外史異聞譚〜反董卓連合篇・幕ノ二十六/洛陽編〜 |
≪洛陽宮中・天譴軍陣内/北郷一刀視点≫
そういう訳で仮設されている評定の間まで来た訳なんだけど、今回は謹慎中の三名も含め、全員が揃っている
視線で「どしたの?」と聞いてみたら忠英さんが一言
「面白そうだからな」
まあ、面白いかも知れないけど、相手にしてみたら必死なんじゃないのかなあ
さすがに客間に通したといっても、全員を同じところになんて非礼もできないわけで、唯一馬孟起と劉玄徳が同室を希望しただけだそうな
同じ所に通せないのは、策謀や共謀を恐れてではなく、宮中位階で待たせ方を変えないといけない、という都合があるからだ
これが洛陽ではなく漢中だったら気にしないのだけど、さすがに陛下や相国に気遣った結果ということらしい
そういう理由から、俺としては面倒だったのでまとめて会ってさっさと碁に戻りたいところではあったのだけれど、夕餉までまだ時間があることから、張伯輝、曹孟徳、劉玄徳、孫伯符の順でという事になった
夕餉を共に楽しい会談、となるようなら面談の場でこちらから誘えばいいだろう、という訳だ
この順番から馬孟起が外れているのは、劉玄徳と共にとの強い要望があったからなので、故意ではない
張伯輝はひとりだが、曹孟徳は夏侯元譲と夏侯妙才の従姉妹を連れて、劉玄徳達は関雲長と諸葛孔明に馬伯瞻を、孫伯符は妹の仲謀と周公謹と一緒にいらっしゃってるそうで、基本こういった論議やらが大好きで勉学好きな天譴軍の面々は非常に嬉しそうではある
内部評定では発言が基本禁止されている三人も、今回は“外部に対しての会談”なので発言が許可されるという事で、実りのあるものであってほしいと顔に出ている
苦労かけてるなあ、本当に…
表向きの事もあるので、席順は俺が正面、その右に護衛を兼ねて徳、左に懿、右側には令則さん、仲業、儁乂さん、忠英さん、元直ちゃん
左側に公祺さん、巨達ちゃん、皓ちゃん明ちゃん、子敬ちゃん、伯達ちゃんの順で座っている
「いやあ、アタシはこういうのはじめてだからなんだか楽しみでさ」
妙にウキウキワクワクしている公祺さんが、なんだか子供に見えてくる
俺が以前に言った「他の教えのいいところをどんどん取り込めば?」発言から、この人はとにかく色々な人間と積極的に話すのを心掛けるようになったんだよね
元々道教の教えにも沿う事なので、箍が外れたという言い方もできるけど
見ると元直ちゃんと巨達ちゃんもなんだか気合が入っている
同門の諸葛孔明との論議を楽しみにしてるってところかな
武官組は武人として評価の高い孫伯符がどういった人物なのかに興味が高いみたいだ
子敬ちゃんは「見てろよ美周郎、くきゃきゃきゃきゃ」とか呟いていてなんか恐いです
何かあったんだろうか…
伯達ちゃんはとりわけ劉備に、皓ちゃん明ちゃんは曹孟徳に興味があるようです
なんというか、遠足前の女子校みたいな雰囲気なのが俺にはちょっとおっかない
口を挟めないんだよね、雰囲気的に
こちらとしては隠す胎もなにもない訳で、必然空気が緩くなるのは仕方がないところなんだけどね
俺も当面の布石は終えてしまってる事だし、乱世を飲み込むための布石も事実上は終えてしまって、あとはどう飲み込んでいくかを考えるだけになっているので、実は難しく考えてはいない
「さてみなさん、色々考えて楽しむのはそろそろ終わりとして、お客人を呼ぶことに致しましょうか」
懿がそう発言するのに合わせて場が落ち着く
よし、それではさっさと終わらせる事にしますかね
すんなり終わりそうにはないんだけどさ…
≪洛陽宮中・天譴軍陣内/張伯輝視点≫
(客間の造りからみると、一応賓客扱いは“まだ”してくれているみたいですね〜)
複数の客が来ているようなんですが、手狭ではあっても調度なんかはしっかりとしたもので、使用人がふたりつき、茶菓子がしっかりと用意されています
