あたし、折紙サイクロンと結婚する! |
【シュテルンビルト、某高校、教室にて。】
「あたし、折紙サイクロンと結婚する!!」
「はぁ?!」
友人の突拍子もない発言に、カリーナ・ライルは口にしたメロンパンを吹きかけた。
折紙サイクロンといえば、ヒーローTVではランキング万年最下位のイロモノヒーローであり、カリーナ…、ブルーローズの同僚でもあった。
だからこそ、友人の発言が信じられない。
「ちょっと、何言ってるのよエミリー!折紙ってあの折紙でしょ?!何があったの!!」
「カリーナ、無理無理。この子今、本気で恋する乙女モードだから。」
「は?どういうこと?」
口を挟んできたのは、もう一人の友人であるジェーンだ。
カリーナは学校で、だいたいこの2人と行動している。
ジェーンはエミリーがこうなった経緯について話してくれた。
シュテルンビルトセンタービル。
そこは様々な店が軒を連ねる、一種のデパートのようになっていて、市民たちの間ではかなりポピュラーな買い物スポットとなっていた。
しかし、2日前、そこで大規模な人質立てこもり事件が起こった。
その人質の中に、エミリーはいたのだ。
銃を突きつけられ、エミリーを含めた客は最上階ふれあいホールに集められていた。
しかしそこに、折紙サイクロンとスカイハイが登場。
華麗な連携で、スカイハイが人質たちを救出。
エミリーもそれに乗じて逃げようとした。
ところが、急ぐあまり足がもつれ転んでしまったのだ。
犯人グループはエミリーの存在に気づかず、スカイハイに出し抜かれた焦りからドコソコ構わずマシンガンを発砲した。
その何発かがふれあいイベント用のセットに命中。
ころんで動けなくなったエミリーの方へ倒れてきた。
「あ、死ぬ。」
そう思った瞬間、誰かがエミリーの体に覆いかぶさった。
とっさに瞑った目を開ける。
そこにはロシア系の顔立ちをした美少年が、背中で倒れてきたセットを支えながら手をついていた。
「大丈夫…で、ござるか…?」
少年は苦悶の表情を浮かべながら、エミリーに問うてきた。
「は、はい。大丈夫です…あのっ…」
「拙者は大丈夫で、ござるよっ…最下位といえど伊達に死線は潜り抜けていないでござる…」
「最下位…あなた折紙サイク…「大丈夫かー!!」
そこでワイルドタイガーの声が響いた。
ほかのヒーローたちも到着。
犯人たちを一掃して、その少年は救急車で運ばれていった。
「あんたあそこにいたの?!てゆーかそれって、相手が本当に折紙サイクロンかなんてわかってないじゃない!」
カリーナは必死に、エミリーに食いついた。
かわりにジェーンが答えた。
「なに、むきになってるの。最下位とか言ってるし、口調からしても絶対折紙でしょ。」
「う…それは。。。」
カリーナは席について、落ち着こうとペプシコーラを口に含んだ。
確かにそれは折紙だ。
あの日、スカイハイと折紙サイクロンはプライベートで二人でショッピングに来ていて事件に遭遇した。
スカイハイは夜のパトロールのためにスーツを持参していたが、折紙は持っていなかった。
そのため、ヒーロースーツを着ている自分に擬態し戦ったのだと聞いた。
だからおそらく、エミリーを庇ったとき衝撃で擬態が解けてしまったのだろう。
「かっこよかったなぁ、折紙サイクロン…王子様みたいだったなぁ……よし、決めた!!」
甘いため息ばかりついていたエミリーは、突如立ち上がった。
「あたし、折紙サイクロンに会いに行く!!」
「ぶっ…!!」
今度は口に含んだペプシを吹くところだった。
「あんた何言ってるのよ!!そもそも、折紙がどこにいるのか知ってるの!?」
「大体、予想はついてるよ。」
エミリーはそういうと自分の携帯をカリーナに突き出した。
受け取って読んでみる。
「『今日は病院で検査を受けたでござるよ、明日には退院でござる!』…?」
そこにはセンタービル立てこもり事件で怪我をしたことや病室の写真が貼り付けられていた。
「これ、折紙サイクロンのブログ?」
ジェーンがエミリーに聞いた。
「そうそう!で、あたし前に肺炎で入院したことあったでしょ?そのとき入院してた病院のつくりにこの写真がそっくりなの!」
エミリーは目に星を浮かべて言った。
「今日、お見舞いとお礼にいく!あたしもう決めたから!!」
「ま、応援してるよ。」
これは、友人の恋に反対するとかしないとかいう問題ではなくなってきた。
エミリーとジェーンが盛り上がる中、カリーナは一人「あたし、トイレいってくる…」と言って席を立った。
まずい…これは非常にまずい。
もし、本気でエミリーが折紙サイクロンのお見舞いに行こうものなら、たちどころに「折紙サイクロンが入院している」という噂が病院中に広がり、パニックとなりかねない。
顔がばれただけでも、十分まずいが、そんな事態だけは意地でも避けたい。
てゆーか、ブログで身バレするようなこと公開してんじゃねぇよ、クソ折紙が!!…おっと素が。。
しかし、エミリーは一度言い出したら聞かない。
下手に止めたりしたら、逆に自分がヒーローだということもばれてしまうかもしれない。
それでもなんとかして彼女を止めなければ…
「そうだ…」
カリーナはスカートのポケットに入れていた携帯を取り出した。
自分で何とかできないなら、外部に助けを求めるしかない。
これは自分ひとりではなく、ヒーロー全体の問題だ。
カリーナは最近死に物狂いで手に入れたその電話番号に電話をかけた。
「…もしもし、タイガー?バーナビーもそこにいる?あ、これからみんなで折紙のお見舞いに行くつもりだったの…ううん、好都合。ちょっと、手伝って欲しいんだけど…」
つづかない。
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別のサイトで投稿した作品です。 初投稿です!宜しくお願いします。 |
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