戦国ランス×西遊記 |
1
ここはとある山の山頂。今辺りは静寂としていて暗く今が真夜中だと言うことが分かる。
そしてその時間帯、誰も外にはまして山の山頂には誰もいないかと思いきや一人の見た目麗しい女性が一人いた。
人形のように整った顔立ちをしており、その髪の毛はこの暗い時間帯でも栄えている立派な金色。
そしてそのまま視線をしたに下ろすとこれまたはちきれんばかりの胸をこさえ、それを申し訳ばかりに胸元が大胆に開けている和服に身を包んでいる。
衆人の中にあればかなり目を引かれる容姿で見紛う事無き美人であったが更に目を引かれる原因が彼女にはあった。
彼女の頭部からは狐のような耳が生えており、そのでん部からも九尾のような尻尾も生えていた。
そんな彼女がこんな場所で何をしているのだろうか・・・・・・。
そんな狐妖怪の彼女・・・・・お町は、その場所である一点を見詰めていた。
お町は北方護天として名前のごとく北方を守っていたのだが、そんなあるときこの山で強力な妖力が観測されたのである。故に彼女はこうして夜遅くてもその妖力の出所であるこの場所
に赴いているのである。
ちなみにそんな彼女には今護衛の兵は一人としてついてきていなかった。その妖力という物が強大すぎるせいだ。無駄に被害を出すわけにはいかない。
「ふむ、こうして赴いてみれば何もいないではないか」
しかし、そこには何もいなかったのである。確かに妖力の気配はする。しかし、ここにはその妖力を発しそうなものは何一つとしてなかったのである。
お町はこんな夜更けに起こされた事を不満に思いながらもあたりを見渡す。しかし何度探してもそれらしきものが見つからない。
段々とお町の表情が険しくなっていく。
「全く、このように強大な妖力でありながら何も無いなど気分が悪い」
そう言いながらお町は側にあった大き目の石に腰を下ろす。その時だった。
「な、何だ!?」お町は驚いて立ち上がり今座っていた場所から距離をとる。
突然暗雲に覆われていた空がとある一部分だけ縦に割れそこからお町が座っていた石に向かって光が向かってきた。
その突然の光景にお町は離れたところでただ見届けることしか出来なかった。
先ほどから既に数十秒ほどその石に光が照射され続けている。そして照射され続けている石は見る見るうちに形を変えていった。
「ど、どうなっているの?」
普段クールビューティーであるお町が驚きの声をあげる。その照射されていた石は赤ん坊になっていたのだった。
「あ、赤ん坊?」
先ほどの光は石が赤ん坊になると、段々と薄くなり消えていった。割れていた空も元に戻っている。
「おぎゃぁああああ!!」先ほど空からの光によって作り出された赤ん坊の泣き声が辺りに響く。
「ど、どうすれば・・・・・・」その泣き続けている赤ん坊を前にしてお町はどうすればいいかとうろたえるばかりだった。
「そうだ。お館さまの所まで連れて行こうさすれば何とかしてくれるかもしれん」
先ほどまで見つからなかった強大な妖力は今この赤子から発せられていた。
お町はその赤子を胸に抱こうと手を伸ばす。「っ!?」すると、先ほどまで感知し得なかった強大な妖力がもうひとつこの場所へと現れた。
その妖力はお町の伸ばした手を傷つける。その痛みに驚いたお町は反射的に手を引っ込めた。
そして現れるそのもう一つの強大な妖力それはその赤子をお町から守るように赤子の前へと立った。
それは、小さな河童の妖怪であった。その小さな身のどこに強大な妖力をもっているのか不思議なほどだ。その河童はお町を睨みつけている。
「安心しろ、童はその赤ん坊をどうこうするつもりは無い。ただその場にいたのでは強大な妖力を持っていたとしても死してしまうから安全な場所へと連れて行ってやろうとしただけだ
」
お町は傷つけられた手の傷を見、河童を一瞥すると告げた。
それを聞いた河童は少し考え、赤ん坊よりも後へと下がる。お町は河童が下がったのを見ると再度その赤子へと手を伸ばす。
