決闘物語 〜デュエル2〜 |
「さてと、今日の敗因を考えてデッキを組みなおそうか。」
「敗因しかない気がするけどな。負け続けたわけだし」
クロアキとカズハのデュエルが終わった後、レッド寮のイブキの部屋に二人は移動していた。
イブキは自分のデッキテーマが決まっていないため頻繁にデッキの内容を変えている。
そのため彼らは闘いが終わると、イブキのデッキを構築することが習慣になっていた。
「今日の闘いで、また使いたいカードはあった?」
イブキのカード達はよく言えば種類が豊富で、悪く言えば纏まりが無い。
昔はエクゾディア(右・左腕のみ)や磁石の戦士αなど、気に入ったカードが入っていただけだった。
「えーと、コレとコレとコレ、あとコレも」
「よし、じゃ相性の良さそうなカードを考えようか」
一時期クロアキは強くて使いやすいカードを薦めたこともあったが、
イブキ曰く、「あんまり楽しくない」らしいので止めた。
「このカード面白そう。あ、このカードもカッコいいかも」
「・・・相性の良いカードを選びなよ。」
強いものを薦めるのは止めたクロアキだが、諦めの溜息は止められなかった。
〜一時間後〜
「よし、これで完成っと!」
「出来たみたいだね、あとは実際に闘ってみて――」
「ああ〜〜〜っ!兄さん、やっと見つけた!」
クロアキの言葉を遮るタイミングで扉が勢い良く開け放たれ、現れた少女が声をあげた。
少女はブルー寮の制服を着ていたが、先ほど闘った女の子とは別の子だった。
「兄さん、ブルー寮の食堂でカズハ先輩と闘ったってホントなの!?」
少女の名前はシラユキ。クロアキの一つ年下の妹だ。
「ん?シロか。カズハって名前の子なら確かにさっき闘ったけど、それがどうかしたか?」
「どうかしたか?じゃないよ!あたしが昨日、明日相手してくださいって頼んだら、
今日はイブキさんに付き合うから無理だって言ったのに!」
「それはそうだが――」
「言い訳なんか聞くつもりはありません。兄さんはいつもそうやってあたしを除け者にするんだから!」
シラユキは興奮しているらしく、クロアキの話を聞こうとしない。
このままだとらちが明かないと思ったイブキは助け舟を出すことにした。
「ま、まぁユキちゃん。クロアキは俺を庇ってくれようとしたんだ。その辺に――」
「イブキさんもイブキさんです。しっかり兄さんの相手をしてくれないとダメじゃないですかっ!」
「え!?あ、あぁごめんなさい?」
助け舟を出したつもりが、その舟の飛び乗って怒りが移ってきた。
急にこちらへ怒りの矛先が向いて慌てるイブキ、あまりの剣幕に謝ってしまう。
「あ、そうだ。良いこと思いついた。」
「シロはデュエルしたいんだよな?だったらちょうど良い。イブキに勝ったら私が闘ってあげるよ」
ついさき程までクロアキも怒られていたはずなのに、二人に笑いかける。
「おい、クロアキ何を――」
「――分かりました!イブキさんを倒したら、次は兄さんを倒す!やってやるんだから!」
「まぁ良いじゃないか、私も出来上がったデッキの腕試しをするべきだとは思ってたんだ。」
「腕試しというよりは憂さ晴らしをされそうな勢いなんですが・・・」
イブキの小さなつぶやきは誰の耳にも入らなかった。
『デュエル!』
〜イブキLP4000 vs シラユキLP4000〜
「先行は頂きます!ドロー!」
(そういえば久しぶりに闘うけど、シラユキのデッキは確か――)
「あたしは竜の尖兵を攻撃表示で召喚!」
〜竜の尖兵 星4/地属性/ドラゴン族/攻1700/守1300〜
(――ドラゴンデッキだったな。)
シラユキはドラゴンの力を活かして相手を押しつぶすように攻めるを得意としていたことを思い出した。
「竜の尖兵の効果を発動!手札からドラゴンを一体墓地に送ることで攻撃力を300P上昇させます!
