【改訂版】真・恋姫無双 霞√ 俺の智=ウチの矛 二章:話の八
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 /霞

 

 

 『ま、待って!』

 

 

 って、ウチが伸ばした手は、するりと空を切ってもうた。

 廊下の暗闇に消えてく一刀を見とると、もう二度と会えん様な気がして……。

 

 すると、途端に場面が変わる。

 むせ返るような血の匂いと、白の服がだんだん中に染まってく様。

 

 血だまりの中に倒れ伏しとるのは……。

 

 『か、かず、と……?』

 『どうして、こっちに戻って来たのさ、霞。

  キミの“お守”をしてたお陰で、俺……』

 

 ぐるん、って変な方向に曲がってウチを見る死んだ目。

 何かがちぎれる嫌な音が、一刀の首から聞こえる。

 

 『 死 ん じ ゃ っ た 』

 

 

 

 「嫌ァァァァっ!!?」

 

 身体の上にかかっとった何かを吹き飛ばして、勢いよく起き上がる。

 見回せば血の匂いも、誰かが倒れたりもしとらん平和なウチの無駄にデカイ寝室。

 

 「……っ、夢かい、ビビらせんといてぇな、ほんまに」

 

 ふっ飛ばした布団を何となく気だるげに拾う。

 

 「はぁ……かずとの、ばか……ばか、ばか、おおばかやろうや」

 

 一刀がウチを好きで、ウチが一刀んことが好き。

 ……なんの問題がこれにあるッちゅーねん。

 

 一刀は、なんや小難しいコト考えとったみたいやけどさぁ。

 ウチが幸せで、一刀も幸せで。

 

 それ以上、ナニが要るんや?

 どっちも幸せで、どっちも想いが叶って、これ以上が、なんやあるんか?

 

 ……ウチには、分からんよ。

 

 ウチも一刀も、どっちも幸せやないと意味ないのに。

 一刀は、自分を切り捨ててウチだけを、って言いたかったんやよな……。

 

 でも、それじゃあウチも一刀も不幸せやん。

 そりゃ、ウチがこの安寧と安全の保証されとる城に居れば、見た感じ幸福やろうけどさ……。

 

 そしたら……。

 一刀は、どうなってまうんよ? 

 

 やっぱ、あの貧民街でもがきながら生きるんやろ?

 ウチだけ、幸せになって。

 一刀は半身って言ってもいい存在なのに、生きるか死ぬかに晒されて、明日の見えん暮らしをするんやろ?

 

 ……やっぱ、それやと意味無い。 

 一刀……、アンタは今、どこで何しとるんよ……?

 

 一刀が居らんようなってから壊れだしたウチの日常は、おかしな方へどんどん進んどる。

 なんや、えらい嫌な予感もする。

 

 はぁ、一人でしんみりしてもうたなぁ……。

 心を着替えて、昨夜んコトは忘れて、今日も一日過ごさんと。

 

 

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 **

 

 

 

 

 「失礼します、張遼様。 御母堂様がお呼びでございます」

 

 昼過ぎ、昼食食べ終わって、部屋でまったりしとると、 

 部屋ん外から、侍女はんがウチを呼んだ。

 

 「義母はんが、ウチを?」

 

 扉を開いて侍女さんに対応する。

 オトンの今の妻で、ウチの義理のオカン。

 ウチのことはきらっとった筈なのに、なんやろか?

 

 「はい。一時後(約二時間後)部屋にいらっしゃる様に、と」

 「その必要はありませんわ」

 

 影がぬっ、と現れ、侍女はんの肩にぽんと手を置いた。  

 侍女はんが振り返ると、みるみる顔色が青通り越して白っぽくまでなった

 

 「ご、御母堂様っ!?」

 「義母はん、こないなトコに態々どうしたんよ?」

 

 見た目を言い表すなら、装飾華美なケバケバ化粧、この一言に尽きる。

 そんな、ウチと互いに嫌いあっとる嫌な奴、苛夫人さん。

 本名は知らん、てかウチに教えようともせん。 

 