今度は河童に何もされなかった。赤子を持ったお町はそのまま赤子を自分の胸元まで持っていく。
「よかったら貴方もきなさいな。お館様はお心広いから貴方も受け入れてくれるでしょう」
お町はそういってその場を超スピードで離れる。その後をさっきの河童が着いてきていた。
2
あれから既に10年の月日が経っていた。あの日お町が拾った子供は孫悟空と名づけられ、一緒にいた河童の妖怪は正宗の力により擬人化して沙五条と名乗っていた。
そしてお町が拾ってきたと言う事でお町や、正宗に近しい女性たち野菊や折女、ノワールの手により孫悟空は沙五条の傍らですくすくと元気に育っていった。
ただ、一つ問題があったのだ。それは・・・・・・。
ある日の事、孫悟空は自らの義父と認識している正宗から呼び出しを受けたのである。
自分の補佐として仕えている沙五条を隣に孫悟空はムスッとした顔で城を歩いていた。
「どういうことなのだ! 童はこれからしなくてはいけないことがあったのに。父上め!!」
「しょうがないですよ。何てったって今の孫悟空様を保護しているのは正宗様なのですから嫌でも行かなくては」
そう受け答えする沙五条はニコニコしている。孫悟空命であるこの男はつねにニコニコ顔だ。
そして今二人はとある間にて正宗が現れるのを待っていた。
孫悟空はイライラとしている面持ちであった。その隣にいる沙五条もイライラしている悟空とは違いニコニコしている。
そして周りにいる正宗の家臣たちは何時悟空が爆発してもおかしくは無い状況にハラハラしていた。
「正宗様のおな〜り〜」
そしてやっとの事で正宗達の準備が整い、側にいた用人がそう告げる。
すると、周りにいた用人たちは皆頭を下げている。沙五条でさえも頭を下げていた。下げていなかったのは胡坐をかき眠そうにあくびをしている悟空だけだった。
「うむ、悟空はいつもどおりだな。他のものも面を上げてよいぞ」
そして、奥にあったふすまから正宗、お町、折女、ノワールが現れる。正宗はのそのそと歩いていくと上座にある将軍が座るような席にドカッと座った。
そしてその両隣にお町とノワールが付き添うように座る。
「おい、義父上! せっかく我がきてやったというのに来るのが遅いではないか!!」
将軍にこのような口をきこうものなら即刻首がはねる所だがそこは孫悟空、いつもの事だったのでたいしたお咎めも無かった。
「あぁん。悟空元気だったぁ〜?」
そう言って悟空へと抱きついたのは折女だった。何があったのか今まで正宗ラヴだったのが悟空をお町たちと一緒に育てていた事によって正宗へのラヴが悟空へと移行してしまった。
「う、うむ。我は元気であったぞ。折女は元気だったか?」
「折女ちゃんは悟空がいなかったからちょ〜元気じゃなかったわ」
悟空へと襲い掛かるようにして抱きついている折女に困惑する悟空であったがいつもどおりの受け答えをしていた。
折女のこの返答もおおむねいつもどおりである。
「全く、悟空が困っておるであろう。折女もそのへんにしておけ」そしてそれを止めるのはいつもお町であった。
お町にそう言われ渋々ながらも悟空から折女は離れ正宗の隣へと座る。
折女が自分隣に座ったことを確認すると正宗は「うむ、」と言って話を切り出した。
「今回お前を呼び出したのは他でもない。近頃世の中では乱戦の風潮が高まっておるのでな。もし我が死んだときの事について話しておこうと思ったのだ」
その事に周りにいた正宗の家臣たちがざわめく。しかし側にいたお町たちはなんら動揺していない事を見ると随分前から考えていた事だと分る。
「何を言っておるのだ。義父上が死ぬ事は無いぞ、そうであろう?沙五条」
「えぇ、そのとおりです。悟空様」
しかし今度驚くのは正宗達であった。
下克上などがもはや流行としてひろまっているこの世の中死ぬ時は本当にあっさり死んでしまう。それなのにあっさりとそんな事はないと否定してしまった事に驚いたのだった。
