鬼夫婦の休日 |
千鶴が風間家に嫁ぎ、早いものでもう三年の月日が流れた。
世継ぎとなる男児も授かりもうすぐ二年になる。
今はまだ子沢山とは言えないものの、千鶴は順調に成長する我が子を見れば時が過ぎるのも忘れてしまう程愛おしい存在と感じている。
どこからどう見ても幸せな家族のはずなのだが、確実に夫婦二人だけの時間というものは減っていた。
千景は仕事で忙しく、家にはいるものの千鶴と顔を合わせるのは朝餉時か夜眠りにつく時くらい。
千鶴は千鶴で育児に忙しく千景とゆっくり話す時間も無い、我が子の夜泣きが激しい時には部屋を別にする時もある。
しかし昨日、やっと大きな仕事が一つ片付いた、ならば今日一日はと天霧の計らいもあり、二人は久しぶりに時間を共有することとなった。
「なんだか久しぶりですね。」
「こうやって話すのは夏以来か。」
「そうですね、秋ももう終わってしまいますよ。」
「もうそんな時期か、そろそろ齢二つになる頃でもあるな。」
「早いものですね、あの子を天霧さんにお任せしちゃってよろしかったんでしょうか…。」
「時には二人だけで話せとの天霧からの気づかいだ、甘えておけ。」
「はい、あとでお礼しに伺いますね。」
「ああ。」
とは言ったものの、一旦会話が途切れると久しぶりすぎて何を話したらいいかなどわからない。
「…あの、千景さんはまだ大きなお仕事を抱えていらっしゃるんですか?」
「なんだ、寂しいのか?」
「そ、そんなんじゃありません!」
からかうように笑う千景に真っ赤になって反論する千鶴。
「そのような表情ではまるで肯定しているようにしか見えんが。」
「もう、千景さんはいつもそうやってからかうんですから。」
「そういう顔もまた一興、そそるというものだろう?」
「そ、そそ…!?」
「何を驚く事がある、そんな事で恥じらうような浅い関係でもあるまい?」
「そう、ですけど…千景さんはいつも突然なんです!」
ぷくっと頬を膨らませ怒る妻の姿が可愛くも面白く、千景はふっと笑みをこぼして千鶴を後ろから抱き込んだ。
「ち、ちちち、千景…さん?」
耳まで赤くなる妻の反応は半ば予想していたものの、実際されるのと想像とでは破壊力というものが違う。
千景はかぷりと千鶴の耳を軽く食む。
「ひゃっ…!」
「どうした、随分と声が甘いようだが?」
「し、知りませんっ!」
「ほう、俺には確かにお前の声が聞こえたんだがな。」
「気のせいです、気のせい。」
千鶴の体温が上昇し始めている事が千景にはわかっていた、それなのに否定する妻の姿を見れば可愛くて仕方がない。
「なら、誰の声か確かめねばなるまい?」
「え…きゃうっ!」
千鶴が言葉の意味をすべて理解する前に千景の舌が首筋を這い、思わず声をあげてしまった。
逃げようにも背後からがっちり抱きかかえられている今の状態では不可能。
耳に息を吹きかけられ思わず背がピンッと張った。
「や、め…千景さん!」
「どうした?」
「まだお昼です!」
「ならば、夜ならよいと?」
「そ、それはその…。」
「言えぬか。」
いとも簡単にくるりと向きを変えられ、向かい合う形となった。
恥ずかしさ故か目を逸らす千鶴のあごを持ち、無理やり目を目を合わせる。
「恥ずかしいです。」
「なら聞き方を変える、嫌か?」
「あの…。」
「嫌かと聞いている。」
「嫌じゃ、ないです。」
「ふん、上出来だ。」
その答えを待っていたとでもいうように千景は唇を塞いだ。
「ん、ぅ…。」
徐々に深くなっていくそれに必死で合わせる千鶴、唇が離れる頃には目はとろんとして大分息があがっていた。
「愛い奴め。」
すでに力が入らなくなっているためか、こてんと千景に身体を預けた。
千景は千鶴の頭を優しく撫でながらしばらくその体制でいると、呼吸はもう落ち着いているはずなのに全く離れる気配がない事に気付いた。
「千鶴。」
「はい。」
「いや、何でもない。」
からかうつもりであったのに、千景は抱きしめている力を少し強めただけにとどめた。
時にはこのような時間もよいものだな。
「千鶴。」
「はい。」
「夜を楽しみにしている。」
「…はい。」
そして二人はもう一度唇を重ねた。
説明 | ||
いい夫婦の日なので。 サイトに載せたものをこちらにも。 会話成分多めかも…です。 |
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