それは大切な時のかけら |
どこにでもあるファーストフード店の奥、窓辺の席は景色もよく、太陽の光も暖かい。そんな席で、幸せそうに甘いアイスを頬張る。授業を終えて、かわいい後輩と一緒に食べるのは嬉しくもあり楽しい。
「マミさん、美味しそうに食べますね」
「ええ、とっても美味しいもの。鹿目さんは?」
「もちろん美味しいです。さやかちゃんが来れなかったのが残念だなぁ」
「用事があるのは仕方ないもの。また今度誘ってみましょう」
柔らかな表情で微笑むマミに、まどかも釣られて笑う。少し溶けかけたアイスを口に運びながら、至福の時間を過ごす。
「あー美味しかった。もう一つ食べたいけど太っちゃうかな」
「鹿目さんはスタイルいいでしょ?」
「そんなことないですよ、この辺とか……」
他愛のない女子高生の会話が続く。好みの男性とか、好きなお菓子、どこにでもいる女の子同士の会話だった。
「楽しいわね」
「楽しいです」
「本当、生きてて良かった」
その言葉に、まどかは目を見開く。
学校の先輩であり、魔法少女の先輩であるマミ。
魔法少女になった経緯は知っている――受け入れなければ、マミはここに存在していない。
さりげないマミの言葉は、とても重みのある深い言葉だった。
「先輩、明後日の放課後、さやかちゃんと一緒にまたアイス食べにきませんか?」
「いいわね」
ほんの少しだけ重くなった空気を変えるために、次の約束をする。
一緒にアイスを食べたいから、だからまた来ませんか? という約束。
「その次は新しいお菓子屋さんいったりとか……」
「楽しみね、それは」
食べ終えたアイスのゴミを捨てて外に出る。まだ陽は明るい。
「鹿目さんとたくさん約束したら、魔女になんか負けられないわね」
「負けないように応援してます。だから私は……ん」
マミの指先が、まどかの唇に触れる。
「まだ考える時間はあるから。私とは違うもの、ゆっくり考えて。その時間は私が作るから」
まどかは本当に優しい。多分、誰かがピンチに陥ったとき、契約を簡単にしてしまうだろう。
でも折角どんな願いでも叶うのだから、慎重に考えてほしい。
私とは違う。
「じゃあまた明日ね、鹿目さん」
「はい」
大きく手を振るマミに、まどかも大きく手を振った。
また明日。
その言葉の大切さと、残酷さを数週間後にまどかは深く思い知ることになる――。
説明 | ||
普通の高校生で、普通の女の子の他愛のない会話なのに。だけどそれはマミにとっては貴重な時で……。魔法少女まどか☆マギカのまどかとマミの日常切り取り話。マミさん(;;) | ||
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