 「文遠と話があるの。少しはずしてくれないかしら?」

 「ぎょ、御意っ。御用があればいつでもお呼びくださいっ」

 

 真っ白な侍女はんは、尻に火ぃ付いたみたいに飛んで逃げてった。

 ……まぁ、正しい判断やろな。 

 

 「立ち話も何ですし、部屋の中に入りなさいな」

 

 何が“入りなさいな”や。そこウチの部屋やっちゅーに。

 気どった喋り方して鬱陶しいわぁ……。

 

 「ういうい、しても珍しいコトもあるんやな、義母はんがウチんトコくるなんて」

 「大事な話なのよ、私が直接しなきゃいけないくらいに」

 「ふぅん……ま、期待せんとくわ」

 

 どーせ、ロクなことやないんやろうし。

 

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 **

 

 

 「……茶もないのかしら、相変わらず気の利かない娘ね。

  しかも小汚い部屋……なんで貴女はボロ切れを服棚に掛けているのかしら」

 「うっさいわババア、あんたにとやかく言われる筋合いなんてないッちゅうねん」

 「相変わらず下品なお口だこと」

 

 部屋に入って、戸を占めた途端に喧嘩腰。

 部屋の外やと、誰の目があるか分からんもんな。

 八方美人なこいつは、ウチを虐める時はいつもこうやって二人きりんときや。

 

 ウチなら一発なぐりゃこのババアの顔をぐちゃぐちゃにしたることもできるけど、やっぱ堂々とやっちゃうとウチが悪い事になってまう。

 それに、オトンはこのババアの味方するやろし。

 

 「へーへー、下品で悪うございましたでございますよ。

  なんやアンタ、わざわざ嫌味言う為に此処まで来たんかいな」

 「誰がそんな時間の無駄を。

  私から、親としての命があって来たのよ」

 「けっ……何が親や。ウチのオカンはアンタやないんやで」

 

 口紅で縁取られた唇が開いて、いびつに曲がった。

 この糞ババア、笑っとる。 

 

 「……下賤の身が、余り生意気な言葉を言うのは感心できなくてよ?」

 「っ……オカンを馬鹿にすんな」

 「侍女の娘風情が何を喚いたところで無駄なのよ」

  

 ……ホンマに、コイツ殺したろか。 

 出来ない、ってわかっとるからこんな挑発するんやろけど。

 

 「で……、マジで一体何しに来たんや」

 

 喉まで出かかったどす黒い怒りを無理やり飲み込む。

 ……ちょっとマシんなった気がする。 

 

 「ああそうね、本題を忘れるところだったわ。

 

 

 

 

  ──貴女を、十日後に嫁に出すわ」

 

 

 

 

 

 「……は?」

 

 

 嫌な予感、あたってもうた。

 

 

 

 

 

 

 

説明
今北産業
・ババァーン!
・正直
・ネタが他にない。


・更新速度をあげようと試みてます。
・今回から暫くは霞サイドです。
・短いです、すっごく。
・次回更新は土曜日の予定。
 今回異様に短いんでさっさと更新するつもりですから早くなるかもしれません
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コメント
立て?立つんだ、一刀?(歴々)
一刀さん、死にかけてるのはわかってるけど、助けてぇ!!!(summon)
なんか華琳と麗羽が出てきそうな気がするなぁ・・・・・・例のエピソードとからめちゃうのかなぁ?次回も期待しております。(shirou)
一刀起きろー!(アルヤ)
徐越文義様> 今後どうなるのやら・・・ なんて投げっぱなしではないのでご安心を(甘露)
骸骨様> その通りでs。そこはまた次回のお楽しみってことで(甘露)
ついに一刀が知らないところで進んでいた計画が動き出しましたね。霞をどこに嫁として出すのだろうか。(量産型第一次強化式骸骨)
すいません、ネタばれになっちゃうんで答えられません(汗 ただ、少年編ラストへ向かう重要なフラグです。(甘露)
何故ここで霞の嫁入り?(mokiti1976-2010)
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