「ふむ、その顔は何故じゃか。分っておらぬようじゃな。しょうがない特別に我が教えて進ぜよう。沙五条!」
「了解しました」
胸をピーンとそらして語る孫悟空。その孫悟空の命を受けた沙五条は何時々にか何処から取り出したのか紙芝居風に絵がかかれた髪を持っていた。
「はい。では悟空様が考えておられる。計画をお教えします」
ぺらっ、そういって紙をめくる。
「先ず、正宗様はこのまま南下していき手始めに上杉を下します。次に・・・・・・」
そう言って続けられる沙五条の紙芝居、それは正宗がこのJAPANを征し王となるものだった。
お町たちは呆然としている。正宗は基本不干渉主義で自分から攻め入ると言う事は無いからだ。
「そして最後に悟空様が正宗様を殺し、下克上して悟空様が王になるという計画です」
とんでもない落ちがつけられていた。
「ちょっとまてぇぇえええ!! 最終的にわしが死んでおるではないか!!」
「およ!?」
その事に大声をあげる正宗、悟空がびっくりしたように身をすくめると正宗の首と思われる部分には探検が突きつけられていた。
「お館さま。たとえお館さまでも悟空様を脅すとなるとただではおきませんよ」そういうのは隣でぱちぱちと拍手を送りながら紙芝居を聞いていた折女だった。
その隣ではお町がはぁ〜っと溜息を着く
「何故じゃぁぁああああ!!」
そこにいた者達は全員笑い声を上げた。悟空がいなかった頃には考えられなかった事だ
「まぁ、どちらにしろ。義父上は死なんじゃろ」先ほどの騒ぎがひと段落した時おもむろに悟空は語りだす。「だって、義母上や、折女、ノワールだっておるのじゃ。皆強いしむざむざ
と義父上が死ぬなんて事は無い。そうじゃろ義母上?」
笑顔でそう言いきる悟空にお町たち三人は優しい笑みを浮かべた。
「ふっ、その通りじゃな。童がお館様を殺させはしない」
「あ〜ん、かっこいいわ。もぅ折女ちゃん惚れ直しちゃった」そういって折女は悟空に抱きつき、悟空にキスの雨を降らしていく。
「その通りです。悟空も成長したじゃないですか」とノワール。
そしてしばらく折女が悟空にキスをするということが続き。
「もう、そこらへんにしておきなさい」さすがにやりすぎだとなったときにお町が折女を回収した。
そして顔が折女の唾液でべとべとになってしまった悟空は沙五条から布を受取り顔を拭く。
顔を拭きながら正宗のいるほうを向く「じゃあの」そう言って悟空は沙五条の首へと捕まるそしてその流れで沙五条は悟空がやりたいと思っていることを理解し悟空をお姫様抱っこのよ
うに抱き上げる。「我は旅の準備があるので帰るのじゃ」
「うむ、元気でな。童の自慢の息子」
お町がそういい終えると沙五条は城の窓の淵に足をかけると誰にも見えない速度で消えていった。恐らく悟空の家に帰ったのであろう。
「・・・・・・おや? さっき悟空は旅にでるとか言ってなかったか?」
悟空が出て行った窓を見ていた四人であったが、ふと先ほどの会話の中で気づいた事を口にするお町。
そして、それを聞いた残りの三人の顔からサーッと血の気が引いていった。
「だれか今すぐ悟空の家に行きいるかどうか確かめてこーい!!」
「正宗様!! 既に悟空様の家には誰も降りません!! 悟空様の代わりにこのような置手紙が」
正宗は部下からその手紙を受取る。
「なになに? 『商人から、可愛い子というものは旅して何ぼだという話を聞きました。 故に我は外聞を広めるためにしばらく旅に出ます しばらくしたら帰るので探さないでくださ
い 悟空』・・・・・・・・・・・・」
正宗はその手紙を読むと絶句してしまった。
悟空はこの正宗の治める国でお町や折女、ノワールが城の中だけで箱入り娘のように育てられたので常識のじの字も知らないのである。
うっかり、変な人についていきそのまま殺されるという事もありえた。
「はぁ〜、あの馬鹿息子め」
「「「はぁ〜〜〜」」」
正宗達の心労が消える事は無かった。