恋姫夢想 〜至高の鍛冶師?の物語〜 第一話 |
俺の名前は鷹原 真也。
月…董卓様の治める街で鍛冶屋を営んでいる二十半ばの日本人だ。
董卓の名前が出た時、「おや?」と思った人もいるだろう。日本なんて名前が
ある時代に董卓と言う人物はいない筈だからな。けど俺は間違ったことは言っていない。
なぜなら……
ここは三国志の世界だからだ。そして
「鷹原!私と勝負しろ!!」
「だが断る!!」
董卓軍の将、華雄に勝負を挑まれたりしてます。
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なぜ俺が三国志の世界にいるのか、それは俺にも分からない。お客から注文があった包丁を
作り終え、寝床についた筈なのだ。勿論元の世界で。なのに目が覚めたら見覚えのない
鍛冶場にいた(長い間使われてなかったらしく、埃を被り放題だったが)。
おまけに愛用してる鍛冶道具や服も一緒に。
外に出てみれば、明らかに自分の知らない光景。テレビの中でしか見た事が無いような服装を
している人達。もう訳が分からず、近くに居た人にここがどこなのか、この国を治めてるのは
誰なのかといろいろ質問した(言葉が通じないかも、なんて考えはこの時は全く浮かばなかった)。
それで分かったのが、ここが三国志の世界で、この街は董卓が治めてるって事だった。
フラフラしながら最初に居た鍛冶場に戻り、そのまま座り込んで動く事が出来なかった。
全くの別世界に来てしまっただけでなく、悪逆非道で有名な董卓の治める街にいる。
もう希望なんて欠片もなかった。
少しして、ずっとこうする訳にもいかないので立ちあがって顔を上げた。そうすれば目に入るのは
当然汚れた鍛冶場だ。鍛冶師の性か、そんな状態が我慢できず、すぐに掃除を始めた。
気を紛らわせたかったというのもあったが。
そして使える位にまで掃除を終えた時
「この店はやっているのか?」
狙い澄ましたかのように一人の男が鍛冶場に入って来た。
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鎧と兜を身に付けた、明らかに兵士と呼べる男は、俺に剣を差し出し、これを研いで欲しいと
言ってきた。その剣は所々刃毀れを起こしており、それ以外にも細かな傷がついていた。
初めは断った。この鍛冶場は自分の物ではないし、もし家主でも居たら事だ。
だが、他の店では当分手が空かないと断られてしまったらしいのだ。
かなり切羽詰まっていたらしく、必死に頼み込んできた。その様子に「研ぐ位なら」と注文を
承諾してしまったのだ。
研ぎ終わった剣を渡し、代金として渡された金で食料を買い、飢えを免れた。寝床はここの鍛冶場を
使わせてもらった。行く所もなかったからだ。
一晩経ち、これからどうするかを考えていると、数人の兵士が訪ねてきた。前日の兵士の
使ってる剣がかなり斬れ味が良くなっており、ここで研いでもらった事を聞いてきたらしい。
そしてその兵士達も、自分達の得物を研いで欲しいと言ってきた。
一人の注文を受けたのに、他の人間のを受けない訳にはいかないので再び注文を承諾した。
この時になって自分が失敗した事に気付いた。街を離れる事も考えたが、土地勘も旅支度もない状態で
旅に出ても野垂れ死にが精々なのですぐに諦めた。
その後も注文は増え続けた。口コミで兵士が絶え間なく訪れるようになった。兵士達が頻繁に
訪れる様子から、腕は確かだと思ったのだろう。近所からも包丁や鎌の研ぎを注文されるようになった。
それがしばらく続き、不意にお客の一人が聞いてきた。
「鍛冶はしないのか?」
と。
考えなかった訳じゃない。鍛冶師は鍛冶をしてこそ鍛冶師。だが、自分の物ではない鍛冶場を
使う訳にはいかない。だから「研ぎ」以外の事をしようとはしなかった。
例えそれが、自分の望みに反していても。
だが、お客の言葉は自分の魂に響いてしまった。もう俺には、自分の行動を止める事ができなかった。
そして俺は鍛冶場を開けた。
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今までの鬱憤を晴らすように、俺は鍛冶に打ち込んだ。幸いにも俺の作った作品はどれも
好評で、今まで以上にお客が増えた。だが、ここまでしても家主が現る事はなかった。
空き家なのか?とも思ったが、俺には確かめようがなかった。
少しすると、自分の得物を鍛え直してくれって注文も入るようになった。
剣や槍は勿論、中には偃月刀や方天画戟も鍛え直した。
偃月刀を持ってきた女性が胸にサラシしか巻いてなかったり、赤毛の少女が方天画戟を当然の様に
持って来た時はかなり驚いたが…。
さらに少し経ち
「この大斧を鍛え直してくれ」
ビキニのような鎧を付けた女性が大斧を持って店を訪れた。
これが俺と華雄の最初の出会いだ。
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城で華雄からの戦いの申し込みを躱した俺は、自分の店に戻る為に道を歩いていた。
もう昼飯時になってたらしく、そこかしこから良い匂いが漂っている。
そんな中
「また華雄からの誘いを断ったんか?真也」
「当たり前でしょう。ていうか昼間から酒飲んでていいんですか?張遼将軍」
「今日は休みや。せやからそんな他人行儀やなくてええよ」
「了解、霞」
飯屋で酒を飲んでる董卓軍の武将、張遼……霞に会った。
「しかしなんやな、一回位戦ってやればええのに」
「武将と鍛冶師が勝負になる訳ないだろう。無駄に痛い目を見る気はない」
「そうか?機会があればうちも戦ってみたいんやけど」
「…勘弁してくれ」
華雄といい、霞といい、なんでこんなに好戦的なんだ。おまけに肌の露出も多くて、正直目のやり場に
困る。恋はそんな事ない……ない…よな?
