25番、異星人討伐記録
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 辛かった、ずっと。

 

 俺は決して、その人達のことを殺したかったわけじゃない。

 でも、そんな言い訳が通じるような現実じゃないってことは、俺自身の心が一番よく分かっていた。

 

 

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× 異星人討伐記録 ×

 

 

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 一般人からの通報があると、俺達は小さな金塊を握って現場に向かう。金塊は、通報した一般人に渡すためのものだ。金のためならあいつらは、自分の友人だって売り飛ばす。「汚いもんだ」なんて言えた立場じゃない俺は、いつも黙って金塊を差し出した。

 

 大人しく捕縛されてくれる異星人なんてほんの一握りで、大抵は必死に足掻いた。

 生き残るため。大切な者を守るため。…それは、俺達地球人と、なんら変わりない思考だ。

 …それなのに政府は、いや俺達は。

 

 異星人達の命をまるで塵のように、いともたやすく奪ってしまう。

 

―――たとえ俺達が「この地球を守るためだ」と豪語したところで、この人達を殺す権利があるはずがない。

 

 いつも俺はそう考えながら、重い足取りで現場に赴いたものだった。

 しかし俺は、自分が生き残るため、結局は殺戮を繰り返すだけだった。

 「政府の命令だから」という建前で銃声を正当化してきた俺の手は、何十人という異星人達の血が染み込んでいる。

 

 

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 苦しくて、苦しくて。

 

 

 俺は一体どうして苦痛を感じていたのだろうか、と今になって思う。

 

 異星人達の明日を奪ってしまったからだろうか?

 それとも、自分自分を罪悪感から庇うためだったのだろうか。

 

 …きっと、後者だったのだと思う。所詮は俺も汚い人間だ。保身のために犯した罪を、保身のために「苦しい」と云う。

 

 本当に、狡猾で、残虐だ。

 

 命令を下して、後は知らんふりの政府のせいになんて、できようはずもない。

 引き金を引いたのは、他でもないこの俺だ。

 命令されたから、ではなかった。命令に逆らえば自分の明日が保障されなくなるから、だった。

 

 

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 怖くて、怖くて。

 

 

 乾いた銃声と、呻き声。

 目の前で崩れ落ちる人影と、鉄の匂い。

 握りこんだ手の中の、ぬるっとした温かい液体の感触。

 

 その全てが、恐怖の対象でしかなかった。

 何度もそれを思い出しては、吐いた。毎日のように、悪夢に苛まれた。

  

―――背負うつもりも無い半端な覚悟で、俺はこの人の未来を奪ってしまったんだ。

 

 確かに残る、引き金の硬い手ごたえ。

 罪悪感と自己嫌悪で、自分自身の存在を否定するほどの重圧を感じていた。

 

 それでも、何かに突き動かされるようにして、通報があるたびにその行為を繰り返した。

  

 

 

 何度繰り返したって、慣れる筈が無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

…いくつもの命を奪ってきたこの手で、今更何を作り出せるというのだろうか。

 

説明
仕方がないことは、してもいいこととは違う。  ◆ ※※※グロくはないはずですが(多分)、暗いです。救いがありません。※※※ 
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