田舎だとこういう気遣いがなかったりもしますので、そこらの礼儀はしっかりとしているという事なんでしょう
普通は処遇の減刑を求めての面談と思われがちなんですが、ここに来るまでにそれなりに情報収集した結果、董卓さんのところはともかく、こちらには手土産すら悪評価になりかねないという事で故意に手ぶらでお伺いしてます
普通はこういう時に相手の意思を贈物の内容や量で察するのが慣例なんですが、非常にやりづらいところです
でもまあ、これから私が言い出す事には、逆にそういった人物の方がやりやすいのも確かですので、肩は軽くなったんですけどね〜
複数の客がいる場合、その親密度や重要度から順番が決まるのが通例ですので、ことによるとかなり待たされるかも、と思ったのですが、来て早々にお呼びがかかりました
これは、天譴軍にとっては客にほぼ優劣がなく、諸侯連合での立場や宮中位階に配慮した結果だろうという事が推察されます
そうでなければ、お嬢さまの名代として伺っている私が最初というのは不自然です
まあ、ちゃっちゃと終わらせちゃいましょう
案内されたのは天譴軍が接収したであろう屋敷の一室で、結構な広さがあって庭を見渡せる宴会も可能な規模なことから、多分粛清された宦官の家のひとつでしょう
見た目と違い、かなり警備には気を使っているようで、見えない気配がかなりあり、庭には訓練されたと思われる犬が放たれています
という事は、勝手に庭に入った瞬間、犬がやってくるという事です
(巫術として犬を大量に用意している、というにしては扱いがおかしいですが、それもおいおい調べてみるとしましょうか〜)
細かく周囲を観察しながら時候の挨拶を済ませて、早速本題に入る事にします
「それで、いきなり本題に入っちゃうんですが、ひとつお力添えをお願いできないかな、と思いまして」
場にいる方々を見ての第一印象は、先の詮議と同じものです
無駄に弁論を尽くして誘導しようとすれば、逆にこちらが痛くもない腹を引っ掻き回される、そういう印象があります
だったらこちらの要求を言ってしまって、落としどころを探る方が無難です
私の言葉に不快感を示したのは、左の上座にいる張局長って方です
天譴軍内部では独自の官位が用いられている、というのは本当みたいですね
これは色々と面倒そうです
「力添えっていったって、処遇についてはアタシらは何も言えないよ」
はいは〜い
そういうのは最初から期待してませんので、そう不機嫌にならないでくださいな
「いえいえ〜
これからお沙汰がある処遇についてじゃないんですよ〜
それに無関係かと言われるとそれも違うんですけど」
上座にいる男の人の眉がぴくんと動きました
あれが天の御使いですね
天の御使いさんは、顔は笑顔なんですが目が笑っていない状態で私に問いかけてきます
「陛下から下達される沙汰の後に、という事かな?
俺達に手伝える事はなにもないとは思うけど」
一見拒否にしか聞こえないんですが、全員の表情が少し動いてます
ということは、これは内容によっては話ができるという事です
「お沙汰の内容にもよるんですけれど、そうですね〜…」
ここは慎重に言葉を選ぶ必要がありますね
私は可能な限り穏当に、そして陛下や董卓さんの顔を立てる内容で言葉を探します
「今回の仕儀に至った理由は、主人も気にしておりましたが、一族に抗いきれるだけの年齢や実績がない、という点にあります
ですので、お沙汰の内容によっては、主人に陛下達が見繕った教育係をつけていただいて、できるなら洛陽か漢中で袁家の当主として恥ずかしくない見識を身につけさせて欲しい
そういう事なんです」
私の言葉に、三色鳥頭のひとの唇が動きます
「先にこっちに来たってことは、できれば漢中でって事なのかね、くきゃきゃっ」
「普通は陛下のお膝元で洛陽で、と考えるのが筋でござろう。
それはどのような意図でござるか?」
張将軍、だったですよね?
