御菓子屋妙前 〜第二幕〜
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 野々村 野乃17歳! 今日もバイト頑張ります!!by野々村

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 さてさて、今日は天気もよく晴れ渡り小鳥のさえずりがよく聞こえるという絶好の日向ぼっこ日和である。風も無くちょうど良い。まぁ少しばかり気温が高い気がするもそれほどではないので許容範囲である。

 本日はいわゆる土曜日。世の高校生ならば部活が無い限り、朝早くからバイトにいそしみ絶好の稼ぎ時でもある。

 そして我が妙前に勤めている。現役女子高生である野々村野乃もそれに該当するのである。それが何故だろうか・・・・・・

 

「すー、すー・・・・・・」

 何故、この女は奥部屋でお眠りになっているのだろうか。バイトをしにきたのではなかったのか・・・・・・

 はぁ、全く。それにしても心地よさそうに寝ていますね。しょうがない。

 私はここの棚には少しホコリっぽいが毛布が入っていた事を思い出した。風邪でも引いてしまったら大変なので掛けてあげようと思ったが、今日の天候を思い出し風邪をひく事は無いかと思い直し毛布をかけてあげるのをやめた。かけてしまったら逆に汗で風邪を引いてしまうかもしれない、それにいまどきの女子高生が汗をかいたままでいるというのも本人にとっては抵抗感があることでしょう。私は彼女をそのままにして仕事場へと戻ることにした。

 

「ありがとうございましたー」

 私はさくさくと仕事をこなしていた。このようにさくさく物事を進められると言う事は良いことだ。野々村も、常連さんたちもいなかったこの妙前を建てた始めの辺りのことを思い出していた。あの時は失敗ばかりで全て思考錯誤の繰り返しだった。当時の事を思い出して私は一人遠い目をしていた。人に見られていたら変な人だと思われるかもしれないが今店内には人はいないので大丈夫だ。

 

 そんな時横開きのドアがカラカラという音を立てて開かれた。新たなお客様が来たようだった「いらっしゃいませー」私はとりあえず、その客を迎え入れる。

 おおっ、そこから特徴的な黒髪を揺らし現れたのは菓子好さんであった。私は時刻を確認するために時計を見る。だいたい十二時三十分。ちなみに私の店は午後の三時を目安に開店をしているのだがそれは平日の話、休日はバイト側が稼ぎ時なのと同じように経営側もかきいれ時なのだ。今日は朝の十時からあけている。

 そして扉から現れた好さんを見て私は珍しいそう思った。好さんはいつもこの店に来るときは開店と同時にこの店へと訪れるのである。それは平日の時であろうと、休日の時であろうと同じ事だった。

 好さんは店の中に入ってくるといつものようにギターケースを持ちながらスタスタと音を立てずに歩き彼女専用となっている丸椅子へと座る。

「いらっしゃいませ好さん。開店と同時じゃないときに来るなんて珍しいですね。今日はお仕事おやすみですか?」

 私は現れた癒し系の常連さん第一号である好さんに尋ねる。すると好さんはしばらく私の顔を見詰めた後コクリとうなずいた。

「本日はなにをお求めで?」

 彼女は席を立ち部屋のあるいっぺんまで歩いていくとそこから一つお菓子を手に取りレジの方へと持ってきた。見るとそれは、どうやらマドレーヌのようだった。私はそれを受取りレジにこのマドレーヌの値段である120円を打ち込む、そして彼女はギターケースに備え付けられているポケットから・・・・・・今日の彼女の服装は白いTシャツにジーパン、そして黒髪はポニーテールでまとめているとてもラフな格好だ・・・・・・彼女らしい猫の顔をかたどったお財布を取り出した。そこから120円取り出すと私に手渡す。私はそれを受取ると、持っていたマドレーヌを彼女に渡した。そして彼女は去ろうとする。

