さらに2枚のカードを伏せ、ターン終了を宣言する。いきなり攻撃力2400のモンスターを召喚され、困った様に手札を確認する。ドローしたカードを含め、ライブラリアンを除去出来るカードは無い。こうなっては仕方が無いと小さく息を吐き、メインフェイズ1に入る。
「まあ、まずはコイツを出さないと始らないよな。“黒竜の雛”を召喚、効果でこのカードを墓地に送り、手札から“((真紅眼の黒竜|レッドアイズ・ブラックドラゴン))”を特殊召喚!」
「「レッドアイズ、キターーーッ!!」」
レッドアイズの召喚と共に、野次馬達のテンションも上がる。攻撃力は双方2400。レッドアイズは名前の通りの真紅の眼でライブラリアンを睨む。それに対し、余裕の微笑を返すライブラリアン。
「うーん…そいつには早めにご退場願いたいけど、相撃ちはヤだしな〜。それにリバースカードも有るし、ここはカードをセットして終了かな?」
挑戦者のターンに移り、カードをドローする。が、行動を起こさずに終了。向こうも動くに動けないと言った状況だろうか。再びチェルルのターンとなる。
「よく睨み合いでは、先に動いた方の負けって言うけどさー、待つのは嫌いなんだよね〜。ってな訳で!魔法カード発動、“黒炎弾”!」
そのカードの発動を合図に、レッドアイズが漆黒の炎弾を吐く!それはモンスターへの攻撃では無く、相手プレイヤーに直接ダメージを与えるものだ。その威力は、レッドアイズの攻撃力と同じ、2400。あの時、暴走族のリーダーに放ったものだ。…とは言っても此方はソリッド・ビジョン、つまりただの映像な訳でライフポイントが減るだけである。
それでも、いきなりライフが半分以上減らされるのはかなりの痛手だ。挑戦者の残りライフは、1400。
「くうぅ…!!まだです!私のターン、“TG カタパルト・ドラゴン”召喚!効果で、“TG ジェット・ファルコン”を特殊召喚します!レベル2“TG カタパルト・ドラゴン”に、レベル3“TG ジェット・ファルコン”をチューニング!レベル5“TG ワンダー・マジシャン”をシンクロ召喚!」
「げ…。」
まずはジェット・ファルコンの効果により500ポイントのダメージを受ける。そして、シンクロ召喚が成功した事により、相手はライブラリアンの効果で1枚ドロー、此方はワンダー・マジシャンの効果で伏せていた“魔宮の賄賂”が破壊された。このカードを失うのは少し痛手だ。
しかし、彼にとって今脅威なのはモンスター効果では無い。挑戦者のフィールドに、シンクロモンスターが2体並んでいる事だ。ワンダー・マジシャンは、シンクロモンスターで有りながら、チューナモンスターでもある。それも、TGのレベル5シンクロモンスターが2体となれば次に来るものは1体しか居ない。
「レベル5“TG ハイパー・ライブラリアン”に、レベル5“TG ワンダー・マジシャン”をチューニング…アクセルシンクロ!出でよ、レベル10“TG ブレード・ガンナー”!」
「やっぱりね!?」
シンクロモンスター同士でアクセルシンクロ召喚する、ブレード・ガンナー。攻撃力3300と、高いパワーを持ち、破壊から身を守る術も持ち合わせている。このモンスターが1体居るだけでかなり動き辛くなる。
「行きます!ブレード・ガンナーで、レッドアイズを攻撃!」
「ぐぁあ…!しまったっ…。」
攻撃を止める手段が無い訳ではなかった。だが、それを今使う訳にはいかない。こんな事になるのなら、相撃ちでもライブラリアンを破壊しておくべきだったと後悔する。残りライフはまだ2600も残っているし、まだデュエルは始まったばかりだ。今すぐにブレード・ガンナーを倒す事は不可能だが、それでもまだ次のターンぐらいなら凌げる筈だ。
「俺のターン!…これなら、少しは耐えれそうだな。何はともあれ、壁を呼んでおかないとな。いいぜ、ターンエンドだ。」
引いたカードを確認し、次の手を講じる。チェルルの手札に、必勝の鍵はほとんど揃った。しかし、あと一つだけ足りない。次のターンでそのカードを引き当てなければならない訳だ…もし引けなかったら、敗北必死だ。
だが、彼は真竜神騎団の名を背負っている。いかなる勝負も負ける訳にはいかない。
「私のターン!…そう簡単には揃わないか。2体目の“TG ラッシュ・ライノ”を召喚!ラッシュ・ライノは攻撃時、攻撃力が400ポイント上昇します!守備モンスターを攻撃!」
元々の攻撃力1600に、400ポイントの上昇。つまり、攻撃力2000。チェルルの伏せていた“竜の尖兵”の守備力では、攻撃力が上がっていなくても太刀打ちできない。呆気無く破壊される。
「通れ…ブレード・ガンナーで、ダイレクトアタック!」
「流石に…それは許可出来ないよー!罠発動、“くず鉄のかかし”!戦闘を無効にさせてもらうよ…。」
今のはかなり危なかった。この罠カードを無効化されたら、確実に負けていた。だが、何時までもこの手は通じない。次のドローフェイズでキーカード引かねば…。挑戦者はカードを1枚伏せ、ターンを終了する。
再び自分のターン。奇跡を起こせ、と念じてカードを必要以上に大ぶりにドローする。…来た。
「まずは、手札から魔法カード“思い出のブランコ”発動!蘇れ、“真紅眼の黒竜”!」
フィールド上に再びレッドアイズが現れる!その瞳に映る怒りは、己を破壊したブレード・ガンナーに向いていた。その他のモンスターなど、レッドアイズの眼中にない。
「さあ、行くぜぇ?レッドアイズ!俺達の手で掴み取った新しい力、見せつけてやろうぜ! “真紅眼の黒竜”を除外して、手札から新たな黒竜を召喚する!その名も…!」
―――《((真紅眼の陽光竜|レッドアイズ・サンライトドラゴン))》!!
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次の町に辿り着いた遊鳥一行。その町で巻き起こる黒竜VSTG! 新たなる黒竜の姿が此処に現れる! |
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