愚かな |
大日本帝国は困っていた。
誰がどう見ても分かってしまうほどに困っていた。
ポチ君がその隣できゅーん、と鳴いても、大日本帝国を困らせている原因がなくなることはない。
大日本帝国を困らせているもの。
それは膝を枕にするように縋り付いて動かない大英帝国の存在だった。
「邪魔ですよ、帝国」
あまりに適当な略し方に、大英帝国は「お前も帝国だろ」と吐き捨てた。
そのままグリグリと頭を擦りつけてくる大英帝国に、大日本帝国は本気で眉を寄せる。
普段散々罵り合い、殴り合い、銃を、刀を向け合う相手から斯様な態度を取られれば、誰とてこうなるというものだ。
「本当に邪魔なのですが、消えてくださるおつもりは?」
「一切ない!」
清々しく言い切った大英帝国に、大日本帝国は「そうですか」と冷たく返して膝に乗った頭を完全に無視して立ち上がろうとした。
しかし、腰に巻き付いた腕が邪魔で動けない。
「いい加減になさい、この紅茶馬鹿」
「おま、紅茶馬鹿ってなんだ!紅茶を馬鹿にするのは許さんぞ!」
「紅茶ではなく貴方を馬鹿にしたんですよ」
そう言った大日本帝国はイイ笑顔だった。
「この時期だけは、どうしたって駄目なんだ」
小さく漏らされた本音。
大日本帝国は知っていた。
かの人がおかしい理由など、普段の遣り取り、彼らの過去を鑑みれば簡単なことだった。
大切な弟の独立。
それはどれほど辛いことだっただろうか。
そして、自分もそうやって捨てたのだ、兄を。
ただ、大日本帝国は面倒臭いことが極端に嫌いな性格だった。
「ポチ君、やっておしまいなさい」
きゃわん、と大きく吠えたポチによって大日本帝国の膝から引きずりおろされた大英帝国が不平を言おうと顔を上げた瞬間、ポチ君が低く唸った。
ポチに唸られるなど思ってもみなかった大英帝国は硬直する。
「私を弟さんの代わりにしようとした罰ですよ」
私の兄は、かの御方お一人ですから、と小さく漏らした大日本帝国に、大英帝国は本当に馬鹿だ、と心中で吐き捨てる。
たった一人の兄[弟]を、大切だと叫ぶことも許されず。
それを言い訳にして、叫ぼうともしない、愚かな弟[兄]。
説明 | ||
大英+大日+ポチ ギャグを書こうと思い立って書いたシリアス。 |
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