「あっちょっと待ってください」私はそういって彼女を呼び止めると店の売り物であるお茶を一つ手に取り彼女へと渡した。

「おまけです。どうぞ持っていってください。それとよければ奥部屋にこられませんか? 野々村もいますよ。眠っていますが・・・・・・」

 私がそう彼女に話しかけると顔をパァ!と花のように咲かせる。彼女と野々村は何故か仲良しなのだ、どこらへんに仲良くなる要素があったのか分からないのだが本人達はそれでよしとしているのでたいした問題でもないのだろう。

 彼女はコクリとうなずくとそのまま店の奥へと歩いていった。そのまとめてあるポニーをフリフリと揺らしながら歩いていくその様子を見ていると、眠っている野々村に触発されてそのまま眠ってしまう彼女の姿が容易に想像できた。

 

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 突然、店にかけてある時計から可愛らしい旋律が流れ出した。実はこの時計あらかじめ時間を設定して置くとその時間に合わせて音を鳴らし時間を教えてくれるという優れものなのだ。昨日仕事を終えたあと近くの某値段均一のお店に立ち寄っていた所この店の内装にマッチした時計を見つけたのだ。それをこうして本日からつけているのだが時計が時間を鳴らしてくれるという機能は本当に便利だ。

 この店妙前では前述の通り朝の十時よりあけている。そして私がなるように設定した時間は一時半好さんが来てから一時間後だ。すると、バイトが少ないこの店ではフルで私か野々村が店番として出なくてはいけないのだが、そうするとお昼が食べられないのである。なので、私は休日には一旦中休みとして一時半から四十五分間店を閉め休憩の時間としているのだ。ちょうど良く今の時間店内に客が一人もいなかったので私は店の扉にcloseと書かれたプレートをかけると店の奥へと向かった。

 

「はぁ〜〜」思わず溜息をついてしまう。今私の目の前にある現状を見たら誰もが溜息をついてしまうだろう。つかない人は何やら特別な性癖を持っているに違いない。何をしているのだろうかこの二人は・・・・・・。

 朝この部屋では野々村が眠っていた。それは良い、それは良いが。今私の目の前では野々村のほかにも好さんも眠っていたのであった。そして野々村、彼女は眠り始めてから一回もおきていないのだろうか・・・・・・いや、今まで仕事場に来なかったのだから眠っていたという事が普通の事であるのだが。さすがに眠りすぎじゃないか。となりで姉妹のように眠りこけている好さんは・・・・・・。可愛い、眼福ものだ。好さんの寝顔なんてかなりレアなものだ。私が携帯を使いこなせない事が非常に残念だ。使いこなせたのならこの寝顔を写真にとって待ち受けとやらにするのに・・・・・・。

「二人ともお昼にするからおきてください」

とりあえず私は二人を起こす事にした。すると野々村は目をこすりながら、いつもかけている眼鏡ははずしてあった。半開きの眼でこちらを見てくる。隣の好さんも似たような感じだ。

「おはようございます。店主さん」(こくり)

「おはよう」

「うおっ、いつの間に好さんは来ていたのですか!?」

 野々村は本当に今まで眠っていたようで好の存在に今気づいたようだった。

「というより野々村さん、今まで仕事ほったらかしで眠っているとは良いご身分ですね」

 私が少しばかり怒りを込めてそういうと野々村はハッとした表情を作り目に涙をためながらごめんなさ〜いと言ってくる。そんな野々村を見ていると起こる気が消え去ってしまうのだった。

「しょうがないですね。後半戦は頑張ってくださいよ。これからお昼です」

 私がそう言うと彼女は顔をほころばせてありがとうございます。というと持ってきていたバッグから彼女のサイズにあった小さめのお弁当箱を取り出した。そしてそれを傍らで好さんが見ている。

「あぁ、好さんはマドレーヌしかありませんでしたね。男料理でよろしければ私のを一緒に食べませんか?」

 彼女はそれを聞くと小首をかしげる。言葉に刷るならいいの?といった所だろう。

「いいですよ。ご飯というものは大勢で食べたほうがおいしいものです」

 

