おとなりの嵐さん 8話
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ぽつぽつと降る雨の中、自分は日常生活では見られない光景を目のあたりにした。

ロボットが嵐さんを地面に埋める、埋める、埋める・・

燃料を補給したロボット・・トビゾー(本名略)は嵐さんの頭をわしづかみにした途端、目にも止まらないほどのスピードで嵐さんを地面に埋め込んだ。

「げぼぶぅっ!」

聞いたことのない断末魔と共に嵐さんはまた犬神家のように地面に足だけを残し地面に埋まった。

 

「緊急スリープモード解除、システム再起動、障害排除完了」ガピー プシュー

機械音と共にトビゾー(本名略)は起動した。その姿はまさに鉄の城・・

「うむ、我ながら良い仕事しておる」

トビゾー(本名略)の作り主のおじいさんが満足げな顔をしながらつぶやく

「嵐さんがものすごい勢いで埋められましたけど・・」

「自己防衛プログラムが作動している時に何かやったんじゃろ、トビゾーは100%障害として見てるようじゃが」

 

なら仕方がない、諦めよう  

「ところでおじいさんはココに住んでるんでしたっけ?」

そういえばこのロボットもおじいさんも普段生活してる時に見かけたことがなかった

「ああ、屋上に住まわせてもらっとるぞ、あの家主には世話になっとるわぃ」

家主・・あの顔が人間じゃないあの人か

「浸水率20% 博士 帰還を求めまス。」

トビゾー(本名略)が煙をふかしながらおじいさんに帰宅を促す、なんだか高性能なロボだ

「すごいですねこのロボット、自分で判断して喋るなんて・・」

 

今時のロボット工学でも自身を判断し、処理できるロボットを作れる工場なんて数えるほどしかない。

しかも一人で作ったとなればどの企業からも喉から手が出るほどの人材だ、どこかの科学者かな?

「どこで仕事してるんですか?良かったら教えてください」

 

「ワシ?あぁ、ワシはな!」

おじいさんは自信満々に答えた。

 

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「無職じゃよ」

 

「え?」

 

こんなすごいロボットを作れる人だから一流の企業に就職しているのかと思えば・・

堂々とプー太郎発言されたのは初めてだ

「いや、これだけすごいものを作れるのになんで・・」

聞かずにいられない質問におじいさんは笑いながら答えた

「会社がつまらんかったからの、今年になる前くらいに辞めた!そしてここに住んどる」

「そんな理由で・・」

つまらなかったから辞める、そんな簡単な理由で無職になるなんて理解できなかった。

「恵まれたままじゃ気づかないこともあるんじゃよ少年、そういえば名前はなんじゃったか?」

「あ・・凡田平一です。」

 

「そうか!ワシのことは博士と呼ぶが良い! トビゾー、今日の飯はお前の好きなカレーじゃ!」

「カレー、カレー」 

自身のことを博士と呼ぶそのおじいさんは笑いながらトビゾー(本名略)を連れてマンションの階段を上って行った。

 

「あれだけの技術を持ってるのに・・・」

自分は理解ができなかった。

あれだけの才能を持ってるのに手に余らせるようなことをしているあのおじいさんの生き方

才能を無駄にしているような・・・

考えるほどあまり心地が良い話ではなかった。

 

天道町に越してきて少ししか経ってないけど想像とは違う生活

もっと、何かこう、求めていたはずなんだけど・・

 

なんだろうこのもやもやは

 

「うごごごご」

そういえば嵐さんが埋まったままだったのを思い出した。

今はこの足だけの嵐さんを引き抜くことにしよう、後でいろいろ考えればいい

自分がここに来た理由・・あの時後悔しないようにと心に誓ったがこれはまた別の目的

「自分の生き方を変えるため・・?」

なぜ? 叔父さんが死んだから?  どのように? 天道町で何をする? どこで? このマンションで? 

 

「俺はこの町で何がしたいんだろう・・」

 

耳に入るのは雨音だけだった。

 

・・・・・・・・

・・・・・

・・・

 

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雨の降る中、大宅の部屋

 

「ふふふ、迷ってる迷ってる・・」

「でもこのままだと何もなく終わってしまうな」

 

カチ         カチ

 

「少しいじるか・・」

 

機械音が静かに部屋に響いた。

説明
降りしきる雨の中、埋められる隣人、謎のロボットと老人、どうやら同じ住人のようだが・・
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