見た目通り実直な方みたいです
隠す理由もないのでここは素直にお答えしちゃいましょうか
「そうですねえ…
洛陽でだと、お世話係としても私が一緒にいられないかも知れないのが理由といえば理由なんですが、どうせ学ぶならより統治を豊かに行なっている方々から学びたい、というところでしょうか」
実際の施政に関しては情報が少なすぎて想像するのも危険な状況なんですが、その豊かさは行商人が多数、漢中を基点に動いているという点から推察できます
そもそも売るものがなければ外部へ行商に赴き、その地方の特産物を持ち帰るという方法で、徒歩による商いで利潤を得るのは不可能なんですから
海側から塩を持ち込み、その利益をそのまま持ち帰るという今までの流れが逆になっている
この点だけでも漢中がどれだけ豊かかという事が知れるってわけです
全員の視線が厳しさを増す中で、私はその視線を受け止めます
ここは一切の嘘があってはならない交渉の場です
僅かでも揺らげば一蹴されてしまう
そうすればお嬢さまの未来は一族に食いつぶされて終わってしまう
それだけは、それだけは絶対に避けなければならない
その思いを篭めて天の御使いさんを睨みつけるように見つめる私から、彼が視線を外します
「了解した
その意思は俺達からも陛下に上奏はしてみよう
まあ、相国も納得してくれればだけどね」
御使いさんの左側にいる方が囁くように確認をとります
「よろしいのですか?」
「いいんじゃないかな
どうせ同じことを相国にも言いにいくのだろうし、俺達が約束できるのは上奏まで
それで納得いかないのであればこの話はそもそもなし
どうかな?」
割合性格悪いですね、この人
自分達がどう考えてどう扱うかには一切言及する気がないってことですよね、これは
とはいえ、これ以上押したら掌を返すのは明白です
だったら時間を無駄にせず、董卓さんのところに向かうのが道理でしょう
私は礼をとって挨拶をすると場を辞します
これは勘ですけど、思ったより手応えはありました
多分、お嬢さまにとって悪い結果にはならない
そんな気がします
≪洛陽宮中・天譴軍陣内/曹孟徳視点≫
私達が会談を申し入れてから客室に通されてより、思ったよりは待たされる事なく面会の触れが来た
正直なところを言えば部屋の格はともかく、茶も菓子も口には合わなかったのだけれど、それを押しかけた客の身分で言っても仕方がない
そこに言及してしまうと、料理人から食材まで持ち込んで訪問しなくてはならない訳で、非現実的を通り越して非礼にあたる、という程度の常識は当然持ち合わせている
自分の口に合うものが食べたければ、少なくとも私は外に出るべきではない、というくらいに味に五月蝿いのは自覚はあるのだから
恐らく茶も菓子も用意しているだけましといえるのだろう
洛陽に着いてから天譴軍の風評を皆に拾わせたけれど、これが驚くほどに行儀がいい
総勢3万もの軍が入り込んでいるというのに、住民との諍いがなく、あったとしても一方的に天譴軍側が処罰されるという事が大半のようだ
他所から来た以上万事に努めて大人しく振舞う、という一見常識的に思えるが実際は難しい事を徹底しているということだ
これは天譴軍が容易ならぬ軍を持っているということの証明でもある
彼らなりの贅沢はしているようなのだが
「都のものが口にあわないって事は俺達はやっぱり田舎者なのかね」
などと将兵がよく口にしているらしい
これを聞いたうちの将兵は笑っていたが、この言葉の裏にある事実を考えると笑えない
それだけ漢中は新鮮な食物が手に入り、味醤や水や油といった日常的に用いられるものが充足している環境にある、という事だ
細かく聞くとそういう理由から口に合わないのだという事がよく理解できる