「そういえばですね〜。店主」

 野々村が口に食べ物を詰め込みながら私に話しかける。はい何でしょう。どうでも良いことですが食べるか話すかのどちらかにしてください。その行動は女子高生としてあるまじき行動です。

「ゴクン。あのですね〜、クラスの友達と話していたときにちょうど店主の話になりまして」

 私の注意を聞いて野々村は一旦食べていたものを全て飲み込むと話の概要を話し始める。ふむふむ、何故お友達との会話の中で私の話題になるのか疑問ではありますが。まぁいいでしょう。

「あっ、ちなみにその時はバイトの話をしていたんですよ」

 なるほどね。

「で、その時に私が店主の事を褒めちぎっていたら、私と店主の関係を聞かれまして」

 

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 私は箸で掴んでいたちくわ部を食べると後は全部食べて良いよという意味を込めて隣で興味半分に聞いている好さんにお弁当と箸を渡す。一緒に食べる事を了承した好さんであったが箸が一膳しかなかったのだ。それにこの年になって間接キスぐらいでは対して騒ぎはしない。それは好さんも同じだろう。

 一瞬好さんはえっ?という表情になったが直ぐに取り直し私から箸と弁当箱を受取ると、モソモソと食べ始めた。心なしか頬が赤く見えるが恐らく目の錯覚だろう。

「それでですね。せっかくなので恋人と答えておきました!」

 ・・・・・・。え?(もく?)

 

 

「何でそうゆうことになっているんですか?」私は最大限の怒りの笑みを浮べながら野々村を睨みつける。

 それを受け野々村は視線をそらしながら冷や汗を流していた。隣にいる好さんからもわずかながらオーラを感じる。・・・・・・これは、殺気?

「えぇー、何で怒ってるんですか? 私自分ではそこそこ可愛いと思ってるんですけど 店主さん的にはそんなに私はタブーですか!?」

 野々村は本気でうろたえている。どうやらこの事は私に良かれと思ってやった行動のようであった。そんな事をされたら迷惑に思うのが当然だと思うのですが私の気のせいでしょうか。それに自分で自分を可愛いと言う事はどうなのだろう・・・・・・。

「いや、野々村さんは結構可愛いと思うけどね」

「なら良いじゃないですかぁ!!」

「そういう問題じゃなくてですね。君と私が付き合ってるとなると君に言い寄ってくる男が減ってくるでしょう?」

「それなら問題ないですよ。だってその為に言ったんですもん」

 いや、そういう問題でもないんですがね、言い寄ってくる男がいないと君に彼氏が出来ないでしょう?私がそういうと野々村はウーと唸って何も言わなくなってしまった。私は何か間違った事を言ったのだろうか。少し考えたが分らなかった。

 野々村は機嫌を悪くするとぷいっと向こう側を向き持ってきていたお弁当を食べる事を再開した。そして、その様子をただならぬ気配をかもし出しながら隣で見ていた好は野々村の側によって行きポン!とその方を叩いた。すると、野々村は涙を流し始める。

「ぶわぁあああああ〜好ちゃ〜ん」

 野々村は持っていた弁当を置きその勢いで好さんに抱きついて泣きはじめた。まぁ、涙が本当には出ていないので声だけの嘘泣きなのだが・・・・・・。好さんも野々村は嘘泣きであると分っていつつもポンポンとその頭を撫でる。

「????」私は終始良く分らない事尽くしだった。

 

 

 野々村も泣き止み昼食の時間も終わったので本来野々村の役割である、妙前のマスコットをやらせるべく作業着へと着替えさせる。ちなみに好はまだ残っている。

「じゃあ、着替え終わったら表に来てください」

「ういうい〜」

 私は乙女の着替えをまさか覗き見るわけにもいかないのでさっさとお弁当を片付けると、仕事場へと向かうことにした。妙前はこれからが勝負であるが野々村が来てくれるのなら今より早く終わるだろうと言う希望的観測を残して・・・・・・。

 

