好きで・・・ |
「あかりちゃん……」
一人、教室の隅で彼女の名前を呟く。私のクラスメイトで一番仲のいい友達。
「そう……ただの友達のはずだったんだけどなぁ……」
いつからだろう? 私があかりちゃんを意識しだしたのは。
練習と言ってキスをしたあの日から? それとも恋愛相談をしだしてから?
ううん。もしかしたら初めて会ったあの日からなのかもしれない。
だけど、私はあかりちゃんに告白をすることは出来ない。
だって私は結衣先輩のことを好きでいないといけないから。
『あかり嬉しいんだよ〜。ちなつちゃん、いつもあかりに相談してくれるから。
それがちょっぴり自慢なんだぁ♪』
そんなことを笑顔で言っていたあかりちゃん。そんな風に言われてしまったら、実は
あかりちゃんのことが好きだなんて言えないわよ。
だから私は結衣先輩を好きでいなくちゃいけない。
――って、別に結衣先輩が嫌いとかそんなのはないんだよ! 結衣先輩は綺麗でカッコイイ
し、何より優しい。だから私が結衣先輩を嫌いになるなんてことはないんだけど――
「それでも、私の中をあかりちゃんが満たしていく……」
結衣先輩で占められていた思考は、いつのまにかあかりちゃに変わっていて。
ふとした瞬間思い出すのは、結衣先輩の顔じゃなくてあかりちゃんの笑顔で。
「あーもう! どうしてこんなことになっちゃったんだろ!?」
あかりちゃんなんて――あかりちゃんなんて――
可愛くて純粋で、人を疑うことを知らなくて……それでいて優しくて、何事にも気が付いて……
自分以外のものを優先させる。たまに存在感が薄い時があるけど、それも可愛くて――
「私、何一人で熱弁してるんだろ?」
あかりちゃんの可愛さを熱弁して、何がしたいのだろう?
もう分からないよ……私はあかりちゃんが好きで、だけど結衣先輩を好きでいなくちゃいけなくて。
あかりちゃんは、結衣先輩に恋をしている私を好きだと言ってくれて。
「あかりちゃん。あかりちゃん。あかりちゃん」
助けてよあかりちゃん! 私一体、どうしたらいいの!?
私、こんなにもあかりちゃんが大好きなのに、それなのに――
「ちなつちゃん……?」
「あ、あかりちゃん!?」
あかりちゃんが心配そうな顔で私に声をかけてきた。
「どうしたの? なんだか凄く悲しそうな顔をしてるけど……」
「な、なんでもないよっ!」
あかりちゃんに私のこの気持ちを悟られるわけにはいかない。あかりちゃんは優しいから、
私のこの気持ちを知ったらきっと心を痛めると思う。
だから悟られるわけにはいかない。でも私のこの気持ちを知って欲しい。訳の分からない
矛盾した気持ちが押し寄せてくる。
「あかりじゃ何も出来ないかもしれないけど、何かあったら言ってね。あかり、ちなつ
ちゃんのそんな悲しそうな顔見たくないから……」
「あかりちゃ……」
顔を伏せている私を後ろから抱き締めてくれるあかりちゃん。
何でこんなにもあかりちゃんは優しいのだろうか? どうしてこんな私に構うのだろうか?
あかりちゃんがそんなのだから私は――
「……あかりちゃんのばかぁ……」
「えぇっ!? な、何でバカって言われるのぉ!?」
ばか……バカだよ。あかりちゃんの優しさも、あかりちゃんに恋をしてしまってそれを
伝えることが出来ない私も。
「ねぇ……あかりちゃん」
「何かな? ちなつちゃん」
「…………キス、しよっか」
「え、えぇっ!? き、キス!?」
私の言葉に後ずさりしながら驚くあかりちゃん。そこまでされると少しショックなんだけど……
「……冗談だよ」
ほんとは冗談じゃなくて本気だけど、冗談ってことにしておこう。
あかりちゃんに嫌われたくないからね。だから笑顔で冗談って言わないと……
「冗談に決まってるじゃないあかりちゃん」
出来るだけ笑顔で、精一杯の笑顔で――
「ちなつちゃん……」
私の笑顔を見て悲しそうな顔になるあかりちゃん。どうして、そんな顔をするの?
私は笑顔なんだよ? だからあかりちゃんも笑顔で……
「ちなつちゃん……キス、してもいいよ」
「え……?」
あかりちゃん、何を言って……?
「あかりにはよく分からないけど、ちなつちゃんすごく悲しそうな顔をしてるから、
だからあかりとキスして笑顔になってくれるならあかりは……」
「あかりちゃん……」
あぁ、どうしてあなたはそんなにも優しいのだろうか? ほんとはキスなんてしたく
ないだろうに、私のためにキスをしてくれると言ってくれた。
何で? どうしてそこまで他人のために――
「何で、あかりちゃんは……んっ!?」
「ん……んちゅ、ぁ……えへへ、ちなつちゃんとキスしちゃった♪」
悪戯っ子のような笑顔を浮かべるあかりちゃん。あかりちゃんにキスをされた。
私からじゃなくて、あかりちゃんから……
「ちなつちゃん、顔が真っ赤だよ」
「あ、あかりちゃんも赤いじゃない!」
私よりも絶対に赤くなってるわよ。まぁ、私もかなり赤くなってるんだろうけどね。
だって仕方がないじゃない。大好きな人にキスをされたら誰だってこうなるでしょ。
あーもう! あかりちゃんがこんなんだから私は好きになっちゃうの!
無自覚に私に優しくするから好きになっちゃうの!
「あかりちゃんはバカだよ……」
「ま、また言われたっ!?」
ポカポカと私を叩いてくるあかりちゃん。叩くといっても全然痛くないんだけどね。
だけど、こうしてあかりちゃんが私の身体に触れているのが嬉しく思う。
ほんと、やっぱり私はあかりちゃんに心底惚れているんだね。
もう、結衣先輩じゃなくてあかりちゃんに…………
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ゆるゆりです。よくある感じの話しですが、被ってないことを祈りましょう。 | ||
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