遊戯王-デュエル・ワールド- (7)
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 “((真紅眼の黒竜|レッドアイズ・ブラックドラゴン))”の漆黒の体に亀裂が入り、そこから眩い光が零れ出す。そして漆黒の殻が弾け飛び、内から黄金色に煌く“((真紅眼の陽光竜|レッドアイズ・サンライトドラゴン))”が現れる!その体から放たれる光は、紛れも無い陽光そのもの。その光景に誰もが驚愕する。パートナーのルリスも例外ではない。

「“真紅眼の陽光竜”…!?初めて見るモンスターだ!」

「何て煌びやかで美しい姿なんだ…。」

 辺りが暖かく優しい光に包まれる。命の源の光に、誰もが魅了される。

「コイツがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外のモンスター効果を発動する時は500ライフポイント払わなけれ発動できなくなる。フィールド、手札、墓地…何処でもね。さぁ行くぜ、陽光竜でラッシュ・ライノを攻撃!」

「ならば、罠を発動します!“TG1−EM1”!このカードにより、私のフィールド上の“((TG|テックジーナス)) ラッシュ・ライノ”と“真紅眼の陽光竜”のコントロールを入れ替えます!」

「………ありゃりゃ。」

 陽光竜とラッシュ・ライノのコントロールが入れ替わり、攻撃が中断される。為す術なく、そのターンを終了する。フィールドには攻撃力1600のラッシュ・ライノが1体のみ。魔法・罠カードも“くず鉄のかかし”だけ、手札も無い。もう、負け以外の文字は無い。

 挑戦者のターンになる。挑戦者がカードをドローした瞬間、チェルルは小さく笑う。

「残念でした〜、この瞬間、“真紅眼の陽光竜”のもう一つの特殊効果発動!このカードのコントロールが移った次のターンのスタンバイフェイズ時、このカードをコントロールしているプレイヤーに、元々の守備力分のダメージを与える!守備力は、2000だッ!!」

「なっ…!?」

 陽光竜の体から放たれる光が一層強まっていき、自身を操ろうとする欲深き罪人を灼熱の光で裁く!挑戦者の残りライフは1400だ。2000ポイントのダメージを受けてライフが0になり、決着が付く。

 チェルルは伏せてあったカードを“TG1−EM1”と読んでいた。だからこそ陽光竜を召喚した。そうでなければ、攻撃力3300のブレード・ガンナーの前に攻撃力2400の陽光竜を出す訳が無い。

「ふぅ…ギリギリぃ。アレが“TG1−EM1”で良かった〜。TG使い君、ナイスデュエルだったね!」

「は、はい!有難う御座いました!機会が有れば、またお相手したいです!」

 握手を交わし、第一戦が終了する。チェルルは、何時の間にか眠気と疲れが無くなっている事に気が付く。朱璃の言う通りデュエリストはデュエルで体を癒すモノなのかと、ちょっと怖気がした。

 その後も繰り広げられたデュエル会で、唯一ルリスだけが無敗を飾った。それぞれの戦績は、チェルルが1敗、水無都と遊鳥が勝率7割と言った所だ。チェルルを破ったのは、魔轟神使いの男だった。

 その夜、宿屋にて((真竜神騎団|しんりゅうじんきだん))の使いから皇軌の所在が遊鳥達に告げられた。場所は真竜神騎団極北支部。

「そんな所に飛ばされてたんだ。本人に似て、また面倒な所に。」

「って言うか、良く生きてたねー、皇軌。そんな所にあんな薄着で飛ばされて。」

 憎まれ口をたたきながらも、遊鳥と朱璃の表情に安堵と喜びが浮かぶ。それに対し、チェルルは引きつった表情でパートナーに尋ねる。

「きょ、極北支部か〜…。俺一抜けていいかなぁ?ルリスちゃん。あそこ嫌なんだよ〜…。ほら、あそこブルーアイズの子が居るじゃん…。ほら、黒竜と白龍は犬猿の仲って言うか、ライバルって言うか…。」