「けど登城する度にあれじゃあ、気が滅入ってしょうがない。霞も偶には止めてくれ」
「無理や」
「即答かよ」
「登城に関しては自業自得やん」
「それはそうだが…」
ビキニ鎧の女性が初めて店を訪れてしばらくすると、数人の兵士が店を訪れ、俺に登城するよう命じられた。
ここの本来の持ち主がようやく現れたのか?とか考えながら、俺は登城した。
そのまま謁見の間に通されたのだが、そこには以前店に来たサラシを巻いた女性や赤毛の少女、
ビキニ鎧の女性が立っていた。まだこの時は、武将だったのか、位の認識だったが。
それから少しすると、眼鏡をかけた少女と一目で小動物を連想させる少女が現れた。
そしてその小動物を連想させる少女が董卓である事を知った。この時の俺は相当なアホ面だったと思う。
悪逆非道?むしろ癒しのオーラしか感じませんでした。
(眼鏡の少女は賈駆と言ったが、正直誰か分からなかった)。
それはともかく、俺が城に呼ばれた理由だったんだが……鍛冶場の所有権じゃなく、無許可営業でした。
鍛冶場の持ち主の事ばかり気になって、申請とか届けとか完全に頭から抜け落ちてた。
鍛冶場はだいぶ前に家主が亡くなり、放置されたままだったので住む事自体は問題なかったそうだ。
………俺の苦悩っていったい。
まあ、無許可営業は確かなので処罰を覚悟したんだが、こっちの条件を呑めば咎めない、と言われた。
その内容が……
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「『軍の武具を作り、それを城に届ける事』。自分の耳を疑ったぞ。報酬もちゃんと出るって言うし」
ぶっちゃけ今やってる事に宅配が付く程度だし。
「真也の腕が良いのは皆知ってる事やからな。処罰するより組み込んだ方が得策や思うたんやろ」
「だからって真名まで許すか?しかも月様が率先して」
そう、この条件を呑んだとき、俺はその場に居た面々に真名で呼ぶ事を許された。
真名というのは、本人が心を許した相手、又は近親者にしか呼ぶ事を許さない神聖な物だと教えられた。
この時にあの三人が張遼、呂布、華雄だと知った。
そしてこの時になって、ここが「三国志の時代」ではなく「三国志に似た世界」なのだと気付いた。
真名の存在はいい。神聖な物であり、第三者がおいそれと使ってはならない物なら歴史書に載る筈が
ないからだ。
だが一人二人ならともかく、主だった将全員の性別が違うなんてありえんだろう。
ついでにお客の名前を誰からも聞いていないって事にも気付いた。一度見たお客の顔は忘れないように
してるからとりあえず問題は起きなかったが。作業してる時は余計な事を何も考えて無かったが、
それ以外の時は全然平常心じゃ無かった訳だ。
話が逸れた。この時、俺もこの世界で初めてフルネームで名乗った。
鍛冶場でも俺は「鷹原」としか名乗って無かったから、その場にいた人間だけが俺の下の名前を
知ってる事になる。その際、名前が変わってる事を不思議がられたが、民族特有の物だと言って
納得してもらった。同時に、俺の名前の部分が真名になった。
その場に居た面々、と言ったが、華雄からは真名を教えられなかった。
華雄の真名は、ある事を果たさないと肉親以外には誰にも教えないらしい。事実、董卓軍の人間は
誰も知らないし、華雄自身、他の人間の真名を許されていても呼ぼうとはしない。
あと話は変わるが、条件を呑んだ事であの鍛冶場…というか店が正式に俺の店として認可される事に
なった。
店の名前は「鋼鷹」だ。
「月っちはああ見えて人を見る目があるから、真也なら構わない思うたんやろ。詠も月っちには
弱いしな。…せやけど真也。月っちを裏切ったりしたら…」
霞が殺気を滲ませながら眼を鋭くする。もし俺が月様を裏切れば必ず殺すって意味で間違いないだろう。
だが…
「そいつは無用な心配だな。第一、そんな事したらお前だけでなく、華雄や恋にまで殺されるだろうが」
「真也が裏切るとは思わへんけど、”念には念を”って奴や♪」
殺気を消し、霞は上機嫌で酒飲みを再開した。ってか切り替え早いな、おい。
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「それはそうと、なんで華雄は俺と戦いたがるんだ?殴らせろって言うならともかく」
「あ、そこは自覚しとったんか」
「まあな」
初めて華雄が店に来た時、あいつは
「この大斧を鍛え直してくれ」
と、言った。だが
「…なあ真也。なんであんな真似したんや?華雄の大斧を……は…はり?
