仮面ライダーEINS 第二十三話 全ての始まりにして終わりなる者
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――2011年12月13日 9:31

――学園都市 理系学区 医療学部 

――一騎の研究室

「……」

 一騎はじっと、自分のコンピュータの画面を見つめていた。

「どうしたのさ」

 晴彦が難しい顔をしていた彼にティーカップが置かれた。

「……」

 一騎は無言で腕を組みながら、目の前のディスプレイを睨み付けていた。

「ここ最近の財団Xの動きをな」

「ふーん」

 ディスプレイをのぞき込んだ晴彦の目に、年表のようなものが表示されていた。

「まず86年の素晴らしき青空の会に対する技術提供。99年のガイアメモリ製造開始。スマートブレイン社設立。07年の警察スキャンダル問題と学園都市との水面下抗争。そして10年のガイアインパクト介入。11年のオーメダルに関する事案と、学園都市への介入増加。天之川学園でのコズミックエナジーの調査」

「……そう考えるとここ最近かなり活発だね」

「もしかしたら、事態は俺が思っている以上に重大化しているかもしれない」

 そう締めくくった後、一騎はティーカップに手を伸ばし、それを口に含んだ。

「ぶほっ、これココアかよ!しかもめちゃくちゃ甘え!」

 

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EPISODE23 全ての始まりにして終わりなる者

 

――??

――学園都市  

――??

「アインツの調査が終わった」

「そうか。やっとたたきつぶせるという事か」

 真っ黒で間接照明のみの部屋で、軍人調の男が尾木・K・小次郎に歩み寄った。

「尾木、貴様には無理だ」

「何!?」

「本部の見解はこういうことだ」

 軍人調の男が、細長いボールペンのようなものを取り出し、先端に取り付けてあったスイッチを押した。

すぐさま男の姿が変わり始め、金色の装甲とマントを纏ったタイプブラッドの怪人に変身した。雄々しい角からおそらくカブトムシの力を内包しているのだろう。

「アインツは想像以上の強さを発揮している。おそらく歴代の仮面ライダーとやらと同等の危険度がある。ツーマンセルであたるぞ」

 そう言って踵を返し、タイプブラッド・コーカサスはその部屋から出て行く。

「クソがっ!何で……何で俺はあいつに勝てない!!」

 

 * *

 

――2011年12月13日 13:13

――学園都市、中央区 事務科

――市長室

「……」

「……」

 学長室では一騎と学園長が机を挟んで向き合っていた。

「つまり我々は嵌っているかもしれないと……」

「想像以上に彼らはパーツを揃えています。今回我々も重要なデータを手に入れましたが、それは同時に彼らも同じ物を手に入れたのです」

「コズミックエナジーか……表面上が非常にいい組織である以上、我々が圧力をかけると立つ瀬がないからな」

「加えてコズミックエナジーは最後のパーツであった可能性が高いです」

「……それは?」

 学園長が身を乗り出した。

「アインツが使用しているエネルギーとコズミックエナジーの波長。一致とは言いませんが非常に似ています」

 そう言って一騎は自分の腹を人差し指でコツコツと叩いた。

「それは同時に、"新世紀の悲劇"の連中のエネルギーとも一致する事になります」

「なんだと?では"新世紀の悲劇"の怪人は宇宙からやってきたとでもいうのかね?」

「むしろ彼らの腹に埋め込まれていたという石。それが隕石であった可能性はかなり高いです。それに関しては沢渡准教授の研究報告書の内容にも示唆されています」

「なるほど……」

 学園長はそう言って立ち上がり、学園都市を一望できる大窓に歩み寄った。

「雨無君」

「はい」

「学園都市創設の理由……知っているかね」

「もちろんです。立地する大学や研究所に街を隣接させることによって、経済の発展及び様々なモデルケースやデータを得る事を目的とし……」

「違う。君の保護だ」

「え?」

 人の役に立つ都市。それをイメージしていたため、一騎は一瞬思考を停止した。

しかし学園長の顔は、子供を見る様な優しさだった。学園長は一騎の話になるとたまにこんな顔をする。

「私は心配だった。正義とは常に孤独だ。戦いの中では英雄だが戦いが終われば異端だ。だから英雄を保護する必要があったのだ。特に乾君や君は身を寄せるところはおろか後ろ盾もなかったのだ」

「……」

「もちろん君を調べるという目的もある。それに関しては君自身が一番前向きだった様だがね」

 そんな中でアインツコマンダーが着信を知らせた。

緊急用のものだ。どうやら敵が現れたらしい。

「どうした」

『そのビルの一階にえらくごついお客さんが見えているよ』

 

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――2011年12月13日 13:31

――学園都市、中央区 事務科

――中央ビル 一階

 一騎がビルの一階である開けたホールに降り立つと、G6数体が一体の怪人に向かってガトリング砲を連射していた。

しかし怪人は一歩も怯まず、静かに歩み寄っていた。それどころか跳弾で周りに被害があるというのが驚きだ。

『一騎、敵はタイプブラッド・コーカサス。ご丁寧に相手が名乗ってくれたよ』

「コーカサス……カブトムシとはひと味違うってか」

 後ろで手を組み、ガトリング砲の雨をまるでシャワーを浴びる様にゆっくりと近づいてくる。

「G6部隊は俺の援護に回れ!」

 その様子に決戦を予感し、一騎はアインツコマンダーでコードを入力する。

4――9――1――3

 アインツドライバーを召喚し、左手を右天に突き出し覚悟を叫んだ。

 

――変身!