天譴軍の将兵が貨幣ではなく砂金や銀といったもので買い物をしているというのも驚きだ
普通に考えれば、これは田舎者の所作であり論じるに値しないのだが、遠征軍ともいえる彼らの大半がそういった形で売買を行なっているという事実は、十分な資金が漢中に存在する事の証明でもある
ここまでの格差があって尚、目立った騒動がなく贅沢をしている気配がないという事は、敵として考えた場合は本当に恐ろしいことだ
これが私が彼らとの会談を求めた理由である
私が縁がある官吏と陳留にいる桂花からの早馬での上奏で、私と袁術が転封されるのはほぼ確実と言っていい
これに無駄に足掻いて異を唱えるのは、私の命脈を自ら絶つ事となる
これが人生を賭けた大勝負であるなら私も抗いはするだろうが、まだそこに至ってはいないと冷静な部分が告げる
まだ再起は十分に可能なのだ
そうであるなら、本当の敵を知っておく機会を逃す理由はない
こうして私は、自身が“敵”と見定めた男と本当の意味ではじめて相対する事となる
座に呼ばれて思ったのは、相手は私達を決して賓客とは思っていないという事
詮議というほど酷いものではないけれど、明確に“格下”として扱われている
春蘭も秋蘭もこの処遇にはかなり思うところがあるようだけれど、私としては逆にやりやすい
「仲達、久しぶりね
元気だった?」
彼らを見て感じたのは、席の上下が非常に緩い雰囲気があるということ
私達の場合は私的な軍議であっても席次には明確な差が存在するのだけど、彼らの場合はそれとは違って「どこでもいいや」という雰囲気がある
劉備の所がこれに近い雰囲気をもっていたけど、それよりも緩いという印象を受けた
なので非礼を承知でまず知己に挨拶をしてみた、という訳
仲達はこれに常の微笑みを絶やさないままで返事をする
「孟徳殿も元譲殿も妙才殿もご壮健そうでなによりです
色々と相変わらずのようで、ある意味安心致しました」
言うじゃない
まあ、変わる気は私にもないけれどね
とはいえ、よくもこれだけの人物を集めたものだと感心する
ひとりとして無駄といえる人間がいない
まあ、誘うのは後にしましょうか
「で、折角こうして会談に応じてもらった訳だけど、実は話なんてそんなにないのよね」
彼らの顔を直接見るのが目的だったのだし、その意味では目的は既に果たしたといえる訳だしね
「孟徳樣は、会談そのものが目的だったと、そういう事でしょうか?」
そう尋ねてきた顔には覚えがある
確か任伯達
宮中では居るか居ないか解らないということで冷遇されていたけれど、善言が多く非常に誠実な官吏だったという事で、いずれ麾下に招きたいと思っていた人物のひとりだった
「まあね
今更処遇について語ったりなんて真似はしようと思わないし、どちらかといえば今回の事について、どうして相国の側についたかを教えてくれるなら聞きたい、というくらいかしら」
立場的に仕方がないけれど、ついでにいうなら非礼に思えても仕方がないけれど、私は天譴軍に降った訳ではない
はっきりとそう告げたつもりだ
私の言葉に楽しそうに笑っているのは文仲業だ
多分、形式以上の礼を強要しなければ、私の下で十分以上に才覚を発揮してくれる、そんな予感のする将軍だ
「いや、なんというかすっきりしすぎててこっちが笑っちゃうくらい潔い態度だよね
そういえば深く聞いた事はなかったけれど、どうして相国側についたんだっけ?」
………呆れた
もしかして全員、それについては知らなかったっていうのかしら
私達が彼女達を見渡すと、全員が「そういえばそうだった」というような顔をして天の御使いとやらを見ている
天の御使いとやらは、それに苦笑しながら答える
「あれ?
言ってなかったっけ?」
一斉に頷く彼女達に、私は呆れるしかない
「なにそれ?