……え〜と『【ハルバード】だ』そうそう、その【はるば〜ど】ってのに作り変えたんや?
うちや恋のみたいに鍛え直すだけでええやん」
そう、俺は華雄の大斧を西洋武器のハルバードに作り変えたのだ。
客商売でお客の注文を堂々と無視する等、これ以上の暴挙はそうはないだろう。
だが理由は勿論ある。自分勝手な理由ではあるが。
「霞、あの大斧を持った事はあるか?」
「ん?ないけど…それが何の関係があるん?」
「あの大斧な、恋の方天画戟よりずっと重いんだ。たぶん倍以上」
「…ほんまか?それ」
「本当だ。振って見せてもらったんだが……あれは一撃必殺に特化させたんじゃなく、連撃が
しにくいだけだ。速さが乗らないから腕の立つ人間なら容易に躱せる。威力だけで見ると
自重を利用した振り下ろしが一番だが、持ち上げて振り下ろすまでに簡単に懐に入られる」
「…なんでそんなの使ってたんや?華雄の奴。誰かの形見とか?」
「だったら作り変えたりはしない。本人に聞いたんだが……」
「聞いたんだが?」
「…重ければ威力が上がる。威力が上がれば簡単に敵を倒せる。私最強!…って無茶な三段論法の結果だ」
「………」
ああ、さすがの霞も開いた口が塞がらないか。
「説明はしたんだが聞き入れてもらえなくてな。だから実力行使に出たんだ。俺の作った武器で
力が出し切れなくて戦死しました。なんて冗談じゃない」
「理由は分かったけど…どっちにしろかなり怒ったやろ?華雄」
「できたばかりのハルバードで斬りかかって来た。何度か避けてるうちに諦めたのか、不機嫌そうに
帰って行ったけどな」
「へ?武器新調してからの模擬戦は嬉々としてやってたで?」
「そうなのか?少ししてから代金払いに来たんだが、こっちが注文無視したんだから
いらないって言ったら不機嫌そうに置いてったぞ?」
「……へ〜〜」
「…なんだ、その含みのある笑顔」
「べっつに〜〜♪」
……絶対良くない事考えてやがるな、こいつ。猫の耳と尻尾まで見えやがる。
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「あ〜〜、話し過ぎたな。俺はそろそろ行くが」
「うちはまだここで飲んでるわ♪」
「ん。じゃあな、霞。機会があったら他の奴等も連れて飲みに行こう」
「楽しみにしてるで♪」
やたら上機嫌な霞と別れ、俺は自分の鍛冶場へ向かった。
「代金払いを名目にして斬りかかった事を謝りに行ったのに、来なくてよかったみたいに言われて
不機嫌になるなんて、華雄も可愛いとこあるやんか♪
それに華雄の攻撃を何度も避けたって?華雄やないけど、やっぱり戦いたくなってしもたわ♪」
なんて事を霞が言ってる事など夢にも思わず…。
後書き
これで更新は終わりです。
このキャラはこんな性格じゃない。
こんな口調じゃない。
こんな設定ありえない。
なんて考えの方もいるでしょうが、素通りしてくれると助かります。
続きなどを書く気はありません。待ってる人がいるのかどうか分かりませんが。
それでは。
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初投稿です。独自設定です。期待御法度です。それでも良ければどうぞ。 投稿→エラー発生→本文全消去のコンボを二回連続で食らったので少しずつ アップします。ページ分けはしません。エラーが怖くてできません。1ページだけです。 更新、完了しました。 2011/11/14 タイトル変更しました 2011/11/17 店の名前を加筆修正 |
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コメント | ||
スターダストさん>コメントありがとうございます。そう思っていただけるとうれしいです。(龍々) 面白そうな話です。(スターダスト) 森羅さん>コメントありがとうございます。華雄単独とは限りませんがね…。(龍々) berufegoalさん>コメントありがとうございます。続きはあまり期待しないでください。(龍々) eitoguさん>コメントと感想、ありがとうございます。(龍々) 華雄√ですか、すごく・・・面白いですwww 頑張ってください、応援しています!!!(森羅) おもしれぇっす。(eitogu) 挟乃 狼さん>コメントありがとうございます。続きを書く気がなかったので、当然一刀が出る事はなかったんですが・・・。(龍々) 黒山羊の夜さん>コメントありがとうございます。ん〜〜、こんなのでいいんでしょうかね? 続き・・・か。(龍々) 三振王さん>初めてのコメントありがとうございます。続き・・・ですか。(龍々) 面白いと思いますよ?w 主人公が鍛冶屋ってのも新しい。・・・一刀って出てくるんですか?出てくるんなら、あんまり酷い扱いだけはして欲しくないですね〜。続き待ってますww(狭乃 狼) 俺より全然丁寧な日本語使うじゃないですか!そして、GJ!続きうp希望!(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊) 文章力はあるほうだと思います、続き楽しみにしています。(okura) |
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