 

 アインツコマンダーをアインツドライバーと合体させ、アインツギアとする。それと同時にアインツギアから白いリングが跳び出しそれが一騎を中心に回転を始める。リングが光球となりそれが内部から振り払われた時、アインツが登場した。

そのまま駆け出し、タイプブラッド・コーカサスに拳を突き立てた。だがまるで壁の様な感触に驚き、後ろに大きく下がる。その隙をG6がガトリング砲で埋める。

「どうした、仮面ライダー」

「その声……ツヴァイの司令官か?」

「今このときをもって、財団Xは学園都市に宣戦布告を行う」

「創設の時から喧嘩売っているだろうが!!」

 今度は蹴り。しかし岩を蹴った様な感覚でタイプブラッド・コーカサスはビクともしない。

「なら!」

 アインツコマンダーを開きコードを入力する。

8――8――8――

 

――超変身

『BLASTFORM!』

 

 そのまま壁と化しているタイプブラッド・コーカサスに全体重を預け、そのまま後ろに跳躍する。

空中で光球に包まれたアインツはフォームチェンジしながら、タイプブラッド・コーカサスに数発発砲した。

流石にブラストアクスガンの衝撃を殺す事が出来なかったのか、最初の数発は身体で受け止め、次の数発は横に跳躍し回避した。そして腰に付けていた剣の柄のようなものを取り出し、かけ声をかける。すると柄が変形を始め、大剣ができあがる。

「液体金属か」

「ご名答」

 一瞬の掛け合いはブラストアクスガンの発砲音で終了した。アインツはブラストアクスガンを連射するが、全て強靱な装甲に弾かれるか、それとも大剣で防がれるかで対処され、あっという間に間合いを詰められる。

振りかぶられた大剣はブラストアクスで受け止め、鍔迫り合いになる。

だが、アインツの後ろにはG6がいる。蹴りで無理矢理間合いを開け、背中から地面に着地しそのままブラストアクスガンを連射する。それに怯んでいる隙にG6のGXランチャーがタイプブラッド・コーカサスに直撃した……かに思われた。

黒煙に包まれたタイプブラッド・コーカサスだったが、立ち上がったアインツはブラストフォームの情報収集能力で、かの無事を確認していた。

黒煙に雷が走り始め、火山雷を思わせる光景が目の前で始まっていた。

「その能力は!?」

 突如雷を纏ったタイプブラッド・コーカサスが金色の装甲をさらに発光させる。

おそらくパワーアップかそれに相当する力なのだろう。こちらも対抗するべく、コードを入力する。

5――5――5

 

――リミットカット

『ENERGY!!Release!!』

 

アインツにも雷にまとわりつき、アーマーの縁に金の意匠が現れ、腕にもエネルギーの経路が繋がりその流れも金色に変化する。

纏われていた雷が振り払われ、アーマーの色が青いブラストフォームから暖かい赤へと染まり、瞳とアーマーから深紅の炎があふれ出す。最後に火炎のマフラーが形成され風になびく。

うなり声を上げ両手に火炎を纏わせ、タイプブラッド・コーカサスに格闘戦を申し込む。頬にヒットした一撃目に手応えはあった。しかし次に相手から繰り出されたボディの一撃に大きく後退してしまう。

「やるじゃねえか!」

 次の拳はお互い打ち立てるかの様に正面からぶつかり合い、炎と雷の戦いは熾烈さを増していく。

その殴り合いに一石を投じたのはアインツの方だ。攻撃をワンテンポ送らせ、あえて相手に一手多く攻撃させ、その拳を左手で無理矢理掴む。同時にコードを入力し必殺技を起動する。

4――4――4

 

「ライダーパンチ!」

『ENERGY!!RIDERPUNCH!!』

 

 アインツの両手が雷に包まれ、渾身の右ストレートがタイプブラッド・コーカサスの腹に直撃した。

ダメージはあった様だが、ゆっくりとした動作でタイプブラッド・コーカサスは再び雷を全身に纏わせる。

「その力はこうやって使え」

 おもむろにタイプブラッド・コーカサスが駆けだしてくる。これに対しアインツも駆け出しコードを入力する。

9――9――9――

 

「ライダーキック!」

『ENERGY!!RIDERKICK!!』

 