手札の真紅眼の黒竜を墓地へ送り攻撃力を上昇!」
〜竜の尖兵 星4/地属性/ドラゴン族/攻2000/守1300〜
「さらにカードを1枚伏せてターン終了」
〜竜の尖兵 伏せ×1〜
「最初から攻撃力2000のモンスターか。いくぜ!俺のターン、ドロー!」
「魔導戦士ブレイカーを召喚する!」
〜魔導戦士ブレイカー 星4/闇属性/魔法使い族/攻1600/守1000〜
「このモンスターは召喚したときに魔力カウンターを載せ、攻撃力を300Pアップさせる!」
〜魔導戦士ブレイカー 星4/闇属性/魔法使い族/攻1900/守1000〜
「魔法使いですか。でも攻撃力は1900です。あたしの尖兵には100足りません。」
「分かってるって、手札から装備魔法ワンダー・ワンドを魔導戦士に装備。攻撃力が500Pアップ!」
〜魔導戦士ブレイカー 星4/闇属性/魔法使い族/攻2400/守1000〜
「2400・・・超えられてしまいましたか。」
「よしバトルだ!魔導戦士で竜の尖兵に攻撃!」
〜魔導戦士ブレイカーAT2400 vs 竜の尖兵AT2000 -400 〜シラユキLP3600
「よし、逆転だな。俺もカードを一枚伏せてターン終了だ」
〜魔導戦士+ワンド 伏せ×1〜
「ふむ、イブキは魔導戦士の効果を使って伏せカードを破壊しないんだな」
ターンを終了したイブキに、クロアキが話しかける。
「え?なんのことだ?」
「魔導戦士は自分のカウンターを取り除いて、相手の魔法・罠を破壊できる能力があるだろ?」
クロアキに言われてイブキは魔導戦士の効果を今一度確認する。
「・・・」
「・・・・・・分かってなかったのか」
クロアキはイブキに何か考えがあるのかと思ったが彼の反応を見る限り、その可能性はなさそうだ。
「ちょっと兄さん!今はデュエル中なんだから邪魔しないでよっ」
デュエルが中断されそうになったためかシラユキが抗議の声をあげる。
「ごめんごめん。どうぞデュエルを続けてくれ」
「まったく兄さんは・・・。あたしのターン。ドロー!」
「でも兄さんの言うことは当たりです。イブキさんはこの伏せカードを破壊しておくべきでした。
トラップ発動!正統なる血統。墓地に存在する通常モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚します。
先ほど墓地に送った真紅眼の黒竜を特殊召喚!」
全身を闇に包み込まれているかのような黒い竜だが、瞳はルビーのような燃える煌きを宿している。
その赤い瞳からレッドアイズと呼ばれ、青い瞳のドラゴンと対をなしていると言われる。
〜真紅眼の黒竜 星7/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000〜
(上級モンスターを呼び出す罠か。そういえばクロアキもさっきの戦いで・・・)
「このレッドアイズの攻撃力は魔導戦士と同じですが・・・。手札から魔法発動、黒炎弾!
この魔法はあたしの場にレッドアイズがいる時発動でき、相手に攻撃力分のダメージを与えます!」
レッドアイズの口が開き、黒い炎の塊が吐き出された。
〜黒炎弾 -2400 〜イブキLP1600
「ッ!いきなりライフが半分以下に!」
「さらに魔法発動!スタンピング・クラッシュ!ドラゴンがいる時発動でき、魔法・罠を破壊します!
イブキさんの伏せカードを破壊します!」
「なら、チェーンさせてもらう!速攻魔法発動!クリボーを呼ぶ笛!」
「クリボーを呼ぶ笛!?魔法使いではなかったのですか」
「そんなことは誰も言ってないよ。俺はデッキからクリボーかハネクリボーを、手札に加えるか特殊召喚できる。
ハネクリボーを守備表示で特殊召喚!」
「相変わらす、よく分からないデッキですね。でも500Pダメージは受けてもらいます!」
〜スタンピング・クラッシュ -500 〜イブキLP1100
「黒炎弾を使ったレッドアイズは攻撃できませんが、レッドアイズで無くなれば攻撃できます。
場の真紅眼の黒竜をリリースして真紅眼の闇竜を特殊召喚します。」
〜真紅眼の闇竜 星9/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000〜
「この子の攻撃力は墓地のドラゴン一体につき300P上昇します!よって攻撃力は3000!」
〜真紅眼の闇竜 星9/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2000〜
「真紅眼の闇竜で魔導戦士に攻撃!ダークネス・ギガ・フレイム!」
〜真紅眼の闇竜AT3000 vs 魔導戦士ブレイカーAT2400 -600 〜イブキLP500
「これであたしはターン終了です。」
〜真紅眼の闇竜 〜
「おーピンチだな。残り500か。もう一枚スタンピング・クラッシュでも終わるな」
クロアキの声にイブキがそちらへ目をやるとお菓子を摘みながら、
クッションを背にして完璧に観戦モードのクロアキが居た。
「しかもシロの場には3000の闇竜か、結構キツイかもな。大丈夫か?」
「また兄さんはっ!」
また邪魔されると思ったのかシラユキはすぐに口を挟んできた。
だからイブキもクロアキから目を離しデュエルに戻る。そして小さく呟く。
「ピンチだよ。間違いなくピンチ・・・・・・でもキツクはないかな。楽しいし」
「俺のターン!ドロー!」
ドローしたカードを確認する。残念ながら手札に闇竜を倒すことが出来るカードは無い。