「駄目に決まってるでしょ。途中でパーティーを抜ける事は規約違反よ。」

「がーん…。って言うか、真竜神騎団にそんな規約無いよ…?」

 遊鳥達5人は、翌朝極北支部へ向かう事にした。此処から極北支部への道のりは遠い為、陸路では時間が掛かり過ぎる。そこで、本部から何人かの使いを要請する事に。しかしこんなにも早く所在が分かるとは、真竜神騎団の力は侮れない。

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 一方その頃、西稜寺はフィフィーと共に佐田儀に連れられ、村を襲撃した賊の住処へ殴り込んでいた。

「弱い、弱い…弱過ぎます!!!貴方達の実力はこの程度ですか!?これでよくもまあ私の管轄を荒らせたモノですねぇ!どうしたのですか、腰抜け共が…次の相手は誰です!?」

 佐田儀は完全に暴走していた。最早二人の手には負えないので、全滅するまで放っておく事にした。この方が或る意味効率的だと判断したのだ。事実、佐田儀の強さは尋常じゃ無い。一寸の隙も無い完璧な獣族デッキ。

 一応2人も賊と戦っているのだが、何とも歯ごたえが無い。フィフィーに至っては、ブルーアイズを一度も召喚していない。

「えーっと…本音を言うと、つらないですよ。」

「同感だな…。あまりにも弱過ぎる、と言うかデッキに無駄が多い。俺が今戦った奴は“レッド・ポーション”を3枚も使っていたぞ。ただ、回復の為だけに。」

「あ、私が戦った相手は“ヒエログリフの石板”が3枚でした。理解不能で意味不明です。」

 “ヒエログリフの石板”は、ライフを1000ポイント払う事でそのデュエル中、自分の手札上限が7枚になるという効果なのだが…1枚でも事足りる代物だ。何かコンボがあるのかと思ったが、そんな素振りは全く無かった。いくら馬鹿でもこんな事はしない。とは言え、昨夜の村を襲撃した男はそんな事は無かった所を思い返すと馬鹿ばかりでは無い事は分かる。

 しかし…佐田儀が幾度と相手を瞬殺している所を見ると、強いデュエリストはほんの一握りしか居なさそうに思える。佐田儀があまりにも強過ぎて、弱いと錯覚しているのかは分からないが。

「雑魚を相手しても面白くないのですよ!引っこんでいないで、いい加減出てきたらどうですか、首領さん!!」

 怒号しながら奥へと殴り込む佐田儀。2人は追い駆けず、完全に放置を決め込んだ。昨夜、西稜寺と戦った男の様に、何時か巻き添えを喰らいそうな気がしたのだ。

「フィフィー、一つ聞きたい事が有る。真竜神騎団には、佐田儀さんの様な強いデュエリストが何人も居るのか?」

「え?…えと、私は本部に行った事が無いので良くは知らないですが、佐田儀さんでも敵わない方が何人か居るそうです。」

 驚きのあまり、声が出ない。あの佐田儀でも歯が立たないとは、一体どれほどの実力なのだろうか。間違い無く、今の自分は足元にも及ばないだろう。西稜寺は、今自分がどれ程の力を持っているのか疑問に思う。自分の居た世界では10年もの間、世界王者を防衛してきた。その偉業を成し遂げた自分よりも強いデュエリストが、身近に居る。それよりも強い者がこの世界に居、この世界を警備している。

 此処で更なる疑問が浮かぶ。何故、この世界を警備しているんだ?普通なら、元の世界へ帰る為にあの謎の声の主に挑もうとする筈だが…。もしや、佐田儀よりも強いと言う者達でも敵わないとでも言うのか。それで、諦めてこの世界で生きて行くつもりなのか。…まさか、

 

 

 ―――その真竜神騎団の長こそが、あの声の主なのでは!?

