お嬢様の気紛れ異世界譚
[全1ページ]

 

「おはよー。起きた? セバス君?」

 

俺が、生まれて初めて聞いた言葉は、これだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ――α――

 

 

俺の名前は、セバスチャン。

恐らく全国のセバスチャンに一方的に植えつけられたイメージとして、俺の職業が何かは多分予想できると思う。

そう、執事である。

今現在に至るまでにはそれはもう想像を絶するような長い長ーい物語があるのでここでは割愛するが、まぁ王道ファンタジーを10個ぐらいくっつけた物をイメージすれば良い。それで多分だいたいあってる。

 

まぁ俺のことはどうでもいい。

この俺をとある男の骸から復元しそして復活させたのが、目の前に居るお嬢様こと、リィナお嬢様。

なお、決してリーナでもリイナでもない。リィナお嬢様である。

 

そして、今回もまた、この困った御主人様(マスター)は我儘を言い始めた。

 

 

 ――α――

 

 

「旅に出たい」

「駄目」

「即答!?」

 

とりあえず机の上に載せてあるティーセットから手元の空のカップへ紅茶を補充する。

それを、マスターにあげても良かったけれど喉が渇いていたのでそのまま飲むことにした。

 

「だって面倒だし」

「なんでよ!? そしてその紅茶は私のじゃないの!?」

「えー、いやだって喉が渇いてからさ」

 

やはり読書には紅茶が合うな。残念ながらダージリン等の有名どころでは無いが。

しかし、味の再現度はここのところの新作の中でもかなり良い。合格。

 

「それだけ!?」

「それだけ」

「…………」

 

ちなみに読書中なので目は合わせていない。

この本は字が汚い上に屑の様な文章だ。

まず主人公が最強系なのはなぁ……ゾンビだから仕方ないか。このゾンビが初めて再生するところとか文法おかしいぞコレ。果てしなく荒削りだな。

新作を待ちたい所だが、出る予定は今のところ無し。残念。

 

「ちょっとー! 何とか言ってよ!」

「なんだ。空耳じゃなかったのか」

「なっ……もうちょっと真面目に考えてよ!」

 

ふむ。どうやら適当にあしらい過ぎたか。

いつの間にかマスターのご機嫌が斜めな模様。もう少し真面目に話すとしますか。

本を閉じて、しおりは……無いな。とりあえず第三十八話か。覚えておこう。

 

「……では、マスター。現実逃避はその辺にして現実を思い出そうか」

「うぐっ……」

 

しかし。一から話すのも面倒だな。適当でいっか。

なに、恐らく謎の第一人称でこの話を聞いている人間ならきっと理解できるはず。

 

「まず、世界ってのは3つに分かれている」

「えー……、やっぱまたその話するのー」

「ご都合主義だ。というか説明中に口を挟むな」

「なんで私怒られてるの……?」

 

えーっと。どこまで話したっけ。

 

「えー、と。まず、世界と言うのは2つに分かれている。これは――」

「待った。減ったよ。今」

「何がだ?」

「とぼけても無駄だよ! 今明らかに減ったよ! 世界の分類!」

「ちっ…………」

「今舌打ちした!? 舌打ちしたよね!? 説明するのめんどくさがって飽きたね!?」

「こまけぇこたぁいいんだよ」

「もろ本音!?」

「まず1つはここ、通称魔界。どっかの誰かさんが鬼畜改造生物をぶちまけたおかげで人っ子一人暮らせない禍々しい地獄と化した場所」

「酷い……。いや、間違ってないけどね」

「ホント酷いよね。何せ誰かさんのせいで本来平和でのどかだった世界が一転、魔物溢れるカオスな世界になっちまったんだから。おかげで魔界は人界との接点に巨大な門を設けられ、事実上の封印指定。魔界に残された魔物達は独自の進化を遂げ、まさに人外魔境と言うにふさわしい場所へと変貌。さらにさらに人界に残された魔物達もまた進化し、今でも人々を苦しめている」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「ま、いいや」

「軽っ!」

「次に、人界。真人や亜人などが住み、七席とかいう訳のわからない集団が治めている場所。基本的に世界の7割はここ」

「人界かぁ。久しぶりに行ってみたいなー」

「最後にどーでもいいところだけど、神界」

「……それは多分一番重要じゃないかな?」

「いいんだよ。あの糞ガキの話なんざ」

「…………そう、だね」

 

あーぁ。またネガティブになってやがる。

基本的にはポジティブな癖にこういう所が欠点だよなぁ。

ま、原因は俺だけどな!