 必殺技を起動し空中に跳び上がる。それと同時にタイプブラッド・コーカサスも跳び上がり空中で双方のキックがぶつかり合った。

お互い吹っ飛びフロアを転げ回る。

「ちっ、相手の方が僅かに上だ」

 こちらの隙はG6が消してくれる。そう思っていた。

『一騎!後ろ!』

 アインツが後ろを振り返ると、大剣を振り下ろそうとしているツヴァイの姿があった。

 

『SPLASH!!Release!!』

 

 おそらく晴彦が緊急的にフォームチェンジさせたのだろう。

アインツギアから緑のリングが跳び出し、ツヴァイの大剣を受け止めた。

「尾木!」

「貴様が!貴様さえ居なければ!」

 リングに手こずっていたツヴァイを蹴り飛ばし、光球からスプラッシュフォーム・リミットカットがスプラッシュハルバートを頭にツヴァイに吶喊した。

スプラッシュハルバートを大剣で受け止め、鍔迫り合いとなる。

「貴様!G6を!」

 あたりにはG6が転がっていた。一部には血を流している者もおり、緊急救命を必要としているのは誰の目から見ても分かった。

「お前!人を殺すということがどういうことか分かっているのか!?」

「俺はツヴァイを纏ったときから覚悟は出来ていた!」

「戯れ言を!」

 

『ACCELDRIVE!!』

 

 超高速モードを起動した。

卑怯とは思いつつもツヴァイの両足に斬撃を集中させ、すぐさまタイプブラッド・コーカサスに向かう。しかしタイプブラッド・コーカサスはこちらにボウガンのようなものを向けていた。

(ちっ!)

 既に時遅しだ。

移動予想して発砲されていた弾丸をもろに受け、超高速モードは解除されアインツとツヴァイが転がり回る。

ツヴァイは足を抱え呻き声を上げ、アインツは全身から煙を上げていた。

そのアインツをタイプブラッド・コーカサスは力強く何度も踏みつけ、大きく蹴り飛ばした。

ダメージが限界に達したのか、アインツの変身が解除され、全身に打撲の傷痕がある一騎と姿が入れ替わる。

「尾木、貴様には失望したぞ」

「くっ」

 そういいつつもツヴァイを起き上がらせ、財団X陣営と一騎が対峙する。

「貴様の悪運もここまでだ。雨無一騎」

「悪運?ははっ、それは驚きだ」

 未だ健在を示すかの様にゆっくり立ち上がり、しかしダメージを隠しきれず壁にもたれかかる。

「少なからず、実力でここまで来ているはずなんだがな……まあいい。貴様らも目にしているだろ?アインツのカタログスペックとか」

 転がっていた小破しているアインツコマンダーを後生大事そうに埃を払い、ポケットにしまい込んだ。

「装甲展開の技術は素晴らしき青空の会から、フレームはGシリーズから、エネルギーの伝達及びベルトはライダーズギアから、そしてエネルギーの変換濾過はガイアメモリから。じゃあ……そのエネルギーっていうのはなんだ?」

 エネルギー。

物理において、殆ど全ての物理現象について回るものだ。どんな力を使おうとも、どんな物を受け止めても、どんな奇跡を起こそうとも必要になる。

「ツヴァイのことも調べさせてもらったが、あんたは人工衛星からマイクロウェーブでエネルギーを転送してもらっているようだな」

 ちなみに人工衛星は日本政府のものだ。そんなところから尻尾を出す連中では無かったらしい。

「じゃあアインツのエネルギーはどこから来ている?」

 再び問いかけた。

ゆらりとツヴァイとタイプブラッド・コーカサスによろけながら歩み寄る。

ただそれだけの動作。端から見ればただよろめいただけなのだが、対峙している二体にはその動作に一瞬恐怖を覚えていた。先ほどまで圧倒していた。それにも関わらず。

「……」

 本能が危険と察知したか。タイプブラッド・コーカサスが突然駆け出し、一騎に拳を伸ばした。

「見せてやろう。0の仮面ライダーだ」

 一騎はそういって腰に手をかざした。鈍い銀色で造られたベルトが現れる。ただそこにあるだけで圧倒的ともいえる威圧感を与える。

右手を左天へと突き出し左手は右の腰に。そして雄々しく呟いた。

 

――変身

 

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次回予告

 

――五代さん、ちょっと来てください!

 

――どうしたの一騎君?

 

――これってクウガのベルトに似ていませんか?

 

――そんな……これがどうして……。アマダムなのか?

 

――だから見ててください!俺の!

 

――変身!

 

EPISODE24 原点

説明
この作品について
・この作品は仮面ライダーシリーズの二次創作です。
執筆について
・隔週スペースになると思います。
・日曜日朝八時半より連載。
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仮面ライダー 仮面ライダーEINS アインツの世界 TINAMIの世界 

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