「俺はカードガンナーを召喚!」
〜カードガンナー 星3/地属性/機械族/攻 400/守 400〜
「カードガンナーの効果を発動!デッキから3枚までカードを墓地に送り、攻撃力を500Pずつアップする。
俺が送るのは3枚。E・HEROネオス、バトルマニア、ダークネス・ネオスフィア」
「また良く分からないカードが落ちましたね・・・。何をするつもりなんですか?」
〜カードガンナー 星3/地属性/機械族/攻 1900/守 400〜
「闘うための準備、かな。でもあんまりいいカードは落ちなかったから、
このターンはカードを1枚伏せてターン終了かな。終了時に攻撃力は400に戻るよ」
〜カードガンナー 星3/地属性/機械族/攻 400/守 400〜
〜カードガンナー ハネクリボー 伏せ×1〜
「あたしのターン、ドロー!降参って事ですか?それとも伏せで何か仕掛けましたか?」
シラユキはイブキを伺うような目付きでジッと見たが、
「まぁどちらでもいいですけど。バトルです、真紅眼の闇竜で攻撃!」
「攻撃に対して罠を発動させてもらう!はさみ撃ち発動!俺のモンスター2体と相手のモンスター1体を破壊する!」
「まさかそんなカードを・・・でも残念でしたね。私は手札から速攻魔法、禁じられた聖槍を発動。
聖槍の効果でエンドフェイズまであたしの真紅眼の闇竜の攻撃力を800下げ、魔法・罠の効果を受けなくします!」
〜真紅眼の闇竜 星9/闇属性/ドラゴン族/攻2200/守2000〜
「これであたしのモンスターは破壊されませんが、イブキさんのモンスター達は破壊されます。」
「そうそううまく行かないか、でも俺のモンスターは破壊されたときに効果が発動する。
カードガンナーの効果でカードを一枚ドローし、ハネクリボーの効果で戦闘ダメージをこのターン0にする。」
(ん?このカードは・・・)
「・・・このターンで倒すのは無理みたいですね。ターンを終了します。」
〜真紅眼の闇竜 星9/闇属性/ドラゴン族/攻3000/守2000〜
〜真紅眼の闇竜 〜
「それじゃ。俺のターンだな、ドロー!」
「とりあえず手札から熟練の黒魔術師を召喚。」
〜熟練の黒魔術師 星4/闇属性/魔法使い族/攻1900/守1700〜
「俺は手札から魔法発動!オーバーソウル!墓地の通常ヒーローを特殊召喚する!ネオスを特殊召喚。」
〜E・HEROネオス 星7/光属性/戦士族/攻2500/守2000〜
「ネオスの攻撃力じゃ勝てない。ただしヒーローが闘う舞台はココだ。フィールド魔法発動。
摩天楼 −スカイスクレイパー−を発動するぜ!」
□摩天楼 −スカイスクレイパー−、発動とともに高層ビルが立ち並ぶ。
「ネオスで真紅眼の闇竜を攻撃!いけっ!ラス・オブ・ネオス!
摩天楼があるとき、ヒーローはより強い相手に立ち向かうときに攻撃力を1000Pアップさせる!」
〜E・HEROネオス 3500 vs 真紅眼の闇竜AT3000 -500 〜シラユキLP3100
「そんな手段であたしの真紅眼の闇竜を倒すなんて・・・」
「さらに熟練の黒魔術師で攻撃!」
〜熟練の黒魔術師AT1900 -1900〜シラユキLP1400
「よし、結構挽回したぜ。これで俺はターン終了だな。」
〜ネオス 黒魔術師 摩天楼〜
「あたしのターンですが・・・、おそらくあたしの勝ちでしょう」
「え?」
「行きますよ。ドロー!手札から魔法発動、思い出のブランコ!墓地から通常モンスターを特殊召喚する。
あたしが選ぶのは当然、レッドアイズ!」
〜真紅眼の黒竜 星7/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000〜
「あたしのライフを削るために黒魔術師を出したのが穴になりましたね。」
イブキの場のネオスなら攻撃力が2500あるので倒せないが、もう一体は・・・。
「ではとどめです!レッドアイズ、黒炎弾!」
〜真紅眼の黒竜AT2400 vs 黒魔術師AT1900 -500 〜
〜LP1400 シラユキ Win vs Lose イブキ LP0〜
デュエル終了。
「あそこで、すぐに2400以上のモンスターが出てくるとは・・・」
「あたしも闇竜があんな倒され方するとは思わなかったです。」
「ユキちゃん、前に闘ってたころより結構デッキ変わってるね。楽しかったよ」
「変わってるのはイブキさんの方じゃないですか。というかどんなデッキなんですか?気になります。」
「後で、見せてあげるよ。意見も聞いてみたいし。それより約束の件は良いの?」
「あ、そうでした!兄さん!約束は覚えてるよね?」
「勝ったらって話だったからな。約束どうり闘おうか。それに――」
「――なかなか良い勝負だったからね。私もデュエルしたくなってきた。」
クロアキは最初から戦うつもりだったのだろう。昔から妹のこととなると結構甘い奴だから。
「それじゃ、デュエル!」
「はいっ!デュエルです!」
説明 | ||
どうも、海月です。 今回も遊戯王の小説です。 デュエル脳の世界。デュエルの勝さが全ての世界。 強者は富や名声を得ることができ、弱者はいろいろなものを失ってしまう。 そんな世界でのお話。 遊戯王の基本ルール2 ・デッキは40〜60枚。初期手札は5枚からスタート。 先行プレーヤーは攻撃が出来ない。 |
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