 

「さて、という訳で。外出禁止」

「何で!?」

「だってほら、魔界とか面倒だし。ぶっちゃけマスター戦力外だから使い物にならないし」

「さっきからグサりと来る台詞ばっかだね……」

「ほら、俺は嘘がつけないタイプだから」

「さらっと嘘言った! 今、物凄い嘘言った!」

 

一方的に会話を切った後、読書に戻るもマスターが耳元でわーわー五月蠅い。

何処から読んだっけか……第八十三話だっけ? そこまで話出てないか。

 

しっかしホント五月蠅いな。面倒になってきた。

ここは敢えてちょっとだけ外出させて速攻で戻った方が静かになるか……?

 

「ったく……じゃぁ、少しだけな」

「え!?」

 

んーそうなると面倒な事になるな。

まずは屋敷内の各メイドの活動を停止さえて、マスター権限で完全ロックした後冬眠モードに入らせるか。

施錠も必要だよな。朱門以外は全て閉じさせるか。

後は、ああ。マスターのペットの処置も考えなきゃな。遠出をする気はないがとりあえず冷凍保存で……。

居候共も殲滅しなきゃならんし備蓄倉庫もロックしなきゃならんし対劣化用簡易封印もかけなきゃならないし番犬共も静かにさせとかなきゃならないし来客用の応対システムを揺り起こしなおさなきゃならないし碧門は念のため物理破壊しとかなきゃならないし対国民用の宣言も一応しなきゃならないしいやそれはまぁいいか。

 

ああ、めんどくさい。

 

「え? 今、なんて……?」

 

となるとだ。ぶっちゃけ全部まとめて完全刻封した方が早いような。まぁ解凍に手間がかかるか。

後は魔物の異常発生対策も一応しておいて……。

 

「今! なんて言った!?」

「んぁ? あ、あぁ。だから、外出許可。おk。グッドサイン。オーライ」

 

いかん。急な処理に脳が追い付いてない。ちょっとクールダウン。

 

「ひっひっふーひっひっふー」

「それはラマーズ法だよ……」

「はっはっはっはっはぁあ」

「何その高笑い!?」

「おk。クールダウン終了」

「……あんまり変わってない気が。」

 

まぁボケをいくつか飛ばせるぐらい冷静になれればよいという事で。

 

「まぁ漫才はこの辺にして。別にさっきまでマスターが言っていたことだろ?」

「けど、でも、今までは」

「ああもうネガティブだな。行きたいのか? 行きたくないのか?」

「それはもちろん……。けど、いきなりすぎるよ。心の準備が……」

 

あー、何だコレ?

以前なら即出るって行っただろうに。

うじうじうじうじばっか。

 

マスターらしくも無い。こりゃちょっと滅入ってたかもしれん。

ここの所引き籠りっぱなしだったからなぁ。こないだ外出たのは、確か――50年前だったかな。

…………やっぱ缶詰は良くないな。うん。ちょっと色々ヤバいかも。

適度に外に出してあげよう。その方がマスターにとって良さそうだ。あれだ、放牧みたいな感じだな。適当に外で日に当てよう。

 

「外に、出るんだろ?」

「……もちろん。行く」

 

という訳で。

 

どうやら、俺の久しぶりの旅は、

引き籠りお嬢様の更生の旅に決定ー。

 

 

……うわぁ、面倒そう。

説明
なんとなく気紛れ書いたもの。未完。
書く気すらないので申し訳ない。
なんとなく、お嬢様主人公で執事が最強で、そっから――みたいな物が書きたかった。
勢いでごめんなさい。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
587 585 0
タグ
お嬢様 執事 異世界 気紛れ 最強 勢い 未完 

十三月さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com