 

 

有り得ない話ではない。己を倒そうと目論む輩を警備団と称して排除し、己の身は正義と名借りして守り、隠す。その地位は、圧倒的な力・知性・カリスマ性で不変のものとする。

 …だからと言って、今すぐに敵対視する事は出来ない。コレはあくまで一つの仮説。今、此処以外に拠り所が無いのに下手な真似は出来ない。不用意に敵を増やすのは良くない。それに、彼の最優先事項は遊鳥達と合流する事だ。真竜神騎団は世界中に居る。彼らの協力を得れば、人を捜す事も容易い筈だ。遊鳥達が自分の下に来る、そう信じて西稜寺は極北支部に留まる事を選んだ。

「…佐田儀さん、遅いですね〜。首領がまだ見つからないのでしょうか。」

 と、フィフィーが立ち上がり佐田儀の入った部屋を覗こうとした時―――

「ぐはぁ!!くっ…ふ、不覚です…。」

 佐田儀が部屋から吹き飛ばされてきた!どうやら、デュエルで人を吹き飛ばすのは極北支部の人間だけではない様だ。極北に住む者の性なのだろうと勝手な解釈。

「フン…威勢良く殴りこんできた割には弱いな。」

 続けて、大柄の男が出てくる。この男がこの一団体の首領だろうが、佐田儀を敗るとは只者ではない。西稜寺は、自分達に勝ち目が有るのか、と焦る。だが、引き下がる訳にはいかないと身構えた時…。

「貴方がここのリーダーですね?」

 自分よりも先に、フィフィーが男の前に立つ。幼い彼女が並ぶと余計に男が大きく見え、西稜寺は怖気付く。

「ガキがこんな所に何の用だ?…ホゥ、貴様も真竜神騎団の一員か。ならば、情け無用だな。掛かって来い!」

 本当は自分が戦いたかった。だが、彼にも勝てない相手に、勝てる見込みはあるのだろうか。デッキの相性と言うモノもあるが、それ以上の問題ならば、どう対応する?恐らく、どうにも出来ない。そうならば、今は彼女を信じる。自分よりも、更なる高みの場所に居るであろう少女に。

「先攻貰うぞ、ドロー。モンスター1体とリバースカードを3枚セット、ターンエンドだ。」

 全く迷いの無い、素早いプレイングだ。この男、相当の手連と見て間違い無いだろう。

「私のターンですよ!手札から即効魔法“手札断殺”発動です!」

 互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、新たに2枚のカードをドローする。と、此処で男が動く。

「効果で手札に加わった事により、“ワタポン”を特殊召喚する。更に、“ダンディライオン”が墓地に送られた事により、トークン2体を特殊召喚。」

「む〜…。御膳立てさせちゃいましたか。でも、放っては起きませんよ!“青眼の幼龍”召喚、“ワタポン”を攻撃!」

 1体は倒したが、まだ2体残っている。生贄に出来るトークンが残っている分、上級モンスターかチューナーが来れば不利になる。可能なら、全て破壊したかったが…そう上手くいくモノではない。カードを2枚伏せてターンを終了し、男のターンとなる。

「フン、素材を生き残らせてくれるとはな…後悔させてやる。行くぞ、札から“ジャンク・シンクロン”召喚。効果で墓地から“ワタポン”を特殊召喚…レベル1の“ワタポン”及びトークン2体に、レベル3“ジャンク・シンクロン”をチューニング。シンクロ召喚…猛狂え、“フレムベル・ウルキサス”!」

 腕に燃え盛る炎を纏った、フレムベルの猛者が現れる。このモンスターは、相手のモンスターを倒す度に攻撃力が300ポイント上昇していく。さらには、守備モンスターを攻撃した時その守備力を超えていればその分相手にダメージを与える、正に炎の猛者だ。

「さあ行けぇ、ウルキサス!白龍の幼体など焼き尽くしてやれ!」

 猛者は幼龍に向かって駆け出し接近、その勢いに乗って腕を振りかぶる!―――が。

「幼体などとは…幼体でも馬鹿にするとこうですよ!“次元幽閉”発動!ウルキサスには除外されて貰います。」

 ウルキサスはその勢いを止められず、突如現れた次元の裂け目に飲み込まれてしまう。

「教えて差し上げますよ。白龍が強靭、無敵、最強だと言う事を!私のターン!」

 

 

 

 

説明
黒竜VSTG、陽光竜の力が勝敗を決する。
一方、極北では白龍の少女が動く!
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