本当にそうなの?」
これは失敗したなあ、と頭を掻いている男に、私は侮蔑の視線を向ける
私の視線を受け止めて、男は苦笑の度合いを深めて答えた
「うん、まあ…
一言で言えば諸侯連合が力で押し通る気なら、相国の勝算が十割だったからだけどさ」
それは聞いた、と頷く周囲に私は驚愕する
どこをどう考えたら、董卓の勝率が十割なんて考え方が出てくるのよ
私の顔を見て、天の御使いとやらは説明をはじめる
「単純な兵力差と表向きの政治的状況なら諸侯連合の勝ちは揺るがなかったと思うけどね
実際には違っていた
相国はほぼ確実に宮中を掌握し、陛下と良好な関係を築き、宦官官匪を粛清して洛陽の住民の支持も得ていた
なら、政治的状況の有利は相国の側にあるってことで、武力で無理やりぶつかる必要がなかったってことさ」
「それでもこちらが力で押し通したとしたら?」
天の御使いとやらは笑って答える
「洛陽の住民と陛下と、実際には伏せていた俺達と相国の軍勢を洛陽と宮中で相手にするつもりだったっていう程無謀なら、それはそれでよかったんじゃないの?」
なるほどね、最悪の場合は洛陽を火の海にする覚悟があったって事か
これは本初じゃ本当にどうしようもないわね
袁家の軍が首輪が外れた獣みたいに洛陽で略奪をしながら宮廷に突撃していくところを、住民と一体となって迎撃する姿が目に浮かぶようだわ
今回は負けるべくして負けた
納得がいった私は素直に首肯する
「とまあ、勝てる側に素直についたって説明はしたと思ったんだけど、違ったかな?」
ぽりぽりと頭を掻いている男に向かって、文仲業が答える
「いや、他に理由があったのかと思ってさ
考えてみたらややこしい理由なんてなかったんだよね
いや失敬失敬」
彼らなりの理由や旨味があるのは事実だろうけど、それは聞いたところで答えが得られるものでもない
まあ、ついでだし、この際やりたい事はやっておきましょうか
「ところで貴女達、私のところに来る気はない?
これから多少は苦労するとは思うけど、悪いようには遇しないわよ?」
天の御使いとやら以外に顔を向けて私は聞いてみる
実は結構本気だ
これだけの人物達が私の下にいてくれたら、どれだけの事ができるのか、考えただけでもゾクゾクしてくる
まあ、これから処遇が悪くなる私についてくる事はないでしょうけれど、本気だという事は伝えたいと思ったのだ
これに最初に質問してきたのは、左側の上座にいる張公祺とかいう人物だ
道教家で医者でもあるとの事だけど…
「んー…
孟徳殿は、医者についてはどう思う?」
嘘をついても仕方がない、私ははっきりと告げる
「病気の時には頼るしかないけれど、さして重要視してもいないわね
私個人に対しては、だけど」
「信用できない人間に身は預けられないってとこかね」
「そんな感じね」
始皇帝程おかしくなるつもりもないけれど、病気になった時の事を考えるくらいなら、日常の食事に上手に薬石を用いた方がまだしも現実的だ
怪我に対しては医者も有効かも知れないが、それとても限界はあるだろう
なるほど、と呟く張公祺の次に質問をしてきたのは徐元直だ
「対等に物事を言えないと嫌だっていう人間をどう思います?」
この言葉には少し考える
「……それは、反対や拒否をしてもいい権利を常に与えろという事かしら?」
「そうなりますね
決まった事に納得がいかないなら従わなくてもいいのなら、という感じでしょうか」
「論外ね」
それではそもそも政事や軍事など成り立たない
最終的に私が決めた事に従えないというのなら、それは秩序の崩壊を意味する
「まあ、当然だね
じゃあその場合、ボクが納得いくまで説明なり会議なりを要求するのはアリなのかな?」
文仲業の言葉に私は首を横に振る
「程度問題よ
そもそも“仕える”という事はそういう部分を飲み込んでいる、という事だと私は思うのだけれど、違うかしら?」
なるほどその通りだ、と頷く文仲業の次に尋ねてきたのは任伯達だ
「飢饉に際してですが、知行や兵糧と民衆、どちらを優先なさいますか?」
これは簡単なようだが難しい質問だ
でも答えは決まっているので素直に答える
「兵糧に関してはある程度は供与するでしょうね
軍の維持が不可能なところまでは難しいと思うわ
そういう時に出てくる盗賊の相手は私達がしなければならないのだから
