月すら存在しない世界で
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丁度、十二時。

百九年前と同じ場所で、コツリと額を合わせた。

空には、あの日と同じようにたくさんの星が瞬いている。

天気予報も、快晴だと告げていた。

名前を呼びたいのに、あまりに静かな空間に声を出すことすら躊躇われて、日本は代わりにイギリスの背中にまわした手に少しだけ力を込めた。

百九年前の今日、上司を振り切ってこの場所へ走った。

ロシアと近付こうとする上司を、国の持てる権力を行使して黙らせた。

あんなにも無理矢理権力を振りかざしたのは、今のところあれが最初で最後だったように思う。

自分の頬に冷たいものを感じて、思わず俯いて顔を隠す。

日本に対して驚くほどに過保護なイギリスを心配させないためだ。

(雨……?)

ぽたり、と上から雫が降ってきて、日本はふと視線を上げた。

天気予報は外れてはいなかった。

雫を降らせた青葉は、黒檀と絡まって、優しく細められた。

お互いにボロボロと雫を零しながら、そっと重ねた唇は塩辛い味がした。

ずっと一緒にいると誓った。

それでも、時代の荒波に揉まれて離れざるを得なくなることもあった。

互いに、銃を、刀を、向け合ったこともある。

それでも、一度も泣かなかったのだ。

今日くらい、涙を零しても誰も文句は言わない。

青葉と黒檀が、少しだけ赤く染まった。

それでも、お互いに言葉を発することはなかった。

日本は、大切な青葉の向こうの闇色の空を見た。

星は煌めいていても、月の姿は見えない。

この時期だからしょうがない、と割り切って、日本は言おうとした台詞を呑みこんで、代わりにそっと唇を開いた。

「“私、死んでもいいわ”」

それが日本の意訳だと知っていたイギリスは、目を優しく細めて笑った。

「“一人で逝けると思うなよ”」

二人で視線を合わせて、同時に小さく噴き出して。

それから、もう一度そっと影が重なった。

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英日
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ヘタリア 腐向け 掌編 英日 朝菊 

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