化物
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ぱんぱかぱーん

 

やる気のないファンファーレとともに女の声がした。

 

「おめでとうございます。あなたが勇者です」

 

そうか。僕は勇者になったのか。

 

持ち前の決断力とポジティブシンキングで魔王を倒す事を決意した俺は声高らかに叫んだ。

 

「わかった!僕は勇者だ!魔王討伐へと旅立とう!」

 

周囲からは拍手喝采だ。産まれてこの方17年。これほどまでに脚光を浴びた瞬間があっただろうか。

 

「では勇者様。まずはあなたの力量を測らせていただきます」

 

そういうとどこからともかくライオンのような化物が現れた。

 

僕は叫んだがもう遅い。化物の爪が僕の胸を切り裂いた。

 

真っ赤な血が噴き出し痛みと恐怖で絶叫した。だが誰も止めない。腰が抜けて身動きがとれない。すかさず化物が襲い掛かる。その鋭い牙で僕の腕を噛み砕いた。左腕に激痛が走る。指の感覚があるのにもかかわらず腕が存在しないという気が狂いそうな体験をするも、発狂する暇もなく化物は僕の内臓を貪り始めた。

 

生きながらにして腸を引きずり出される。腹を裂かれた痛みが意識を保ち、ずり落ち喰われる内臓の不気味な感触に吐き気がした。

 

声が出ない。痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたい。なんども心のなかで叫ぶ。

 

化物と目が合った。笑っている。周りの人間も笑っていた。

 

いたいいたいいたいいたいいいたいいたい

 

 

 

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