知行に関しては与えたものなのだから、私がどうこうすることはないわよ
その知行で何をするかまでは私も口出しするべきじゃないと思うのだけれど、間違ってるかしら?」
納得してくれたのか頷く彼女を横目に、私は天の御使いに向かって声をかける
「堂々と引き抜きをかけてるのだけど、何も言わないのは余程自信があるからなのかしら?」
天の御使いとやらは笑って首を横に振る
「いや、ここで君のところに行きたいと思うなら、引き止めるだけ無駄だろうし…」
それはそれで仕方ないよなあ、と呟く男に周囲が笑っている
つまり、この勧誘は見込みがないって事ね
「今誘っても無駄なようだから今は諦めるけれど、理由は聞いてもいいかしら?」
「漢中を知る前だったらお仕えしていたかも知れませんね」
即答する任伯達に大半……
仲達と張公祺以外が頷いている
「あら、私は天の御使いより魅力的な主人ではないってことかしらね」
冗談めかして、内心はかなり本気でそう茶化してみたのだけれど、それに返ってきた仲達の答えが私には意外だった
「貴女とは歩む道、仰ぐ理想が既に異なるのですよ、曹孟徳
貴女がそれを知った時には、多分このような勧誘はなさらなくなると思います」
気色ばむ従姉妹達を制して私は尋ねる
「道が違うという事は、交わる時が来るかも知れないわね」
仲達が首肯して、張公祺が答える
「そうだな
その道が交わった時、お互いが実りある立場でいられる事を祈ってるよ」
この言葉を期に、会談は自然と解散となった
帰路でいきり立つ春蘭を秋蘭と宥めながら私は考える
私はある意味正しくて、そして思い違いをしているのかも知れない
私の覇道にとっては間違いなく敵
だが、もしかするとその先にあるものは同じなのかも知れない、と
説明 | ||
拙作の作風が知りたい方は 『http://www.tinami.com/view/315935』 より視読をお願い致します また、作品説明にはご注意いただくようお願い致します 当作品は“敢えていうなら”一刀ルートです 本作品は「恋姫†無双」「真・恋姫†無双」「真・恋姫無双〜萌将伝」 の二次創作物となります これらの事柄に注意した上でご視読をお願い致します その上でお楽しみいただけるようであれば、作者にとっては他に望む事もない幸福です コラボ作家「那月ゆう」樣のプロフィール 『http://www.tinami.com/creator/profile/34603』 機会がありましたら是非ご覧になってください |
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huyuさま>スペックとしてはどうなのかなあ・・・七乃に関しては基本低いとは思うけどねえ…白蓮もどうなんかなあ・・・(小笠原 樹) shirouさま>順番が違えば、大半は一刀のところに来てないですな、間違いなく(小笠原 樹) 通り(ry の名無しさま>目的がぶれないというか、たったひとつなので張り合えるというのが拙作の七乃さんですからねえ…(小笠原 樹) 田吾作さま>今更というよりは、本当に方向性の違いですかねえ・・・簡単なものではないですなあ(小笠原 樹) 何時も思うんだけど、恋姫でハイスペックなのは華琳(文武で文より)だけど、これに次いでるのって、七乃と白蓮な気がする。実質的に一人しかまともな将(自分自身)しかいないわけだし。(huyu) 確かに90点の理想を知らなければ75点の理想で満足できたかもしれない・・・・・・そして出会う順番が違ってればってのがあるかなぁ。(shirou) 一流の才が無いのを自覚しながら、それを「お嬢様のため」という命を賭した覚悟で補う七乃さん。一刀と同じく才は一線級に及ばすとも、それを人並みならぬ信念や覚悟で立ち向かっていく人が大好きなんですよねぇ・・・(通り(ry の七篠権兵衛) 今回張伯輝が結構大胆な行動に出ましたね、これが袁公路の血肉となれば彼女としては願ったり叶ったりですが。あ、あととりあえず曹操に後ろ指差したい。「今更お前の許に来るわけねぇーってのww」って感じ(ザシュ(田吾作) |
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