 妙前のとある一室・・・・・・と言っても、いわゆる奥部屋のことであるが、その部屋には二人の美少女がいた。一人はその大きなめがねが特徴的で、もう一人は床にまでつきそうな長い髪の毛が特徴的だ。そんな二人はその部屋で愚痴を主に野々村がもらしていた。

「はぁ〜、私そんなに魅力が無いのかな」野々村は涙目になりながら自分のまったいらな胸を触る。「・・・・・・。だけど、世の中にはそういう性癖の人もいるって聞くし」

 野々村がポジティブに考えようとしていたが無理のようだった。今までの店主の行動から見て自分は明らかに守備範囲外だと気づいたからだ。

 野々村はそんな中今まで自分を慰めてくれていた好を見ていた。何処をと言われたら勿論胸部をだ。好の胸は日本女性の平均バストサイズより少しだけ大きいのだ。

「にくい、私はこの脂肪の塊がにくいわ〜」そういうと好に近寄りその好の大きな胸を少し乱暴に揉む。たいする好はその行為をただただ優しい眼差しで見ていた。

 ポンポン。好が慰めるように野々村の頭を軽く叩く、「こんなの入らないわと」しかし、野々村は好の手を払いのける。「はぁ〜、ごめんなさい好ちゃん。よし、店主にほめてもらえるように午後の仕事は頑張るぞー」野々村はそういうといきなり野々村が怒鳴った事で驚いた好をほったらかし、自分は作業着へと着替え始めた。

 

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 私がお昼が終わり、中々来ない野々村にやはり希望的観測は無理のあることだった。と、絶望に打ちひしがれていたとき。店の前に黒く縦長い車が止まった。まさか、ヤバイ職業の方たちかと思い焦ったがそこから出てきた巨漢を見てその心配は杞憂へと変わった。

 その車から出てきたノソリとでもいいそうな擬音を出しそうなその巨体は明らかに周りの風景と一致せずその部分が逸していた。その周りを見ると、前回は山ほどいた護衛の方々は今回、二、三人だけであった。その巨漢は周りの手を借りて立ち上がる。その距離からするとこの店へとたどり着くのにもう少しばかり時間がかかりそうだ。

 と、そこで私の脳内が何故かこの男と野々村を接触させてはいけないという電波を受信した。何故そんなことを思ったのかは分らない、しかしそうしなければならない。そう思ったのだ。そう思った私は、一言いいに行こうと奥部屋へと向かった。

 

 私が奥部屋に向かうその途中、野々村は着替え終わり出てくるかと思ったがそんな事も無く奥部屋の扉の前で一回溜息を漏らす。最近溜息をつく回数が多くなった気がする、心労だろうか。この店は発足当初から休みなしで働いていたから何かそろそろ旅行などの計画を立てて臨時休業にしてみるのも良いかもしれないと、無駄な思考をしつつ奥部屋の扉を叩く。

「野々村、今小久保幹事長か見えているので私が呼ぶまでしばらくここにいてください」

 ガタッ、私がそう言うと扉の向こうから何やら動揺した気配がする。そして何者かが扉の方へと近付き・・・・・・そういっても近付いてきたのは恐らく野々村だろうが・・・・・・扉をトントンと二度叩く。

「分りました。店主さんに呼ばれるまでここにいますね」

 野々村は私の言葉に素直に従った。その言葉を聞いて私は何故か安心すると、店で待ち受けているであろう小久保官房長官の相手をするべく気合を入れ店内へと向かった。

 

 私は店内に戻る数歩の間にとある事が引っ掛かった。

 今回野々村が妙に聞き分けが良かったということだ。いつもならこういった面白そうな事には自ら首を突っ込んでくる性質なのに・・・・・・。

 野々村と小久保の間に何かあったのだろうか。まさしく見た目は美女と野獣、接点などありそうに見えないのだが。

「とりあえず、今は小久保官房長官をどうにかしなくては・・・・・・」小久保の情報を探るなど後だ。幸いに常連さんの中に情報をかき集める事に才を持っている子がいる、折り菓子を持っていけば協力してくれるだろう。私はそう思いその事について思考することを放棄した。

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