インタビュー ウィズ リザードマン |
「おいこら、トカゲ」
「なんだよ、猿」
「なんでトカゲが、立って歩いて、しゃべっとんねん」
「いや、だから、トカゲ言うなや」
「だいたい、何やねん。ヘビに手足が生えました、みたいな見かけしよってからに」
「逆やで、それ」
「何が逆やねん?」
「ヘビに手足が生えたのがトカゲ(ヘビの進化形がトカゲ)やのうて、
トカゲの手足が無いなったのがヘビ(トカゲの進化形がヘビ)や」
「なんじゃそれ! 退化しとるやないけ!」
「んん〜。一概には、退化とも言い切れんような?」
「なんや、その、奥歯にモノのはさまったような言い方は」
「クジラとか、手足が無いなって今の姿があるやろ? アレはアレで、一つの進化やで?」
「だいたい生物は、血のにじむような苦労をして手足を手に入れた(?)んだろうに。
それを、あっさり捨て去るとは、どういう了見じゃ!」
「んあ〜、両生・爬虫類までの足は試作品みたいなモンで、何かと使い勝手が悪いんやな」
「試作でも何でも、足は足やろ。そんなに違いがあるもんかいや?」
「まぁ、イモリやトカゲと、イヌやネコを、真上から見下ろしたと想像してみぃや」
「おぅ、想像したでぇ」
「イモリ・トカゲ組と、イヌ・ネコ組の間に、どんな違いがある?」
「イヌ・ネコの方が、もふもふして、撫で心地がええな。あと、ケモミミが付いとる」
「誰が体毛やケモミミの話をしとるかぁ!」
「痛い! 痛いがな。ぐー で殴ったら痛いがな」
「刀や弓矢みたいな武器もって、ほっつき歩くような、猿の子孫が何を言うか」
「イモリ・トカゲは、手足が真横に突き出とるが、イヌ・ネコは、身体の中心線に沿うとるな」
「分かっとったら、最初からそう言え」
「でも、そんなんが手足を退化させるほどの大事け?」
「考えてもみぃや。イモリ・トカゲの足は前後にしか振ることができんやろ」
「ふんふん」
「早く走りたい時に、蹴り出しするんも難儀や」
「小さいトカゲとか、ちょこまか走り回りよるで?」
「それは、スケールが小さいから、割と少ない筋肉量でも無理が効くからや。
びゅんびゅん走り回るワニがおるか? ぴょんぴょん飛び跳ねるコモドドラゴンもおるまい?」
「ワニやコモドドラゴンも、エサに襲い掛かるときは、けっこう敏捷らしいで」
「言い訳くさいけど、普段の話、ちゅうコトで考えてくれや」
「イヌ・ネコのたぐいは、そうやない、と」
「前足後ろ足とも、前後左右に自由に動かせるんで、蹴り出しもしやすい。
宙に浮いたふとももの周りには、みっしり筋肉つけることも可能や。瞬発力も持久力も上がる」
「なら、中途ハンパな足なら要らんわい、とか考えたヤツが、ヘビになったんやな」
「そんな、服着替えるみたいに種類は変わらんがな。
でも、無理に足使うより、身体くねらせた方が便利がええ環境、みたいなモンはあったかもな」
「恐竜なんかは、二本足で走り回りよったヤツもおるんやろ?」
「ああ。おったらしいよ。でも、骨格の骨組みは、一旦真横に突き出てから、下に降りとったらしいね」
「じゃあ、お前らみたいな、人の姿をしたトカゲちゅうのは、想像の産物ってコトでFAやな」
「んん〜、まぁ、そうっちゃあ、そうなんやけどね」
「なんや、歯切れが悪いなぁ」
「確かに、手足が身体の中心線に沿って伸びる、ちゅうデザインは哺乳類に多いもんや。
でも、その哺乳類のモトになったんは、何やと思う?」
「えーと、爬虫類け?」
「せや。しゃれこうべ(頭蓋骨)の造りが、ちょっと違う爬虫類が、哺乳類の祖先と考えられとる。
てコトは、爬虫類のまんま、中心線に沿った手足を持つように変化出来とったかもしれん」
「進化、やのうて?」
「そこらへんは、ちょっと微妙やね。とりあえず、ワシの趣味で変化て言うとると思うてくれ」
「クジラは進化言うたクセに」
「今の時点から見て、ある意味当たりの変化やったから、進化かなぁ、みたいなもんや」
「お前のウロンな話だけでは、いまいちワケが分からん。なんぞええ本でも無いんか?」
「おお。ええ本ならあるぞ。しっかりメモでもとっとけ。
ドッポたち ― ちがっててもへいきだよ 小泉吉宏 幻冬舎(2005/07) 123p 20cm B6判
ISBN: 9784344010086
NDC分類: 726.1
本屋で買えるかどうかは微妙や。ガキに読ませても無難な本やから、図書館にあるかもな」
「お前な、もちっと違う本は無いんかい!」
「そうは言うてもな、この本、骨格の足の向きにまで言及しとるんやぞ」
「てっきり、グールドあたりのエッセイが出てくるんかと思うたのに」
「ああ、グールドはええなぁ。文庫本よりハードカバーのが、もっとええ」
「え? 文庫とハードカバーとで内容違うんけ!」
「内容は違わへんけどな。読みよったら、なんや眠ぅなってきて、枕にしたら気持ちよぉ眠れるねん」
終
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ちょっと関西弁が入ったハイファンタジー超短編。 次 http://www.tinami.com/view/326374 前 http://www.tinami.com/view/325056 頭 http://www.tinami.com/view/325056 |
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